「はあっっ!」
桜花の気合い一閃の声と共に
「いや〜、楽でいいね〜」
周囲にぶち撒けられるゴブリンの残骸を避けながら、ついでにゴブリンを蹴り殺した銀髪武闘家が呑気にそんな言葉を漏らした。
狭い洞窟の中で大斧を振り回しながら壁に当てることなく、的確にゴブリンを葬るその様は、中々に見事なものだ、
まだまだ若いというのに、どれだけの研鑽を積んできたのやら。
「そんなこと言ってないで、集中しなさいよ!」
「集中はしてるよ!っと」
自慢の長耳で彼女の声を拾ったのだろう。妖精弓手の注意の声が届くが、銀髪武闘家は返事ついでに裏拳の一撃で飛びかかってきたゴブリンの頭部を打ち砕いた。
壁に脳髄がぶち撒けられ、赤黒い染みが床へと垂れていく。
そうして何度目かの襲撃を押し返し、ほんの僅かに気を緩める冒険者たち。
そんな時、不意に桜花が呟いた。
「……モンスターの戦い方じゃない」
「え?」
その声に反応したのは女神官だ。絶えず前線を張ってくれている銀髪武闘家に水袋を渡していた彼女だからこそ、反応したとも言えるが。
「浅い奸計を弄し、数で群れ、女の辱めようとする。嗜虐の感情を隠そうともしない。本能に任せて襲ってくるモンスターよりも、野盗の類いの相手をしているようだ」
「ええと、
彼の言葉に女神官が返すと、彼は「なに?」と首を傾げる。
彼らにとってのモンスターとは、群れることはあれど基本的には戦略や戦術などなく、ひたすらにこちらを喰らわんと向かってくるものだ。
だが、女神官らにとっての
「
女神官らのいう
どうなるかは骰の目次第なところもあるが、策もなく正面からの戦いは獣同士の喧嘩と相違ない。
「体力。技量。幸運。装備。戦略。そんな色々を積み重ねて、最後は一天地六の骰の目次第ね」
妖精弓手が指折り数えてこちらの手札を数え、けれど最後はそんなものを投げ捨てて骰子次第と笑う。
「……神が骰子を振るうのですか?それではまるで都合よく遊戯の駒にされているようにも聞こえるのですが」
妖精弓手の言葉にリューが問いを投げる。
確かに最終的に神々がその結果を決めるのならば、冒険とはすなわち神々の戯れに他ならない。そう見えても仕方がない。
「それは違うよ」
けれど、きっぱりと銀髪武闘家がその考えを否定した。
「確かに何から何まで自分の思い通りにしようとした神様はいたけど、結局のところ、何をどうするのか──この一回限りの命をどう使うのかを決めるのは私たちだから」
自分の胸に手を当て、今まで歩んできた
「今まで歩んできた道が『
「今もこうしている間も、骰子構えて見守ってくれてるんだよ。それは、きっと良いことだよ。神様に見放されて、何もしないで過ごすよりもずっと」
あと変な神様に目を向けられるよりも、と小声で付け足した彼女に、桜花は神妙な面持ちで唸る。
「場所は違えど、俺たちの神が眷属を見守っているのと似たようなものなのか」
「かも、ね」
彼の言葉に銀髪武闘家は微笑みと共に
「それにしても」
そんな銀髪武闘家の肩に腕を回し、抱きついた妖精弓手がぼやく。
「あんたって、
いつになく真剣というか、含蓄のあることを口にする銀髪武闘家の様子を珍しそうにしながら、照れたように頬を朱色に染めている彼女の顔を顔を覗き込む。
「気を抜ける時は気を抜いてるだけだよ」
「……それ、私たちの前じゃ気を抜けないって白状してない?」
「…………」
「目を逸らすなぁ!!」
そして照れ隠しか、あるいは本音か。とにかく呟いた言葉に長耳を逆立て、真意を問おうと彼女の肩を掴んで前後に揺らす。
「わ〜」と気の抜けた悲鳴を漏らす銀髪武闘家を横目に、女神官が苦笑混じりに言う。
「と、とにかく!
