SLAYER'S CREED   作:EGO

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pixivでAI絵とはいえ銀髪武闘家のイラストが増えて嬉しいと思う今日この頃。
分類的にはマイナーキャラなので、供給が馬鹿みたいに少ねぇのじゃ。


Memory09 更なる深みへ

 冒険者たちの探索は続く。

 ゴブリンを蹴散らしては進み、罠を搔い潜っては進み、時には小休止を挟んでなおも進む。

 まさに電光石火の快進撃を続ける冒険者たちでああるが。

 

「行き止まりか」

 

「行き止まりだな」

 

「行き止まりですね」

 

 ローグハンター、ゴブリンスレイヤー、ベルの三人は目の前の壁を見ながら呟いた。

 背後に連なるゴブリンの残骸には目もくれず、一見ただの岩壁であるそれを注視する。

 

「道中で別れ道らしいものもなかった。あるとすればお前らと合流した広間だが……」

 

「今から戻るには手間だな」

 

 ここまで一本道だったと確かめるローグハンターの言葉にゴブリンスレイヤーが頷き、小さく唸る。

 ここまでの道中でそれなりに道具を使ってきている。体力面は休息を取ればいいとして、消耗品をここまで消費させておいて『道を間違えた。最初に戻る』は洒落にならない。

 ローグハンターは『タカの眼』を通して壁を睨み、壁そのものが金色に光っていることを確認。

 何かあるとはわかるが、どうすればいいかがわからない。『タカの眼』もそこまで万能ではないのだ。

 

「さて、どうするか」

 

 ローグハンターは壁に手を置きながら呟き、頭に響き始めた嗤い声に溜め息を漏らす。

 

「……どうにかする前に増援がきたな」

 

 彼の言葉を合図にして、彼らが進んできた道から隠す気のない足音が複数迫る。

 岩窟の闇の中を睨み、浮かび上がる赤い輪郭を視認。

 

「数は五十前後。田舎者(ホブ)が何匹かいるが、さらにデカいのが一匹」

 

英雄(チャンピオン)か」

 

「だろうな」

 

 敵の数を数えあげ、共有すべき脅威対象の口頭で伝えた。

 不意を打てるのならいざ知らず、小鬼英雄(ゴブリンチャンピオン)を率いる群れと正面きっての戦闘は面倒臭い。

 

「ほ、ほぶ?ちゃんぴおん?」

 

 二人が口に出した名称に首を傾げるベルに、ゴブリンスレイヤーが言う。

 

「大型の個体だ。力もある。体格もいい。何より強靭(タフ)だ」

 

「だが殺せない相手じゃない。少し手間がかかるが」

 

 彼の言葉をローグハンターが引き継ぎ、小さく肩を竦めた。

 やれやれと嘆息混じりに構える彼と、油断なく円盾を構えるゴブリンスレイヤー。

 一切臆する様子を見せない二人の背中と、闇の奥から迫るゴブリンの足音。

 ベルは胸の前で拳を握り、意を決して口を開いた。

 

「少しだけ……時間を稼いでもらえますか?」

 

「何分だ」

 

「いいんですか!?」

 

「正面きって斬り合うよりはいい作戦なんだろ?なら、やるぞ」

 

 ベルの進言にゴブリンスレイヤーが応じ、ローグハンターもまた頭巾の下で笑みを浮かべた。

 二人からの期待を前に、ベルは深く息を吐いて気炎を吐いた。

 

「三……いえ、一分!それだけあれば十分です!」

 

「よし」

 

「やるか!」

 

 ベルの宣言に背を押され、ゴブリンスレイヤーとローグハンターが同時に走り出す。

 同時にベルの拳に光の粒子が集まり始め、鈴を鳴らす小さな音が岩窟に響く。

 その音へと疑問を他所に二人は全力疾走。

 走力はローグハンターが上。先鋒を務めていた──単に前に押し出されていたゴブリンが正面からぶつかり合うその刹那、彼は跳んだ。

 突き出された槍を飛び越え、穂先を踏んで更に前へ。

 

「シッ!」

 

 放たれた膝撃がゴブリンの鼻面をへし折り、顔面を陥没させる。

 鼻血を噴きながら倒れるゴブリンの顔面を踏み砕いて仕留め、左右から踊りかかったゴブリンを長短一対の二刀流でもって同時に仕留める。

 

「GBRRRRRA!!!」

 

