パラレル日本国召喚   作:火焔

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登場人物
●日本国
大内田:陸軍中将

●クワ・トイネ公国
モイジ  :ギムの将軍
ハンキ  :中央第1騎士団団長
トルティー:南東第1騎士団団長

●ロウリア王国
アデム:クワ・トイネ討伐軍副将



04. 決着!ギム攻防戦02

 両軍はギムの南にて激突する。

 

 クワ・トイネ重装歩兵隊の鋼鉄の槍が、ロウリア重装歩兵隊に襲い掛かる。

 粗悪な鉄の盾の薄い部分に鋼鉄の槍が偶然当たると、盾を突き破りロウリア兵を貫いた。

 

 だが、それだけの装備差がありながら戦線は拮抗していた。

 ロウリアは数だけでなく、技量差も勝っているからだ。ロウリア重装歩兵隊の槍は、並んだ鋼鉄の盾の隙間を縫いクワ・トイネ兵に突き立つ。

 

「くそっ……!押し切れねぇ!!」「これ以上押し込まれるな!」

 

 歩兵は互角。ならば歩兵を援護する弓兵の差は?

 

「リーカブ・ボウ部隊は敵重装歩兵部隊を斉射! コンパウンド・ボウ部隊は敵弓兵まで飛ばしてやれ! 魔導師部隊はコンパウンド・ボウ部隊の援護だ!」

 

 魔導師部隊の空気抵抗軽減魔法が、エルフで構成されるコンパウンドボウの射程を大きく伸ばす。

 射程400mまで伸びた矢は、重装歩兵部隊の上空を超えてロウリア弓兵に襲い掛かる。

 

「くっ退け! 何でこんな所まで矢が飛んで来るんだ!!」

 

 ロウリア弓兵部隊は後退してしまったため、クワ・トイネ弓兵の矢がロウリア歩兵に降り注ぐ。

 対して、ロウリア弓兵は射程圏外に移動してしまったため、歩兵を援護できずにいた。

 

 こうして中央部は、弓兵の援護を得たクワ・トイネ軍が徐々に戦線を押し返していく。

 

 だが、両翼の軽騎兵はやや劣勢だ。

 クワ・トイネ軍の騎兵はアルミニウム合金の装備を身に纏い致命傷を防いではいるが、だが数と技量差で劣る為にキルレシオが1:1に留まっている。

 

 

◆◆ 戦場東部の森 ◆◆

 

「ふむ。我がクワ・トイネ軍は奮戦しておる。そろそろ頃合か?」

 

 クワ・トイネの将軍ハンキは日本から借り受けた双眼鏡で戦況を見守る。

 ハンキが率いるは、日本製の鋼鉄の装備と馬具を身に纏うクワ・トイネ重騎兵2,000。

 西の森には南東騎士団団長のトルティーが同数の重騎兵を従えて控えている。

 

 ハンキは自分とトルティーに日本から贈与された腕時計を見つつ機をうかがう。

 戦線が膠着してから00分、または、30分になったときに森から奇襲をかけて、東西からロウリア兵を騎兵突撃で蹴散らす作戦だ。

 

(10:30分まで後5分。)

 

「総員!騎乗せよ!」

 

 重厚な全身鎧を身に纏った部下達が、同様に重装備の馬に跨る。

 もちろんこのままでは重過ぎて効果的な突撃は出来ない。

 

 10:29になったのを確認しハンキは次の指令を部下に出す。

 

「総員!【風神の抱擁】を使用!!」

 

 風神の抱擁は装備重量を軽減する魔石だ。本来は高価な品だが、数を揃えるため品質は低く効果時間は短い。

 日本国民がクワ・トイネの農業を手伝ってくれたため、余剰の資産で少しずつ集めていたのだ。

 

(56……57……58……59……)

 

「突撃ぃぃ!!!!」

 

 10:30分丁度にハンキたち率いる重騎兵2,000騎は森から飛び出し、ロウリア軍へと突撃を開始する。

 魔石の力で鋼鉄の鎧は軽量化され、速度と重量の乗った重騎兵の突撃がロウリア軍の左右から襲い掛かる。

 

「なっ!伏兵か!? 側面に注意せよ!!」

 

