……ちょっとR-18に片足突っ込んでしまったかもしれません。
何か言われたら大幅に修正するかもしれません。
西の辺境の街。
かつては周囲の開拓村を支える意味合いが大きかったこの街も、他所からの移住者や冒険者が多く集まる事で更なる発展を遂げていた。
人が増えれば酒場や宿屋は総じて一回り大きくなり、宿屋が大きくなれば更に人が集まる。
集まる人々を相手に一稼ぎしようと商人が集まり、商人が集まれば物の流れも飛躍的に高まる。
本来であればその高まった物流を逆手に取り、街道を行き交う業者を狙う野盗も増えるのだが、西の辺境においては例外。
西の辺境に足を踏み入れた
それは五年前でも同じ事が言えるのだが、ある時期を境にその頻度はより高まった。
殺された彼らが知るよしもないのだが、産まれたばかりの子供や、出産直後で疲弊した妻の近くに危険分子を置いてはおけないと、その父であり夫である冒険者が、少しばかり本気になっただけである。
それに同調した冒険者──銀等級含めてだ──も協力したのだから、それを相手取った彼らは悲惨とした言いようがあるまい。
そんな事があったからか、いつしか西の辺境は国で話題に上るほどに有名になった。
曰く、都並みに治安が良く、行くまでの道中も他の辺境に比べれば安全。
曰く、開拓者を悩ませるゴブリンが極端に少なく、愛する妻や娘への危険が比較的少ない。
曰く、ここ数年で新人冒険者たちの生存率が高まり、比較的高い等級の者──つまり信用できる者──が多い。
曰く、辺境の街ながら、その活気は都のよう。
いくつかは誇張を含めた噂であるが、何もない所からは煙は立たぬ。その噂の元になる話は確かにあるのだ。
そんな最近住人が増えてきた辺境の街の片隅に、一件の家があった。
あばら家というにはしっかりとした作りではあるが、屋敷というには少々小さい。
けれど農夫が住まう住居に比べればそれなりに上等なもので、伸びる煙突は古いながらに手入れは行き届いていた。
「ふぅむ……」
その家を前に足を止めたローグハンターは、煙突から煙が出ていない事を確認して息を吐いた。
煙突から煙が出ていれば、それは誰かが起きている事に他ならず、扉に備えられた鉄のノッカーを叩けば誰かが顔を出すだろう。
それもそれで良い。帰って来て真っ先に家族と会えるのなら上等だ。
だが現実は残酷で、朝一となればまだ誰も起きてはいまい。
──そもそも朝に弱かったな……。
今更ながら妻の弱点を思い出し僅かに苦笑。いつまでも突っ立っていても仕方がないと懐から鍵を取り出した。
それをゆっくりと扉の鍵穴に差し込み、これまた丁寧に捻る。
ガチャ……!と少々大きめの音が出たときは体が跳ねたが、そういう設計なのだから仕方があるまいと意識を切り替え、音をたてた分慎重に扉を引いた。
家の中はやはりと言うべきかとても静かで、掃除が行き届いて埃がない分、誰もいない事がどこか不気味にさえ思える。
久しく忘れていた自分の家という感覚に慣れるのにはもう少し時間がかかるのだろうと目星をつけて、後ろ手で扉を閉めて鍵をかけると、彼は足音一つたてずに一歩を踏み出した。
誰かが言うには、世界広しと言えど一番住み心地の良い家を作るのは圃人らしい。
その話にどこか適当な相槌を入れ、頼ることはないだろうと思っていた十年前──つまり冒険者に成り立て──の自分を殴ってやろうかと思いつつ、話を覚えていた事に感謝も忘れない。
現に今は暗いが、時間による陽当たりの変化や壁や床の色合い、果てには部屋の配置まで、その全てが見た目と共に実用性も考慮されたこの家は、なるほど住むにはうってつけだ。
歩き慣れた廊下をゆっくりと進み、確認の為に居間を目指した。誰かいるならそこだろう。
廊下の角から顔を出し、誰もいないことを確認。ついでに食事所と台所にも顔を出すがやはりいない。