「まあ、今さら情けかけるような人はいないでしょ」
彼女の号令に、成長したなあと感慨深そうにしながら銀髪武闘家が頷いた。
妖精弓手も「当然よ」と返し、他の冒険者たちも応じる。
「それじゃ、気を取り直して──」
銀髪武闘家が口を広げる闇の奥を松明で指差し、前進しようとした瞬間、その奥に鎮座する何かの影を捉えた。
「……なにかある」
「あ!宝箱じゃない!ついてるわ!」
警戒するように目を細める銀髪武闘家だったが、ひょこりと彼女に隠れながら顔を出した妖精弓手が顔を輝かせながら躍り出る。
「……た、から、ばこ……?」
彼女の言葉を信じられないと桜花が困惑する中、冒険者たちは宝箱の前へと移動する。
確かにそれは宝箱であった。錠で封じられた四角いそれは、物語に出てきそうな宝の箱であった。
「お待ちください!高貴な御方!そんな得体の知れないものに触れては……!」
「あのね、冒険に出たら得体の知れないものばっかりでしょ?そんなのいちいち考えてたら冒険にならないじゃない!」
両手をわきわきと動かし、今から開けますオーラを全開にする妖精弓手にリューが待ったをかけるが、彼女の言葉に言葉を詰まらせる。
「怪しいものを怪しいと思いつつ、それでも突っ込むのが冒険者ってものよ!罠はハマって踏み潰すものってね!」
「そうかな。……そうかも」
「それ、
彼女のあまりにも猪突猛進な発言に、銀髪武闘家が曖昧な返事をする。
ローグハンターは危ないと思ったものからは距離をとるか、いつの間にか解除してから印象が強い。
ゴブリンスレイヤーも似たようなものだ。無理も無茶もするものではない。
そんな親友二人の言葉を背に受けながら「なんでもいいじゃない!」と笑う妖精弓手。
そんな感情豊かな──あと先考えないともいう──
「私の知っているハイエルフの姿じゃない、という顔をするな」
彼女の姿に桜花まで困り顔になる中、リューが最後の頼みと言わんばかりに銀髪武闘家に目を向ける。
「止めなくていいのですか……?」
「強引に開けてもいいけど、罠があったら困るし。その点、お姫様は罠の解除はお手のものだから」
彼女の言いたいことを理解しながら、銀髪武闘家は苦笑混じりに頬を掻いた。
「開けた瞬間に爆発したり、毒矢が飛んできたり。人間生きてればいつかは死ぬとはいうけど、生憎とあと五十年は死にたくない」
冒険者の中にある最悪の事態をいくつかあげ、彼女に開けさせるのが賢明だと説得する。
「あら、五十年だけでいいの?」
「
妖精弓手の横槍を受け流し、その時まで彼といられるだろうかと勝手な妄想が脳裏をよぎる。
「冒険って、こんな感じなんだね」
そんな銀髪武闘家に、牛飼娘がどこか羨ましそうに声をかけた。
冒険を知らず、牧場で動物の世話をしながら毎日を生きる彼女にとって、冒険者にとっての『いつもの』やり取りが特別に映る。
「毎回ってわけじゃないよ?でも、
彼女の問いかけに銀髪武闘家が答えるが、「まあ、私にもよくわかんないけど」とため息を吐いた。
「そうよね。あんたなんか毎日悪党相手にしてるんだから。だから言ってるじゃない、たまには冒険しなさいって!」
宝箱から視線を逸らさず、地面に這いつくばって何かの仕掛けがないかを確認し、蓋の隙間に懐から取り出した葉を差し込んで罠がないかを確認しながら、妖精弓手は銀髪武闘家に言った。
確かに一般的な冒険からは程遠い冒険者生活をしているが、自分的には満足しているのだ。毎日彼といられるし。
「はいはい。気が向いたら、ね」
だからか、妖精弓手への返事もどこか適当になってしまう。
彼女の反応にげんなりとしながらも、妖精弓手の解錠作業は続く。
「あぁ……!地面に跪いて宝箱を撫で回したり、隙間に葉を差し込んだり、王族にあるまじき事を……!」
そんな彼女の行動一つ一つにリューが妙な反応をするが、妖精弓手は気にしない。
手慣れた動作で罠を確認し、なければないで次の罠を確認していく。
「……箱を開けるだけでこんなに手間がかかるとは……。本来の持ち主は何を思ってそんな罠を……」
ただ鍵を開けて開けばいいなどと、簡単に思っていた数分前の自分を恨めしく思いつつ、桜花はため息を漏らす。
複雑な仕掛けがあるのはいい。彼の出身の極東にも、似たような細工箱があるにはあるが、やはりいちいち開いたり閉じたりは面倒ではないか。
「……文化の違い、かなぁ」
冒険者と一言で纏めるのは簡単だが、やはり一緒くたにするには違い過ぎる。
千草はそんな冒険者の違いに、小さく呟きをこぼすのだった。
「よ〜し!開いたわよ!……って、なによこれ」
ようやく開いた宝箱を覗き込んだ妖精弓手は、その中身に首を傾げた。
「どうしたの」
銀髪武闘家も一緒になって覗き込み、首を傾げる。
「服と鎧に、
「ほんとだ。服の方は私のに似てる」
「鎧の方は、
牛飼娘が服の方を摘み上げ、自分のものと見比べる。
銀髪武闘家が鎧を持ち上げ、重戦士のそれに似た重厚なそれを指で小突いた。
「背丈も似てるし、着替えちゃおっか」
牛飼娘は千草に声をかけ「どうする?」と問いかけた。
確かに彼女の衣装は襤褸布同然だ。多少動き辛くはなるかもしれないが、今よりはマシだろう。
千草は「そうしようかな」と控えめに頷くと、そのまま牛飼娘に手を引かれて岩陰へと移動していった。
「じゃあ、鎧の方は桜花に着せちゃう?
