プロトM4A1   作:鋭利な刃

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最近の寒暖差により寝込んでました。申し訳ないです。

最近の建造運なかなかついてますね。
AA-12は3連目。Zasも100連以内に出ました。



夢とクズ人間

私は人形の身にも関わらず、夢を見る。

それは奇っ怪で統一性なんて無く、一瞬先には全く違う内容の物に変わるなんて当たり前の夢。

そんな夢の1つ。幼い女の子と、その妹の夢。

姉はまだ幼い妹と自分の身を守る為、媚びへつらい、身を差し出し、何処かの誰かを骨の髄までしゃぶり尽くす。

他者を蹴落とし、見捨て、手を下し、何がなんでも生き残る。

そんな姉の姿を、後ろでただただ見つめている。

それがこの夢の中の私だった。無意味で無価値な私だった。

 

真っ暗闇の中、薄汚れた1枚のボロい毛布に2人抱きしめあって包まり、気配を殺し、息を殺し、時間が過ぎるのを待った。

何処に何が、誰が居るのかと怯えながら、ほんの少しの飲水を求めて彷徨った。

すれ違った人間を襲い、根こそぎ奪われ、奪った。

安心なんて一切できない。希望なんて何処にも無い。辛く苦しい戦いの日々。

そんな夢はいつも変わらず、唐突に終わる。

 

姉が消えた。突然フッと、跡形もなく。

絶望して、探し求めて彷徨って、力尽きて倒れ込んで、そこで夢は覚める。

 

そこは真っ白な壁に各部屋共通の家具に共通の配置の狭い部屋で、違うのは私が普段使っている事ぐらい。

息は途切れ、体は震え、目には涙。歯はカチカチと音を立て、自分がたてた物音に驚き怯えてしまう。

要は悪夢だ。打たれた直後の傷跡を抉られるような痛みと恐怖を刻まれる、最悪の夢。

 

震える体を必死に奮い立たせ、起きて隣の部屋を目指す。

たった数mの暗闇に怯え、泣き叫びそうなのを必死に堪えて辿り着いたら、部屋の主が寝てようが無理矢理ベットに潜り込む。

夢のように隙間が無くなる程抱きしめ、胸に顔を埋める。

こうしないと落ち着けない。体の震えは止まってくれない。

大抵の場合相手は目を覚まして、面倒くさそうな表情を浮かべながらも抱きしめ返してくれる。

それがとても嬉しくて、温もりが心地よくて、私は再び眠りにつく。

とてもとても、落ち着ける温もりだから。

夢の中で姉が抱きしめてくれた時に感じた温もりに似ていたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

ガタガタと車体を大きく揺らしながら、AR小隊に私を乗せた装甲車は荒れに荒れたガタ道を走る。

窓には放射能やらをたっぷりと含み、濁りベタつく雨粒がこれでもかとへばりついている。

私の前にはハンドルを握るM16と、その隣で何かをいじくっているSOP。

横にはM4とAR-15。AR-15が退屈そうに眺めている小型の電子機器をM4が覗き見ている。内容はおそらく占い関係だろう。ちなみに私は本を読んでいた。

これが任務中ならM16以外全員粛正案件なのだが、これは任務ではない。なんなら16LABから出てすらいない。

例にもよって、いつもの電脳世界だ。

 

 

AR小隊が16LABから出る事はまだ許されておらず、訓練の日々が続いていた。

SOPから「外に出たい!」と連呼されたり、AR-15の愚痴を聞き流したりなど、不平不満が漏れ出て来ている中、毎日の訓練を欠かさず行う。

最初の頃の全く弾が命中しなかったM4も見違え、SOP達と並んでいる。

順調だった。AR小隊は。

 

 

 

「後12分……M16。方向本当に合ってるの?」

 

「ああ間違いないさプロト。あと5分もしないうちに着くはずだ」

 

「そう……SOP! いい加減に窓をコツコツ叩くの辞めなさい」

 

「暇〜」

 

「あんたが外の世界を見たいって言うからこうやって電脳世界とはいえ体験してるんじゃない。文句言わないの」

 

「だってどこ見ても何も無いよ……揺れも強いから眠ることも出来ない」

 

「外の世界もここと対して変わらないわよ。むしろ鉄屑達が蔓延っていない分、気を張らなくていいこっちの方が遥かにマシよ」

 

クソ女を認めてやってもいい点シリーズに追加だ。

記録なんて残してないから他のものが何だったか忘れたけど。

 

外のクソッタレた世界に安息の地なんて無い。

あるのは超危険地帯か、危険地帯か、安全に見せかけてる危険地帯の3つだけ。

もはや電脳世界にでも頼らない限り、絶対的な安眠なんて出来るわけが無いのだ。

 

 

 

 

電脳世界から出た私達。今日の訓練は終了しており、後は自由時間。過ごし方は各々に任せる。

 

廊下を歩いていると、武装した自律人形数体と、それに囲まれてゾロゾロと絶望し切った表情で歩く人間達と出会う。

彼らは私をギラギラとした殺意を込めて睨みつけてくるが、足は止めず、何処かの部屋へと入っていった。

 

「どうしたの? プロト」

 

いつの間にかクソ女が横にいた。私を見つめいつものケラケラした笑みを浮かべている。死ね。

 

「何今の。めちゃくちゃ気持ち悪かったんだけど」

 

「あああれか。人類人権団体とかいう生ゴミたちよ」

 

「何それ」

 

「要は、プロト達のような人形をさっさと全部ぶっ壊して人間の栄光を取り戻そう! とかほざいてる奴ら」

 

「……そんな奴ら集めてどうするのよ。的ぐらいにしかならないじゃない」

 

「あら、けっこう役に立つわよ。実験体に餌に的にストレス発散に素材。ぱっと思いついただけでも5つもあるわ」

 

実験体は分かるけど……餌?

 

「ほら、前社内報でやってたじゃない。E.L.I.D化したゴ〇〇リの大群によって基地の人やら人形やらが根こそぎ喰われたって。そういう事が起きた時の為の保険よ保険」

 

社内報に確か写真がのっていた。ああはなりたくない。絶対に。

 

「クズ共の餌は何処から?」

 

「残飯でも与えてたら良いでしょ。処理の手間も省けて万が一の時は囮に出来る。ホントクズ人間様々よ」

 

 

そう言うと、ニマニマと気持ち悪い笑みを浮かべながら廊下を歩いていった。

 

 

 

 

 

 

「お前だってクズの1人じゃんか」

 

「何を今更。今の世の中、クズじゃない人間なんて喰われきってるに決まってるじゃない」

 


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