冒険者となったフードの彼は、連日依頼をこなしていた。
と言っても休み明けに、
「「ゴブリンだ」」
依頼帰りに、
「「ゴブリンだ」」
昼を挟んで、
「「ゴブリンだ」」
月をバックに、
「「ゴブリンだ」」
と、ただひたすらにゴブリンを狩って戻る『作業』に励んでいるだけなのだが━━━。
辺境の街の『ギルド』を担当する受付嬢は、その整った顔に疲労を溜めながら、人がいないことを良いことに机に突っ伏していた。
「あう~」
彼女の脳内を巡るのは、ひたすらに「ゴブリンゴブリンゴブリンゴブリンゴブリン」だった。
危険な癖して報酬が安い『ゴブリン退治』は、ベテランから素人まで、冒険者たちには好かれない。
それでも毎日のようにゴブリン退治の依頼が来るのだから、嫌になってしまう。
ここ最近、黒曜級に昇格した『ゴブリンスレイヤー』と呼ばれるようになった冒険者と、彼に連れられて現れ、その日のうちに冒険者になったフードの彼。
その二人が毎日のようにゴブリン退治を受けてくれているから、ギリギリやっていけているのだ。
『
なぜか血ではなく煤を被っていたり、土を被っていたりと、何だか不思議なことになっていることが多いのだが、それを訊く勇気は、彼女にはなかった。
━━━━━
「━━前情報だと、捕虜はなし。トーテムとか言うものもないなら、
「だが、ゴブリンがいることに変わりはない。群れの長は、
夕暮れ時、ゴブリンスレイヤーとフードの彼は、茂みに身を隠しながら作戦を練っていた。
ゴブリンと一言で言っても、意外と種類があるのだ。
他のゴブリンに比べ大柄で、筋力が人間のそれを越える『
背丈は変わらないが、魔法の類いを操ることの出来る『
━━と、今の二人が実際に遭遇したことがあるのはそのくらいだが、もちろん他にも、
ホブより戦闘に特化した『
戦闘でも、呪文でもなく、統率力に特化した『
なんてものもいる。紹介こそすれど、彼らがそれと遭遇するのは今ではない。
基本的に夜行性であるゴブリンを相手に、ゴブリンスレイヤーは太陽の高い昼間を狙って襲撃していた。
そんな時、フードの彼がこう告げたのだ。
『おまえが食事中でも兜を脱がないように、ゴブリンにも警戒心はあるだろう。俺なら自分が一番眠い時間帯には仲間に頼んで見張りをさせる』
『その見張りが出てくる前か、見張りも眠くなる時間。奴らにとっての早朝や夕方、深夜に攻めたほうがいいのではないか?』
その二つの意見に、ゴブリンスレイヤーは首を縦に振った。
どこか経験に裏付けられたフードの彼の提案は、すんなりとゴブリンスレイヤーに届いたのだ。
その結果、日が傾き始めた夕暮れ時に、二人は攻撃を始めることにした。
『攻撃』と言っても、簡単なことである。
フードの彼がエアライフルを腰で構え、グレネードランチャーに手を添える。
そこから放たれた爆弾は、巣穴の入り口気持ち上に当たり、爆発した。
爆音を響かせ、ゴブリンたちが根城にしていた洞窟の入り口が、文字通り潰れる。
あの他に出入口がないこと、ここ周辺の地盤が、爪や斧程度で削れるほど柔ではないことを、昼間に確認を終えている。
グレネードランチャーがなければ、入り口を潰すなんて作戦は取れなかっただろう。
二人は崩れた洞窟の入り口に歩み寄り、耳をたてた。
中からはガリガリと壁を削る音が僅かに聞こえてきた。
塞いだ入り口に空いた僅かな隙間から、ゴブリンの瞳が覗いていることに気づく。
その隙間にエアライフルの銃口を捩じ込み、『バーサークダート』を撃ち込んだ。
壁を削る音に、狂った笑い声と断末魔が入り混ざり、肉が引き千切られる音と共に消えた。
瞬間、入り口を塞ぐ岩が少しずつ動き始める。
凄まじい力によって、少しずつずらされているのだ。
二人は少しずつ下がり、フードの彼は左手のアサシンブレードを抜刀、固定し、右手に先日のゴブリン退治で手に入れた錆びた短刀を構える。
金がなければ武器は買えぬ。