「皆を護るのなら、確かに都合がいいか。あまりこういうのに馴染みはないのだが」
銀髪武闘家の提案に桜花は神妙な面持ちになりながら頷くと鎧を受け取り、千草とは違う岩陰へと入っていった。
「周辺警戒は任せなさい」
着替え中の二人にも聞こえるように、妖精弓手が声を大きめに言った。
そして布の擦れる音や鎧の揺れる音が続くこと数分。先に姿を見せたのは桜花の方だった。
黒を基調とした重厚な鎧を身に纏い、だんびらを背負う姿はまさに重戦士のよう。
「……なんだろうね。この、
「それとはまた違うんじゃない?」
銀髪武闘家と妖精弓手が桜花を見つめながらなんとも下らない話をする中で、ひょこりと牛飼娘と千草が岩陰から姿を見せた。
牛飼娘と同じ格好。なのだが凹凸に乏しい。具体的には胸の辺りが特に。
牛飼娘の胸部は豊満であるが、千草の胸部は薄い。残酷なまでの現実が、同じ服になったことでより如実となって彼女に降りかかった。
「……不公平だよぉ……」
「こ、これからだよ、これから!元気出して!」
項垂れ、陰の雰囲気を醸し出す千草に、牛飼娘が励ましの言葉を投げた。
それでも千草は項垂れたまま、暗い陰を背負っている。
銀髪武闘家が自分が行っても無駄だなと、目線を落としてそこにある二つの果実を見下ろしながら思っていると、妖精弓手がなんてことのないように言う。
「まあ、あれなら下着もいらないでしょ。よくわかんないし、みだりがましいし、邪魔じゃない?あれ」
「え、ええ。………………え?」
妖精弓手がぽふぽふと自分の胸を叩きながらそう言うと、リューがかなり時間をかけてその言葉の意味を理解したのか、困惑の声を漏らした。
そんな
「あー……なんだ。その、あまり、気にするな」
言葉に迷いながら、彼女を励まそうと不器用ながらに言葉を紡いでいく。
「大きいものが好きな男は確かに多いかもしれん。だが小さいものが好きな者も確かに──」
必死に紡いだ言葉は、けれど彼女にトドメを刺す言葉でもあった。
確かに相手をどう見て、好き好むかは人それぞれだが、それを聞いて本人がどう思うのかはまた別の話。
「桜花のばかぁああああああ!!」
千草は涙目になりながら、桜花のことをぽかぽかと殴る。
「おい、千草!?」と小さな少女に押されていく桜花。
その姿に牛飼娘は「これは擁護できないかな」と苦笑し、銀髪武闘家も乾いた笑みをこぼす。
そして、その時骰子が転がる音を確かに聞いた。
銀髪武闘家の視線が、桜花と千草の足元の小石に向けられる。
「危ないッ!」
銀髪武闘家は警告するが、時すでに遅し。
桜花がその小石を踏んだ瞬間、ガコン!と音を立てて小石が床に沈んだ。
次の瞬間彼の足元が左右に割れ、落とし穴が姿を現す。
「なにっ!?」
桜花は驚倒の声を漏らすが、対応する時間はない。彼はそのまま落とし穴に呑み込まれ、暗闇の中へと消えていく。
伸ばされた銀髪武闘家の手が空を掴み、割れた地面が勢いよく閉まるのに巻き込まれないように慌てて引っ込めた。
「あ〜、もう!なんでこんなのに気づかないかな!?」
冒険者歴七年。それなりに冒険者をしているが、こんな簡単な罠を見逃す日が来るとは。
千草が先程の小石を踏んでもう一度落とし穴を起動しようとするが、なんの反応もない。
「落とし穴があったってことは、後詰めがくる!警戒して!」
「足音!かなりの数です!」
妖精弓手が油断なく弓を構えながら言うと、素早く反応したリューが敵の接近を告げる。
「落とし穴の向こうが別の階層であることを祈るしかない、かな!」
銀髪武闘家も拳を構えながら牛飼娘と千草を背に隠す。
げたげたと喧しい嗤い声と足音。黄ばんだ眼光が闇の奥から迫ってくる。
「ゴブリン!来るよ!」
