SLAYER'S CREED   作:EGO

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Memory14 森の祝福を

 数日後、森人の里。

 ローグハンターは痛みの引いた体の具合を確かめるように首を鳴らし、軽く肩を回す。

 剥がした包帯を丁寧に丸め、雑嚢へと押し込んだ。

 自分の血が滲んだものだ。捨てるとはいえ、この里に捨てていくこともないだろう。

 一通りの片付けを終え、ローグハンターは机の上に放置された袋に目を向けた。

 老年の上森人が残していったもの。気になりはしていたが、一度も開くことはなかったものだ。

 指の運動がてらと乱暴に袋を開け、中身を引きずり出す。

 まず入っていたのは森人手製の上下一式の服。これは深くは詮索すまい。

 問題なのは、その次に出てきたものだ。

 

「む……」

 

 一言で言えば、それはローブだった。

 動き易さを重視したのであろうそれは、外套(コート)にも似たデザインをしている。

 先日幻の中で見たケンウェイ船長のものとに似ているが、青を基調としていたあちらに比べ、こちらは黒を基調としていた。

 アクセントとして胸やフードの付け根が赤く染色されており、よく見れば裾の端に複雑な紋様━━おそらく森人たちが好むものだろう━━が刻まれている。

 腰帯代わりに使うであろう赤い布は、新品なのか汚れ一つない。だが、よく見れば、より濃い赤色で裾のものによく似た紋様が刺繍されていた。

 只の服だと言っていたが、これのどこが只の(・・)服なのだ。

 これは、どう見ても━━━。

 

「アサシンの衣装だろう……」

 

 苦笑混じりに呟き、触り心地を確かめる。

 上質な布を使っているのか、何とも優しい肌触りだ。森人手製のものということは、戦闘にも耐えうるものだろう。

 ローグハンターは数瞬迷い、ため息を吐き出す。

 見た限りアサシンの紋章はない。まあ、先生とてアサシン時代の服を着ることはあったのだから、そこまで気にすることではないだろう。

 自分にそう言い聞かせて森人の服に袖を通し、赤い布を腰に巻く。

 彼はそのローブを身に纏い、腰帯で纏めて固定。

 狙ったかのようにサイズがぴったりなのは、まあ目を瞑るとしよう。着心地は、前の服とは段違いに良い。

 試しにフードを被り、具合を確認。嘴の装飾がないのならそれで良いかと、すぐさまフードを取り払った。

 首をゴキゴキと鳴らすと右手首にアサシンブレードを仕込み、抜納刀に支障が出ないかを確認。

 次いでピストルを手に取り、眉を寄せた。

 銃身が歪み、火打石をはじめとした部位が欠け、もはや銃の形をした鉄屑と成り果てているのだ。

 ホルスターも、(かろ)うじてそうであったとわかる程度にしか形を留めていない。

 ホルスターの方はともかく、ピストル本体は専門家でない自分では整備は出来ても修理は不可能。

 工房長に頼むとしても、どれほどの時間と金がかかるのやら……。

 考えても仕方ないと壊れたピストル二挺とホルスターを纏めて雑嚢に押し込み、問題の『謎の三角形』二つを手に取る。

 ほのかに金色に輝くそれらは、心なしか熱を持っている。

 距離を離せば輝きが失せ、熱が下がっていく所を見るに、この二つが共鳴でもしているのだろう。

 二つの掌の上で弄びながら軽く肩をすくめ、最終的にはいつも通りに懐へとしまう。

 二つが共鳴したというのとは、似たものがもう幾つかあるという事だ。アルタイルの書物と同時進行で、それらを探さねばならないのかもしれない。

 再びため息を漏らすと、部屋を出た。

 前に出たときよりもしっかりとした足取りで、迷うことなく廊下を進んでいき、彼らの元へとたどり着く。

 

「あ、先生!おはようございます!」

 

「もう、朝からはしゃがないの。おはようございます」

 

「ああ、おはよう」

 

 彼の到着に真っ先に気づいた令嬢剣士と女魔術師との挨拶を済ませると、つられるように他の冒険者たちも彼に挨拶をする。

 

「おお、衣装を変えたのですな。似合っておりますぞ」

 

「頭巾の!あの壊れた仕込み刀を見せろい!」

 

