SLAYER'S CREED   作:EGO

9 / 150
Memory08 帰還

 名も知らぬ盗賊団を壊滅させたフードの彼は、一度フードを脱いで捕らわれた仲間たちを解放していく。

 周辺の警戒を頼むために男三人を先に解放し、最後に裸で拘束されている女武闘家の元へと向かう。

 

斥候(スカウト)さん……」

 

「……」

 

 声をかけられても返すことはなく、手早く彼女を解放する。

 いきなり拘束を解かれた女武闘家は倒れそうになるが、フードの彼はしっかりと支えてやった。

 先ほど回収した毛布を被せ、風に晒されていた体を温める。

 女武闘家は顔だけを出し、フードの彼の視線から逃れるように俯いた。

 自分のせいで、彼は死にかけたのだ。恨み事を言われても、受け入れるしかない。

 

「少しいいか……」

 

「……はい」

 

 不意に声をかけられ、女武闘家はゆっくりと顔を上げた。

 その瞬間、彼女の視界に飛び込んできたのは、無表情で左手のアサシンブレードを展開しているフードの彼の姿だった。

 

「ッ!……」

 

 彼女は一瞬驚きはしたものの、それを受け入れた。

 殺しかけたのだから、殺されても仕方がない。

 先ほど見せてくれた彼の動きや、頭目に向けた最期の祈りの言葉を見れば、きっと苦しませるなんて事はないだろう。

 彼の左手が閃いた瞬間、彼女はギュッと目を瞑った。

 だが、聞こえてきたのは首を貫く音ではなく、「ブチッ!」という糸か何かを斬った音だった。

 次に感じたのは、自分の髪が後ろで纏められ、何かで結ばれたことだ。

 

「……?」

 

 恐る恐る目を開けると、そこには微笑するフードの彼がいた。

 後ろで纏められていた髪が、だいぶ短くなっていることを除けば、いつも通りだ。

 フードの彼は優しく女武闘家の髪を撫で、優しく言う。

 

「この髪型のほうが似合っている」

 

「え……」

 

 髪紐が千切れて以降そのままとなっていた髪が、誰かの髪紐で止められている。

 目の前には髪紐が必要ないほど短髪になった彼がいて、自分の長い髪は後ろで纏められいる。

 つまり、彼は自分の髪を切り、使っていた髪紐を渡してくれたのだ。

 彼の笑みとその声音に、思わず涙が溢れそうになった女武闘家は、必死にそれを堪えながら声を出す。

 

「…あ、あの、斥候(スカウト)さん……?」

 

「どうかしたか?」

 

「私のせいで、あなたは━━」

 

「死にかけたが、こうして生きてる。問題あるか」

 

 大したことのないように言うフードの彼に、女武闘家は耐えきれなくなった。

 目から涙が垂れ、毛布を濡らす。

 

「でも、私……」

 

「気にするなと言ったんだがな。俺としては、必死になって這い出たのに、肝心のおまえらがいなくて驚いたぞ」

 

「……うん」

 

 反論は許さんと気迫を放つ彼の言葉に、女武闘家は頷いた。

 それですぐに涙が止まるわけではなく、もちろん流れ続ける。

 フードの彼は止まらない涙を拭ってやり、困ったように笑う。

 これでは、妹の相手と同じではないか。まあ、あの生活は嫌いではなかったが。

 

「あー、お二人さん?」

 

 そんな二人に、男戦士が控えめに声をかけた。顔の腫れがだいぶましになっているのは、森人司祭の奇跡によるものか。

 腰に差したマチェットは、盗賊の誰かからくすめたものだろう。

 フードの彼は気にする様子はなく、平然と「どうした」と訊き、女武闘家は顔を赤くして俯いた。

 男戦士は居心地悪そうに頬をかき、「いてっ」と声を漏らす。

 

「とりあえず、ここで夜明けを待って、街に戻るのは明日にしよう。あの司祭さんが、明日の朝一番にちゃんと供養してやりたいんだとさ」

 

「そうだな。少し、休むか……」

 

