ONE PIECE ANOTHER STRONG WORLD! 作:はむらび
「明日のデッドエンド、レース本線に向けて、今夜中に確認しとかねェといけねェことがひとつある。」「なんだ?船の確認か?」「いや、違う。『お前の能力』の確認だ。明日戦うんなら、能力の確認は今夜中に終わらせてェ。」
悪魔の実の能力は、本来「食ってすぐ扱える」ようなものではない。能力者当人が身体と技術を鍛え上げた後で食った今回のシュライヤのようなケースならぶっつけ本番で使えないこともないだろうが、だとしてもそれは賭けだ。能力の種類もわからないままぶっつけ本番……というのは避けたい。
「というわけで模擬戦だ。こういうのは実戦で慣らすのが一番いい。おれが相手してやる。軽くだがな。おいインディゴ、戦闘データを取っておけ。」「ああ。わかった。」「了解しました」
シュライヤの身体は、一瞬で犬のような狼のような……なんだこの生き物?「コヨーテですシエル様」
そうそのコヨーテとかいう犬に変わった。肉食獣タイプの
なにせ……
ブゥン、と空気の擦れる音とともに、大柄なコヨーテの獣人の拳がこちらに向かってくる。紙一重でかわす。おれの金の髪が、ナイフよりも鋭利な獣の爪に引き裂かれ、宙に舞う。獣人は人型に戻り、小柄になって懐に潜り込み、高速の掌打を放つ。おれは吹っ飛ぶ!
明らかに今までのシュライヤのそれとは速度が違う。パワーも違う!そう。なにせ
だが、やられるだけのおれでもない!「そろそろ反撃と行こうか!『三十二刀流『
しかしやつは浮いている刀を足場にして回避!刀も強奪!そのままおれの元に向かってくる!「『桜十』!」呼び出した桜十で受け止めるが、重い!
ちょっと待てコイツ『獣の身体能力が付いただけで』こんな強くなるのかよ!「やめだやめ!今のおまえどう考えても普通に将軍に勝てるわ!」
「お前の首も掻き切れそうだな。」「まぁ1対1で、運が良きゃいけるだろうな。」というかコイツ今ルフィとかより戦闘力があると思うんだよなおれ。
「覇気も」「武器も」「悪魔の実も」「技も」「基礎身体能力も」伸びしろが残っていたシュライヤと言う男に、その取り柄である「身軽さ」を残したまま、「爪や牙と言う武器」「野生の技」「肉食獣の身体能力」を与える「悪魔の実」。噛み合わせが良すぎる。
これが、「生き抜く力のある男」。運命の神に愛されていなければこうはいくまい。
ああ。これでこそ、わざわざこんなところまでスカウトに来た甲斐があったというものだ。
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そして早朝、レース開始時刻に至る。
「そもそも、おれはこのレースに勝つつもりはそんなになくてな。」「成程。俺のスカウトそのものが目的だった、と言う話か?」「いや、そうじゃない。金はそれはそれで欲しいからな。
おれの金獅子海賊団は、有象無象の数ならガスパーデの一味のそれに匹敵、あるいは凌駕するほど多い。やつらを使って「金獅子海賊団が勝つ」という印象を付け、更に「麦わらの一味」の悪評を広める。すると、金獅子海賊団のオッズが上がる。麦わらの一味のオッズが下がる。現段階で麦わらの一味のオッズは下から数えた方が早い。それに、「おれはルフィの兄貴だから」「麦わらの一味に大金を賭けても怪しまれない」。
「勝たせる方法も簡単だ。もうあいつらの
「あきれた男だ。」「でも資金があって困ることはありませんからね。iQの研究資金も欲しいですし。」「ウホホホウホ」「えっ?稼いだ分は4人で山分けしよう?」「ウホ」「んなわけねーだろゴリラの分はねーよ」
そもそも海賊団の金で賭けた分は海賊団の金になる。船長の懐にもゴリラの懐にも入らない。
周囲からは歓声。パレードスタートと言う奴だ。「川を遡りながら」おれたちは会話を終えた。
ここで「デッドエンド」というレースのおさらいだ。デッドエンドは、まずこの町、ハンナバルの川の支流1つ1つから開始する。この島では定期的にグランドライン入り口、リヴァースマウンテンと同様の原理(複数の海流がぶつかることで海から川に流れ込む)で「川の逆流」が起きる。その逆流に乗って島を超え、その先にある島「パルティア」のゴールを目指す……というもの。
そしてもうひとつ。逆流の向かう先は……崖だ。グランド・フォール。ルール上ここを飛び出した瞬間がレース開始(=ここから先は妨害アリ)なのだが、レース参加者の1/3はレース開始直後に脱落する。崖から落ちるのだからそれもおかしな話ではない。
「ってあたりまでは知ってたか?ルフィ?」「うんにゃ。知らん。」「そうか…… 頑張れよ!」おれはつい数秒前まで隣を航行していた羊頭の船が、重力に従って滝を落ちていくのを、「上から」眺め、応援の声をかけた。そう。上から。俺の船は、重力に従わない。滝を落ちることもない。それが、フワフワの実の力だ。
「オイ、マジかよ。お前、『船まで浮かべられる』のかよ……」「流石に俺には島は無理だが街までなら浮かべられるな。フワフワの実は『そういう反則能力』だ。」シュライヤは流石にこの崖の事を知っていたらしい。逆に、「崖を落ちていかない」ことに驚いているようだ。
「なるほど。このまま飛んでいくつもりか。」「まぁ流石に高度は落とすけどな。俺らの目的が『ガスパーデを狩る』ことである以上、こんな高いところにいて見失いました……とかじゃ冗談にもならん。」
大目的はシュライヤとの契約満了のためのガスパーデ退治だ。賭けに勝つつもりがないおれたち的には、それが主目的でもある。努力目標、小目的は「ルール無用のレース」を利用した「海賊どもからの略奪」となるがね。それもまあ、有象無象やゴリラを載せた小舟でもフワフワの能力で海賊船に飛ばして略奪させれば済む。
「今のうちに休んでおけよシュライヤ。脱落者が出て、邪魔が入らなくなったらガスパーデの船に乗り込むんだからな。」
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そして6時間ほどガスパーデの船を「尾行」したのち……なんだが。妙なことが起きた。
「ちょっと前から思ってたんだが……あいつコース外れてないか?いやまあどっちみちおれ等はついてくしかないんだが。」「……なるほどな。まあ、奴のやることだ。大方、胴元と組んで独り勝ちするつもりだったんだろうさ。」「オイ、シュライヤ、それどういうことだ」「簡単な話さ。恐らく俺たちは、いや。ガスパーデ以外の全員は『偽の
まぁ、そうか。
「じゃあ、そろそろ準備するか?やることも増えたんだ。早いうちに動いといたほうがいいだろ。」「ああ。ただしガスパーデは俺の獲物だ。わかってるよな?」「わかってるよ。なにがあったか知らねぇけど、頑張れよ。」
シュライヤと、奴が船内で見繕った数本の武器を載せた木の小舟はふわりと浮かび上がり、ガスパーデの船に向け、飛んで行った。
イヌイヌの実 モデルコヨーテ
・コヨーテの力を得る動物系悪魔の実。
「幻獣種」でも「古代種」でも「SMILE」でもない「普通の