他種族の夫を迎えようとも、生まれる子供は全て女性のみという不思議な民族。
それが、砂漠の民として知られているゲルド族。
彼女達の町は男子禁制が徹底されているものの、私達の目的は交易場が開かれているその手前のオアシスの方なので、男性であるリンクと共に訪れることに問題はない。
しかし肝心の交易場には現状では入れないので、周辺で多少の情報収集を行った上で、私達はとある場所を目指すことにした。
「サヴァーク(こんにちは)」
「すみません、まだお昼ですけどお店やっていますか?」
「サヴァーク……いらっしゃい、ハイリア人のお客なんて珍しいね。
見たところ酒が出せるような年じゃなさそうだし、特別に果物でも絞ってやろうか」
交易場の責任者でもあるという酒場のマスターは、突然訪ねてきたハイリア人に驚きながらも、追い出したり邪険にしたりはせずに迎えてくれた。
「お嬢ちゃん達のような可愛らしい子らが、こんな砂漠に何の用だい?
交易場が目当てだとしたら残念だね、もう何十年もハイリア人の出入りは禁止になっているんだ」
「いえ、私達の目当ては交易場ではなく、ゲルド族の細工師に依頼を出したくて来たのです。
この手の技術は、ゲルド族に勝るものは無いとお伺いしたものですから」
そう言って私は、ゴロン族から骨折りのお礼と友情の証として贈られた宝石の数々を小袋から取り出した。
大きさも輝きも、見るからに最高品質だということがわかるものを前にして一瞬呆気に取られてしまったマスターだったけれど、すぐに気を取り直して口を開く。
「こいつは凄いね、大したもんだよ。
これだけ立派な宝石なら、一流の細工を施したいと思うのは当然。
その当てとしてゲルド族を選ぶのも、また当然ってもんだ。
わかった、ゲルドの町にいる知り合いの細工師に連絡を取ろう。
出来るだけ早く完成した方がいいんだろう、だったら一刻も早く来てもらわないとね」
「ええ、お願いいたします」
今回作ってもらうのは、店頭に並べるような出来合いの品ではなく、私とリンクが身につけるための特注品。
そういう依頼に対して細工師は、その人により似合うもの、その人をより輝かせるものを作る為に、まずは本人に直接会って想像を膨らませるという。
そのことを知っていた私は、その提案に対して特に何も思うことはなく頷いたのだけれど。
途端に訝しげに目を細め、私を見つめだしたマスターに、何かを間違えたのかと思わず息を呑んでしまった。
「お嬢ちゃん、人を使うことに慣れているね。
庶民の感覚なら、わざわざ来てもらうなんて……って思うのが普通なところなんだけど。
ハイリア人の良いところのお嬢様が、碌な護衛もつけずにこんなところにまで。
一体どんな了見さね」
たった一言、ほんの僅かな気の緩みから隠し事を見抜いてきた慧眼に気圧されながらも、ここが踏ん張りどころだと気を取り直した私は、無言で見守ってくれているリンクに励まされながら、居住まいを正して改めて彼女と向き合った。
流石に姫だとは思っていなかったらしく、驚いた様子を見せた彼女だったけれど、流石の立ち直りの速さを見せて話し合いの環境はすぐに整った。
「かつてのハイリア人の愚行を申し開くつもりはありません、交易場への立ち入りを禁じられたのは仕方のないことだったと思っております。
再びの参加許可をいただけた暁には、ハイラルからも規制をかけ、犯した場合の裁定も偽りなく行なうことを誓います。
なのでどうか……ハイリア人とゲルド族の新たな友好関係について、前向きに考えて頂くことは出来ませんでしょうか」
その言葉を受けたマスターは、神妙な面持ちで考えこみ……その後に、ゆっくりと口を開いた。
そうして彼女が聞かせてくれたゲルド族の『本音』は、ハイリア人相手の交易が途絶えたことで、ハイラルの地や人を介していた通商ルートの多くが使えなくなって、ゲルド族も随分と損失を被って困っていたという事実だった。
「なあ、アンタ達……持って来た宝石なんだけど、自分達で使わない分だけで構わないし、代金だって弾むから、良ければ売ってはくれないかい?
