パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
前島:アーズが働く建設現場の親方
笹原:同じ建設現場で働く同僚
沢渡:同じ建設現場で働く同僚
●クイラ王国
アーズ:クイラでは有名な大工(ドワーフ)
これが終わったら、ロウリア編になります。
ロウリア編はちょっと?残酷な描写もあります。
俺はアーズ。
クイラ王国で大工をやっていて、クイラ国内ではそこそこ有名だと自負できるくらいだ。
その名声から、勅命を受けて文明国である日本の技術を学びに来ている。
(日本に来てもう一月か……)
俺は乗車率150%を超える電車に揺られながら木造住宅の建設現場へと向かう。
結構キツイがこれでも昔の200%超に比べれば余裕があるらしい。
現在はバス路線の自動化で乗換えを含めるとバスの方が早くて楽であることも多いそうだ。
それだけの人数が、この近辺に住んでいるなんてと驚いたものだ。
日本に来てからは驚きの連続であったが、なれとは恐ろしいもので、今では事あるごとには驚かなくなった。
「おはようございます、親方」
「あぁ、おはよう。アーズはいつも早いな!それに比べて……」
前島親方の野太い声が返って来る。親方は人族なのに結構ガタイがいい。
親方が話していると、後ろから誰かの走ってくる音が聞こえた。
「おはよーございまーっす!! あっぶね!また親方にどやされるとこだった!」
「おはよう!笹原! 今日は早ぇえじゃねぇか。」
同僚で一番若い笹原君が走って出社してきた。
元々黒い髪らしいが、茶髪に色を変えたミディアムショートくらいの若者だ。
たしか、年齢は19歳だったはずだ。
「いやぁ、アーズさん早すぎっすよ……。はぁはぁ……まだ……始業まで30分もあるじゃないすか……。」
「クイラじゃ日の出から働くからなぁ」
「えぇ~……。日の出は無理っす……。」
「まぁ、アーズみたく早く来いとは言わねえよ……。だけど、お前はいつも始業ギリギリじゃねえか。」
「だから頑張ったじゃないすか……。はぁ……。」
こんな感じだが、仕事になるとしっかりプロの顔になるのだから驚かされる。
始業の頃には他の面子も集まり、今日の仕事が始まる。
この時間キッチリというのは中々なれないが、時計という時間が分かる機械があるからだろう。
俺も親方から貰った腕時計を見つつ、仕事に取り掛かる。
「アーズ!例の魔法頼めるか?」
「はい!親方! くぁwせdrftgyふじこlp……」
筋力アップの魔法が親方達にかかる。
これは地面に足が着いているときにしか効果がなく、ドワーフの俺には大した効力のない魔法だが、親方達には好評だ。
俺は魔法のかかった親方達より2倍の量の建材担ぎ上げて、運んでいく。
「やぁ~アーズさん、マジすげぇっすね。俺、そんなに持ったら潰れちゃうわ。」
「何、俺がやれる事をやるだけだ。俺はドワーフだからな、力だけは人よりある。笹原だって、俺が使えないツレーン?とか色々な機械を扱えるじゃないか」
そう、ドワーフは他の種族より筋力がかなり高い。それに手先も器用だ。その分、魔法適正が低いのと足がとてつもなく遅い。
俺が他の面子よりできるのはこれくらいだ。それくらい日本人の技術力は高く、俺がクイラで井の中の蛙になっていたかが分かる。
「クレーンっすよ、アーズさん。でもホント助かりますよ。アーズさんの魔法がなかったら、これだって厳しいっすもん。」
「笹原ァ!!口より手をうごかせぇ!!」
「はいぃ!!!」
俺は同僚達に手ほどきして貰いながら仕事を進めていく。
覚える事はたくさんあるが、それだけ伸びしろがある事に嬉しく思う。
仕事が終わって、親方や同僚たちと飲み屋へ向かった。
「「「かんぱーい!!」」」
「今日でこの現場も無事完了だ!みんな!今日は俺の驕りだ!飲め!!」
「「「あざーーっす!!!」」」
日本の酒は本当に美味い。