 どこか気の抜けた声を出すフードの彼の目は、僅かばかり目が虚ろになっていた。

 それに気づいたのは、至近距離の女武闘家だけだ。

 斥候(スカウト)として廃坑では誰よりも神経を研ぎ澄まし、生き埋めになった壁から自力で這い出し、僅かな痕跡を追って走り続け、そのまま戦闘を繰り広げたのだ。

 今日一日だけで、彼の負担は洒落にならないものになっている。

 肉体が誰よりも休息を求めているのに、彼は無理を通して立ち続けている。それだけで、もはや奇跡と言っていい。

 それでも彼は、男戦士に訊いた。

 

「……獣人は、どこに行った……。地図がなければ、依頼は失敗だ……」

 

「ああ、無事だよ。今は盗られた俺たちの荷物を探し回ってる」

 

「そうか……」

 

 フードの彼が返事をするが、その体が揺れる。

 咄嗟に女武闘家が支えたが、彼はもう限界だった。立っていられる気力もない。

 だが、無理をした結果仲間を全員助け出せたのだ。それでいいだろう。

 

 ━━運は自分で掴むもの。

 

 失敗(ファンブル)を叩きだしても、諦めずに次の行動で成功(クリティカル)にしてしまえばいい。

 成功すると思わなければ、何事も上手くはいかないだろう。

 フードの彼は満足そうに笑い、その意識を手放した。

 耳に響くのは、怪しげな囁き声でも、下卑た笑い声でもない。ただ優しい、こちらを心配する仲間たちの声だった。

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 

 翌日、夕暮れ時の辺境の街のギルド。

 そこに勤める受付嬢は、内心穏やかではなかった。

 昨日の昼に『廃坑の地図製作(マッピング)』に向かった一党が、いまだに帰ってこないのだ。

 廃坑から街の距離を考えても、そこまで時間がかかるものでもない。何かしらのトラブルに巻き込まれたのではないか。

 

「はぁ……」

 

 深いため息を吐き、書類に目を落とす。

 今日も今日とて、様々な依頼が舞い込んでくる。

 早めに依頼を終えた冒険者たちが、併設された酒場で騒ぐ。

 そんな中、ギルドの自由扉が開き、とある一党が帰ってきた。

 その瞬間、騒がしかったギルドが静まりかえる。

 

「ふぅ。やっとたどり着きましたな」

 

「やれやれだ。あのような目には二度とあいたくない」

 

「ああ。もう洞窟に潜るのは止そうかな……」

 

「……でも、いい経験になりました?」

 

「ついた、のか……?」

 

 ボロボロのローブに、折れた杖を持った獣人魔術師。

 杖をその用途通りに使い、ふらつく足を必死に支える森人司祭。

 若干やつれた様子の、顔に痣が残る男戦士。

 出発時とはまったく違う装いだが、まだ軽症に見える女武闘家。

 そんな彼女に支えられ、今にも倒れてしまいそうなフードの彼。

 

「な、何があったんですか!?」

 

 強大な魔物にでも襲われたような装いの彼らに、堪らず受付嬢が声をかけたことを誰が責められよう。

 他の冒険者たちも、そんな彼らに注目していた。

 彼らの言葉に耳を傾けようと、集中しているのだ。もしドラゴンやデーモンに襲われたのなら、その付近の依頼は避けることを考慮しなければならなくなる。

 獣人魔術師が、再度作り直した『廃坑の地図の完全版』と、何かが詰まった袋を受付嬢に手渡す。

 

「依頼は完了しました。が、見てわかるように少々問題に巻き込まれまして」

 

「……あの、こちらの袋は?」

 

 地図を確認した受付嬢が袋を開けようとすると、森人司祭が待ったをかけた。

 

「見る前に覚悟を決めておいてくれ。刺激が強すぎるものだ」

 

 森人司祭の真剣な忠告に、受付嬢は表情を引き締める。

 そっと袋の紐を緩め、その中身を確認する。

 だが、それは受付嬢には重すぎた。

 彼女は声にもならない悲鳴をあげ、その袋を取りこぼす。

 カウンターから落ちた袋は、大きな音をたてながらその中身を床にばらまいた。

 

『━━っ!』

 