腕のいい細工師の存在だけでなく、ゲルド族自身の需要もあって、宝石はいくらあっても足りないくらいなんだけど。
ハイリア人相手の交易が途絶えてからというもの、品不足が延々と続いていてねえ……」
「なぜですか、ゴロン族との売買は別に禁じられてはいなかったのでしょう?」
「アタシらの住むこの砂漠からじゃあ、デスマウンテンは遠すぎるんだよ。
人生で一度は旅に出る伝統があるゲルド族は、確かに通商に秀でていて、わざわざ遠出してくれるような気概のある奴も昔から何人かはいたけれど……それでも宝石の多くは、ハイリア人の商人を経て仕入れていたのさ。
ハイラルは広大な土地を占める大国だからねえ、人や品物の行き来はそれ相応に多い。
アタシらゲルドも、例外なくその恩恵にあやかっていた訳さ」
「でしたら何故、今の今まで交易が途絶えるような事態に……」
「ハイリア人のヴォーイが無遠慮不躾にゲルドのヴァーイを口説きまくった例の事件のせいで、若いヴァーイ達が外の世界を怖がり、伝統のヴォーイハントに消極的になっちまったのさ。
旅に出ないと運命のヴォーイに出会えない、出会えなければ子も残せない、それはすなわちゲルド族の存続の危機だからね。
数年越しの損失を覚悟してでも、若者達のヴォーイに対する苦手意識を薄れさせる必要があったのさ」
「…………何か、本当に。
ハイリア人が申し訳ありません」
「アンタが頭を下げることは無いよお姫様、悪いのは一部の躾のなっていない連中だったことはアタシらもちゃんとわかっている。
アタシらにだって問題はあったんだ、頃合いを見てこちらから関係の修復を切り出すことがどうしても出来なかった。
何回か話は出たんだよ……でもその度に、そもそものきっかけはハイリア人だったのに、なぜこちらから譲歩する必要があるのだ、とか。
こちらから和解を申し出たりすれば図に乗られる、不平等な約定を押しつけられたらどうする、とか。
実際に起こっている問題よりも、意地や誇りの方を優先する頑固な連中が声を荒げて、結局案が流れるって事態が続いてねえ」
「……ハイリア人との交易を再開することの具体的な『利益』を提示することが出来れば、その感情論を落ち着かせることは出来ますか?」
「可能だね、連中だって慢性的な品不足や値段の高騰には例外なく悩まされているんだ。
現物を目の前に出されてまで、意地を張り続けるのは難しいだろう」
「ということです、リンク。
行動方針は決まりましたね」
「ゲルド族を驚かせられるような品物探しだ」
急に意見を合わせて、気合いを入れ始めた私達に、流石に呆気に取られた様子のマスター。
彼女が呼んだ、久々の大仕事の予感に急いで駆けつけてきた細工師が、扉を壊すような勢いで店内に駆け込んできたのは丁度その時のことだった。
最高級の宝石、そしてそれを使用した装飾を身につけることとなる私とリンクを前にした細工師は、凄い気合いの入り様を見せながらゲルドの町へと戻っていった。
「これで、注文の品が完成するまではこのオアシスに滞在する、という確かな理由が出来ましたね。
……ところでリンク。追加で注文をしていたようでしたが、何を話していたのですか?」
「サファイアを使った装飾を真っ先に仕上げて、完成次第届けてほしいって頼んだんだ」
「……確か、サファイアが持つ冷却の魔力を生かして、耐暑効果が出るものですね。
まさかリンク、砂漠を探索するつもりなのですか?」
「狙いの品がある」
「あなたの判断を疑う訳ではありませんが……でもどうして、わざわざ危険な砂漠を。
宝石ではいけないのですか、大きな需要があるとわかっているのに」
「確かに需要があるし、喜ばれるかもしれないけど、それで交易が許可されるかとなると。
デスマウンテンに行けば比較的楽に手に入るのが分かっていて、ただ運んだだけと言われれば反論できないような宝石じゃあ、何と言うかな……そう、衝撃が弱い。
凝り固まった意地や疑心を一発で粉砕できるような、もっと強烈な力と勢いがあるようなものが必要だと思うんだ。
具体的に言えば……採れる場所に行きさえすればいいようなものではなく、手に入れることの難しさをゲルド族がよく理解していて、成し遂げることが出来れば膨大な需要が発生するもの」
「あなたの言う『狙いの品』とは、その難しい条件を成しているものなのですか?
