「はあっ」
チセは迷ったのも無理はない、いや、困ったというか、正直な気持ちだ。
話があるんだと言われてエリアスと外に出たのは彼女に聞かれたくないからだろう、正直、逃げ出したいと思った、多分、いい話ではないことは明らかだ。
庭を出て森に向かって歩きだす、その歩調がゆっくりとなっていく、チセと名前を呼ばれる度にドキリとして正直、心臓に悪い、正直、怖いと思ってしまった。
早く話をして欲しいと思うが、エリアスはなかなか、話し出す気配がない。
「僕は彼女に言ったんだよ、チセ」
「何をです」
ほんの少し前を歩いていた彼が立ち止まり、振り返った。
「僕の妻になってくれってね」
その言葉にチセは脱力した、あまりにもストレート過ぎる告白だと思ったのだ。
「エリアス、彼女は結婚しています、人妻なんです、だから」
「でも彼女は僕を愛している」
はっきりと口にする、その言葉と自信は一体どこからくるのだろう、不思議でならない。
「でなければ、僕のところにこないだろう」
それは、そうですがとチセは口ごもった、彼女にしてみれば、行く当てがなくて仕方なく来たのではないか、決してエリアスを愛しているからという理由ではないと思うのだ。
それにむ昨日のことだ、エリアスはロンドンに行ってきた、また、何のようでと思ったら指輪を買ってきた。
結婚するからには必要なものだろうと言った彼は、その指輪を強引に、いや、まるで手品でも披露するかの用に、彼女の指にはめたのだ、驚いた彼女は、はずそうとしたが、駄目だった。
満足そうな、いや、嬉しそうなエリアスとは反対に彼女は溜息をついた。
食い込んでいる訳ではないのだが、必死にはずそうとしても無理なので最後には彼女は諦めた。
複雑だなあ、そう言ったのはアリスだ。
周りが何か言ったとしても、骨頭は自分のしたいようにする、脳みその代わりに花が咲いているんじゃないか
といわれてチセは、そうかもしれないと思った。
今朝になって尋ねて来たアリスは連フレッドから手紙を預かって来たので返事を持って帰るといて売り明日の帰りを待っているのだ。
久しぶりに尋ねて来た彼女の姿を見て、チセは、ここ数日の出来事を彼女に話していた。
「おい、見ろよ」
アリスは窓の外を見た、二人の姿が見えたのだが、何故かエリアスは彼女を抱いている。
「嫌いな奴に、あんな風に抱えられてじっとしているわけねえだろ」
確かに、アリスの言うことも一理ある。
「嬉しそうだな」
エリアスがと尋ねた瞬間、二人ともだよとアリスはぶっきらぼうに言った。
「大人は色々と難しいって師匠がな、言ってたんだよ」
その言葉にチセは小さな溜息を漏らした。
「下ろして、エリアス」
これで何度目だろう、森の中で転んだ、ただ、それだけなのに、抱き上げられてしまった。
自分で歩けるからと言っても、魔法使いは聞く耳持たずだ、もう、何を言っても駄目だ、女は黙りこんだ。
家に着くまでの辛抱だと思ったが、突然、歩みが止まった。
「不思議だな」
独り言の様な呟きだ。
「チセを抱いて歩いたことがある、こうやって何度も」
骨頭が空を見上げた、あのときとは彼女のことを、それこそ、壊れ物を扱う様に気をつけて抱いていた。
「この気持ちはなんだろう、わかるかい」
わかるわけないでしょうと言いかけたとき、魔法と買いは突然、走り出した、それこそ疾風、風邪の様に早くだ、声を上げることできない。
突然、柔らかい何かの上に体か放り出された、不思議な気分だった。
よく見ると柔らかい草の上だ、そして魔法使いも両手、足を広げて草の上に伏す様に倒れている、何が起こったのかわからない。
「大丈夫、エリアス」
不安になって声をかける、何がどうなったのか、走り出した時、目を閉じていたのでわからなかったのだ。
ハハハハ、突然、笑い出した相手に女は驚いた。
それは、おかしい、楽しいと聞いている自分も驚くほどの笑い声だ。
心配したのに、だが、その言葉を最後まで口にすることはできなかった。
いつの間にか、顔が骨の頭が自分の目の前にあったからだ。