SLAYER'S CREED   作:EGO

1 / 150
どうも、懲りもせずに新作を放っていく作者、EGOです。

ゴブスレの二次創作を書きたくなってしまったんです、許してください。

『グレモリー家の次男 リメイク版』は、気が向いたら書いていく予定ですので、期待せずに待っていてくださると嬉しいです。





Prologue
Memory01 嵐の海で


 ━━1761年、北大西洋。

 

 

 珍しく嵐に包まれたその海域で、二隻の船がフックによって繋がれていた。

 激しい雨と荒波により、普通なら立っていられないほどの揺れに襲われている二隻だが、その中で平然と斬り合う二つの影があった。

 

 片やフード付きの外套に身を包んだ壮年の男。

 

 片や黒を基調としたフード付きの制服に身を包んだ、まだ20歳にも満たない青年。

 

 若さを活かした勢いに乗せた剣技で攻める青年と、経験から来る動きで捌いていく壮年の男。

 二人の攻防はまさに互角に見えたが、ついにそれは崩れることとなる。

 壮年の男は、青年の剣を弾き飛ばし、切っ先を首もとに突きつけたのだ。

 荒れた息を整えながら、壮年の男は言う。

 

「なぜ、ここにいる。まだ子供だろうに」

 

「お前を殺すためだ」

 

 男の問いに迷うことなく返した青年に、男は額に青筋を立てながら言う。

 

「わかっているのか!テンプル騎士団は、世界を支配しようとしているのだぞ!」

 

 聞き分けのない子供を叱りつけるように叫んだ男に、青年は嘆息した。

 

「『真実はなく、許されぬことなどない』だったか。貴様らの信条は」

 

「それを知っていて、なぜ━━」

 

「━━だから、何の罪のない母を殺したのか」

 

 青年はまっすぐに、フードの奥に隠れた瞳を睨む。

 その瞳は、さながら獲物を見つけた鷹のようであり、絶対に逃がさないという意志が込められていた。

 青年から放たれる威圧感に圧され、男は黙ってしまう。

 青年は続ける。

 

「母は、父と、俺と、三人で暮らしたかっただけだ。その『平穏』を一方的に壊したのは、貴様らだろうが」

 

「貴様らの信条は、矛盾だらけだ。真実はないといいながら、自分たちが正しいと疑わず、許されぬことなどないと言いながら、破ってはならないという三つの掟を作る」

 

「確かに父は、貴様らを裏切り、騎士となった。そして母と出会い、俺が生まれた」

 

「百歩譲って、父が殺されるのは仕方ないとしよう。だが、父が騎士であることも知らなかった母が、なぜ死ななければならなかった。奴らはまだ幼かった俺まで殺そうとしたぞ」

 

 一切の感情を廃し、青年は男━━『アサシン』に向けて言葉を叩きつけた。

 妻を殺され、息子まで殺されかけた父は、そこから努めて避け続けていた戦うことを選び、息子に力を与える道を選んだ。

 

 ━━二度と失わないためには、戦うしかない。

 

 父はそう言い、仲間たちと共に息子を育て上げた。

 

 ━━無秩序は、人々を苦しめ、虐げるものでしかない。

 

 自由はいい。だが、平穏を望む人々は、法の下固められた秩序を望むはずだ。

 裏切りのアサシンの息子は、同じく裏切りのアサシンにより鍛えられ、今や騎士として、師と同じくアサシンを狩る仕事をしている。

 青年の言葉に信じられないというように口を紡ぐアサシンに、口の端を歪めながらこう告げた。

 

「どうした。『許されぬことなどない』のだから、誰が、誰を殺そうと、貴様らはそれを許し、肯定するのだろう?」

 

「……黙れ」

 

「自由と平穏は結び付くことはない。貴様らに俺の母は殺された。これから一体何人が死んで、不幸になる」

 

「…黙れ」

 

「人々は、仮初めでも『真実』がなければ社会を形成できない。仮初めでも『許されぬこと』がなければ、際限のない悲劇が起こるだけだ。貴様らは、それをわかっていない」

 

「黙れ!」

 

