のどか様は告らせたい   作:ファンの人

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3 のどか様は命令したい

この少女の名前はご存知の通り、原村和。

そんな彼女が恋す…気になっている男性が須賀京太郎。

今日も今日とてこの二人による頭脳戦が展開されているのである!!

 

…実際は原村和の一人相撲であるが。

 

「ババ抜き?」

 

「ええ、二人だけですし、各々自主練して解散っていうのもつまらないので」

 

ここは麻雀部、現在二人きり、邪魔するものは誰もいない。

そんな場面でババ抜きを提案するのは、意外なことに原村和の方である。

彼女といえばクソ真面目で麻雀に真摯でメリハリをつけるとこはつけるような人間である。

そんな彼女が二人だけとはいえ部活中に『お遊び』に誘うだなんて、少し前までは考えられなかったものである。

 

「いいぜ!…にしても、和も丸くなったなぁ」

 

「むっ、それは体型的な意味でですか?」

 

「ちげぇよ!性格的に丸くなったっていうことだよ」

 

体型的にも一部分がさらに丸くなったのも事実ではあるが、それはさておき。

須賀京太郎の言うように、彼女は夏前の頃と今を比べると遥かに大人びたというべきか、落ち着きが出てきた。

夏前の彼女といったら、頑固者で真面目で気難しくて他人と衝突することも多々あった。

それも仕方ない、夏前の頃は新しくなった環境、引越しの件、インターハイなどなど、懸念すべき事柄が多かったのである。

そんなしがらみからも解放され、友達もでき、新たな環境にも慣れ、そうして彼女は大人への階段を一つ、また一つと上がっていった。

そんな余裕からか、今ではこんな風にして部内の友達と楽しく遊ぶように…

 

(よし!上手くいきました!)

 

否。

これはただの遊戯ではない、原村和の罠である。

 

(いい話題がなければ遊びに誘えばいい、我ながら良いアイデアです)

 

読者の皆さまもおかしいと思ったのではないだろうか?

あの原村和が、麻雀ではなく、わざわざ『ババ抜き』だなんて遊びになんの思惑もなく誘おうだなんてあり得るだろうか。いや、あり得ない。

この女、また何か企んでいるのであろう。口元の笑みを隠しきれていない。

それに、本来ババ抜きとは三人以上を想定したルールであって、二人きりだと相手にジョーカーがあることが分かってしまうのである。二人でやるには少々つまらないかもしれない。

では、なぜババ抜きを選択したのか…?

 

(ちょっとした遊びと言ったらトランプ、つまりババ抜きか大富豪です)

 

無知。

 

この女、あろうことかトランプ遊びで知っているものがババ抜きと大富豪とソリティアしかない。

流石に二人大富豪は相手の手がモロバレなのでマズイと思い避けたのだろうが、一人遊びのソリティアも論外であるので消去法で考えるとババ抜きしかないのである。

前回、話題が無くてまごついた反省を活かして遊びに誘ったのは中々いい策ではあったが、肝心の『遊び』の種類がとても少ない!

彼女がする遊びといえば大抵は麻雀だったという環境を鑑みると仕方ないとはいえ、これではあまりに攻め手に欠ける。

そしてその攻め手の少なさが仇となったか、この選択は非常にマズイ、二人きりで『ババ抜き』だなんて苦し紛れのようにしか思えない。

 

「いやー、ババ抜きだなんていつ以来かなァ」

 

しかし、二人きりで『ババ抜き』だなんて提案をしてきた原村和に対して、あたかも愛娘の遊戯に付き合う父親の如き態度で接しているではないか。

普通であれば

 

『二人でババ抜き?他になんかあるだろ?』

 

『…えっ、ババ抜きと大富豪しか知らない?なんというか、その、お可愛い奴め』

 

となってもおかしくないのである。

しかし須賀京太郎はそうはならない。それは何故か?