世知辛いことこの上ないが、防具は衣装の下に着込んだ革のベストがある。それがあるだけ贅沢だろう。
「来るぞ」
「わかっている」
フードの彼の警告に、ゴブリンスレイヤーは腰に差した中途半端な剣を抜く。
その瞬間、岩が転がされ、五匹のゴブリンが飛び出してきた。
フードの彼は右手の短刀を投げ撃ち、一匹のゴブリンの喉元に当てる。
「一つ」
その直後、二匹のゴブリンが飛びかかる。
左右に別れて躍り出た二匹は、時間差で飛び出していったが、それが不味かった。
先に飛びかかった右のゴブリンが首を捕まれ、遅れて飛び出した左のゴブリンの棍棒を防ぐ盾にされる。
冒険者を葬ろうと放たれた渾身の振り下ろしは、仲間の頭蓋を砕くだけにとどまった。
そして、そんな盾にされた無様な奴を嘲笑おうとした瞬間、そのゴブリンの眼窩に刃が滑り込んだ。
瞬きをする暇もなく脳を貫かれ、脳髄に突き刺さった刃を捻られ、そのゴブリンは死に絶えた。
抜刀したアサシンブレードの刃を戻しながら、横目でゴブリンスレイヤーに目を向ける。
「三つ。そっちは━━」
「合わせて五つ。問題ない」
聞けば言い切る前に返答が返ってくる。
ここしばらく、同じ依頼をこなすこの二人は、もはや『
二人の視線は洞窟に戻る。
「GOBRGOBR!!!」
群れのボスと思われるホブが一。
その取り巻きのゴブリンが再び五。内約は、棍棒二、槍一、剣二である。
ゴブリンスレイヤーは血に塗れた剣を逆手に握り、振りかぶると、それを投げ撃った。
それは寸分の狂いなくホブの首を貫き、ホブは血泡を吹いて膝をついた。
足元の斧を蹴り上げ右手で掴むと、フードの彼のほうにちらりと目を向ける。
「……棍棒は慣れんのだがな」
血に混ざって髪の毛がこびりついた棍棒を手に、そんな事をぼやいていた。
残ったゴブリン五匹がどうなったのか、それは語るまでもないだろう。
━━━━━
「工房長、頼んだものはどうだ」
辺境の街に戻ったフードの彼━━流石に街中ではフードをとっている━━は、ゴブリンスレイヤーと別れてギルドに併設された武具屋に来ていた。
彼の入店に『工房長』と呼ばれた男は、老いと共に蓄えられた髭をしごきながら、長年火を見続けても焼かれなかった右目を向ける。
「ああ、おまえか。出来たが、こんなちっこい鉄の球を何に使うんだ?」
そう言いながら、その鉄球の詰まった袋をカウンターの上に置く。
『ジャリ……』と、鉄球がぶつかり合う音が僅かに漏れた。
フードの彼は苦笑を漏らし、こう返す。
「物は何でも使いようだ。兜だろうが盾だろうが、相手を殴れば殺せるだろう?」
飾られた武器防具には目を向けず、袋を開けて中身の鉄球をつまみ上げる。
角度を変え、時には目を凝らしながら、数分に渡ってその鉄球を凝視した。
その鉄球を袋に戻し、不敵な笑み。
「買おう、いくらだ」
「『作り直せ』とか抜かしおったら、ぶん殴ろうと思ったんだがな」
工房長は冗談━━のはずだ━━を叩くと、金槌で凝り固まった肩を叩きながら、カウンターに仕舞われた
と言っても、そこまで高額という訳でもなさそうだ。
フードの彼も算盤の動きでそれを理解したのか、金貨を取り出しながら小さく首を傾げる。
「ずいぶん安いな」
「材料は鉄の削りカスだからな。こっちとしちゃ、無駄なゴミが減って助かったところよ」
「……大丈夫なのか」
「削りカスでも、鉄は鉄だ。溶かして固めりゃ、何にでも変わる」
「……」
フードの彼は少し訝しげにしながら、手のひらの上で袋の重さを確かめる。
そんな彼の様子に、工房長はため息を吐いた。
「何に使うかはわからんが、ギルドの裏で試したらどうだ?小せぇが、演習場になってるからよ」
「……そうしよう」
踵を返すフードの彼の背中に、工房長は声をかけた。
「いい加減マシな武器でも持ったらどうだ?ゴブリン退治でも、身の入りはあるだろうが」
腰のベルトに引っ掛けるように納められたのは、錆びが目立つ一本の剣だ。
