デレステの新アイドル、黒埼ちとせちゃんが琴線に触れまくったので、短いお話を。
346プロダクション新人アイドル黒埼ちとせ。
恵まれた煌びやかで妖艶な容姿に美しい歌声。
吸血鬼の末裔だという噂があり、それが真実かであるかのように民衆を魅了している。
彼女の従者である白雪千夜とユニットデビューしてから更に有名になり、世に存在を知らしめていた。
ゆえに、彼女に不幸が訪れるのは必然だったのかもしれない。
「がっ!!」
「千夜ちゃん!?」
目の前で千夜が倒れ、ちとせは悲痛な叫びを上げる。
仕事帰りの夜道。ちとせと千夜は襲撃を受けた。
単なる不良やストーカー、強姦魔の類ならば複数いても家柄の良いちとせの守るため護衛術を磨いた千夜の問題にならない。
そんな彼女がいとも簡単に無力されたのだから、相手はそうとう危険な相手だ。
黒いコートに身を包み、サングラスをかけた男は倒れた千夜に一瞥する。
「止めて! 千夜ちゃんにこれ以上酷いことをしないで!」
「ふん。安心しろ。元々、俺の目的は貴様だ。人間に紛れた吸血鬼め」
それは単なる芝居でなく、素面の言葉だった。
黒埼ちとせの吸血鬼の末裔であるという噂は、単なる宣伝設定でなく、正真正銘の真実だったのだ。
男は黒埼家を疎むものが雇った裏事専門の傭兵である。
黒埼ちとせは無害であるかなど、彼には関係なかった。罵る言い方をしたが、吸血鬼なども関係ない。仕事で金を貰えば赤子すら殺す悪党なのだ。
「お嬢さま、逃げて……」
倒れたまま主に呼びかける千夜も生かすつもりはない。
彼の目的はちとせのみだが、目撃者は処分するつもりだ。彼女を生かすような言葉はちとせを動けなくさせる嘘言である。
実際、男の目論見通り、自分が目的ならばとちとせはその場を動かなかった。
できた主である。逃げても追いかけるだけだが、面倒なことが省けるのは楽でいい。
両足を震えながらも、何処か諦めるような眼差しを向けるちとせに男は拳銃を向ける。
吸血鬼というえば人間より超越した力を持つと言われるが、何ら抵抗しないことに男は少し落胆していた。
地面で這いつくばる千夜が絶望した顔で叫んだ。
「だ、だれか助けて!」
「誰も助けにこないさ」
無慈悲にそう言って、男は引き金を引いた。
「いるさ、ここにな!」
ズオオン!!
放たれた銃弾は横からきた光線によって消えた。
男は驚きながら振り向くと、そこに『奴』はいた。
「貴様はコブラ!」
「へ、悪党なんぞに名前を憶えられても嬉しくないね」
葉巻を銜えた口で不敵な笑み。左腕にサイコガンを仕込んだ一匹狼の宇宙海賊、コブラである。
「なぜ、貴様がここに!」
「レディのピンチにヒーローはいつでも駆け付けるもんだ」
「くっ!」
「失せな。一度だけ見逃してやる。できたら彼女たちの前で人殺しはしたくない」
「─────」
男は沈黙したままコブラに近づき、そのままその脇を通り過ぎて歩き去った。
そう思った瞬間、男は振り向きコブラに銃口を向ける。
だが、男が引き金を引くより、背中を向けたまま撃ったコブラのサイコガンが早く、傭兵は光線に消えた。
「一度って言っただろ?」
「あ、ありがとう」
倒れていた千夜を抱き起したちとせが礼を言うと、コブラは柔和な笑みを浮かべた。
「気にするな。それよりもお嬢ちゃん吸血鬼なんだろ?」
「わかるの?」
「わかるさ。吸血鬼ならあんな奴簡単に倒せるはずだが、具合が悪いのかい?」
「私、人から直接血を吸ってないから、そんな力はないの」
「おいおい。生き血を啜らなければ、吸血鬼は長く生きれないだろ」
「生きた人とから吸いたくないわ」
「まぁ、生き様はそれぞれだな。好きにしな。でも、頼んでなくてもそこにいるお友達は自分の血を吸ってほしいじゃないかね」
『…………』
「おっといけねぇ。野暮だったな。じゃあな、ちとせちゃんに千夜ちゃん」
「え、私たちの名前」
驚く二人にコブラはにっと笑う。
「ファンなんだ。今度のライブ楽しみにしているぜ」
ついでにpixivでもイラスト投稿したので良ければ是非。