家族全員がまだ寝ている事を確かめたローグハンターは、余計に足音に気を配りながら廊下を戻った。
途中、廊下の中頃にある扉の前で足を止めるとタカの眼を発動。部屋の中に青い塊があることを確認すると、耳を当てて中の様子を探る。
穏やかな寝息が
中の相手を起こさないようにゆっくりとその場を離れ、隣の扉の方へと進み、こちらは何の迷いもなく開く。
そこでも一切の音をたてないのは、無意識下でも相手を気遣っている所作なのだろう。
部屋の中に潜り込み、今度は丁寧に扉を閉めてから更に部屋の奥へ。
部屋の中は割りと質素とも呼べる様子で、部屋の端にはクローゼットと装備の点検や書類作成に重宝する作業用の机。
壁にはローグハンターの装備をかける引っかけ──ローグハンターが手を伸ばしてやっと届く高さだ──や、釘を打って増やした服かけもある。
だがやはりと言うべきか、一番目立つのは中央に鎮座する二人用のベッドだろう。貴族の物ほど上等とは言えないが、ただの住民にすればそれなりに値のはるもの。
彼の繋いだ商人とのコネを活用し、割安で売ってもらったものだ。
そこには既に誰かが入っているのかシーツが膨らみ、僅かに上下を繰り返していた。
ローグハンターは頬を緩めながらそちらに近づき、ベッド脇に膝をついた。
すうすうと穏やかな寝息を繰り返す彼女は、きっと彼が帰って来た事にも気づいてはおるまい。
子供が産まれた為か、あるいは冒険に出ることがなくなった為か、五年前よりも格段に女性的な魅力を増した彼女の体は、シーツと寝間着に隠されて尚も情欲をそそるのには十分だ。
むしろシーツを押し上げる豊満な胸や、五年をかけて再び伸ばした銀色の髪、整った顔立ち、シーツがはだけて垣間見える柔らかな太腿など、これを見て何も思わない男はいないだろう。
彼の前で思った場合は問答無用の鉄拳が飛んでくるのだが、殴られても良いと言うのなら生唾を飲むがいい。
そしてその心配がないローグハンターは、彼女の全てをじっと眺め、隠す気もなく生唾を飲み込んだ。
──本当に、無防備な奴だ。
本当にやりはしないが、いきなり襲っても彼女なら許してはくれるだろうかと自問し、いやいやと首を振った。
寝込みを襲われる事はあっても襲う事はしないと、相手に知られる事なく勝手に誓った身だ。そんな事はしない、断じて。
無意識に伸びていた左手を引っ込め、意識を切り替えながら立ち上がり、クローゼットの方へと足を向けた。
寝るにしても完全武装では満足に眠れない。まずは着替えだ。
例に漏れず音を出さずにクローゼットを開き、コートとその他の衣装を脱いで押し込むと、愛用の平服と交換。
外した籠手はとりあえず作業台の上に置き、右手首に仕込んでいたアサシンブレードも外してその隣へ。
そこまでやり終えたローグハンターは、ようやく気を抜いたように息を吐いた。
考えてみれば昨日は激務だった。朝は御前会議に参加し、昼はこの世界における教団メンバーと会議を行い、夜は作戦を実行。休む暇などありはしない。
家に帰って来られたからか一気に感じるようになった疲労に眉を寄せつつ、再びどっとため息を吐く。
家族の為とはいえ、休みなく働くのはやはり辛い。家族と会えない時間が増えるのだから尚更だ。
まあ帰って来られたのだから良いかと面倒になってきた思考を放棄し、ベッドに入ろうと振り返ろうとした瞬間だ。何の気配もなく、背後から抱き締められた。
僅かに目を見開いて驚きを露にするも、それはほんの一瞬のこと。
腰に巻かれた愛しい人の腕に手を添えながら、口元には優しい微笑。
「んー」と背後から聞こえる唸るような可愛らしい声を耳にしつつと肩を竦め、巻かれた腕を解いて改めて振り向く。
その瞬間に視界に飛び込んでくるのは、世界に二人といない最愛の妻の姿だ。
寝ぼけているのか蕩けた瞳に、崩れた寝間着の襟元からは僅かに胸元が見えている。