 それを見た冒険者たちも、顔を青くしたのは当然だろう。

 明日を心配するほど酔っていたはずなのに、それも一瞬で覚めてしまうほどの衝撃を、それは与えたのだ。

 それは認識票だった。志半ばで力尽きた冒険者たちの名残にして、彼らが危険に挑んだ確かな証拠。

 一つや二つなら、まだ納得出来ただろう。

 だが、彼らが持ち帰ったのは、十数個の認識票だ。白磁や黒曜に混ざり、鋼鉄や翠玉、果てには紅玉まで含まれている。

 

「……あ、あの、この認識票を、どこで……」

 

 獣人魔術師が落ちた認識票をかき集めるなか、受付嬢は放心しつつも問いかけた。

 それに答えたのは男戦士だった。

 ボリボリと不機嫌そうに頭をかき、簡単に説明を始める。

 

「例の廃坑にはゴブリンがいた。それは片付けたんだが━━」

 

 そこまで言うと、後ろの女武闘家とフードの彼に目を向ける。

 フードの彼は彼女に支えられ、もはや指定席となっているギルド端の椅子まで歩いていた。

 

「廃坑の一部が崩落して、フードのあいつがそれに巻き込まれた。で、救出しようとしたら、盗賊団━━『百目団』とかいうのに襲われた」

 

「盗賊、百目団、ですか……?」

 

 そんな名前を、都での研修中に聞いたような気がする。

 最近力を付け始めている盗賊団の噂が流れ、その名前がそんな奇妙なものだったような……。

 

「━━で、生き埋めになったフードのあいつ以外が捕まった。そんで、まあ……」

 

 言葉に詰まる男戦士。

 あの出来事を隠すことなく伝えたところで、受付嬢は信じてくれるかどうか。

 だが、伝えなければならないだろう。冒険者は、信頼が第一だ。

 

「そこから這い出たフードのあいつが、一人で壊滅させた。俺たちが手を出す暇なんかなかったよ」

 

 包み隠さず告げられた言葉に、ついに受付嬢はフリーズした。

 いつもなら、突飛な話を聞いても嘘だと聞き流すか、同僚と共に真偽を問いただすところだろう。

 だが、大量の認識票と彼らの状態が、それが事実だと告げている。

 フードの彼をよく見れば、黒い衣装に赤い斑模様が浮いているのだ。おそらく、盗賊たちの返り血だろう。

 

「ふむ、やはり刺激が強すぎたか」

 

「ですが、報告をしなければ報酬は貰えませんので」

 

「盗賊に懸賞金でもかかっていれば、また装備を揃えられるんだがな……」

 

 森人司祭、獣人魔術師、男戦士はそう言うと、受付嬢に目を向けた。

 瞬きをしているから死んではいないようだが、いまだにフリーズしていることに変わりはない。

 

「受付さん、大丈夫か?おい」

 

 男戦士が彼女の顔の前で手を振り、意識を確かめる。

 その行動でハッとして戻ってきた受付嬢は、獣人魔術師が集め直した認識票を確かに受け取った。

 

「……報告、ありがとうございます。依頼の報酬はお渡ししますが、その盗賊討伐の報酬は待っていてください。一度上に訊いてみないことには、わかりません」

 

 盗賊団の脅威度や規模によって、報酬は異なってくる。

 彼ら全員から調書をつくり、それをまとめて上に報告し、然るべき報酬を渡す。

 ただでさえ忙しいというのに、大きな仕事が出来てしまった。だが、それが仕事だ。割り切るしかない。

 ふと、冒険者たちの目がフードの彼に集まっていることに気づく。

 今の話が本当なのか疑い、もし本当なら引き抜こうとしているのだろう。

 話題の彼は睡魔と殴りあっているのか、薄く目を開きながら舟をこぎ、女武闘家に寄りかかっていた。

 その女武闘家の顔が真っ赤になっていることに、気づいた様子はない。

 受付嬢は地図製作の報酬を用意し、五等分してそれを手渡す。

 男戦士が三人分受け取り、それらをフードの彼と女武闘家に手渡す。

 その日、彼らは馬小屋ではなく、だいぶ安いが宿に泊まったそうだ。

 干し草では、取れる疲れも取れないだろうから━━━。

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 

「━━これが、俺のやったことだ」

 