ここのチェーン店の酒は安物だそうだが、それでもクイラの酒より美味い。
以前、給料でそこそこいい酒を買ったら、いつの間にか無くなっていた程だ。
「アーズさん、マジ酒好きっすね!」
「あぁ。ドワーフは誰もが酒が好きだ。しかも日本の酒は美味いしな!」
「嬉しいっすね。外国の人に日本のお酒をうまいって言って貰えるの。」
「本当に美味いからな。クイラでも輸入してるみてぇだが、希少価値が高いらしくてな……。貴族様じゃなきゃ飲めねぇらしい。」
「じゃあ、沢山飲まないとっすね! アーズさんグラス空いてるっすよ!」
酒を飲みながら笹原と話したり、他の同僚とも話していると――――
「アーズ? そいやオメェ、故郷に嫁さんがいるんだってな?」
「えぇ、イアンの街に嫁と子供達が7人います。」
前島親方がなんとなく強引に話を変えたように感じる。
「すげぇ子沢山ですね。アーズさんまだ35歳でしたよね?」
「あぁ。嫁も同い年だ。沢渡さんは確か……」
「そうですよ……俺、今彼女も居ないし……。いいなぁ……アーズさん。」
沢渡さんは確か27歳くらいだったはずだ。
どうも日本ではクイラやクワ・トイネと違って、20代、30代での結婚は珍しくないらしい。
あぁ……そうか。
親方は非文明国の俺達と仲を取り持ってくれようとしているのか。
「沢渡さん。俺の親戚か、知り合いの子や、誰か紹介しましょうか?どんな娘がタイプなんで?」
「ええっと……。元気な娘がいいかな?」
照れたように沢渡さんがタイプを教えてくれる。
「えぇ~~!! いいな~! 俺も俺も!! アーズさんみたいに一緒に酒飲めて、引っ張ってくれる人がイイっす!!!」
「沢渡さんは肉食系の獣人の娘がいいかな? 笹原は俺の姪はどうだ?」
この後も、笹原のように紹介して欲しいという同僚達の相手で時間が過ぎて言った。
仕事が一段落したから、彼女なしの面子で合コンってのをクイラ王国のイアン市で開く事になった。
「わりぃな。催促しちまったようで。」
親方は酔い潰れた笹原を背負って、俺に謝罪した。
「いえ。俺を……俺達をちゃんと扱ってくれて嬉しいです。」
文明国から見ると、俺達みたいな非文明国は野蛮人だのなんだの言われる事が多いし、同じ人として扱ってくれる事は少ない。
パーパルディアが統べる第3文明圏なんて、非文明国の人間を奴隷としか思っていないくらいだ。
それに比べると日本は俺達を対等に扱ってくれる。それだけでも嬉しい。
「何いってんだ。俺達は仲間だろうが。」
「……ありがとうございます。」
俺は酔い潰れた沢渡さん達4人を背負って、親方達と酔いつぶれた仲間を背負い、寝かせるためにカプセルホテルへ運んでいった。
俺達を仲間だって言ってくれた今日のことはきっと忘れないだろう――――
クイラなどの他国視点で書いて見ました。
他にも病院勤めのエルフ達もいたり、少数ですが日本で異世界の人たちが活動を始めています。
ちなみに、イアン市での合コンは成功して婚約までこぎ着けた人も多いです。
沢渡は16歳の犬耳獣人と、笹原も16歳のドワーフと婚約できました。
●ドワーフ
男女共に2m近い長身。
筋力が高く手先が器用で、酒が何よりも好物。
足は遅く、魔法適正も低い
男性はゴツくてカッコイイ。
女性は姉御肌な人が多い。
●エルフ
弓と魔法が得意。
筋力は低く華奢な人たちが多い。
野菜や穀物が好きで、肉は余り好まない。
女性は綺麗で神秘的な美しさがある人が多い
男性は知的で端整な顔立ちをしている人が多い
●獣人
亜人の中では一番人数も種族も多い。
身長は様々で人間に近い。
特徴は種族によりまちまちで、
狐耳族はエルフよりで魔法適正が高く、
牛耳族はドワーフよりで筋力が強い。
肉食獣をモチーフにした人は、元気な人が多く
草食獣をモチーフにした人は、大人しいかおっとりした人が多い。
(マイラはそうでもないですが……)