 三匹を瞬く間に仕留めたローグハンターに、ゴブリンチャンピオンが咆哮と共に棍棒を振り下ろす。

 彼は横に跳んでそれを避ければ、叩きつけられた棍棒がゴブリン諸共に床材を砕いた。

 飛び散る破片が頬を掠め、薄皮が裂けたのか血が垂れる。

 ローグハンターはそれを拭うこともせず、追撃に放たれた棍棒を避けるために更に跳躍。

 真横に振り抜かれた棍棒が数匹のゴブリンを巻き込み、肉の礫となった彼が更にゴブリンを轢き殺す。

 着地を決めたローグハンターが煽るように剣で手招きし、露骨なまでの嘲笑を顔に貼り付ける。

 

「GRRRRA!!」

 

 あまりにもあっさりと彼の挑発にのったゴブリンチャンピオンが咆哮と共に棍棒を振り上げるが、

 

「間抜けめ」

 

 ゴブリンスレイヤーの静かな呟きと共に放たれた投げナイフが右の眼球を貫き、眼窩へと滑り込む。

 悲鳴をあげ、激痛に暴れ狂うゴブリンチャンピオン。

 目的もなく振り回される棍棒がゴブリンを、ついでにホブゴブリンさえも撲殺していき、通路の一角を血肉で彩っていく。

 

「やはり大型なだけのゴブリンだな」

 

「当たれば挽肉になるがな」

 

 その光景を遠巻きに眺めながら息を吐き、ローグハンターは外套(ローブ)に貼り付いた肉片を剥がしながら肩を竦めた。

 そして、その言葉でちょうど一分。

 

「──いきます!」

 

 ベルが二人を追い越して前に出る。

 拳に集まった粒子の輝きが一層強まり、臨界へと至った。

 ベルは拳を突き出し、叫ぶ。

 

「ファイアボルトォォオオオオオ!!!」

 

 白兎の咆哮と共に放たれる炎雷(ファイアボルト)

 小さな火矢でしかない筈のそれが、大砲も見紛う轟音と衝撃と共に岩窟を駆け抜け、射戦上のゴブリンたちをその種類問わずに消し飛ばす。

 

「凄いな」

 

「ああ」

 

 やがて炎雷が止まり、酷い耳鳴りの中でローグハンターが感嘆の声を漏らし、ゴブリンスレイヤーも声を漏らす。

 二人は揃ってベルへと目を向け、なんだ今のと目で問いかける。

 

「えっと、ぼくの『スキル』で『英雄願望(アルゴノゥト)』って言います。効果はえーっと、攻撃の増幅って言えばいいのかな……?」

 

「自分でもよくわかってないのか?」

 

 どこか曖昧な言葉にローグハンターが苦笑し、「わ、わかってますよ!?」と流石にそこまで愚かではないと語気を強めるベル。

 

蓄力(チャージ)した分だけ威力があがるんです。攻撃も、魔法も、今みたいに。その分、体力と精神力(マインド)をかなり消費しますけど」

 

「多用は厳禁、か。この壁を吹き飛ばしてもらおうと思ったんだが」

 

強壮の水薬(スタミナポーション)だ。飲んでおけ」

 

 ローグハンターが件の壁に目を向けながらぼやき、ゴブリンスレイヤーが賦活用の道具を差し出す。

 ベルがそれを呷る横で、ゴブリンスレイヤーは問いかける。

 

「その『アルゴノゥト』とやらの条件(トリガー)はなんだ」

 

 あ、これ作戦に組み込むつもりだとローグハンターが胸中でぼやく中、ベルは何かを噛み締めるように言う。

 

「引鉄《トリガー》は僕が憧憬の存在を──『英雄』を思い浮かべることです」

 

 ただ真っ直ぐと、紅緋色(ルベライト)の瞳が二人をみすえながらそう告げる。

『英雄』を思い、彼らのようになりたいという『願望』が生み出す一撃こそが先程の炎雷の砲撃。

 どんな困難も、どんな逆境も打ち砕く、『英雄の一撃』だと。

 

「『英雄』、か」

 

「これまた面倒な」

 

 ゴブリンスレイヤーは小さく唸り、ローグハンターは肩を竦めた。

 戦闘中に英雄(だれか)を思うなど、なかなか器用な真似を強要されると苦笑する。

 

「ベルの秘密を一つ知れたところで、この問題をどうするべきか考えるか」

 