「遅かったじゃないの。ま、気持ちはわからなくもないけど」

 

 蜥蜴僧侶、鉱人道士、妖精弓手が言うと、ローグハンターは空いている席につきながら困り顔で頬をかいた。

 

「とりあえず、誉めてくれたことには礼を言う。あとあれは後で見せるから落ち着いてくれ。最後にお前と一緒にするな」

 

 三人に順を追って返答し、蜥蜴僧侶は目玉をぎょろりと回して笑みを浮かべ、鉱人道士は「そうだの」と一旦深呼吸、妖精弓手は「なにおう!」と食ってかかる。

 そんな彼女を無視し、女神官、受付嬢、牛飼娘に目を向けた。

 

「そっちもおはよう」

 

「おはようございます。あの、お怪我の具合はどうですか?」

 

「問題ない。心配かけたな」

 

 彼が微笑混じりに言うと、受付嬢が「そうですよ、まったく」と不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「帰って来たと思ったら、いきなり倒れたんですからね」

 

「武闘家さんが慌てちゃって、大変だったんだよ~?」

 

 牛飼娘が言うと、「そうか」と返してゴブリンスレイヤーの方へと目を向ける。

 

「で、あれからどうだ」

 

「ゴブリンは来ていない。お前はどうだ」

 

「大丈夫だ。って、何度言わせる」

 

「すまん」

 

「いや、別に良いが」

 

 ローグハンターは苦笑混じりにそう返し、部屋を見渡して彼女がいない事を確認した。

 誰かに聞くまでもなくタカの眼を発動し、とりあえず部屋で寝ている事だけを視認する。

 いつも通りの彼女の姿に肩を竦めると、妖精弓手が机に頬杖をつきながら言う。

 

「それにしても、あんたが騎士ねぇ……」

 

「何か不満でもあるか」

 

 バレたからには仕方ないと開き直り、不満そうな声音で妖精弓手に返す。

「別にないけどさ」と呟くと、蜥蜴僧侶が逞しい尾を一度振り、ローグハンターに言った。

 

「ふむ、これからは斥候殿ではなく騎士殿と呼ぶべきか。しかし、騎士でありながら斥候も出来るとは」

 

「いや、斥候呼びで構わない。むしろその方が気が楽だ」

 

「それならば、いつも通りに呼ぶとしよう」

 

「にしても、頭巾のが騎士のぉ……」

 

 鉱人道士が髭をしごきながら言うと、ローグハンターは「まだ何かあるのか?」と問いかける。

 

「いや、鱗のが言ったけんど、騎士にしちゃ、随分と斥候してんよな」

 

「騎士と一括りに言っても、仕事は様々だ。会計担当の非戦闘員だとしても、騎士団の一員なら騎士と呼ぶだろう?」

 

「ああ……。そんなもんか」

 

 何かを懐かしむように放たれた言葉に、鉱人道士はそれ以上掘り下げるのを止め、残り僅かな火酒をあおった。

 もうすぐ式だというのにほんのり顔が赤くなっている彼の姿に苦笑を漏らすと、ローグハンターは再び彼女がいる部屋に目を向ける。

 壁を透過する無慈悲なタカの眼が、彼女が既に起きている事を教えてくれた。

 なぜ出てこないのかと目を凝らすと、なにやらベッドの上で頭を抱えて悶えている様子。

 ローグハンターは仲間たちに一言入れると彼女の部屋の前に足を進める。

 ドアの前に立ち、ノックしようと手を挙げるが、

 

『出来ることなら、生涯共に居て欲しい』

 

『お前を守る。俺の生涯をかけて』

 

 先日言った事を思い出し、赤面しながら手を引っ込めた。

 何を迷っている。いつも通りに声をかけて、いつも通りに起こせば………。

 

 ━━いつもは勝手に起きてくるのを待っているんだったな……。

 

 そのいつも通りとは何かを考え始め、一旦ドアに背を向ける。

 そして彼女が既に起きている事を思い出すのに時間を費やし、ようやくドアを開けた。

 

「すまん、起きてるか」

 

「あ……」

 