それは一体……」
「砂鯨、モルドラジークだ」
その後私達は、酒場のマスターが『依頼が完遂するまでの間だけ特別に』と口利きしてくれたおかげで出入りが出来るようになった交易場で、『モルドラジーク』に関する情報収集を行なった。
曰く、砂の海を自在に泳ぐ、砂漠で最も巨大で恐ろしい魔物。
曰く、僅かな獲物も逃さずに、砂の下から寸分の狂いも無しに襲ってくる。
曰く、高品質な薬の材料になるという肝を目当てに多くの者が挑み、尽くが帰ってこなかった。
ただ話を聞いただけなのに、凄い剣幕で『近づくな』『興味など持つな』と戒めてくるゲルド族達に、砂漠で生まれ育った彼女達にとって非常に身近でわかりやすい脅威だったということが見て取れた。
時に避けられながら、怒られながらも少しずつ慎重に情報を集めたことで、砂漠の中のモルドラジークが生息していると思われる地域を絞り込むことができた。
その頃になって、完成したサファイアの装飾品が丁度良く届き、砂漠の探索を行なうための準備がひとつ整った。
「とても似合っていますよ、リンク」
「男に対する褒め言葉じゃ無いって……」
「でも事実です」
「はいはい、ありがとう」
本気で綺麗だと思ったのに……まともに受け取って貰えなかったことは不満だったけれど、彼らしいとも思ったのであまり気にはしなかった。
サファイアが持つ耐暑効果でも砂漠奥地の熱を完全に防ぐことは難しいので、前もって集めておいた素材を使用して、念の為のひんやり薬を量産して。
砂漠に生息しているスナザラシを捕まえ、乗りこなす練習をして。
目的地であるモルドラジークの生息地までの行程を、無理せず帰ってこられる程度まで何度か往復して。
準備も、心構えも整って、いよいよ砂漠の奥地へと挑む……となった前日、酒場のマスターが私に声をかけてきた。
「ゲルド中で話題になってるよ、アンタ達があのモルドラジークに挑むつもりだって。
多くの連中は、口だけだのすぐ逃げ帰ってくるだの言ってるけど……その目、その腹の据わり具合、どうやら本気みたいだね」
「止めますか?」
「当たり前だ、アタシらがどんだけあの化け物を恐れてきたと思っている。
悪いことは言わない、やめておきな。
二人だけで……いや、お姫様が戦えるとは思えないから実際はあのヴォーイ一人か。
あの子だけで何が出来るっていうんだい、無謀にも程があるよ」
「彼が出来ると言った、自信を持って断言したのです。
私は、それを信じています」
そう言い切って笑った私の後ろ姿を、彼女は言葉なく見送った。
……拠点としている宿の一室を、誰にも気づかれないようにと窓からこっそり抜け出したのは、その夜のうちのことだった。
「何だか、心配して下さっているマスターさん達に申し訳が無い気がします」
「仕方ないって……部屋に鍵をかけて、閉じ込めてでも止めるつもりだったみたいだし。
その気持ちは嬉しいけど、こっちだって事情があるんだ。
怒られるのは覚悟の上、確かな成果を土産にすることで許してもらおう」
昼間とは反対に極寒の世界となる砂漠を、耐寒効果のあるピリ辛薬を飲むことで対応しながら、スナザラシを駆って奥地を目指す。
時折休みながら、砂嵐に巻かれたりしながらも懸命に進み、目的地の目印と定めていた巨大なテーブルのような岩山が見え始めたのは、昼を過ぎた頃合いのことだった。
「ゼルダ、打ち合わせ通りに!!」
砂漠の暑さではなく、緊張のあまりに唾も飲み込めない程に乾いた喉を、私は予め用意しておいた薬を一気に飲み干すことで潤した。
スナザラシを駆りながら弓を引くという器用さで以ってリンクが放ったのは、オアシスの交易場で予め手に入れておいた爆弾矢。
それを、私達の目的地である岩山からなるべく遠い地点を狙い、放った。
通常の矢よりも遥かに重く、扱い辛い筈のそれは大きな弧を描いて飛び、何の変哲もない砂漠の一画に着弾、と同時に炎と衝撃と轟音を伴って爆発した。
途端に、辺り一帯の空気が変わったのが私にもわかった。
恐れ慄き、走行がブレ始めたスナザラシに、こんな危険地帯に連れてきてしまって申し訳ないと思いつつも、もう少しだけだからと心を鬼にして懸命に手綱を引く。
轟音に釣られて、今の今まで平坦だった砂漠の一画が盛り上がる。
時折砂を噴きながら潜航したそれは、爆弾矢の着弾地点を真下から突き上げる形でその巨体を現した。
「あれがモルドラジーク……」
「急げゼルダ、次は俺達の音を狙って来るぞ!!