彼女の気迫の声と共に、闇の奥からゴブリンたちが姿を現した。
所変わり、剣の乙女一行。
「流石に多すぎます!なんなのですか、これは!?」
「ゴブリンなんだから群れてくるのは当たり前でしょ!泣き言言うんじゃないわよ!」
令嬢剣士が悲鳴をあげ、女魔術師が怒鳴りつける。
走り続ける四人の背後。ゴブリンたちが群れをなして彼女らを追い回し、醜い欲望を隠そうともせずに嗤っている。
「私の傷を癒せても、敵を薙ぎ払えません!なにか、手を考えなければ!」
衣装を汚し、ときおり飛んでくる矢弾に服や肌を切られながら走るアミッドが、表情を険しくさせながら言った。
癒し手としては優秀な彼女ではあるが、その分戦闘能力は皆無に等しい。こうして逃げてはいるが、令嬢剣士らの方が少し速いと言えば彼女の
「とは言いましても、この状況で呑気に詠唱なんてしていられませんわ!」
先頭を走る令嬢剣士が振り向きながらそう返す。
ただですら集中を要する魔法を、こんな状況で撃てるかと言われれば一応は撃てると返せるが、もし仕留め損なえば一党は全滅だ。
もう少し逃げて、戦いやすい広場にでもたどり着ければやりようはあるのだが。
「ちょっと!前見なさい前!!」
背後から迫るゴブリンの群ればかりを警戒していた令嬢剣士に、女魔術師の警告の声が届く。
弾かれるように前を向けば、そこには地面に蹲っている鎧姿の大男の姿が見えた。
「って、人!?」
「な、なんだ!?」
令嬢剣士の驚倒の声に大男──桜花は立ち上がり、彼女らと背後のゴブリンの群れを──欲望の赴くまま、辱め、犯し、殺す畜生どもを見やる。
直後、だんびらを担いで彼女らの方へと突撃。
「いい加減にしろ、餓鬼どもがぁぁああああああああああああ!!!」
鎧姿なのに軽やかに、けれど力強く踏み込んだ桜花は彼女とすれ違うと、そのままゴブリンの群れの先頭集団と激突。だんびらの一閃で纏めて薙ぎ払う。
「うぇ!?今度はなんなのですか!?」
「っ!このまま彼を援護、やるわよ!」
「か、かしこまりましたわ!大司教とアミッド様は後ろへ!」
混乱する令嬢剣士に女魔術師が素早く指示を出し、それを受けた彼女は剣の乙女とアミッドを背に庇う。
「援護といっても、必要なのでしょうか……」
そして、戦況を見定めた令嬢剣士が呟く。
桜花の立ち回りは見事な一言だ。怒号をあげてはいるがその動きは冷静であり、派手な動きで相手の
「上手いわね。慣れだけじゃない、相当場数も踏んでる」
「ええ。荒削りではありますが、確かな技量が現れています」
女魔術師が思わずこぼした言葉に、剣の乙女が首肯した。
確かに動きは荒っぽい。だがその思考は冷静で、事実彼女らの方にゴブリンを一匹たりとも通さない。
「それにしても、あの激情はどこから……」
ゴブリンを通して何を見ているのか。剣の乙女は彼の背を見つめながら、そんな呟きをこぼした。
「野盗に村を、ね」
銀髪武闘家の呟きに、千草が頷いた。
危なげもなくゴブリンを退けた銀髪武闘家一行が、落ち込む千草の気分転換させようと話題を振ると、桜花の過去の話をしてくれたのだ。
曰く彼の産まれた村は野盗により滅ぼされたのだ、と。
「桜花だけじゃない。私や他の皆も孤児で、タケミカヅチ様の社で育ったんです。でも私たちはモンスターに襲われてだけど、桜花は野盗に襲われたって聞きました」
千草はタケミカヅチなる彼女らの主神から聞いた言葉を思い出しながら、言葉に迷う素振りを見せる。
「どうりで
同時に合点がいったように銀髪武闘家が頷き、小さく息を吐く。
野盗の手か、モンスターの手か。村が滅び、運良く子供が生き残り、その子が他の人たちの手を借りながら成長し、仲間想いで正義に燃える漢となった。
と聞けば、よくある話ではありそうだが……。