 そして、着替え中の(・・・・・)銀髪武闘家と目があった。

 下着を着ているとはいえ、鍛えられつつも女性的な柔らかさを保つ彼女の体は、男なら誰しもが見惚れるものだろう。

 先日告白をした恋人同士なら、特に。

 お互いに目を合わせて固まること数秒。

 ローグハンターはそっと視線を外し、銀髪武闘家は勢いよくベッドのシーツを剥ぎ取って体を隠す。

 何を今さらと思うが、先日の一件で妙に互いを意識している彼らからしてみれば、少々ハードルが高いのだろう。

 ローグハンターは視線を泳がせ、シーツにくるまった銀髪武闘家に言う。

 

「お前が最後だ」

 

「だよね。ちょっとだけ聞こえたよ」

 

 その短いやり取りを最後に、二人は再び黙りこんだ。

 いつもなら更に二三やり取りをするのだろうが、先日の一件で妙に互いを意識している二人にはハードルが高いのだろう。

 シーツの隙間から彼の姿を見つめ、銀髪武闘家はため息を吐いた。

 

「傷、また増えたね」

 

「ああ……」

 

 元からあった口元や額の傷に加え、顔や首には大小様々な傷が増えている。

 見える範囲でそれなのだから、ローブの下は酷いものだろう。

 銀髪武闘家はシーツから顔を出すと彼に歩み寄り、そっと頬を撫でた。

 温かい彼女の手に自分の手を重ね、ローグハンターは微笑を漏らした。

 

「だが、まだ生きてる。それで良いだろ」

 

「ま、そうだねぇ」

 

 彼の微笑に微笑み返し、銀色の瞳と隻眼の蒼い瞳が見つめ合う。

 そのまま少しずつ顔を近づけ━━……、

 

「……何をしているんですか」

 

 触れ合う直前に聞き馴染んだ声が聞こえた。

 ローグハンターは肩を竦め、首だけで振り向いて声の主に目を向ける。

 そこにいたのは半目でこちらを睨んでいる女魔術師。

 やれやれと言うように首を左右に振る彼女の姿に、ローグハンターは申し訳なさそうに言う。

 

「ただ起こしに来ただけだったんだが、遅くなった」

 

「式は夜なので多少遅い程度なら気にしませんが、せめて扉を閉めてください」

 

 開け放たれたままのドアに手を添えながら言うと、銀髪武闘家が顔を赤くしながら俯いた。

 

「それはすまん」

 

 悪びれた様子もなく言うと、女魔術師は思わずため息を漏らす。

 何だかんだで、この銀等級二人はいつも通りだ。

 それはまさしく素晴らしい事だろう。

 見せつけられる側の気持ちはさておいて━━━。

 

 

 

 

 

 二つの月が天の頂きへと昇り、満天の星が輝きを放ち始めた頃。

 里中の森人と冒険者たちが大広間へと集い、高座に視線を集めていた。

 地べたにあぐらをかいて腰を降ろし、葉の皿の上には料理━━何かの虫を蒸したものだろうか━━と果実、酒杯は巨大な木の実。

 それらを囲む客人たちを見下ろす高座は、大きく張り出した大樹の根の上にあり、そこには本日の主役たる新郎新婦の姿がある。

 皆が集まった頃を見計らい、里の古老が二人に向けて恭しく頭を垂れた。

 

「では各々方、誓約の御言葉を」

 

 古老の言葉に新郎新婦ははにかむように視線を交わらせ、そっとお互いの手を握り合う。

 

「━━━━━━━」

 

「━━━━━━━」

 

 輝ける兜の森人は堂々と、花冠の森姫は薄く染まった頬を隠すように俯いての言葉。

 森人の言語で紡がれた言葉の意味はわからぬけれど、きっとめでたい事に違いない。

 それを証明するように、ざわり、ざわりと大樹が枝を揺らして笑って見せる。

 

「森からの言祝(ことほぎ)、聞かれましたかな」

 

 歩み出た祭祀の言葉に、二人の男女は幸福そうに目配せし、頷いた。

 

「では、答礼を」

 