それより先に、岩山へ登るんだ!!」
爆弾矢の音と衝撃がモルドラジークを誘導した隙に、生息地の中央に存在する岩山へと辿り着いた私達は、無理をさせてしまったスナザラシを解放すると同時に目の前の岸壁へと手をかけた。
先程私が飲んだのは体力の上限を一時的に上げるスタミナ薬、それでも足りなかった時の為にがんばり薬も用意してある。
リンクに手伝ってもらいながら、一気に岩山を登り切った私達の視界に、砂の下から周囲を窺うモルドラジークと未だ逃げきれていないスナザラシ達の姿が映った。
「リンク、逃がしてあげて!」
「わかっている!」
爆弾矢にあまり余裕は無いけれど、それでも見過ごす選択肢は無かった。
再び誘導されたモルドラジークが見当違いの所に食いついている間に、短い間だったけれど旅路を共にしたスナザラシ達は、生息地から逃げ切ることが出来た。
「良かった」
「ああ……そして、本番はここからだ。
あまり長引かせないで、一気に決める」
砂上の獲物の気配を音と振動で探っているモルドラジークだけれど、堅い岩などの上に乗ってしまえばそれを探知することは出来なくなる。
そんなリンクの言葉通り、岩山の上に登った私達を、モルドラジークは完全に見失ってしまった様子だった。
慎重に辺りを窺い続けるモルドラジーク……それから少し離れた地点へと向けて、リンクはシーカーストーンから取り出した青い球を、爆弾を放り投げた。
それが砂上に落ちただけの僅かな音と振動を逃さなかったモルドラジークは、獲物と見定めたものへと向かって真っすぐに潜航していく。
その瞬間を逃すまいと、リンクから渡されたシーカーストーンを手に、私はかつてない程に意識を研ぎ澄まさせていた。
目的地の手前でより深く潜り、真下から突き上げたモルドラジークの巨大な口が、青い球を呑み込んだ。
その瞬間を逃さず発した起爆の合図が、モルドラジークの腹の中で盛大な爆発を引き起こした。
身の内からの攻撃に成す術もなく、空中で体勢を崩した巨体が轟音を立てながら砂上へと落下する。
その巨大な、丸出しとなった腹部へと向けて、リンクの弓が誘導目的ではない爆弾矢を引き絞った。
三度目の轟音、衝撃が、今度は血と肉が焼ける匂いと共に巻き起こる。
内臓の動きが窺えてしまう程に、大きく抉れた肉。
その最も強く激しく動いている部分、生命維持の要である巨大な心臓へと向けて、リンクは槍を構えて飛び降りた。
高さと重さが加わり、何倍もの威力が上乗せされた穂先が、寸分の狂いもなく心臓を貫いて血を迸らせる。
重傷を負いながらも藻掻いていたモルドラジークは、それによって完全に止めを刺された。
僅かな痙攣の後に動きを止めた大きな死骸から、血まみれになりながら戻ってきたリンクへと、私は慌てて岩山を下りて水の袋を差し出した。
「大丈夫ですか!?」
「流石に気持ち悪い……顔だけでなく全身洗いたいけど、戻れるまで水は節約しないといけないんだよな」
「段取りが上手くいって、危なげなく倒せたところまでは良かったのですけれど。
……どうしましょう、これを全部持って帰るのは流石に無理ですよね」
「肝だけでなく背ビレも薬の材料に出来るし、肉だって何かに使えるかもしれないけれど。
今回は欲張らずに、確実な成果を持って帰ることだけを考えよう。
とりあえず、肝を取り出して……」