寝ても覚めても無防備な彼女の姿に、がりがりと音をたてて理性が削られる錯覚を覚えながら、ローグハンターは笑みを浮かべた。
「起こしたか?」
「……だいじょーぶ」
寝ぼけ眼で欠伸を噛み殺しながら答えると、また「ん~」と唸りながらぎゅっと彼を抱き締めた。
冒険者を引退してからだいぶ筋力は衰えたものの、彼を抱く力に変わりはない。
昔は壊さないように力強さと優しさを兼ねていたものも、今は離さないという意思表示の方が強い。
それら彼とて同じ事なのか、服越しに感じる彼女の温もりを更に感じようと、ぎゅっと体を抱き寄せた。
今度は嬉しそうな声を漏らしながら彼女は応じ、ぐりぐりと胸に顔を擦り付けてくる。
彼女の銀色の髪を手で梳ながら、ローグハンターの口元にはまた柔らかな笑み。
やはり子供
抱きついてくる彼女の体から名残惜しくも一旦離れ、寝ぼけているからか力の抜けている彼女の肩を押す。
「わー」とわざとらしい叫び声をあげながら彼女はベッドに倒れ、ローグハンターもその隣に寝転んだ。
二人して横向きに体を転がし、寝転んだまま見つめあう。
今度こそ無手になった左手で彼女の頬を撫でてやれば、「えへへ~」と嬉しそうに笑いながら頬を擦り寄せてきた。
またがりがりと理性が削られる錯覚を覚えながら、ローグハンターは気を紛らわすように目を細め、本人としては重要な事を問いかける。
「何もなかったか?」
「へーき、へーき。だいじょーぶ」
いまだに寝ぼけて笑っている妻の姿に苦笑を漏らし、「そうか。なら良い」と頷いた。
だがしかし、彼の妻はその返答に納得出来なかったのか「それだけー?」と気の抜けた声で問いかけ、「なにか、わすれてない?」と可愛らしく首を傾げながら更に問うた。
「忘れ物。……ああ、思い出した」
彼女の問いに考えたのは僅か数瞬のこと。
彼はどこか得意気に笑みながら、彼女の頬に触れていた手を後頭部へとずらす。
それが良かったのだろう。彼女はにこにこと上機嫌な笑いをこぼしながら、何かを待つように目を閉じた。
そこまでされては後は自分が行くしかあるまい。
ローグハンターは彼女の方へと顔を近づけ、柔らかな唇に口付けを落とした。
僅かに触れあう程度の、数秒にも満たない接触。
けれど二人はそれで満足したように顔を離すと、にこりと笑い、ローグハンター──いや、今この瞬間からは夫であるジブリールは「ただいま」を、彼の妻であり、かつては冒険者であった女性──シルヴィアは「おかえりなさい」と、それぞれの声と言葉を交換した。
だがそこで変化が起こる。にこにこと笑顔だったシルヴィアの表情が固まり、徐々に赤く染まり始めたのだ。
彼女の蕩けていた瞳には意志が戻り、今までやらかしてきた何とも恥ずかしい言動を思い出し、目の前で楽しそうに笑う最愛の夫の顔を確認し、今しがた行った──しかも自分から切り出した──行為を思い出し、
「──っ!!!」
子供たちを起こさないように悲鳴を噛み殺しながら寝返りをうち、最愛の夫に背を向けた。
真っ赤になった自分の頬を手で隠しながら、あわあわと口だけが無意味に動く。
だが無防備に晒された妻の背中を、黙って見ている程ジブリールとて甘くはない。
器用に寝転んだまま彼女へとすり寄り、今度は彼が背中から抱き締めたのだ。
「ひっ!」と彼女の口からどこか怯えた声が漏れ、同時に体が跳ねたがジブリールは怯まない。
絶対に逃がさないと言わんばかりに彼女の体を抱くと、銀色の髪に顔を埋めてすんすんと鼻を引くつかせる。
ほんのりと甘く感じる妻の臭いを堪能するジブリールを他所に、それをされた彼女は羞恥で顔を更に赤くしつつ、くすぐったさに僅かに身動ぎ。
それを構わずに満足いくまで堪能すると、ジブニールなホッと息を吐いて彼女の頭を撫で、耳元で囁くように言う。
「改めてただいま、シル」
「お、おかえり……」