 ギルドの一室で、フードの彼は椅子に腰掛けながら堂々とそう告げた。

 あの日なにがあり、なにをして、何人をどう殺した。

 訊いてもいないのに事細かく答えてくれたのは、彼の親切か、それともさっさと終わらせたいからか。

 それを聞いていた受付嬢は、口の端を引きつらせながら、助けを求めるように隣の同僚━━法を司る至高神に仕える監督官━━に目を向けた。

 この世界には、『看破(センス・ライ)』と呼ばれる奇跡がある。

 相手の嘘を見抜き、真実を口にさせるものだが、フードの彼には無意味だった。

 彼は、何人をどう殺したかに至るまで、何一つ嘘をついていないからだ。

 監督官は一度息を吐き「全て本当みたい」と返す。

 彼と一党を組んでいた他の冒険者に訊いたところで、返ってくるのは同じような内容だ。

 

『フードの彼が、盗賊団を単独で壊滅させた』

 

 この事に、嘘偽りはない。それが証明されてしまった。

 彼は銅等級でもなければ銀等級でもない、ただの駆け出し、白磁等級だ。

 盗賊団の討伐など、鋼鉄等級からの仕事だと言うのに。

 フードの彼は正面の二人を一瞥すると、苦笑した。

 

「もういいか?工房長に呼ばれているんだが」

 

「ああ、はい。大丈夫です……」

 

 酷く疲れたといった表情の受付嬢に、フードの彼は首を傾げる。

 ただ起きたことを正確に報告しただけだというのに、なぜ目の前の二人は困り顔なのか、わからないのだ。

 

「では、失礼する」

 

 フードの彼は端的にそう告げると、足早に部屋を後にし、まっすぐ工房に向かう。

 彼の去った部屋で、受付嬢と監督官がため息混じりに机に突っ伏したことを、知ることもなく。

 

 

 

 

 

 歩いて数分の工房に入ってみれば、そこにはいつもの工房長がいた。

 工房長はフードの彼の姿を認めると、睨んでいた書類の束をカウンターの下にしまいこむ。

 

「おお、来たか」

 

「何か用か。鉱石を取ってこいというのなら、依頼を出せ」

 

「……その言葉遣いは大目に見てやるとして、ほれ」

 

 言うが早いか、工房長はそれを取り出した。

 その剣は、ゴブリンスレイヤーのものとは別の意味で中途半端なものだった。

 柄は両手で持てるように長くなっているが、両手剣にしては剣身は細いし短く、片手剣にしては長すぎる。

 まさに『中途半端な剣(バスタードソード)』と呼んで、差し支えない一振りだ。

 いきなり剣を差し出され困惑するフードの彼をよそに、工房長は剣を片手で持ち上げ、それを差し出した。

 

「振ってみろ」

 

 フードの彼は無言で受け取り、僅かに目を見開いた。

 重すぎず、軽すぎず、柄もしっかりと手に馴染む。

 まるで、自分のために鍛えられたようなこの一振りは、一体なんだ。

 

「……工房長、これはなんだ」

 

 興奮しているのか、僅かに声を震わせるフードの彼に工房長は不敵に笑んだ。

 

「武器を持たない冒険者様に、武器を打ってやったんだ。金額はこんなもんだな」

 

 出された算盤で金額を確かめ、フードの彼はその分の金貨を差し出した。

 そこまで安いというわけでもないのだが、何の躊躇いもなく即決である。

 金貨を噛んで確め、本物とわかれば話は早い。

 

「鞘は?」

 

「いらん。邪魔だ」

 

「盾は━━いらねぇか」

 

「ああ。俺には合わん」

 

「他に何かいるものは?」

 

「……短剣はあるか」

 

「ほれ、そこだ」

 

 指差された先で、フードの彼は雑多の短剣を持ち上げ、すぐ次へ、すぐ次へと繰り返す。

 そして、手に馴染んだ短剣を手に取ると、それをカウンターにそっと置いた。

 

「いくらだ」

 

「こんなもんだ。まあ、数打ちものだからな」

 

「買おう」

 

 この短時間で二振りの剣を手にいれ、短剣を右に、バスタードソードを左に下げる。

 重いバスタードソードを左に下げ、右に二挺のピストルと短剣を下げることで、重心のズレを僅かにだが誤魔化す。

 今のフードの彼の姿は、歴戦の戦士にすら見えるだろう。そんな風格を放っている。

 これでまだ白磁等級なのだから、詐欺もいいところなのだが。

 フードの男は小さく笑むと、工房長に礼を言った。

 

