のどか様は告らせたい   作:ファンの人

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14 のどか様は知りたい

「これは何でしょうか?」

 

放課後、退屈な授業も終わり部活が始まる時間である。

この少女、原村和も部活に勤しむために部室のドアを開けたものの

机の上に見慣れないモノ、どうやら雑誌のようである。

 

「ああ、久が預かったものらしくてのぅ」

「持っているわけにもいかんしここに置かせてほしいとのことじゃ」

 

「そうですか…」

 

その表紙を見ると、どうやら麻雀雑誌ではなく女性向けの雑誌の様子。

 

(一体、何が書いてあるのでしょうか…?)

 

彼女――原村和の家は厳しい。

厳格な父を持ち、ゆえに色々と制限をかけられている。

学生は勉学に励むべきと考え、それを妨げる余計なモノは父のフィルターによって排除されていく。

そしてこの雑誌もそのうちの一つである!

彼女の父は何を経験したのかは知らないが、学生が色恋沙汰など以ての外!という厳しい意見により、そういうものは排除されてきた。

その抑圧された反動であろうか、少女はそんな雑誌に興味津々!

雑誌と対峙したまま睨み合う、心の中では読みたいという好奇心と長年躾けられた理性がせめぎ合う。

そうこうしていると

 

「こんにちはー…和ちゃん何してるの?」

 

現れたのは魔王、もとい、宮永咲である。

 

「いえ、なんでもありません」

 

「ふーん?…ん、なにこれ?」

 

天才美少女と睨み合っていたその雑誌をひょいと持ち上げては、パラパラとめくり始める

流石の文学少女,本があったら読まずに居られないタチなのであろう。

 

 

「う、うぇえ!!?」

 

そんな可愛らしい悲鳴をあげる魔王!

 

「どうしましたか?」

「こ、これ」

 

そして指差すその内容は…

 

『初体験はいつだったかアンケート:高校生が34%』

 

初体験!

初体験とはいわゆる初めての性行為を指す言葉である。

未成年同士の性的干渉はイケないことであるが、性欲旺盛な彼らからすると知ったこっちゃねぇ!

さらに高校生というのは、バイトも出来るようになり、金銭的な縛りから解放され、親の監視下から外れ始める時期。

男女ともに成長真っ盛りであるため、そういうことに興味を持つのはある意味健全である。

 

しかし、34%という数字は重い!

 

つまり1/3が初体験を済ませているわけであり、確率的に考えれば、この部活の六人のうち二人は済ませていてもおかしくないのである!

この文学少女は当然のことながらそういうこととは縁遠い人間であり、まさかそんなに済ませているとはゆめゆめ思ってもいなかったのである!

つまりクラスメイトのあの子ももしかしたら……なんて考え混乱している!

 

「の、和ちゃん、これって流石に言いすぎだよね…?」

 

「ええ、これはいわゆるサンプルセレクションバイアスというやつですね」

「アンケート対象はこういう雑誌を読む女性ですので、必然的に高くなっているだけです」

 

それに対してデジタル少女、論理的に思考し、この数値は信用ならないと冷静に判断する。

そんな彼女の返答に安心し、そうだよねーっとほっと一息つく宮永咲。

 

だが、原村和は

 

(つ、つまり須賀君もその可能性が……)

 

全くもって冷静ではない!!

34%という数字にビビりにビビり、愛しの彼ももう既にどこぞの誰かとヤっているのではないかと考え始める!

先ほどの冷静な対応も、ただ単に自分を安心させるためだけの言い訳であり、咄嗟に考えた出まかせである。

そして,彼が初体験を済ませていると仮定して,まず最初に警戒したのは隣にいるこの幼なじみであるが

 

(ま、さっきの反応を見るに、咲さんはシロですね)

 

(見るからに処女って感じですし)

 

鼻で笑って一蹴。そして心で毒づく!

確かにあんな反応をしたのだから、そういうことはしたことないのであろう。

だからといって自分のことを棚に上げて、お可愛いことと嘲笑するのは如何なものかと…

 

「こんにちはー」

 

と、そこで現れるは京太郎!

ハッとして振り向く原村和!