 だがそんなことはどうでもいいと言わんばかりに、彼は壁へと目を向けた。

 敵は全滅させたのに、相変わらずそこにある岩壁。

 どうやって乗り越えたものかと、三人は頭を捻るのだった。

 

 

 

 

 

 ローグハンター一行が足止めを食らう中、同じ問題に直面している者たちがいた。

 

「……行き止まり」

 

 銀髪武闘家、女神官、妖精弓手、牛飼娘、リュー、千草の一行だ。

 今のところゴブリンの気配はないが、いつ襲撃がくるともわからないこの状況。出来る事なら移動し続けたいのだが。

 

「妙ですね」

 

「妙よね。埋めてきた地図(マップ)から見ても、ここら辺に何かあると思ったんだけど……」

 

 リューが顎に手をやりながら呟いた言葉に妖精弓手が首肯した。

 手製の地図を広げてこれまで通ってきた道を確認しつつ、既に調べた怪しい箇所にはバツ印がついている。

 

「何か見落としがあるのでしょうか?」

 

 同じく地図を覗き込んだ女神官も疑問符を浮かべ、考え込む。

 妖精弓手の描いた地図は精密だ。一目見ただけでどこで何があり、どっちに行ったのかさえ思い出せる。

 なのに、次へと進む道が見つからない。落とし穴の類もなかったしと逡巡し、次の階層(ステージ)への道を模索する。

 

「叩くと消える隠し壁とかかしら?」

 

「それなら音の反響でわかりそうなものですが……」

 

「実は天井に仕掛けがあった、とか?」

 

「それなら誰かが気づくでしょう」

 

 妖精弓手と女神官があれこれと意見を出し、リューがあっさりと却下する。

 後ろでやいやいと姦しい三人を他所に、銀髪武闘家は牛飼娘へと歩み寄った。

 

「歩いてばっかりで疲れてない?」

 

「ちょっとだけ疲れちゃった、かな」

 

「だよね。変わり映えしない場所をぐるぐる回っているだけだし」

 

「休憩だね」なんて笑いながら水袋を差し出し、それを受け取った牛飼娘は「ありがとう」と微笑んだ。

 

「千草さんは?疲れてない?」

 

「私は大丈夫です」

 

 隣で気を張っていた千草にも気を回すが、少女からは儚げな笑みを返される。

 千草も冒険者の端くれだ。この状況にはなれずとも、長時間の行軍には慣れているのだろう。牛飼娘に比べれば余裕がある。

 なら大丈夫かと視線を外した銀髪武闘家は、行先を塞ぐ岩壁へと目を向けた。

 ここまでの道中で怪しいものはなかった。ローグハンターと一緒に行動する中で勝手に磨かれた直感が、この壁が怪しいと囁いてくる。

 彼がいても立ち往生するだろう。だが彼がこの場にいればとりあえずこう言うし、彼からも同じことを言われるだろう。

 

「とりあえず、殴ってみるか」

 

「「え……?」」

 

 すっと目を細めて告げられた言葉に牛飼娘と千草が間の抜けた声を漏らす。

 その声を無視して立ち上がり、岩壁へと手を置く。

 こんこんと軽く叩いね音の反響を確かめ、向こうに道があることを確認。

 ついでに大体の厚みを測って行けるかなと思案し、まあやってみるかと息を吐く。

 右足を引いて半身になり、腰を捻りながら右拳に力を溜める。

 

「ちょっと、何するつもり!?」

 

 妖精弓手が何事だと顔を向けた瞬間、

 

「イヤァァアアアアアアアアア!!」

 

 怪鳥声を響かせながら、壁に向けて正拳突き。

 右拳が重々しい打撃音と共に壁にめり込み、岩壁に亀裂が入るが、破壊するには一歩足りない。

 

「でりぃやぁあああああああああ!!」

 

 更に腰を捻り、右拳と交代する形で左拳を打ち放つ。

 一打で打ち抜いた箇所を寸分の狂いなく打ち据えるニ撃目。

 今度は快音を響かせ、刻まれた亀裂が更に深くなりながら広がっていく。

 

「シャッ!」

 

 トドメと放つは三撃目。

 右足を軸にその場でくるりと回転。回転の勢いと体重を乗せ放たれた後ろ回し蹴りが再び亀裂の中心を捉え、破砕音を響かせながら岩壁が倒壊。

 爆砕して飛び散る破片を見送り、深く息を吐きながら残心を取る。

 