 祭祀は大弓と矢を二人へと差し出す。

 この日のためだけに(あつら)えられた、イチイの弓と木芽鏃の矢だ。

 輝ける兜の森人が弓を取り、花冠の森姫が矢を手に取る。

 祭祀が一礼して退くと、二人は寄り添い、弓を構えた。

 夫となる輝ける兜の森人が持ち上げた弓に、妻となる花冠の森姫が矢を(つが)え、二人で弦を引き絞る。

 狙いは天に。二つの月と星々の煌めく空へ。

 広間の屋根であった枝葉が独りでに道を開き、吹き抜けとなっていく。

 輝く星々は神々の瞳であると言ったのは、果たして誰だっただろうか。どちらにしても、これほどの祝福は他にはあるまい。

 森と神々からの祝福を受けた二人の手から、堅琴の如き音色を立てて矢が放たれた。

 星空へと消えていった矢は、落ちてくる気配はない。

 いずれ、ここの誰も知らぬ場所に落ち、新たな森を作り出す事だろう。

 

「誓約はここに成った!」

 

 放たれた矢を見送った祭祀が、高らかに宣言する。

 森人と、森と、神々の下、婚礼は認められ、祝福されたのだ。

 

「今宵は上の森人が結ばれた日として、長く語られる事となろう!」

 

 途端、森人たちは盛大に声をあげて手を打った。

 どこから取り出したのか、森人たちは各々の楽器を片手に持ち、無い者は音に合わせて歌を唄う。

 先ほどまでの静謐(せいひつ)さはどこにやら、飲めや歌えやの大騒ぎである。

 森人とは長命だ。否、その一生は長過ぎる。

 精神は老成したとしても、祝祭を口実に騒ぎたいのは変わらないのだろう。

『何もない日』が減るほど宴は増え、それを祝ってまた騒ぐ。

 世に特別でない日はないのだと、ある森人は言ったそうだ。

 大広間の端で歌い踊る森人たちを眺めつつ、ローグハンターはちびりと葡萄酒を舐めた。

 鉱人道士は見た目は若い森人に囲まれ質問攻めにあい、蜥蜴僧侶は出された料理を次々と平らげていく。

 ゴブリンスレイヤーは会場の端で美しく着飾った牛飼娘と受付嬢となにやら話し込み、女神官は妖精弓手と女魔術師、令嬢剣士と談笑している。

 つまり彼だけポツンと孤立しているわけで、何やら疎外感を感じさせる。

 と言っても、森人たちとて彼を放っておこうと思っている訳ではない。

 だがしかし、かつて里を訪れた(アルタイル)を思わせる彼の雰囲気は、何とも話しかけにくいものだ。

 そして、その雰囲気を断ち切るのはいつだって彼女だ。

 

「こんな端っこで、何やってるの?」

 

「ん?」

 

 料理を乗せた葉皿片手に、女性森人たちの手で着飾られた銀髪武闘家が彼の隣についた。

 いつも一纏めにしている銀髪は三つ編みとなり、唇には薄く紅が塗られ、纏うドレスは彼女の髪と同じ色。

 筋肉質とはいえ、その立ち姿はどこかの国のお姫様のようだ。

 酒は飲んでいない様子だが流石に恥ずかしいのか、その頬は赤い。

 ローグハンターは何度か瞬きすると、フッと小さく笑って見せた。

 

「綺麗だ」

 

「はぅ……!」

 

 ド直球に告げられた言葉に銀髪武闘家は顔を隠すように頬を押さえて俯くが、真っ赤に染まった耳が彼女の気持ちを教えてくれる。

 尤も、ローグハンターは見てなくともわかるかもしれないと思ったのだが、その話は良いだろう。

 彼は上機嫌そうにニコニコと笑い、大広間に視線を向けながら言う。

 

「どうにも、俺の居場所はまた違うと感じてな」

 

「ま、まあ、ここは森人の里だし?」

 

「そういう意味で言った訳じゃあないんだが、まあ良い」

 

 そう言うとまた葡萄酒をちびりと舐め、ホッと息を吐いた。

 今回の目的であったアルタイルの話をある程度だが聞くことが出来た。ついでに結婚式にも参加した。

 だが━━━、

 

「今回は、無くしてばかりだな……」

 

 本来そこにあるべきアサシンブレードのない左手首と、様変わりした衣装を見ながら言うと、銀髪武闘家がその手を取った。

 

「でもさ、私もキミも皆も、こうやって生きてるでしょ?」

 

「そうだな。生きていればどうとでもなるか」

 

「そうそう」

 

 ぎゅっと互いの手を取り合い、満面の笑みを浮かべる二人は、結婚式の主役以上に夫婦をしているように見える。

 