「桜花には妹と弟がいたそうなんです。その人たちも死んじゃって、今度は私たちを護るんだって毎日頑張ってて」
千草はどこか懐かしむようにそう続け、僅かに微笑む。
そうやって頑張る彼の背を見てきたのだろう。走り続ける彼の背を追いかけてきたのだろう。そうしている内に、その想いは愛へと変わったのだろう。
銀髪武闘家も僅かに微笑みを返す。
「そういえば、あなたの旦那さんはどんな人なんですか?」
「優しくて、強くて、怖い人。かな」
「え……怖いの?」
今度はこっちが聞く番と言わんばかりに千草が投げかけた問いかけに、銀髪武闘家が即答した。
優しくて強いまではわかるが、怖いとはと妖精弓手が思わず声を漏らすと、銀髪武闘家は頷いた。
「私や皆には優しいよ。間違いない。けど、彼は家族とか仲間を失うくらいなら、どんなことをしてでも護ろうとする。相手が敵だとわかれば、人だろうと
「神でさえも、ですか……?」
家族の為ならば神さえも殺すと断言されるローグハンター。
そんな神殺しの禁忌さえも侵すという男の存在に、リューが思わず疑問符を浮かべてしまった。
「……現に殺したからね。神様を」
そして銀髪武闘家が続け様になんならもうやったと告げれば、「「え?」」とリューと千草の動きが固まった。
二人にとって神殺しとは人が起こせる中でも最大の禁忌だ。ローグハンターは既にその罪を犯していると言われれば驚きもするだろう。
銀髪武闘家は「当然でしょ」とむしろ誇らしそうに胸を張り、言葉を続けた。
「さっきも言ったけど、一度だけの人生をどう決めるのは私たちだもん。神様にどうこう言われるがままの人生なんて、ごめんだよ」
視線を鋭くさせ、彼の人生を狂わせようとした──一度心を砕かれたという意味では既に狂わされた──クソッタレな自称女神の姿を思い出し、苛立ちを募らせる。
「彼が殺ってなかったら私が殺ってただろうし。そこは単に巡り合わせだよね」
鋭く細められた銀色の瞳から殺意さえも滲ませながら、銀髪武闘家は断言する。
「私は彼を愛してるよ。彼と一緒に生きる為なら──『
「──目の前にいて、殴って血も流せるのなら、今度こそ私が殺してみせるよ」
淡々と、純粋なまでの愛情と共に殺意を言葉を口にする。
そのあまりの迫力に皆が怯えたように身震いするが、当の彼女はすぐにけろっと笑う。
「ま、そう何回も神様に喧嘩売られるなんてことないだろうけどね」
本人はそう言って笑うが、目が笑っていない。なんならこの状況すらも内心ではブチギレていたのであろうことが、今更になって理解させられる。
「本当、あいつって愛されてるわよね〜」
だが妖精弓手だけは
牛飼娘も「なんだか物騒だね〜」なんて呑気にぼやいているが、一応は神職の女神官も困り顔になってしまっている。
「……愛とは、こんなにも恐ろしいものだったのでしょうか……」
「人を好きになるって、こういうことをいうのかな……?」
リューは彼女の愛に困惑し、千草は人を愛することの難しさを叩きつけられる。
自分と桜花が、もしタケミカヅチや他の神々に翻弄され、幸せを滅茶苦茶にされたのなら、平然と神殺しの禁忌を犯すようになってしまうのだろうか。
恋を知らないエルフと、片想いをする少女の問いかけに、卓上から見守る『愛』を司る女神は答えない。
ただ狂気さえも感じる愛を向ける女と向けられる男を交互に見つめ、おかしそうに薄く笑う。
対面の《幻想》もまた、『愛の形は人それぞれだよね』と微笑ましそうに笑いながら、次の骰子を振るうのだった。
感想等ありましたら、よろしくお願いします。
期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー
-
見たい!
-
別にいいです……。