雑誌を何度も読み返す宮永咲!

 

「ん、なんだそれ?」

 

「あっ、京ちゃん、そのね――」

 

そして彼に話題が伝えられる。

その内容は初体験という非常にデリケートな内容であるが、この部活ではそういう経験豊富な人間はいない。

ゆえに、高すぎるよねあははー、で済ませようとしているため、惨事にはなら

 

「あー、初体験が34%?」

 

「この雑誌にはそう書いてあるけど――」

 

「ま、妥当じゃないか?」

 

この男、爆弾を投下する!

少女二人の出した結論を真っ向否定!

驚愕、まさに驚愕、部室の時間が一瞬止まる。

 

「えぇえ!?そ、そんなにしてると思うの!?」

 

「いやだって、カップルはうちの学校にも沢山いるし」

「まあ、そういう話は聞かなくもないというか」

 

証言を述べ始める彼、やりましたという報告は幾度となく聞いたことがあるという。

これには固まるしかない文学少女……本の中だけのお話が現実に引っ張り出されフリーズしてしまう。

 

――そう、先ほどの結論を出した二人の少女、彼女らはそういう友達が少ないため、そういうシモい話をする相手がいない。

文学少女は一人静かに本を読んでいるうえに麻雀において鬼神の如き働きをしたため、畏れ多くて話しかけられるわけがない。

デジタル少女は、まるで絵本から出てきたお姫様のような風貌で、穢れを知らぬ少女(他人談)であるため、そんな会話に巻き込めないと保護されている。

ゆえに彼女らは、世間一般の性事情からは離れて生きてしまっており、そういう行為に対して現実味を持っていないのである!

 

そして、この少女は

 

(!?、す、須賀君はもしかして…ヤったことが……!!?)

 

早とちり!

一言もそんなこと言っていないが、彼が経験済みかそうじゃないのかで頭が一杯になっている時にあの発言が飛んできたため

須賀君自身が経験済みだからそういう発言をした、という考えに至ってしまう!

だがしかし、ここは天才美少女原村和

 

(お、落ち着きましょう、事実の確認は大切です)

 

自分を宥め、どうにかして落ち着き、そして自分の今すべきことを考え

そして至った結論が

 

「須賀君は経験済みなのですか?」

 

ド直球!

オブラートに全く包まずド直球の火の玉ストレートを放り投げる!

もはやビーンボールといっても良い代物、下手すれば一発退場でもおかしくない!

これには流石の彼も

 

「へ?」

 

硬直。

突然投げられた危険球に目を白黒させ、どうしたらいいのか困っている。

ただ単に、あの原村和がそんなことを聞いてきたから硬直しているわけではない。

 

(ど、どうする俺!!)

 

この話題、男性にとっては死活問題である!

 

童貞!

まだ未経験の男子を指す言葉であり、思春期の男子高校生のみならず、全人類にとって、これを脱しているか否かはとても重要なパラメーターである!

そして男子高校生が仲間うちで童貞かどうかを話すのと、異性に対して経験済み云々について話すのとは、重要さが違う!

この質問の内容、もし正直に答えた場合『うそー!?童貞ー!?』『童貞が許されるのは小〇生までだよね!』と嘲笑されるかもしれないし

だからといって見栄を張っても、傍の幼なじみが『えぇっ!?きょ、京ちゃん、誰と!?』と言って詰め寄ったり、目の前の少女から『そんな…未成年なのに、フケツです』と軽蔑されるかもしれない!

どちらが正解か分からない!どうしようかと詰まっていると

 

「遅れてごめんなさーい」

 

そこに現れる救世主!

お馴染み竹井久である、須賀京太郎はすぐさま矛先を変えようと

 

「ぶ、部長は経験ありますか!?」

 

「へ?」

 

キラーパス!

殺人的な剛速球を顔面に目掛けてぶん投げる。

 

「なんの話?」

 

「せ、世間一般でいう初体験のことです」

 

矛先を変えるためならなんだってする!

もはやヤケクソ気味に爆弾を押しつけようとする須賀京太郎!

 

「私は須賀君の初体験が――」

 

そうはさせないと干渉する原村和!