 

慣れである。

 

彼はこの八か月の体験により、彼女が少しばかり変であることは認識済みである。

彼女がファミレスでジュース混ぜ混ぜにドハマりして一人ファミレスでそれをやったり、スイーツ食べ放題でドヤ顔でカレーを持ってきたりと中々におかしな行動を見てきたのである。

そして、それが何らおかしいとは思わず行ってきたことも知っている。つまりどういうことか

 

そっとされているのである。

 

彼女の繊細な心を傷つけないよう、細かいことは気にせず彼女の遊戯に付き合っている。

ババ抜きがしたいような出来事でもあったのかな、とか思いつつ彼女の突拍子もない行動に付き合っているのだ。

須賀京太郎、15歳、その半分は優しさで出来ているバファリンのような男である。

 

そんなことはさておき、原村和も流石にババ抜きをやって、楽しんで、おしまい。というのを望んでいるわけではない。

 

「ですが、ただ単にババ抜きするだけでは面白くありません」

 

「ああ、そうだな」

 

「ですので…負けた方が勝った方の言うことを一つだけなんでも聞くというのはどうでしょうか?」

 

これが狙いだ。

罰ゲーム…トランプなどのアナログゲームにおいて定番の付き物である。

焼きそばには紅しょうがが、カレーには福神漬けが付いてくるように、罰ゲームというのはこういう遊戯をピリリと締めるためにも必要不可欠なものである。

そして、これが麻雀ではなくトランプ遊びに彼を誘った最大の理由である!

実力差がありすぎる遊戯において罰ゲームなどつけられる訳もない。それゆえ彼女は『ババ抜き』というあたかも平等なゲームを持ち込んだのだ。

そして罰ゲームを『負けた方が勝った方の言うことを一つだけ聞く』というものに設定した!

 

「なんでも…!?」

 

「あくまで常識の範囲内でですが」

 

「ちえっ」

 

『常識の範囲内』、なんともあやふやな言葉であろうか。

常識とは人によって違いが発生するものである。それもそのはず、これは常識、あれは非常識だなんて、誰も定めていないのだから。

人は皆、周りがそうしているのを何となく『常識』という枠組みに入れているだけであり、はっきりとした定義など誰も知っていない。

つまりどういうことか、この場合であれば

 

(ふふふ…私が勝ったら須賀君にあんなことやこーんなことを…)

 

多少の無茶は効くのである!

しかも二人きりという環境だ!これは非常に好都合。

たとえば、彼女が彼に無茶な要求をしたとしよう。

彼は自分の他に『常識の範囲内』であるか否かを判断してくれる人間がいないのである。

つまり、その要求を拒否しようにも、その根拠となるものが見当たらないのだ!

彼は知らない、肉食獣なのは目の前に居る彼女であり、自分は食われる側なのだということを。

だがしかし、これだけでは終わらない。

 

「では、このトランプを使いましょう、シャッフルしますね」

 

「お、言い出しただけあって、ちゃんと持ってるんだな」

 

「ええ、この前ゆーきと遊びましてね」

 

自分のカバンからトランプを取り出し、シャッフルし始める原村和。

このトランプ、ただのトランプではない。

 

(これでチェックメイトです、私の勝利は確実なものになりました!)

 

手品用である。

 

元ネタ本編でも使われていたが、このトランプは裏の絵柄が微妙に違い、その差異によってトランプの中身が分かるという代物である。

しっかりと訓練すれば、一瞬でどのカードが何かを把握することができ、大体のトランプゲームでは勝てるのである。

要するにイカサマである。まさに卑怯、卑劣、目標達成には手段を選ばない女、昔のような誠実で真っ直ぐな彼女はどこにいったのやら。

 

さて、自分で配っているだけあって、自分の手札にジョーカーが来ないように配置して、ゲームを開始する。

しかし、ここで予想外の出来事が発生する!

 

「…」

 

「…これにしましょうか」

 

「…!」

 

「やっぱこれにしますね」

 

「あっ…」

 

須賀京太郎、異常なほど弱い。

ジョーカーの方に手が伸ばされた瞬間、口元がニヤケ、ニマニマとだらしない顔になってしまっている。

もはやイカサマトランプを活用せずしても完封できてしまう始末。あの特訓に費やした時間はなんだったのだろうか。

 

(ま、まあ、予定に狂いはないので大丈夫です)

 

そうして残る枚数は一枚となった!須賀京太郎の枚数は残り二枚である。

ここで、ジョーカーではないハートのエースを引いたらゲームセット!これで晴れて勝利!