「工房長、感謝する。弾まで作ってもらったというのに、この剣まで」

 

「そう思うなら、もっと防具を買うなりしてくれ」

 

「防具を着込むのは苦手なんだ。勘弁してくれ」

 

 フードの彼はそう言うと、工房を後にする。その足取りは僅かばかりに嬉しそうだ。

 工房長は肩をすくめ、他の冒険者から注文された品を作っていく。

 

 ━━あいつとは、長い付き合いになりそうだ。

 

 柄にもなく、そんなことを思いながら━━━。

 

 

 

 

 

 ━━━━━

 

 

 

 

 

 それから一ヶ月ほど経った頃。

 

「……」

 

 ゴブリンスレイヤーは一人いつもの席に座り、指輪を眺めていた。

 仕事を共にすることになった、この盤の外を目指した魔術師が、その最後に渡してきた指輪。

 彼女がどうなったかを想像するのは、自分の役目ではないだろう。

 ふと、ゴブリンスレイヤーは顔を上げ、フードの彼の姿を探した。

 いつからか女武闘家と一党を組み、よく依頼に出ているそうだが……。

 見当たらないあたり、また、件の女武闘家と他の仕事に出ているのだろう。最近は、仕事の時間の影響なのか、話す機会がだいぶ減ったように思える。

 いや、なぜ彼を頼りにしているのだ。ゴブリン退治など自分一人でやれば、それで良いだろう━━。

 

「どうした、悩み事か?」

 

「む……」

 

 不意に声をかけられ、顔をあげる。

 そこにいたのはフードの彼で、短くなった黒髪と腰の左右に下げた剣のせいで、また違う雰囲気を纏っていた。

 フードの彼は、何も言わずに依頼書を見せつける。

 近隣の村に出たという、ゴブリン退治の依頼書。参加するメンバーは、彼とゴブリンスレイヤーの二人だけ。

 

仕事(ゴブリン)だ、行くぞ」

 

「そうか」

 

 ゴブリンスレイヤーは立ち上がり、その依頼書を確認した。

 数はそこまで確認されていないから、『渡り』と呼ばれる潰された巣穴の生き残りだろう。

 その渡りは数年も立てば上位種になるのだから、今のうちに潰すに限る。

 二人はギルドを後にして、街の外を目指す。

 そんな中、ゴブリンスレイヤーが口を開いた。

 

「……あいつはどうした。一党を組んでいただろう」

 

「女というのは、男に比べて繊細だ。おまえも気を遣ってやれ」

 

「……むぅ」

 

 どこか出来の悪い弟に言い聞かせるような言葉に、ゴブリンスレイヤーは小さく唸る。

 フードの彼は、ゴブリンスレイヤーの幼なじみのことを知っているのだろう。

 最近、その二人があまり話していないことも含めて、お見通しといったところか。

 

「今度はあいつも連れてくるか。女だが、優秀な武闘家だ」

 

「そうか。なら、()()をやらねばな」

 

「……?」

 

 盤の外を目指す者がいれば、盤の外から来た者もいる。

 奇妙なことに、ゴブリンスレイヤーはそのどちらとも面識があった。

 片や彼の元から去り、片や彼の隣を歩いている。

 

「たまには他の依頼を受けないのか?」

 

「俺がその依頼をこなす間に、ゴブリンが村を滅ぼすだろう」

 

「……おまえらしい答えだな」

 

 彼はゴブリンスレイヤー。後に『辺境最優』と慕われることとなる、最弱の魔物である小鬼を殺す者。

 

 隣を歩くのはフードの男。後に『辺境最強の一角』『ならず者を殺す者(ローグハンター)』と恐れられることとなる、まだ駆け出しの冒険者。

 

 

 盤の外から来た冒険者。

 

 

 これは、彼の物語だ━━━。

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、アドバイス、感想など、よろしくお願いします。

期限は『Extra Sequence01 いと慈悲深き地母神よ』が完結してから+1週間です。随分と今更な事を聞きますか、ダンまちとゴブリンスレイヤーコラボイベント『Dungeon&Goblins』にログハン一党をぶち込んだものをーー

  • 見たい!
  • 別にいいです……。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。