羞恥からいまだに彼を直視できない──そもそも後ろを取られている──シルヴィアはそれこそ囁くような声で返すと、ジブリールは少々嗜虐的な笑みを浮かべた。
「なんだ。さっきまで猫みたいに甘えてきていたのに」
「うっ」
「『んー』とか『わー』とか言いながら、最終的にキスまでせがんで来たのに」
「はうっ」
「逃げるみたいに背中向けて。可愛らしい」
「あふっ」
全ての言葉を逃げ場なく耳元で囁かれたシルヴィアは更に赤面するが、それは彼にとってはただのスパイスにしかならない。
「本当に、可愛い奴だな」とまた囁いて、何を思ってか真っ赤に染まった彼女の耳に噛み付いた。
「ッ!?」
突然耳を包む込んだ温かさに驚きつつも、逃げようとはしない。そもそも割りとしっかり抱き締められているため動けない。
聴覚を支配するくちゅくちゅと湿った音と、時折触れる温かくも柔らかいもの──おそらく彼の舌だろう──の感覚にぴくぴくと体が反応しつつも、片手の指を噛んで声だけは出すまいと抵抗する。
「んっ……ふぅ……ん……っ!」
「……」
それでも時折漏れる声に、ローグハンターは悩ましそうに眉を寄せつつ、再び嗜虐的な笑みを浮かべた。
思い付いたら吉日と行動を開始し、服越しに彼女を捕まえていた腕を瞬時に動かし、服の中への滑り込ませたのだ。
「ちょ、ちょっと!?ひゃ!」
「……」
流石の彼女も抗議の声をあげるが、時既に遅し。
服の内側へと入り込んだ彼の腕は、優しく──それこそ愛撫するように彼女の腹を撫で始めたのだ。
いまだに残る腹筋の割れ目をなぞり、時には柔らかな脇腹を撫で、時には指先が豊満な胸を掠めるほどに上へと伸ばす。
「ん!んん……!やっ……」
体はぴくぴくと反応を示し、漏れる声にも少々艶っぽさが滲んでくるが、彼女は空いている手を使って彼の腕を掴んだ。
どこを触られようが体が悦んでしまうのは仕方がないし、そうなったのは半分は自分の責任だ。
だがしかし、朝っぱらからしてくるのは違うだろう。
いまだに甘噛みされる耳を頭を振ることで解放し、背中越しに彼を睨み付けた。
はあはあとされるがままで荒れてしまった呼吸を整えながら、服の中に潜り込んだ腕を離すことはない。
「──」
本人はキッと鋭く睨んでいるつもりなのだろうが、彼女の瞳は今度は快感によって蕩け、一切の覇気がない。むしろ見方によっては次を懇願しているようにさえ見える。
ジブリールは嗜虐的な笑みを深め、掴まれている片腕をそのままに、空いているもう片方の腕を動かした。
背中越しに睨んでくる彼女の頬に手をやり、半ば押さえつけるようにしてやれば、彼女の上体が捻られて更に顔同士が近くなる。
シルヴィアはそこまで来てようやく気付いたのだろう。
睨みつけたのは抗議としてではなく、懇願として取られた事を。正確には抗議とわかっていながら、懇願として受け取られてしまった事を。
彼女が「あはは……」と乾いた笑みを浮かべると、問答無用でその唇を塞がれた。塞いだのはもちろんジブリールの唇であり、二人は再びの口付けをすることになったのだ。
今度は触れる程度という優しいものではなく、僅かな隙間から舌を捩じ込まれ、口内を蹂躙される。
歯の裏側を舐められ、舌が絡み合い、彼の唾液が送り込まれる。逃げ場がないため飲む他になく、僅かに喉鳴らして飲み込むと脳の奥に火花が散った。
「んー!んんー!!」
それだけならまだ我慢できただろうが、生憎と今のジブリールは昨日の多忙さが響いた為か、あるいは故意にか、たがが外れているのだ。
「──っ!?」
シルヴィアは僅かな違和感が確信に変わると共に目を見開いた。
掴んでいた彼の腕が、じわじわと下に──下腹部の方へと下がってきているのだ。
「ん、んー!んーー!」
こうなれば足をと振り回そうとしたが、それを読んでいたようにジブリールの足が絡み付き、その動きを封じられた。