『…………』

 

 そして静寂のみがその場を支配した。

 散々話し合っていた三人が揃って銀髪武闘家と破壊された岩壁を交互に見つめ、牛飼娘と千草が真横で行われた破壊劇にドン引きする。

 いや、素手で岩盤を砕くなと冷ややかな視線が集まる中、銀髪武闘家は瓦礫を退かして岩壁の向こうを見やすくする。

 

「よし!階段あったよ!」

 

 そして姿を見せるのは、下の階層へと続く階段。

 更なる修羅場へと誘うように口を開く無機質な階段は、けれど予想外の方法で見つけられて焦っているようにさえ感じた。

 天上からも『うそーん』と間の抜けた声と、鈴を転がしたような笑い声を幻聴し、銀髪武闘家は天井を見上げながら小首を傾げる。

 松明を投げ込んで奥を確認し「行けそうだよ」とゴーサイン。

 

「うん。まあ、行きましょうか」

 

 友人のあまりにもあんまりな暴れっぷりに言葉をなくす妖精弓手が、諦めたように呟いて階段へと進んでいくのだった。

 

 

 

 

 

 ローグハンター一行が足を止め、銀髪武闘家一行が次へと進む中、剣の乙女の一行もまた足止めをくらっていた。

 ゴブリンを蹴散らしながらたどり着いたのは広間だった。

 天然のものではなく、人の手で岩を削ってつくられだろうそこに布陣した彼女らだが、他の一行同様に足止めされていた。

 他と違う点があるとすれば、

 

「ろ、露骨に怪しいですわね」

 

「罠よ。どう見たって」

 

「罠、でしょうね」

 

「だろうな」

 

 令嬢剣士が困惑し、女魔術師が嘆息し、アミッドが警戒し、桜花が腕を組んで小さく唸る。

 彼女らの視線の先にあるのは小さな台座と、そこに鎮座する水晶玉だった。

 岩窟にぽつんと置かれたそれは異質であり、冒険者らが警戒するのは当然でもあった。

 

「ですが、調べてみないことにはどうにもなりませんわ」

 

 この迷宮の地図作り(マッピング)を担当している剣の乙女が、ここ以外に怪しい場所がないと言外に告げる。

 なら、どうにかするしかないかと身構えながら台座に近づく冒険者一行。

 

「なにか仕掛けがあるとしても、何をどうすれば……」

 

 手を伸ばせば届く距離に近づきても何も起きず、より注意深く観察する令嬢剣士。

 見る限り台座に怪しい部分はなく、水晶自体も怖いほどに透き通っている以外は怪しいところはない。

 むむむと唸る令嬢剣士を横目に女魔術師が直接触れて台座を調べ始め、アミッドと桜花が周囲を警戒する。

 

「触れた瞬間に腕が溶かされるとか、ありませんよね?」

 

転移(ゲート)の術で岩の中に閉じ込められるかもしれないわね」

 

 そしてやはり水晶をどうにかするしかないかと結論した二人は、さてどうしたものかと手を止めた。

 手っ取り早く言えば水晶を壊すか否かの二択。壊した瞬間に致死性の罠が発動は洒落にならないし、かといって何もしなければ先には進めない。

 ああでもないこうでもないと話し合う二人の姿を微笑ましそうに見つめた剣の乙女は、そろそろ助け舟を出そうと二人の間に割り込んだ。

 

「ここはわたくしが」

 

 ゴブリン相手には何もできないなら、こういうところで何かしなければ誰の助けにもなれない。

 剣の乙女は天秤剣を胸に抱きながら、至高神へと祈りを捧ぐ。

 

「『裁きの司たる我が神よ、未熟な我が身に、確たる証をお示しください』」

 

 静かに、けれど力強く捧げられた祈りの言葉は、異界の地においても神へと届く。

 見えざる物をみる加護を彼女に与え、水晶から壁へと続く力場を映す。

 それを視線で追えば、力場は壁を登って天井近くへと続いている。

 

「どうやら、あちらに鍵があるようです」

 

「あそこですわね!」

 

 剣の乙女が手でそこを示せば、令嬢剣士が打てば響く返事と共に壁へと疾走(ダッシュ)

 そのまま数歩分壁を駆け上がると壁に貼り付き、僅かな突起を手がかり足がかりにしてよじ登っていく。

 