「うむ、若さは良いのぉ」

 

「ッ!」

 

「ふぁい!?」

 

 いきなり告げられた言葉に二人は反射的に手を離し、ローグハンターはすばやく身構え、銀髪武闘家はすっとんきょうな声をあげた。

 

「む、驚かせてしまったかの」

 

 いつの間にか二人の背後にいたのは、フードを目深く被った老年の上森人だ。

 彼は申し訳なさそうに言うと、銀髪武闘家の持つ葉皿から果実を一つ拝借し、咀嚼し始めた。

 

「アルタイルですら見ていない景色じゃぞ?もっと楽しまんでどうする」

 

「そう言われると光栄なのだろうが、こういうのにはどうにも慣れなくてな」

 

 ローグハンターは肩を竦め、葉皿から果実を拝借。

 それを手の上で弄びながら、老年の上森人に問いかける。

 

「で、小言を言いに来たわけではないだろう?」

 

「おうともさ。何、次にいつどこで会うかを言いに来ただけじゃ」

 

「なるほどな」

 

 そう言いながら果実をかじり、強烈な酸味に眉を寄せて咳き込んだ。

 銀髪武闘家がそんな彼の背を叩く中で、老年の上森人は言う。

 

「この宴が終わり、陽が天頂に昇る頃、この大樹の根元で会おう。良いか」

 

「━━ゲホッ!あ゛あ゛……!わかった。宴が終わるのはいつだ」

 

「三日か、あるいは四日か。あやつらの気が済むまでじゃな」

 

 冷める気配のない宴の熱を眺めつつ言うと、ローグハンターはやれやれと左右に首を振る。

 銀髪武闘家は葉皿の上に残された虫の蒸し焼きをどうするかと手をさ迷わせる。

 そんな彼女に助け船を出すためか、老年の上森人が輝ける兜の森人と並び立つ花冠の森姫━━今や森の(きさき)となった女性の方を示した。

 

「そろそろ始まる頃合いじゃろう。行ってこい」

 

「何が始まるんだ」

 

 ローグハンターが小首を傾げて問いかけると、「儂ら森人も、只人(ヒューム)も、やることは変わらん」と返すのみ。

 その言葉で察しがついたのか、銀髪武闘家は遠慮気味にローグハンターに目を向けた。

 

「でも、私は出会いも告白も済ませちゃいましたし……」

 

「形だけでも良いから行ってこい」

 

「何をするのかはわからないが、俺の事は気にするな」

 

「むぅ、わかった。行ってきます!」

 

 渋々と言った様子で頷くと、葉皿をローグハンターに手渡し、慣れぬドレスで駆けていく。

 彼女の背中を見送ったローグハンターに、老年の上森人は問う。

 

「こちらに来た理由を知ったとして、お主はどうする」

 

 突然の問いかけにローグハンターは眉を寄せるが、すぐに表情を緩めた。

 

「何もかも終わらせて、あいつと━━」

 

「それが許されぬとしたら?」

 

 ローグハンターの言葉を遮り、老年の上森人の鋭い声が放たれた。

 有無を言わさぬその言葉には、数万年と積み重ねてきた年季と、友との誓いを果たさんとする確かな意志が込められている。

 

 ━━━彼女と共にいることが許されないとしたら?

 

 そんな事、今まで考えた事もなかった。

 誰に許されないのか。なぜ許されないのか。そんなもの決める権利が誰にある。

 

「まあなに、もしもの話じゃよ。お主が彼女と共に歩みたいと言うなら、きっとあれ(・・)は役に立つ」

 

「……そうだと良いんだが」

 

 ローグハンターが力の抜けた声音で言うと、会場から歓声があがった。

 見てみれば森の后が投げた花冠に、女性たちが手を伸ばしている。

 そう言えば、結婚式にはあんな儀式もあった気がするなと、ローグハンターの脳裏に過った。

 

「愛はさだめ、さだめは死。悔いのない道を選ぶと良い、若者よ」

 

 老年の上森人は詩を唄うようにそう言うと、大広間に背を向けて闇へと消えていく。

 ローグハンターは横目でその背を見送り、また大広間へと目を向けた。

 花冠は、果たして誰の手に乗ったのか。それは、ここで語ることではないだろう。

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー

  • 見たい!
  • 別にいいです……。
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