 どこか悟っている青年の言葉に、男はついに激昂し、剣を振りかぶり、大上段から振り下ろす。

 その刃は、寸分の狂いなく青年の頭蓋を砕き、脳髄を叩き壊すことだろう。

 だから、青年は動き出した。

 自身に迫り来る刃に向け左手を差し出し、小指を動かす。

 小指に嵌められたリングに引かれ、袖の中に仕込まれた小刀━━アサシンブレード━━が飛び出し、固定された。

 アサシンブレードと剣がぶつかり合った瞬間、青年は腕を右に流し、刃を受け流す。

 全力を以て振り抜いた男は前のめりに体勢を崩し、無防備な体を青年に晒した。

 それを見逃す彼ではない。

 左手と同じように右腕のアサシンブレードを展開、固定された勢いのまま、それを男の首に突き立てる。

 

「か……っ!」

 

 突き立てた勢いで男の体を起こし、左腕のアサシンブレードをトドメとしてこめかみに突き刺した。

 男は口を魚のようにパクパクと口を動かした後に、白目を向いて脱力していく。

 周辺の敵が降伏を始めたことを確認した青年は息を吐き、二本のアサシンブレードを男から抜き、騎士団の船に戻ろうとするが、風に紛れた砲撃音が耳に届いた。

 それを聞いた誰かが、望遠鏡を覗き、遠くを指差しながら叫ぶ。

 

臼砲(きゅうほう)だ!」

 

「ッ!」

 

 誰かの警告はもう遅く、繋がれたままの二隻に砲弾の雨が降り注ぐ。

 荒波に加え砲弾の雨が降り注ぎ、船は大きく揺れ、帆は折れ、火がつき始めた。

 

「船に戻れ!退却するぞ!」

 

 騎士団の船員が叫び、敵船に乗り込んでいた船員が慌てふためきながらも戻り始める。

 パニックに陥る仲間たちに舌打ちをしながら、彼も急いで船に戻ろうと駆け出す。

 

「火薬庫に火が!?」

 

「な……」

 

 誰かの悲痛な叫びに、思わず間の抜けた声が漏れる。

 

 

 ━━━瞬間、船が爆ぜた。

 

 

 青年は爆発の勢いのまま海に投げ出され、海面に叩きつけられる。

 身を切るほど冷たい海に沈みながら意識だけは繋ぎ止めた青年が、酸素を求めて海面から顔を出した時だった。

 再びの爆発とともに、木片や鉄塊が大量に飛び散った。

 そして、その中のひとつが何の不幸か、海面から顔を出した青年の顔を直撃したのだ。

 口元を切り、鼻から大量の血を流しながら、意識を失った青年は、真っ暗な海底へと沈んでいく。

 霞む視界の中、青年の耳には、聞き慣れた囁き声とも違う、まるでサイコロを振ったような奇妙な音を聞いたような、そんな気がした。

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 

『幻想』と『真実』の神様は、「盤」である世界と、そこに生きる「駒」である様々な生き物を眺めながら、今日も今日とてサイコロを振ります。

 結果が成功(クリティカル)なら笑ってはしゃぎ、失敗(ファンブル)なら泣いて、時にはそのまま寝込みます。

 彼らのサイコロの結果が、その世界に生きる人々の命に直結するのですから、当たり前でしょう。

 最初にそれに気づいたのは、三連続でファンブルを叩きだし、村ひとつを壊滅させてしまった『幻想』でした。

 部屋に籠ろうとして、去り際に見た盤の上に、見慣れぬ駒が現れたのです。

 

 ━━誰かが新しく作ったのかな?

 

『幻想』はそう思い、知り合いの神様たちに聞いてみました。けれど、誰も彼のことを知りません。

 けれど、せっかく生まれてきたのだから、無下にするわけにもいきません。

 それに、神様たちが新しい刺激を求め始めていたのも事実です。

 

『まあ、新しいのは何でもウェルカムだよ!』

 

『幻想』はそう言って、その「駒」を見守ることにしました。

 他の神様も『異議なーし』と続きます。

 神様たちは、その「駒」を見守ることに決めました。

 その新しい駒が何をしでかしてくれるのか、楽しみにしながら━━━。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー

  • 見たい!
  • 別にいいです……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。