服は一丁前だが、剣がそれでは格好もつかない。
━━まあ、格好つけて死んだら元も子もないが……。
多くの新人冒険者は、自分が『英雄』だの『勇者』だのになれると信じているものが多い。
いきなり「魔剣や聖剣はないのか?」や「兜は格好がつかないからいい」と言うものがいるほどだ。
そういう意味では、フードの彼は異端者だった。
工房に顔を出しても、雑多の武器を見るだけで買わず、時折籠手は見るものの、それ以外の防具には目もくれず、いきなり『小さな鉄球』を作ってくれと頼んできたのだ。
見本を見せられ、「金は払う」と言われてしまえば断る訳にはいかず、見繕いはしたものの━━。
フードの彼は少し悩むように顎に手をやり、陳列された剣に目を向けた。
その中の雑多の数打ちの片手剣を持ち上げ、振って見せる。
一切ぶれることなく、正面に相手がいれば、間違いなく胸を真一文字に切り裂くであろう一振り。
それだけで彼には心得があることを察せぬほど、工房長の目は腐っていない。
声には出さずとも、工房長は感嘆の息を吐いた。
常連であるゴブリンスレイヤーの話から、フードの彼はただの『
だが、それにしては口調が素っ気なく、英雄譚に憧れているような様子も、貴族出だからとこちらを下に見るような様子もない。
工房長の推理をよそに、フードの彼は首を傾け、先ほど振った片手剣を棚に戻す。
「……軽すぎるな」
次に両手剣を手に取るが、それは持っただけですぐに戻す。
「……重すぎる」
さらに他の武器に目を向けるが、手に持つ袋に目を向けて息を吐いた。
「また今度だな。こいつを試さないと」
フードの彼はそう言うと工房を後にした。
工房長は髭をしごき、ふむと息を吐く。
彼が持ち上げたものは、どれかはわかっている。
武器の使い方は、その使い手次第だ。だが、そもそも使われないのでは、こちらの沽券に関わる。
「まあ、ついでだな」
誰に言うわけでもなく、工房長は呟いた。
フードの彼が振った二振りの間を射抜ける剣を━━『
久しく忘れていたように思える、特定の個人のために武器を打つ感覚。
それを、フードの彼は思い出させてくれたのだ━━━。
━━━━━
辺境の街のギルド。
その裏にある演習場に、フードの彼はいた。
ギルドのカウンターで許可を取り、この時間は誰も使っていないことも確認を済ませた。問題ない。
右腰に差した二つの筒━━フリントロックピストルのひとつを抜き、
ゆっくりと息を吐きながら右手で構え、そっと引き金を引いてみれば、『バン!』という銃声と共に久しく感じることのなかった衝撃が腕を駆け抜け、上に跳ねあげた。
弾は的に見立てた藁人形の胸に当たり、めり込んでいた。
ピストルを肩に担ぎ、何度か頷く。
大きな問題はなさそうだが、弾と火薬の補充が安定して出来るのか、そこが問題だった。
工房長に頼めばどちらも買えるが、弾はともかく火薬の料金がバカにならないのだ。
フードの彼はため息を吐き、天を仰ぐ。
天高く飛ぶ鷹が、呑気に「キィー」と鳴いていた。
思わず撃ち落としたい衝動に駆られたが、撃ったところで当たりはしないだろう。
再び大きなため息を吐き、左手にもう一挺のピストルを取り出し、装填、構えて、撃つ。
弾の命中を確認し、ピストルに不備がないことも確かめると、ジャグリングよろしく一回転させた。
深い意味のない行動だが、気を紛らわす程度の意味はあるだろう。
空になった二挺に弾を込め、腰のホルスターに押し込む。
「さ、さっきの音は何ですか!?」
髪を三つ編みにした受付嬢が演習場に駆け込んできたのは、それとほぼ同時だった。
荒れた呼吸と額に浮かぶ汗から、慌てて走ってきたことがわかる。
フードの彼は何食わぬ顔で受付嬢に問いかける。
「何かあったのか。そんなに慌てて」
「さっき、二回ほど『バン!』って音が鳴りましたよね!?な、何の音ですか!?」
