メープルシロップをたっぷりとかけたパンケーキと紅茶、そして果物は色々名種類のベリー、甘いとはいえない、いや、とても酸っぱいが、この組み合わせが好きなのだ。 突然、押しかけたにもかかわらず、自分の為に用意してくれた朝食を頬張った後、まだ、眠り足りないと再び、ベッドに潜りこんだ。
「喧嘩をしたんだって」
笑いを拭くんだ声は、さもおかしそうだった。
いったい、どうしてと理由を聞かれない事にほっとしながら、女は相手の顔を見た。
「何がおかしいの、灰の目」
すると相手はクックと喉の奥で小さく笑った。
「さて、どうする」
目が覚めるとベッドのそばには意外な客人がいた、いつの間にと驚くのが普通だが、そこは彼だ、おはようと声をかけると、日はとっくに昇っているがねという返事に女は迎えに来てくれたのと言った後、黙りこんだ。
ブードの下から覗く目が、さもおかしそうに笑っている。
「呼んだのは、おまえさん、自身だろう」
「あたしが、呼んだの」
「自覚がないとは、大人の女というの時にて幼子より、面倒な事をする」
これは怒られているのか、それとも呆れられているのか、どちらかだろうと思いながら女は、ごめんなさいと言いかけて、その言葉を飲み込んだ。
フードが大きく広がり闇の中に吸い込まれる様な不思議な感覚に襲われた。
ところが、目を閉じて身を任せようとした瞬間、空気が揺らいだ。
「招待したつもりはないんだがね」
不機嫌な声に女が驚いて名前を呼ぶと、部屋の真ん中に、その姿、骨の頭の魔法使いが現れた。
だが、それとは反対に灰の目は、おやおやと呆れた様な声を漏らしただけだった。
「出直す事にしよう、あれの事は神事いしなくていい」
あれというのが何なのかわからず何と聞き返すと、カルタフィルスと灰の目は呟いた。
「喧嘩の原因は些細なものだ、理由にもならん、おまえの連れ合いは後悔しているだろうよ」
意味がわからない、いや、喧嘩という言葉に女は顔をしかめた。
「喧嘩って、そういう意味では」
「夫となった男が嫉妬するのは当然のことだ、たとえ相手が子供でも」
おかしそうに笑う灰の目の姿が霧の様に消えていく。
部屋の中が静かになると女は側に立っている男に声をかけた、お帰りなさいと。
不思議だと、男がぽつりと呟いた。
「さっきは怒りの感情で一杯だったのに、君がそう言うと、変な気分だ」
「そう言うって、お帰りなさいって、こと」
自分でもよくわかっていないみたいだと言葉を濁す様に、わずかに首を傾けたのは骨の頭の顔を見られたくなかったからだ、といっても、この頭から感情を読み通る事など簡単にはできない。
ただ、このときだけは魔法使いは見られたくないと思ったのだ、自分の顔を、彼女に。
「散歩しないか、天気もいい」
女はすぐには返事ができなかった、そんな事を言い出すとは思いもしなかったのだろう。
「それより、あたし」
続く言葉を察したように魔法使いは首を振った。
「突然の訪問を受け入れたんだ、それも真夜中という時間の、だったら僕の言うこともきいてくれないと」
そう言われると、差し出された手を拒む事もできない。
女、それも大人の君は非常識な訪問をしたのだからと言われると責められている様な気分になる。
さあ、行こうと腕を掴まれてしまうと、振り払う事もできなかった。