成り代わりリンクのGrandOrder 外伝   作:文月葉月

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伝説は繋がる

 

 強く、そして麗しい姫が、願いの全てを込めて綴ったであろう最後の一文を、万感の想いで指で辿る。

 

 

「ああ、届いた……太古の姫君よ、そなたの願いは確かに叶ったぞ」

 

 

 途中から拭うことすら面倒になり、今や溢れるままとなってしまった涙がボロボロと紙面に滴ってしまっているけれど、それで文字が滲んだり、紙が傷んだりすることは無い。

 守る者や直す者すらいなくなってしまってからの、幾万とも知れない長い年月を通して本を守り抜いた守護の魔法にしてみれば、その程度は羽で優しく撫でられたようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『それ』を最初に見つけたのは開拓作業に従事していた土工達だったけれど、彼らは最初、自分達が見つけたものが何だったのかを理解できなかった。

 文字を記し、文章を綴るとなれば粘土板が常識だったこの地、この時代において、『紙』やそれを用いた『本』などというものは、オーパーツ以外の何ものでも無かったのだ。

 認識と扱いに困った末に、自分達には手に負えないものを見定め、管理してもらいたいという考えで、当代の王へと献上した。

 全てを裁定し、かつ見通す博識と千里眼の持ち主であると名高い王は、当人も全力で自負している慧眼で以って、それが粘土板よりも遥かに多く複雑な文章と情報を収められる『本』であること、今の世では作り得ない高度な技術が生み出した代物であることを見抜いた。

 

 

 

 ゼルダの伝説・第一章『スカイウォードソード』

 

 ゼルダの伝説・第二章『ふしぎのぼうし』

 

 ゼルダの伝説・第三章『4つの剣』

 

 ゼルダの伝説・第四章『時のオカリナ』

 

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第一章『神々のトライフォース』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第二章『夢をみる島』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第三章『ふしぎの木の実』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第四章『神々のトライフォース2』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第五章『トライフォース三銃士』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第六章『ゼルダの伝説』

 

 ゼルダの伝説・魔王ガノン封印後の第七章『リンクの冒険』

 

 

 ゼルダの伝説・新たな風の勇者の第一章『風のタクト』

 

 ゼルダの伝説・新たな風の勇者の第二章『夢幻の砂時計』

 

 ゼルダの伝説・新たな風の勇者の第三章『大地の汽笛』

 

 

 ゼルダの伝説・時の勇者の末裔の第一章『ムジュラの仮面』

 

 ゼルダの伝説・時の勇者の末裔の第二章『トワイライトプリンセス』

 

 ゼルダの伝説・時の勇者の末裔の第三章『4つの剣+』

 

 

 ゼルダの伝説・全ての最後を飾る章『ブレス・オブ・ザ・ワイルド』

 

 

 ゼルダの伝説・最終章『閉幕のトライフォース』

 

 

 

 締めて十九巻。

 その全てが、金字で題名が綴られた上に、中身を象徴していると思われる色鮮やかな絵が描かれた、豪奢な表紙で閉じられている。

 薄い紙を束ねて、粘土板にも負けないような厚さで拵えたその中には、果たしてどんなことが書かれているのか。

 神々の神殿や祭具に施されているものよりも、遥かに強固なもののように思われるほどの加護で守られ。

 万が一にでも朽ちや綻びに襲われようものなら、それ自体の『時』を戻してまで修復するという冗談のような魔法がかけられ。

 綴られている文章を、読者が問題なく読むことが出来る文字に、自動的に翻訳するというとてつもない機能までもが備えられていた本の山。

 そこから、『何が何でもこの本を残し、人々に読んでもらわなければ』という、もはや執念とも言えてしまいそうなほどの一途な想いと願いを感じ取った王の、中身への興味は俄然と高まった。

 

 敬われ、尊ばれ、世界を作り上げた自分達は優れた存在であると心から驕っている神々が、自分達が今の世を興すよりも遥か以前に、今とは比べようもないほどに発達した文明が存在していたなどと知ったらどれだけ面食らい、揺るがぬはずの自尊心を傷つけられることであろうか。

 そんなことを考えて少しだけいい気分になりながら、就寝前の僅かな余暇の楽しみとしようと思って、本当に軽い気持ちで、あまり興味がなさそうな親友を強引に誘って第一章の1ページ目を開いたのが、一晩どころかその後数日に渡ることとなる引きこもり生活の始まりだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一章の、女神によって造られた無機質かつ無感動な神剣の精霊が、勇者を相棒として様々な冒険を乗り越え、心を、感情を、掛けがえのない人との思い出を育んでいく物語の時点から、王とその親友にとっては急所ど真ん中への会心の一撃だった。

 これらの本が時系列の物語になっているというのならば、勇者は、神剣は、その後どうなったのか。

 寝る間を惜しみ、仕事を優秀な部下達に丸投げし、食事を部屋まで運ばせながら、ひたすらに太古の伝説に没頭し続けた数日間の後に、ついにその時は訪れた。

 神から与えられた使命にではなく、大切な姫を守りたいという自身の気持ちに殉じた勇者の。

 一人残され、一時は打ちひしがれながらも気丈に立ち上がり、勇者が遺した物語と共にその後も強く歩み続けた姫の生き様に、王の慟哭は止まらない。

 暴君と名高い彼らしくない様子を、いつもなら揶揄ってきそうな親友がやけに大人しいと思えば、彼は既に寝台で干からびていた。

 あまりにも泣き過ぎたせいで、体を構成している泥が水分を失ってしまったらしい。

 