「ん、ちゅ、ま、まっへ……!」
彼が息継ぎしようと僅かに口を離した隙に制止の声をあげるが、同じく酸欠になっていた彼女の言葉はどこか舌足らず。
けれど彼は下げていた手を止め、何事もないかのように「どうした?」と首を傾げた。
シルヴィアからすればどうしたも何もないのだが、彼女はこの隙に呼吸を整えようとするが、「何もないなら続けるぞ」とまた加虐的な笑顔。
言われた彼女は止める理由を探すが、全くと言って良いほどに見つからない。
それは探しても見つからないのか、あるいは探そうともしていないのか、そのどちらかが本当か定かではないが、何か言わなければ彼はまた責めてくるだろう。
止めて欲しいとは思っているが、だが既に体と心の大部分は続けて欲しいと望んでしまっている。この状態では何を言っても無意味だろう。
にこにこと先程から変わらぬ笑みを浮かべるジブリールを見つめつつ、「えっと、んと……」と目を泳がせながら言葉を探す。
律儀に彼女を待つ辺りが彼の優しさなのかもしれないが、おそらく彼は自分が何も言えないことをわかっていて放置している。
それが堪らなく悔しいような、そこまで知られているとむしろ嬉しいような、何とも気持ちの悪い感覚に襲われる。
「──何もないなら続けるが」
そんな思慮のお陰で時間切れとなったのか、ジブリールは淡々とそう言うと、また手を下へと動かした始めた。
突然のくすぐったさに「ひぅ!」と変な声を漏らしつつも、改めて彼の手を掴む腕に力を入れた。
けれど現実は非情なり。冒険者として活躍していた五年前ならまだしも、今は現役を退いてそれなりの時間が流れている。
じりじりと彼の力に押し負け、ついに彼の手がズボンの内側に入ろうとした時だ。
「夜!夜になったらいくらでも付き合ってあげるから、ね!?」
シルヴィアは深く考えもせずにそう口にした。
──瞬間に後悔した。
彼女の言葉を受けたジブリールはこれ以上ないほどご機嫌な笑みを浮かべ、「いくらでも付き合ってくれるんだな」と彼女の言葉の一部をわざとらしく復唱。
「え、あ、いや……」と何か言葉を返そうとするも、肝心のそれが出てこない。
理由は単純。思いもせずに口にするという事は、本心ではそれを欲しているという事だからだ。
それを自覚してようやく諦めのついたシルヴィアは、また顔を真っ赤に染めながら「手加減してね……?」ぼそりと呟く。
「任せろ、加減は得意だ」
「ホントかなぁ……」
ジブリールは得意気な顔でそう言うが、言われたシルヴィアは何とも不安そうに──けれどどこか期待の入り交じった視線を向ける。
「本当だ」とジブリールは寝転んだまま胸を張るが、その腕は相変わらず彼女の腰辺りに巻き付いている。
「は、離して」とシルヴィアが言うが、ジブリールははっきりと「断る」と告げて更にぎゅっと体を近寄らせた。
「このままで居させてくれ」
彼がぼそりと耳元で呟くと、それを合図にしたように寝息をたて始めた。
シルヴィアは「ふぇ?」と思わず口から間の抜けた声が漏らしたが、すぐに状況を察してため息を漏らす。
眠った為か緩んだ彼の腕の拘束をそのままに、器用にその場で寝返りをうって彼と向き合う体勢となった。
彼の無防備な、そして僅かな疲労の滲んだ寝顔を眺め、「無理しちゃって」と苦笑を漏らした。
「ん……」
同時に僅かに声を漏らし、僅かに湿り気のある下腹部を指で撫でた。
僅かな気持ち悪さもあるが、彼によって高まってしまったこの昂りをどうするかだが……。
──自分で慰める?いやいや、彼が目の前にいるのよ。
彼の刺激で前面に出てこようとする女としての自分を押し返し、今はとりあえず我慢するという選択を取った。
どうせ夜になったら大変な事になるのだ、今のうちに我慢していたってどうとでもなる。
そう思うと先程のやり取りで疲れが出たのか、彼女もまた欠伸を噛み殺し、瞼が重くなってくる感覚を覚えた。