彼が既にヤっているのかいないのか――それを知ってどうするのかはさておき――それが最重要事項である!

竹井の色恋沙汰など知ったこっちゃない!どうでもいいのである!

 

 

「わ、私はまだよ、第一そんな相手も――」

 

「なんじゃ、てっきりあの副会長ともうシたのかと」

 

「ちょ、ちょっとまこ!その話は」

 

「え?もしかして、ぶちょ…竹井先輩って……」

 

予想外のところで炸裂する爆弾!

意外や意外、現部長の染谷まこがサラッと着火!そして燃え移る火の手!

 

「えっ、あのメガネの人と付き合ってるんですか!?」

 

「ほ、ほらぁ!こうやって大事になるし…」

 

「今更隠すこともないじゃろ、惚気聞かされるわしの身にもなれ」

 

そして話題が流れてしまう!

もはや今のトレンドは竹井久、現部長の思いも寄らぬ密告により彼女の尋問会が始まろうとしている。

そんな流れを快く思わない少女がここに一人

 

(また邪魔を……!)

 

(そのヘンテコおさげを引きちぎってあげましょうか?)

 

何としてでも彼の極秘情報を知りたい少女、原村和

ここ最近、いいところで邪魔しにくる彼女に対してもヘイトが溜まっているようである。

 

一方

 

(よし!話が逸れた!)

(部長……あなたの犠牲は忘れません…!)

 

どうあがいても詰みだった状況から一変、尊い犠牲によって危機を免れる!

これには心からお祈りし、そのメシアに今度から優しくしようと決心する。

 

(くっ、でもここで更に追及すると私が須賀君のことを気になっているように……)

(あとは部長の話に便乗すれば……)

 

思わぬインターセプトによってひっくり返る盤面!交錯する思惑!

これぞ恋愛頭脳戦――などではなく、煩悩頭脳戦!

彼の性的事情を知り、フリーである決定的な証拠を得たい天才美少女!

個人情報を守り抜き、軽蔑される事態をなんとでもして避けたいただの少年!

現在は少年が優勢!というか安全!

 

「で、どこまでいったんですか?」

 

だがそんな油断が仇となったか

 

「こいつ、見かけに寄らず奥手でのぅ、まだまだ道のりは長そうじゃ」

 

「そ、そんなこと言ったって、皆も未経験でしょ!?ね、ねぇ須賀君?」

 

「ええそうですね、俺もまだですし」

 

「京ちゃん、彼女出来たことないもんね」

 

(……!?)

 

ここで竹井久からのキラーパス!

その自慢の反射神経によって思わず返してしまう須賀京太郎!

そんなカミングアウトにいち早く気が付き混乱する原村和!

 

「お、意外じゃな、てっきりモテそうかと」

 

「え、あ、あははは」

 

「須賀君は誰にでも優しくするから、敬遠されちゃうんでしょ?」

 

「京ちゃんは人気あったはずだけど、なぜか誰もアタックしなかったなぁ……なんでだろ?」

 

(す、須賀君はまだ性行為には至ったことが無い……)

 

(あああああ!!やっちまったぁああああ!!何言ってんだ俺ぇぇぇ!!)

 

彼に彼女が出来なかった理由は前言った通り、そこの魔王が一端を担っているのだが、本人は知る由もなし。

顔を赤らめのどっちモードと化すピンク少女、失言を悔いて穴に埋まりたくなる金髪少年。

 

「ほ、ほら、早く始めましょ?なあ和?」

 

「えっ、私はいつでも大丈夫ですが…どこでしましょうか?」

 

「え?いや、普通に卓だけど……」

 

「……な、なんでもありません!!」

 

 

……何を考えてたお前。

 

 

【本日の勝敗】

須賀京太郎の負け

理由:自爆




いつも感想や評価等ありがとうございます!
筆者自身のモチベーションになってますし,のどか様も激励の言葉を頂いてとても喜んでいます!
これからもよろしくお願いします!

ところで,竹井久さんと伊井野ミコちゃんって似てるよね
髪型といい,役職といい…性格は全然違うけど
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