…となるはずだった。

 

「ぐぬぬ…よし!」

 

(ふふっ、いくら意気込んでも結果は変わりませんよ)

 

ここで須賀京太郎。

 

「上と下、どっちだ!?」

 

「!?」

 

秘策にでる!

トランプを二枚重ねて手のひらで挟み込んでいるではないか!

これでは裏の模様を見ることもできない!しかも彼もどっちがどっちだか分からないみたいである!

完全なる運否天賦、肚をくくるしかない原村和。

 

「う、上でお願いします」

 

彼女は上を選択。

スッと差し出されるトランプ、その中身は…

 

「くっ…!」

 

「よし!首の皮一枚繋がった!!」

 

ジョーカー!死神である!

これまで様々な策略や罠を張り巡らし、彼を陥れようとした彼女に天罰が下ったのかどうかは分からないが、この時点で原村和の敗北の可能性が50%へと急上昇した!

これには原村和も動揺する。さっきまで核シェルター内に居た人が急に爆撃地にテレポートさせられたようなものである。

そして、その動揺が仇となった!

 

(ど、どうしましょう)

 

あろうことか、彼の目の前でトランプをシャッフルし始めたではないか!

冷静な彼女であったら、こんなミスはしなかったはずである。

また、こんなミスをした理由はもう一つある。

 

経験値である。

 

彼女はババ抜きなどの遊戯をしたことが少ないのである、ゆえにここはこう、といったようなセオリーが染み付いていないのだ。

それに対して須賀京太郎、彼は圧倒的弱さにより最後まで残ることが多かったので、さっきのような表情が関係しない『技』を編み出したのである。

最終的には、この経験値の差が雌雄を決した。

 

「こっちだ!」

 

「あっ!?」

 

須賀京太郎、圧倒的不利な状況からの完全勝利である。

それに対して原村和、イカサマトランプをも駆使したのにこの結末である。

文句なしの敗北者、言い訳のしようがない敗北である。

彼女の脳内で繰り広げられていたあんな妄想やこんな妄想はお預けになったどころか

 

「うーん、何にしよっかな」

 

自分が征服し、服従させるべき相手に命令される始末。

 

(ま、まさか、服を脱がしてきたり、胸を揉んできたり…!!)

 

原村和、妄想力豊かな思春期女子高生である。

ご自慢の頭脳でそんな展開やあんな展開をきた…危惧している。

 

しかし!

 

「じゃ、命令だ」

 

「…はい」

 

「これ」

 

スッと手渡しされる一枚のチケット。

 

「へ?」

 

「いや、ほらさ、この前一緒に見よって誘ったけど、内容がアレで一緒に見に行けなかったじゃん」

 

彼女の脳内で浮かび上がる苦い思い出。

頑張ってデート一歩手前まで行ったのにも関わらず、把握ミスと予想外の裏切りによって泡沫と化した過去。

 

「だからさ、一緒に行かない?」

 

「え、ええ!命令ですから、仕方ありませんね!」

 

原村和、一足早く春の訪れを感じる。

勝負には負けたが、目標はこれ以上になく達成できたようである。

 

【本日の勝敗】須賀京太郎の勝ち

 理由:言うまでもない

 

 

 




お気に入り登録等ありがとうございます!!
感想も書いてくださりありがとうございます!

元ネタはアニメで知ったのですが、先日我慢できなくなって原作も揃え始めました!
そのせいか、そんなつもりはなかったのに気がついたら原作みたいな流れに…しゃーなし

あと、感想の方にも書きましたが誰が誰ポジだとははっきりと決めてません。
もしかしたら、のどか様が某書記のように…ないな、今のなし
もしかしたら、咲さんが某会計のように震えつつ、某書記のようにかき乱してくるかも…
まだ書いてないのでなんとも言えませんが、そんな感じになりそうなのでよろしくお願いします!
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