夢のお告げ通りに、退魔の剣を携えた勇者と共に時の神殿へと赴いたゼルダ。
彼女に与えられた新たな神託は、此度は厄災ガノンを封じるのではなく完全に滅しなければならないという事実と、それを成し遂げるための具体的な方法だった。
遥か太古に七人の賢者が施した封印を、厄災を封じる他にこの地に固定させる楔としての役割をも果たしてしまっていたそれを解き、完全な自由を取り戻したガノンに勇者が今度こそ止めを刺す。
危険すぎると、万が一失敗すれば封印から解き放たれた厄災ガノンが何の妨げも無いまま世界を滅ぼしてしまうと。
何か他の手段は無いのかと尋ねるゼルダに、女神ハイリアは残酷な事実を告げた。
ハイリアの滅亡は、もはや逃れられない運命。
選ぶことが出来るのは、厄災ガノンの蹂躙によって恐怖と絶望の中で滅ぶか、かの者の脅威が取り除かれた世界にて緩やかな衰退を経て滅ぶかの二択のみだと。
すぐに滅ぶか、後に滅ぶか。
選び難い、それでも選ばなければならない答えは、ひとつしかなかった。
そうしてリンクとゼルダは、かつてお忍びの姫とその騎士として歩んだ世界へと、今度はその世界を救うという重責を負った勇者と巫女として再び旅立つこととなった。
厄災ガノンの存在と、それを討伐するという任を女神ハイリアから託された勇者と姫巫女が、今後各地へと赴くこと。
それらの事実を広く公開することにした王の決断は、人々を驚かせ、慄かせるのと同時に、安心もさせた。
世界の命運を託された二人が、未だ若い身で既に多くの功績が知られている姫と戦術顧問であるという事実もまた、同じく公開されたからだ。
城内で懸命に務めを果たす姿を日々見守っていた者達が、旅の空の下で出会った二人が大層な立場のある者だったことを後に知って驚いた者達が。
二人の活躍を実際に目の当たりにした、実際に助けられた多くの者達が、困難な務めをあの二人ならば必ず成し遂げられると心から信じて。
平和な日々が取り戻されるまでを何としても生き抜くという、自分達の戦いに向き合う覚悟を決めた。
不定期に夜空に昇るようになった赤い月の影響で、魔物の動きが活性化した世界での旅は、あの頃よりも遥かに危険で困難なものとなっていた。
それでも、退魔の聖剣を携えた上に、身体的に成長したことで更なる強さを身につけていたリンクと、大妖精が目覚めさせた魔法の素質をこの二年で磨き上げ、魔物との戦闘にも危なげなく参加することが出来るようになっていたゼルダにとって、その旅路は困難ではあっても無謀なものではなかった。
厄災ガノン討伐を達成するまでの行程、その第一段階はかつて七賢者が施した封印を解くこと。
もちろんただ解くだけではいけない、準備不足の段階でガノンが復活するような事態になってしまえばハイラルはその時点で崩壊する。
なので二人が、封印を解くための前準備として取り掛かったのは、当代の賢者探しだった。
正確には、賢者の務めを果たせられる程の強い心を持った者。
その条件を満たした上で協力の要請に頷いてくれた者に、ハイラルの地の何処かに存在するという封印の基点まで同行してもらい、大地に施されたそれをその身でもって代わりに担ってもらうのだ。
そうすれば、準備が万全に整った任意の段階で一斉に封印を解き、厄災討伐に臨むことが出来る。
賢者の一人はゼルダが担うことが既に決まっている、探すべきはあと六人。
かつての旅で築いていた縁が、ここで力となった。
子供達をきっかけに交流が再開されて以来、国の次代を担う者同士としてリンクとゼルダの良き友となっていたゾーラ族の王子が。
昔の確執など知らぬと一番最初に笑い飛ばし、ハイリア人にとっては過酷すぎる環境で頑張る二人を、常に気遣ってくれたゴロン族の次期族長が。
腹をくくった甲斐があって既にある程度成し遂げられた一族の意識改革を、ハイリア人の友のおかげと感謝し続けてくれていたリト族の戦士が。
あの頃よりは育ちながらも、それでもまだ十分若すぎると言っていい身で世界の命運を背負うことになってしまった少年と少女を、大人としての謝罪と申し訳なさを込めながら抱き締めてくれたゲルド族の女傑が。
それぞれ、『水』『炎』『光』『魂』の賢者の役を担ってくれることとなった。
更にインパが『闇』の賢者を快く引き受けてくれて、残る一人となった『森』の賢者は、何とハイラル王自らが名乗りを上げた。
若者達のみに世界の未来を負わせることを、王としてだけでなく父としても忌んだからこその申し出を、ゼルダもまた、姫として娘として受け入れた。