また血まみれになることにうんざりしながらも、覚悟を決めてナイフを取り出したリンクと私の耳に、砂漠の向こうから何かが近づいてくる音が聞こえてきた。
明らかに集団の、それでいて確かな意図を以って近づいてくる音に瞬時に警戒を高めたリンクが、解体用だったナイフを音の方角へと構え、私を庇いながら前へと出る。
しかし、そんな私達の懸念と警戒をよそに、砂煙の向こうからスナザラシを駆って現れたのは、会って怒られるのはもう少し先のことだとばかり思っていた人だった。
「「マスター(さん)!?」」
「馬鹿な、モルドラジークが倒されて……アンタ達、本当にやったのかい」
色々とお世話になってきた酒場のマスターと、彼女に率いられてきたらしいゲルド族の戦士達が、巨大な死骸を前に声も出せず目を剥いている。
自分達が来る前に他の誰かが……という考えは、強大な魔物とその身でもって戦ったことの何よりの証といってもいいような、返り血まみれとなっているリンクの様相が即座に却下させた。
「アンタ達の自信、お姫様の信頼は、確かな実力と実績に裏打ちされたものだったんだね。
見くびってしまって悪かった、ハイリアのヴァーイとヴォーイ……いや、ゼルダ姫とその信頼厚き騎士リンクよ。
ゲルド族とハイリア人のこれからの為に、我々からも伏して頼もう。
両民族の関係改善の為に、力を貸してはくれないかい」
「そ…それは構いませんし、むしろ力になれるのならば嬉しいですけど」
「良いのですか?
国の方針に逆らってしまっては、マスターさんの立場が悪くなるのでは……」
「前も言っただろう、利益の現物があれば反対意見なんてすぐに消えるさね。
アンタらはもう十分に頑張って努力と誠意を示してくれた、ここからはアタシらの番さ」
「……………あの、すみません。
マスターってもしかして、ゲルド族で相当な立場にいたりします?
本当だったら、酒場のマスターとかとてもやってられないような、交易場の責任者どころじゃないような……」
「流石だね騎士様、アタシはゲルド族の現族長の妹だよ。
姉よりアタシの方が…って推す声が煩くてねえ、無理を言ってあの立場をもらったんだ」
「ちなみに、姉妹仲は良好なのでご心配なく。
族長様はよくお店にいらっしゃって、ゲルド族の今後について二人で話し合われていますよ」
「族長様もハイリア人との関係を良くしたいと考えておられたお一人でしたから、此度のことをきっかけに、必ずや良い方向へと進むでしょう」
思いもよらない事実を知った私達は、しばし呆気に取られた後で顔を見合わせ。
込み上げる衝動のままに吹き出し、そのまま声を上げて笑い出してしまった。
その後、ゲルドの人達に手伝ってもらいながら解体し、出来る限り持って帰ったモルドラジーク……オアシスの交易場で久方ぶりに売り出されたハイリア人の品物は、全てに高値がついてあっという間に完売した。
モルドラジークの素材、特に肝は万病の特効薬となるので、求める者は多いのだという。
これからも是非出品してほしい、目当ての品を扱っているハイリア人の商人を紹介してほしいと声をかけてくるゲルドの人もたくさんいて。
多くの支持に推される形で、マスターは私達に、新たに結ばれた友好関係における交易場の参加許可証の、記念すべき一枚目を手渡してくれた。