「凄まじい登攀能力ですね」

 

「剣士というより忍びだな」

 

 ひょいひょいと登っていく彼女の姿にアミッドが感嘆し、桜花が故郷の軽業師たちを例えに出した。

 確かに今の令嬢剣士は冒険者というよりも忍者──というかアサシンの如くだ。

 そして壁を登り切った令嬢剣士は、壁にめり込んでいる台座のものと同じ水晶を発見した。

 

「こちらにも水晶が!」

 

「それを砕いてくださいまし!」

 

「承知しましたわ!」

 

 剣の乙女からの指示にすぐさま応じ、短剣の柄頭で水晶を殴りつける。

 バリン!とけたたましい音を立てて砕け散る水晶。それに合わせて台座の水晶も砕け散り、破片となって台座の上に散らばった。

 

「これでいいのでしょうか」

 

 壁に貼り付く令嬢剣士は疑問符を浮かべながら壁から降りてくる令嬢剣士。

 パンパンと革鎧の汚れを叩き落とす彼女を他所に、重々しい音を立てながら岩壁の一部が左右に割れていく。

 そして姿を見せるのは、下へと続く階段。

 

「壁の中に階段……」

 

「そっちの迷宮だとこういうのないの?」

 

 驚きを通り越して呆れ始める桜花と、そんな彼にツッコミを入れる女魔術師。

 彼女からすれば見慣れた隠し通路も、彼らにとっては驚きの対象らしい。隣のアミッドも驚いている。

 

「無造作に置かれた宝箱といい、仕掛けを解けば開く隠し通路といい。俺の中の常識が壊れていくな」

 

 そしてどこか遠くを見ながら呟いた言葉に、女魔術師が「慣れるわよ」と言葉通りの何の感動もない声色で告げた。

 

「とにかく道ができましたわね。進みましょう」

 

 令嬢剣士がふんすと鼻を鳴らしながら先導し、その後ろを冒険者たちが続いていく。

 彼女らもまた、次の階層(ステージ)へと潜っていくのだった。

 

 

 

 

 

 足止めされていたローグハンター一行に異変が起きたのは、まさにその瞬間だった。

 剣の乙女一行が水晶の仕掛けを解除したのを時を同じくして、彼らの行く道を塞ぐ岩壁に縦の割れ目が入ったかと思うと、そこを起点に左右へと割れていく。

 

「階段が出てきた」

 

 驚き身構えるベルを横目に、ローグハンターは顎に手をやりながら小さく笑みを浮かべた。

 

「誰かが仕掛けを解いてくれたようだな。あいつならいいんだが……」

 

「誰かはわからんが生きていることがわかった。進むぞ」

 

 ローグハンターが銀髪武闘家が解除してくれていたらなと期待する彼を横目に、ゴブリンスレイヤーは誰でもいいから生きていてよかったと安堵の声を漏らす。

「お前の連れかもしれんぞ」とベルの肩を叩き、彼も「はい!」と嬉しそうに頷いた。

 

「それじゃ、進むとするか」

 

 とにかく進めばわかるだろうとローグハンターは階段の先を『タカの眼』で警戒しながら進み始め、ゴブリンスレイヤーとベルが後ろに続く。

 

「この先には何があるんでしょう」

 

 壁が岩肌から段々と人の手の入った石材じみたものへと変わっていき、その変化にベルが思わずと言った形で声を漏らす。

 ここは迷宮なのだから人の手が入っているのは当然ではあるが、今までは岩を削っただけだったというのに、段々と建造物じみてきた。

 

「わからん」

 

 ゴブリンスレイヤーも壁を撫でながらそう呟き、ベルの方へと振り向いた。

 

「だが、それを調べるのも冒険者(俺たち)の仕事だ」

 

「……はいッ!」

 

 相変わらず淡々と、けれどどこか浮かれたような声色で告げられた言葉にベルもまた湧き出す気炎と共に返事をした。

『未知』に挑み『既知』へと変える。そんな『冒険』を自分たちはしていると心が引き締まる。

 そんな二人のやり取りに笑みを浮かべたローグハンターは、階段の終わりと共に「気張っていくか」と二人を鼓舞するのだった。

 

 

 

 

 

 

 




感想等ありましたら、よろしくお願いします。

期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー

  • 見たい!
  • 別にいいです……。
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