魔法使いの嫁    作:木桜 春雨

1 / 4
結婚するはずだった彼女が、いきなりエリアスの元にやって来て。

pixivで書いていたものの続編の様な感じです。


新たなる出発

 時間はなんと残酷なのか容赦なく、全てのものを奪っていく。

「側にいてくれ、どこにもいかないでくれ」

 自分の言葉に少女は頷いた、その目は、表情は嘘をついていない、そのことに男は安心する。

 だが、いつまで一緒に居られるのか、自分の体、力は日々衰えて消えていく。

 医者ではむりだ、では魔法使いなら、何とかできるかもしれない。

 庄司世の言葉に男は首を振った、たとえ、どんな力のある人間、魔法使いでも無理だ、この命は元々、他人の者だから罰があたったのだ、何度も罪を犯したから。

 一緒に居たい為に自分は禁忌を犯した、人ではない、魔法使いではない。

 かってはスレイ・ベガと呼ばれていたが、その名前さえ捨ててしまった。

「元気になってね」

「勿論だ、君を一人になんてしない、ずっと一緒だ、魔法使いなら治せるかもしれない」

 自分の体を、具合が良くなるかもしれないと男は嘘をついた、彼女が魔法使いを連れてきたら、それを食べればいいのだ、今までしてきたように。

 魔法使いなら自分の体は。

 

 連れてきたのは魔法使い、茨の魔法使いだ。

 

 私のもの、誰にも渡さない。

 だが、それはもうずっと昔のこと。

 ずっと昔、もう見なくなった夢だ。

 

 、

 

 庭に出て、ただぼんやりと空を見上げていると声をかけられた、振り返ると赤い髪の少女が近づいてくる。

「おはよう、チセ」

 このとき、女は、何故、自分はここにいるんだろうと、回らない頭で考えた。

 起きてすぐに部屋から外に出て、ただ空を眺めていたのだ、ぼんやりと、何も考えずに。

 そして思い出した、自分は結婚して、イングランドを離れたのではなかったかと。

 なのに、どうしてここは。

「覚えてないんですか」

 何をと聞こうとして、はっとした、そうだ、喧嘩をしたのだ自分の夫となる相手とだ。

 そして、行く当てがないまま。

 

「エリアスは、いるの」

「買い物に行ってます」

 チセの言葉に女は驚いたが無理もない、人の多いところは苦手ではなかったか。

 一体何をしに出かけたのかと尋ねると、あなたのものを買いにと遠慮がちな答えが返ってきた。

「とても機嫌がいいんです、エリアス」

「そ、そう」

 言葉が続かなかった、機嫌がいいと言われても、そうなのと頷くしかできない。

 普通なら追い返しても不思議はないのにと思いながら、自分がやって来たときの記憶がない、思い出せない事に女は不可解な表情をした。

 すると。

「あの、お酒を飲んで酔っていたみたいで、だから覚えていないんだと思います」

 一体、どんな醜態をさらしたのか。

「朝食にしませんか」

 気まずい沈黙は長くは続かなかった。

 

 

 その頃、ロンドンの街では、ある男が女物の下着や服、食べ物、色々なものを買い込んでいた。

   

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。