 ロウリア軽騎兵の隊長は、いち早くハンキとトルティーの側面攻撃に警戒する。

 しかし、クワ・トイネ軽騎兵がそれを許さない

 

「ロウリアの蛮族共め! 俺達から逃げるのか!?」

 

「クソ農奴の分際で調子の乗ってんじゃねぇぞ!!!」

 

 ロウリア兵はこの挑発に過剰に反応してしまう。元々、想定外に苦戦を強いられてイライラしていたロウリア兵は、この挑発に正面への攻撃に集中してしまう。

 それが勝敗を決してしまった。

 

 ハンキとトルティーはその隙を突き、ロウリア軽騎兵を側面から粉砕していく。

 ロウリア兵がボウリングのピンの様に吹き飛ばされて宙を舞い、ロウリア軽騎兵は壊滅的な損害を被る。

 

 【風神の抱擁】による軽量化で打撃力が低下すると思われがちだが、実際はそうではない。

 魔石の力は加護下にある者達にのみかかり、ロウリア軽騎兵には鋼鉄装備の重量がそのまま載って来るのだ。

 物理法則を無視した力が魔法によってもたらされる。

 

 ロウリア軽騎兵を蹂躙した東ハンキと西のトルティーは中央のロウリア兵へ襲い掛かる。

 ハンキはそのまま重装歩兵の弱点である右側面に襲い掛かる。

 それに対しトルティーは右に進路を変更し、孤立している弓兵へと襲い掛かり、魔導師部隊もろとも踏み潰していった。

 

 

 

 ハンキとトルティーの突撃がロウリア軍を粉砕し、戦場を離れていった。

 

「全軍停止せよ。」

 

 ハンキの指示で重装騎兵は戦闘地域外で馬の足を止め馬から下りる。

 それと同時に【風神の抱擁】の効力が切れて、鋼鉄鎧の重量がズシっと体にかかる。

 今回買った【風神の抱擁】では一度の突撃するだけの時間しか効果が継続しないのだ。

 だが、それで十分だった。

 

 ロウリア騎兵はハンキたち突撃で壊滅し、クワ・トイネ軽騎兵の追撃により殲滅。

 ロウリア弓兵も重装歩兵も壊滅状態になり、クワ・トイネ軽騎兵が包囲した。

 もはや、情勢は決した。だが――――

 

「諸君!鋼鉄の装備を半分まで減らし戦線に復帰するぞ!」

 

 トルティーはギムに帰還したが、ハンキはロウリアを徹底的に叩き潰す算段だ。

 目指すは弓兵の奥に居る敵将アデム。

 

 ハンキは仲間達に包囲され殲滅させられて行っているロウリアに目もくれず弓兵を殲滅、そして奥の本陣へと突撃を仕掛ける。

 

 

「貴様が敵将だな!!」

 

 ハンキはロウリア軍先遣隊の隊長でクワ・トイネ討伐軍副将のアデムを発見し襲い掛かる。

 

「こんな所で栄光ある俺の歴史を終わらせてたまるか!!」

 

 アデムは手近にあった槍を投擲する。しかし、ハンキの持つ鋼鉄の盾がそれを弾く。

 ハンキとアデムの力量は互角。だが、馬上でしかも装備が大きく勝るハンキにアデムは窮地に立たされ……ついに捕らえられる。

 

「くそぉ!それが文明国の――――日本の武具か! 俺達はクワ・トイネなんぞに負けたんじゃない! 日本に負けたんだ!」

 

「そんな事、我々の方がわかっている。」

 

 喚くアデムを尻目に、ハンキはアデムの攻撃を全て防いだ盾と鎧に目を向ける。

 あれだけの攻撃を受けて凹みも歪みもないことに日本の強大さ、技術力の高さを再認識した。

 

 

 

 ギムはクワ・トイネ軍の勝利に、勇者達の凱旋パレードに大きく湧いた。

 この勝利はクワ・トイネにとって奇跡であり、負け続けた国民にとって大きな自信へと繋がる。

 三日三晩続いた戦勝祝いは、将来クワ・トイネの祝日になるほどであった。

 

(今回は勝利する事ができたが……)

 

 モイジは思う。

 