窓から見える陽も、まだ山から顔を出したばかり。これから数時間なら寝たって許されるだろう。
「おやすみ、ジル……」
無防備な寝顔を見せてくれる最愛の夫に挨拶をしつつ、今度は自分から口付けを一つ。
された彼は僅かにくすぐったそうに呻くが、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべた。
その笑顔に安堵を覚えつつ、シルヴィアは眠気とはまた別の理由で目を閉じた。
起きたらやることは多いけど、今だけはこうさせてくださいと、ここ数年で世話になることが増えた地母神へと祈りを捧げる為だ。
まあ敬虔な信徒ではないから届くかは未知数な所だが、やらないで後悔するよりはだ。
それを済ませてしまえば後は眠気に任せるのみ。
すぐに食いついてきた睡魔に身を任せ、今度こそ彼女は意識を手放した。
暗い一室。眠りを妨げるものが何一つとしてないその場所で眠りについていた少女は目を覚ました。
体を起こすと共にぱちぱちと瞬きを繰り返し、「ふぁー」と大口を開けて欠伸を漏らす。
それを終えたらぐりぐりと目を擦り、訳もなく寝ぼけたまま辺りの様子を確認。
それと同時に隣で寝ていた少年──年齢はいくつか少女よりも上だろう──も目を覚まし、「どしたー」と気だるそうに問いかけた。
問われた少女は「んー」と唸ると、寝ぼけ眼をそのままにベッドから降り、とたとたと扉の方へと駆けていき、明らかに身長の倍近い高さのドアノブに向けて跳ぶ。
小柄ところか未成熟も良いところの体で行えるような動きではないが、それを成せるのは両親が優れた遺伝子を持っていた為か。
ドアノブにぶら下がる形で捻り、そのまま軽く扉を蹴って開く。扉が全開になったら飛び降り、またとたとたと足音をたてながら廊下を進む。
取り残された少年も寝ぼけた様子ではあるが、少女が行ってしまったと見るやベッドを飛び降り、少女のぱたぱたと足音をたてながら部屋を後にし、念のためと扉を閉めた。
そしてまた走りだし、少女の背に追い付いた頃には彼女は隣の部屋の扉を開いていた。
少女と少年はほぼ同時に扉の隙間から部屋の中を覗きこむと、何かに気付いてとたとたと足音をたてながら部屋の中に潜り込む。
そして少女は部屋の中央のベッドに慣れた様子でよじ登ると蒼い瞳を輝かせ、隣に登った少年もまた同じ色の瞳を輝かせた。
二人が声もなく興奮する理由は単純で、仕事でしばらくいないと言われた
二人は銀色の髪を揺らしながら顔を見合せ、にこにこと笑いながら動き出す。
ほとんど隙間なく眠っている両親の間に小さな体を捩じ込んで隙間をつくり、そこに二人して納まったのだ。
子供たち二人は気付いた様子はないが、途中で明らかに父親と母親が薄く目を開けて横にずれたりしたのだが、二人は力を合わせた結果だと信じて疑わない。
ようやく両親の間に納まった二人は笑顔を交換すると、すぐにすやすやと寝息をたて始めた。
それは両親とて同じ事。二人もまた子供たちに気付かれないように笑顔を交換し、自らにすり寄ってくる子供たちの頭を愛おしそうに撫でてやる。
愛する両親に囲まれて、愛する家族に囲まれて、彼らはまた眠りについた。
明日はきっと良い日になる。家族四人がいれば、例え地獄だろうと乗り越えて見せると。
もうちょっとだけ続くんじゃよ。
誤字脱字、アドバイス、感想、アンケートへのご協力など、よろしくお願いします。
期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー
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見たい!
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別にいいです……。