慣れぬ事態に困惑しているのか、目をぐるぐる回しながら身ぶり手振りを交えて訊く受付嬢。
フードの彼は「ああ……」と呟き、二挺のピストルを見せる。
「これの音だ。ようやく使えるようになったから、試しに使ってみたんだが……」
「……その小さな筒から、あんな大きな音が?楽器、ではないですよね?」
「『銃』という物だ。火の秘薬の爆発を利用して、鉄球を放つ武器と言えばいいのか、俺の故郷ではよく見たんだがな」
「銃、ですか……」
受付嬢は恐る恐る手を伸ばすが、それより早くフードの彼はピストルをホルスターに押し込んだ。
「素人が触っていいものじゃない。怪我するぞ」
「……え、あ、はい。ごめんなさい」
何となく残念そうに手を引っ込める受付嬢に、フードの彼は困ったように息を吐いた。
「……気になるか?」
「え!?いや、大丈夫です!危ないものなんですよね?」
「こいつを暴発させて、顔が傷だらけになった奴を知っている。おまえも女性なんだから、そうはなりたくないだろう」
「……まあ、そうですね」
フードの彼の気遣いに、受付嬢は髪を弄りながら俯いた。
聞いたことのない音の確認に来てみれば、まさか新しい武器を試していただけとは……。
「俺としても、おまえの綺麗な顔に傷をつけたくない」
「……え」
「父から『世話になる女性には優しくしろ』と教えられたからな」
「ああ……」
いきなり口説き始めたわけでもなく、ただ心配しただけのこと。
変に身構えていた受付嬢は、気の抜けた声を漏らした。
フードの彼はそんな彼女の脇を通り、ギルドの中に戻ろうとする。
その背中に、受付嬢は声をかけた。
「あ、あの!」
「む」
反応したフードの彼に、受付嬢は何かを言おうと口をもごもごさせているが、肝心の言葉が出てこない。
フードの彼は何かを察したように頷き、苦笑しながら言う。
「次からは音が出ることを伝える。それでいいか」
「……は、はい」
言いたかったことを先に言われ、確認までされてしまった。
もはや頷くことも出来ない受付嬢と、そんな彼女を心配するように見るフードの彼。
その二人の姿を、歯ぎしりしながら覗いていた槍を担いだ男がいたことを、受付嬢は気づくことはなかった。
ギルドに戻ったフードの彼は、ギルド端のいつもの席に腰をかけ、困ったように息を吐いた。
まさかあれやこれやとやっているうちに、ゴブリンスレイヤーが一人でゴブリン退治に向かうなど、誰が思うだろうか。
━━そもそも、あいつに勝手についていったのは俺か……。
「来るな」とも「来い」とも言われたことがないが、もしかしたら迷惑だったのかもしれない。
好んで単独行動をする奴に無理やりついて回るのは、むしろ危険だ。
━━グレネードの作り方は一通り教えたはずだから、大丈夫だろう。
数が出てきても、グレネードをうまく使えば切り抜けられるはずだ。
尤も、ゴブリンスレイヤーとフードの彼とでは、肝心のグレネードの作り方が根本的に違うところがある。
ゴブリンスレイヤーは『多くの材料』を揃え、見繕った『作業台』の上で、爆発させないように『慎重に』製作しなければならない。
それに対してフードの彼はと言うと、拾ってきた『骨五本』を『適当な場所』で、『大雑把に』弄るだけで製作が完了する。
その結果にゴブリンスレイヤーは目を丸くしていたそうだが、残念ながら兜のスリットで見ることは叶わなかった。
二人はしばらくその違いを考えていたのだが、その答えはいまだに出ない。
━━そもそも、二人は住む世界が別なのだから、『システム』が違って当然なところなのだが。
「むぅ……」
一人で考えていても仕方ないと、フードの彼は
諸々と準備をしていたため、ほとんどの依頼書は無くなっており、白磁で受けられる依頼は、下水道の
ゴブリン退治は、彼の相棒が請け負ってしまったのだろう。
「むぅ……」
顎に手をやり、僅かに唸り声をあげるフードの彼。
クエストボードを眺めて悩むその姿は、どこにでもいる『冒険者』の姿だ。