 今回戦ったロウリア軍は7万、その殆どを殲滅できた。こちらの被害は1万。だが、ロウリア陸軍の15%も減らせていない。

 このまま戦い続ければ、ジリ貧になるのは目に見えている。

 ハンキ将軍も、トルティー将軍も考えに至っているだろう。

 

 

 モイジは部下を連れて、日本軍駐屯地へと向かった。

 日本軍駐屯地には、1万を超える兵が住むためにアパートと呼ばれる2~3階建ての同じ形をした建物が多く建っている。

 一体どんな魔法を使って……いや、魔法ではないのか。魔法の如き技術を使って短期間で立てたのか。

 

「大内田閣下、時間をとらせてしまって申し訳ない」

 

「いえ、問題ありませんよモイジ閣下。この度は戦勝おめでとうございます。」

 

「日本のお力添えあっての事です。クワ・トイネの誰もがそれを理解しています。」

 

「僅かな助力をしたに過ぎません。此度の勝利はクワ・トイネ公国の努力の賜物ですよ。」

 

 日本でありがちな、褒め合いが続く。

 日本は謙遜しているが、モイジは日本の援助がなければ完敗していた事を今までの経験で知っている。

 

 

「それでですが、次の戦いには日本のご助力を頂戴したく……」

 

「畏まりました。モイジ閣下のご依頼、謹んで拝命させていただきます。」

 

「おぉ……!それは助かります。」

 

 大内田も理解していた。クワ・トイネは今回は勝利できたが、同じ戦いを繰り返せばやがて物量差に押しつぶされるだろうと。

 それに日本軍も戦費を使ってここまで来て何もせず帰ってきたのでは面目が立たない。

 

(海軍は大活躍したらしいしな……。我が陸軍も少しくらい戦果が欲しいところだ。)

 

 村々の惨状と戦後にロウリア軍駐屯地で遭遇した、まるでドラキュラ公の様に串刺しにされた村娘達を見た日本陸軍は、クワ・トイネの為に戦いたいと戦意が昂ぶっている。

 

 

「それともう一つお伺いしたいのですが。」

 

「はい。何でしょうか?」

 

「ここで日本の方々が住まわれている住居は、戦後如何されるのでしょうか?」

 

「?? 破棄しますが……?」

 

「折角真新しい住居があるのに、破棄は勿体無いかと思います。貴国さえよろしければクワ・トイネの住居区にさせて頂ければと。」

 

「機材は持ち帰るので建物と家具だけになってしまうのですが、それでもいいのですか?」

 

「はい。家を建てるのにもお金と労力が多くかかります。これだけの住居があれば直ぐにでも開拓が始められます。」

 

 大内田は少し考えるが電化製品や精密機械は全て持ち帰るし、確かに作った住居を捨てるのは勿体無い。

 3Dプリンターで作られた家なので、コストは普通に建てるよりかかっていない。

 

(このくらいの家でもいいのならば、3Dプリンターで作った家を開拓団用に販売できるかもしれないな。この件と併せて相談してみよう。)

 

「本国に問い合わせる必要はありますが、多分いい返事が出来ると思います。」

 

「それはよかった!」

 

 モイジと大内田は今後の作戦について相談した後、モイジを見送った。

 

 

(ふむ……。手早く終わらせるには、アレを使うのが効果的だろうな。それにしても、海軍の戦闘報告書は壮絶だったな)

 

 大内田は、昨日行われた西ロデニウス海戦の報告書に再度目を通す――――

 




●風神の抱擁
風の力と思われているが、実際は重力を制御する魔法で属性としては土に属する。
使用者、使用者に属するものに斥力の力が働くが、それ以外の者には通常の重さがかかる。
斥力を発生させるのみの単一機能であるため、気圧の方向を自由に操る風神の涙ほど高価ではないはない


ハンキにはロウリア絶対殺すマンになって貰う予定でしたが、大分マイルドになりました。

後、クワ・トイネ軍にはクイラ王国の傭兵も多数在籍するので、実質クワ・トイネ&クイラ連合軍です。
もしクワ・トイネが負けた場合、クイラにはまともに戦える兵士は殆ど居なくなります。食料的にも戦えませんが。
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