どうやったらあそこからハッピーエンドになるんでしょう?
今回短いです。
引き金を引けば、私の分身とも言える存在は震え、目の前にある標的へ向けて殺意の篭もった鉄を打ち出してくれる。
ーーーダダダッ!
それは私の前に位置している人を模したパネルを掠れ、後ろの壁の汚れになった。
当たらない。狂いがある。
イラつきからパネルに付けておいたクソ女の予備の猫耳の飾りは、衝撃で落ちて砕けてしまったようだ。ざまーみろ。
ふぅ…と息を吐き、右手を下ろす。ずっしりとした重みからは達成感なんて味わえず、あるのは心の奥で渦巻く動揺。
命中率は40%。動かない的でこれなのだから、カプセルに入っての実戦訓練などすれば散々な結果しか残らないだろう。
目を覚まし、初めてクソ女と目を合わせてから5ヶ月。AR小隊と初めて顔を合わせたのが2週間前。
AR小隊との関係は良好。SOPとは時折お互いの部屋に出入りし、M16とはグラスを打ち付け合い、AR-15とは意見を出し合う。そんな日々を繰り返し、不意に訪れたこの日。
M4A1の目覚め。それは、数時間後にまで迫っていた。
「1番最初にM4に会うの、お姉ちゃんじゃなくて良かったの?」
白い壁に見飽きた家具。違うのは、私の横の部屋という事だけ。
M4が使う事になる部屋の掃除をしていると、付いて来たSOPのその一言に手が止まった。
M4の目覚め。SOPとは根本的から変わる、私の妹の目覚め。
それに立ち会うのは、AR-15に任せていた。
「確かに立ち会いたい気持ちはあるわ。……でも」
でも。そこから先を言おうとし、私は口を閉じた。
再び部屋の掃除を再開する。
「でも……何? お姉ちゃん」
私の感じた事が正しいことかなんて分からない。ただの私の思い込み。そう言われてしまえばきっと、私はそれを否定出来ない。
でも、それでも、私は私の感じた事を真実と思い込んだ。
「ねぇSOP。M4の目覚めを1番求めているのは誰だと思う?」
「1番? ペルシカか、お姉ちゃんじゃないの?」
「確かに私達はM4の目覚めを心待ちにしてるわ。私は姉として。……ペルシカは親として。でもね、きっと1番じゃない」
きっと私の感じたことは、余計なお世話なのだろう。
きっと私の思い込んだことは、思い上がり甚だしいのだろう。
でも。それでも私は、それが正解だと思ったから。
「きっと誰よりも。誰よりもM4を求めているのは、AR-15だと思うの。親でもない、姉でもない。対等に語り合える、競いあえる友達を求めているのは、AR-15だと、私は感じたのよ」
白い壁に見飽きた家具。部屋に3人がいてもまだまだ余裕のあるスペースの、16LAB地下機密室。
SOPは落ち着かないのか行ったり来たり。
M16は待ちきれないのかソワソワと。
私は立って待っていた。
ドアが開くのを。
やがて、足音が聞こえてくる。1人でなく2人分の。
ドアが開いた。見覚えのあるピンク髪の後ろ。
見覚えの無い、しかし馴染みのある黒髪が見える。
私と同じ服。同じ顔。違うのは表情だけ。
どこか不安そうだけれど、それでもきっと、前を向いて歩いてゆけると確信できる。そんな表情。
「初めましてだな。M16A1だ。歓迎するぞ、M4」
「M4 SOPMOD IIだよ。よろしくねーお姉ちゃん!」
「さっきも言ったけど、ST AR-15。あんたの友達よ」
「えっと……M4A1です。よろしく……お願いします」
8つの目が私に向けられた。新しく増えた2つに目線を合わせる。
気弱そうな目。でも、それでいい。他の6つの目と違う、唯一の物。
「プロトM4A1。あんたの試作型よ。姉みたいなものと思えばいいわ。よろしく、M4」
『さぁM4が目覚めた事を祝って飲お姉ちゃんに突げさせないわプロト姉さん……でしょうかおいM4私の事も姉さんとうるさい酒飲んでろなんだとAR-15やっぱり抱っこM16姉さん?素晴らしい私も姉さんとお前さっき友達言ってただろ一緒に16LABを見て回りましょうはいプロト姉さん私も行く!おい待て私を忘れるな1人で酒飲んでろお前さっきから酷いな!?まずは食堂行こ!そうねはいおい待てM4! プロト! 私を置いてくな!後せっかくだしプロトも姉さんと! ここは私に任せて先に行きなさい大丈夫後でちゃんと追いつくわAR-15ぉぉぉぉぉぉ!!』
「楽しそうでなによりね」
「あなたたちが人形であり続けることを願うわ。私のかわいい娘達」
令和。
素晴らしいと思いますよ。