そんな彼に、恐る恐る近づいていく勇敢な人がいた。
「あ、あの~?」
「なんだ」
フードの彼は返事をしながらも、邪気や敵意がなかったにしろ、接近に気づかなかった自分を恥じる。
フードの彼は振り返り、その声の主を確かめた。
そこにいたのは、銀色の髪の女性だった。
長い髪を高く結い、その背は彼ほどではないが、同年代の女性にしては割りと高めだろう。
その身長に反して、顔立ちには何となくまだ幼さを残り、キラキラと輝く希望に満ちた銀色の瞳をしていた。
その豊満な胸には目もくれず、フードの彼の視線は彼女の四肢にいっていた。
程よく筋肉のついた手足から、おそらく『武闘家』であると仮定して、身につける防具はどれも真新しい。
首から下げた白磁の認識票が、自分と同じ『新人』であることは教えてくれた。
彼の視線をじろじろ見られていると思ったのか、銀髪の武闘家は摺り足で右足を半歩下げる。
蹴りでも放たんとする彼女だったが、その前に男の口から言葉が漏れる。
「よく鍛えられているな。それに、俺の故郷では余り見ない髪の色だ」
「え?えと、ありがとうございます……?」
いきなり誉められた━━彼女はそう判断した━━ことへの礼が漏れ、構えを解いて表情を和らげた。
フードの彼はそんな彼女の反応に首を傾げ、話が進むのを待つ。
向こうから声をかけてきたからには、何かしら話があるのだろう。
「「………」」
━━だが、始まらない。
じっとフードの彼に見つめられる女武闘家は、顔を赤くして俯くだけだ。
二十秒程の沈黙を破ったのは、フードの彼のほうだった。
「━━で、俺に声をかけた理由は」
「その、実は、私たち、これから『洞窟探検』に行くんです」
「そうか、頑張れよ」
フードの彼は短くそう返し、クエストボードに目を戻すが、後ろで括った髪を何度か引かれ、女武闘家のほうに振り返る。
「なんだ。俺の髪はドアノブではないんだが……」
「実は、組んだ
その言葉を聞いたフードの彼は、クエストボードと反対の位置にある座席のほうから、ちらちらとこちらの様子を伺う二人を見つけた。
一人は仕事中の自分と同じようにフードを被っているが、そこから覗く犬を思わせる長い鼻から、『
もう一人は長い耳の青年だ。その耳と芸術品のように整った顔立ちから『
二人ともテーブルに杖を立て掛けているあたり、『魔法使い』か『聖職者』なのだろう。
つまり、前に出て戦えるのは━━種族による身体能力の差はともかくとして━━女武闘家だけ。
「そこで俺に声をかけた、と」
ちらりと受付に目を向ければ、書類を捌きつつも時々手を止め、心配そうに女武闘家の様子を伺う受付嬢の姿があった。
━━彼女、優しすぎるな……。
冒険者を死地に送り込む手続きをする身分の人が、そんなそわそわしてどうするのだ。
誰かが死んだ時、無駄に責任を感じているのではないか。
フードの彼は小さく苦笑いをこぼし、「わかった。付き合おう」と答える。
「本当ですか!?」
「何を驚く必要がある。頼まれたなら、手伝うさ」
「ありがとうございます!二人とも、大丈夫だって!」
女武闘家がそう告げれば、先ほど見つけた二人からも「おお!」と声があがった。
即席で作られた白磁四人の
手早く準備を整えたその五人は、まだ見ぬ『洞窟』を目指して出発した。
フードの彼の『始めての冒険』は、こうして始まったのだ━━━。
誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。
期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー
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見たい!
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別にいいです……。