 

「…………エルキドゥよ、水はいるか?」

 

「ありがとう、でも今はいいや。

 ………多分まだ、どんなに補充しても、すぐに流しちゃうだろうから」

 

「ふっ……色々な意味で正しく人形じみていた貴様が、この数日で随分と情緒豊かになったものよ」

 

「ねえギル、君はこれからどうするつもりだい?」

 

「そんなもの、改めて考えるまでもないわ。

 勇者の存在を、この伝説を、人の世に余すことなく伝えゆく。

 ゼルダ姫の願いを叶えた我には、それを引き継ぐ権利がある筈なのだからな」

 

「『義務』ではなく『権利』って言う辺りが、いかにも君らしいね」

 

「当然であろう、我は他人からの強制では絶対に動かぬ。

 我は我がやりたいと思ったことのみをやる、叶えたいと思ったことのみを叶える。

 その我がやると決めたからには、それは既に決定事項だ。

 ……安心するがよい、ゼルダ姫。

 勇者の伝説は人理の端々にまで行き渡ることを、この我、ギルガメッシュが請け合ってやろう」

 

 

 そう断言した暴君の、遥か遠いところに思いを馳せるかのような眼差しは。

 彼をよく知る者こそが驚き、我が目を疑ってしまいそうなほどに、優しく穏やかなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はあ……」

 

「どうしたのですか、そんな大きな溜め息なんてついて」

 

「さっき食堂に顔を出したら、立香から出会い頭で泣かれたんだよ。

 ……あいつ、昨夜ようやく最終巻を読んだんだって。

 思わず『泣くほどか?』って聞いたら、立香どころか居合わせた全員から全力で断言されて……そのまま、『伝説語り』が始まりそうだったから逃げてきた」

 

「まあ素敵、ちょっと私も行ってきますね」

 

「頼むからやめて、どんな罰ゲーム!?」

 

「……あなたはもっと、自分に自信を持っていいと思います」

 

「別に卑屈になってる訳じゃないよ、ただ単に恥ずかしいんだってば。

 ……前から聞こうと思ってたんだけど、何であんなに美化した物語を書いたわけ?

 出会いの時点で耐えられなくなるって相当だよ、アレさえなければ現状はもっとマシだっただろうに」

 

「あれは私一人が勝手に書いたわけではなく、私達を知る大勢の人達に内容を確認してもらって、小まめに修正しながら作り上げたものです。

 あれは紛れもなく私達から見たあなたの真実、断じて美化なんかじゃありません。

 私を責めるより先に、是非ともその辺りを自覚してください」

 

「……俺の知らない間に、随分と強かになったなあ」

 

「当たり前です、私はあなたが封印された後もずっと生きたのですから」

 

「………………ごめん」

 

「謝らなくていいです、その代わり約束してください。

 ずっととか、永遠とかは言いません……出来る限り、許される限り、傍に居てください」

 

「ああ、約束する」

 

「あまり気負わなくても大丈夫。

 別れることは嫌だけど、でも怖くはないんですよ。

 また出会える時がきっと来るって、今の私は知っていますから」

 

「…………本当に。

 強くなったね、ゼルダ」

 

「あなたのおかげですよ、リンク」

 

 

 そう言って笑い合う、ハイラルの二人は気付かなかった。

 居た堪れなさのあまりに逃げ出してしまったリンクを追ってきて、二人のやり取りに居合わせてしまった食堂の一同が、物陰で静かに咽んでいたことに。

 カルデアは、今日も平和だった。

 




 大作ゲーム『ゼルダの伝説』、そのオリジナルの最終章でした。
 とりあえずは、エタらせずにきちんと終わらせられたことにホッとしております。
 まあ……この先に七つもの物語が存在し、もし行けるようならその先にもずっと続いている訳ですが。

 まだ第一特異点も始まったばかりだったというのに、敢えて始めてしまった外伝でしたが。
 作品全体の基礎となる大事な部分だったので、やはりきちんと書いてみて良かったです。
 最終章のストーリーや、ゼルダやガノンドロフについてなど、当初はフレーバーで終わらせてしまうつもりでしたから。
 土台の部分が安定するとやはり違いますね、これから続く本編の方も頑張ります。

 感想欄などで、ネタやら考察やらをいただけて面白かったです。
 実際私がこの作品を書き始めたのも、元ネタとなる設定を作られた方の『フリー配付ですので誰か書いて下さい!』に乗ったのがきっかけだったので。
 私も三次創作は好きだし、大歓迎です。
 私が考えた設定を元に、誰か他の人が広げた私では考えられなかった設定や展開を読むのは凄く面白いです。
 なので、浮かんだ、書いたという方がおられたら、是非とも拝見させて下さい。
 ちなみに言いますと、元ネタは『こんな経緯でリンクが封印され、ゼル伝が終わった未来の世界が〇〇だったら』で、別にFateに限定されてはいませんでした。

 終わりまで読んでいただきありがとうございました、本編の方もよろしくお願い致します。

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