パラレル日本国召喚   作:火焔

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登場人物
●日本国
大川:日本海軍大将。原子力空母「大和」の艦長

●クワ・トイネ公国
ブルーアイ:第二海軍軍人

●ロウリア王国
シャークン:クワ・トイネ討伐海軍海将

●パーパルディア皇国
ヴァルハル:ロウリア軍観戦武官



05. 西ロデニウス海戦(日本vsロウリア)

 西暦2019年10月15日(中央暦1639年10月15日)

 

◆◆ 小ギム市の軍港 ◆◆

 

「これが日本の軍船――――いや、軍艦か。間近で見るとなんと巨大な……」

 

 巨大な日本艦を見上げるのは、クワ・トイネの観戦武官ブルーアイ。

 

(4000隻のロウリア海軍に16隻でどうやって立ち向かうのか……。)

 

 日本か強い事は理解しているが、殲滅するには一隻でロウリア軍船250隻も沈めないといけない。

 もちろんその前に勝敗は付くが、全隻沈める火力がないと知られればロウリアが最後まで食い下がってくる恐れもある。

 そんなことが本当に出来るのであろうか……。

 ブルーアイの不安ものせたまま、日本海軍の艦隊は小ギムを出港した。

 

 

 

◆◆ 西ロデニウス海 ロウリア国境付近 ◆◆

 

「やはりこの数は壮観だな!」

 

 クワ・トイネ討伐海軍、海将シャークンは海を航行する4000隻を見渡して満足そうに頷く。

 7年以上かけて、最後の3ヶ月は亜人(しげん)を使い潰して何とか4000隻を作り上げた。

 パーパルディア皇国からの多額の借金と軍事援助を受けて完成した大艦隊。

 

(これだけの布陣ならば、クワ・トイネ、クイラなんぞ木っ端微塵だ。第3文明圏の文明国家ともやり合えるだろう。

 パーパルディアには砲艦という未来の軍船があるらしいが、第3文明圏の文明国家を打ち破る事ができればその技術を接収できるだろう。

 そうすれば――――)

 

(いや、パーパルディアの観戦武官も居る。今は目の前の事に集中しよう。)

 

 そう思いシャークンは空に目も向けると、なにやら変な物体(ヘリコプター)がこちらに向かってくるのを確認する。

 その物体には人が乗っているようで、大きな声が響く。

 

「我々は日本軍だ!貴公はクワ・トイネ領海を侵犯している。直ちに自国へ戻りなさい!

 このまま進むようであれば、我々日本が貴国の相手をしよう!!」

 

(ちっ、例の日本という文明国家か……。いや、丁度いいな。日本国の軍船も砲艦だろう。数で押しつぶして接収し、砲艦の技術を手にいれよう。そうすれば、我がロウリアも文明国家に仲間入りだ。その功績を挙げた俺の栄達は間違いないだろう。)

 

「ハハハッッ!! 何が日本だ! これだけの陣容を見て、よくもそんな妄言を吐けるものだ!!

 バリスタ隊! 挨拶をお見舞いしてやれ!」

 

 バリスタの有効射程では当てられはしないが、挑発には丁度いい。

 日本軍のヘリコプターにはやはり当たらないが、効果はあったようだとシャークンは感じる。

 

「貴国の意志は分かった!降伏する場合は白旗を振ることだ。その船だけは沈めない事を約束する!!」

 

 日本軍の拡声器とロウリア全軍に伝わるよう、ドローンからも降伏の方法をスピーカーで伝えて日本のヘリコプターはその場を去った。

 

「ふんっ! 降伏するのは貴様らだよ。先ずは艦上の武装とマストを破壊してやれ!」

 

 シャークンの指示で400騎の竜騎士隊が出撃する。

 遠くに点の様に見える日本の軍船を見つつニヤリと笑った。

 

 

 

◆◆ 西ロデニウス海 総旗艦大和 ◆◆

 

「そうか……。彼らには理解して貰えなかったか……。」

 

 ペリコプター部隊からの報告を聞き、日本海軍総旗艦「大和」の艦長である大川は残念に思う。

 原子力空母の大和は今回、海戦には参加の予定はない。万が一を想定して戦闘機を格納してはいるが、事前の分析では参戦する自体は起きないとの結果だ。

 主に戦闘するのはイージス艦、イージス間との戦術リンクが可能なミサイル駆逐艦の15隻だ。

 

 本海戦に参加する艦隊は大和と同じく横須賀基地に所属する軍艦で、

 イージス艦は榛名、足柄、利根、那珂、鬼怒の5隻。

 ミサイル駆逐艦は暁、響、雷、電、神風、朝風、春風、松風、旗風、島風の10隻。

 

「各艦に指示を。イージスシステムは自動モード。迎撃領域は半径2kmに、主砲を最優先武装に設定。非イージス艦はイージス艦と戦術リンクしコントロールをイージス艦に移譲。」

 

 各艦の主砲の有効射程は15kmあるが、他国の偵察を懸念して第3文明圏と呼ばれる国家群での最大射程とされる2kmまでに抑えた。

 ミサイルではなく、主砲をメインにしたのは単純にコスト問題だ。

 

 

「提督。ロウリア軍の竜騎士を補足しました。数は400。」

 

 大川は驚く。ガレー船を扱うロウリアが近代の航空戦で攻撃を仕掛けてくるからだ。

 

(そうか。ワイバーンという飛竜が存在するから制空権という概念が古くから存在しているのか。)

 

「イージスシステムの迎撃領域を対空に限定して4kmに拡張。」

 

 ワイバーンの最高速度は235km/h、3.9km/min。こちらに接近するときは最高速で突破してくるであろうから迎撃領域は4kmは必要だ。

 15隻が全力(発射速度40発/min)で撃てば、およそ一分で殲滅可能であろう。

 

 

 

◆◆ 西ロデニウス海 ロウリア飛竜隊 ◆◆

 

 400騎の竜騎士がロウリア船団の上空を飛翔していく。

 彼らから遠くに日本の軍船が確認できた、数は16。

 

 その内15隻から光の様な何かが放たれた気がした。

 

「ん……何かの魔法か……?」

 

 竜騎士の隊長はそう思ったが、こんな3,4kmもある超長距離を攻撃できる魔法なんて聞いた事ない。

 何らかの信号だろうと思った矢先――――

 

 自分を含めた40騎の竜騎士が弾け飛んだ。

 

「え……?」

 

 隊長は何が起きたか知らぬまま命を落とした。

 

 

 

 さらに数秒後、日本軍の軍船から光が放たれ再び多数の竜騎士が肉塊に変わった。

 

「さ、散開しろ! 固まったら狙われるぞ!!」

 

 竜騎士は死にたくない一心から、陣形も無視して各自がバラバラに散開する。

 だが、イージスシステムは無慈悲に効率的に竜騎士を処理していく。

 そこには命の尊厳も階級も竜騎士の過酷な訓練も、仲間との友情も、何の意味を持たない。イージスシステムは計算で導かれたデータにより順次処理されていくだけだ。

 数秒ごとに多数の竜騎士が肉片に変わり、海へ堕ち、魚の餌になっていく。

 

 そして一分が経過する頃、空中には何もなくなっていた。

 

 彼らも散々亜人を弄んで殺戮してきたため、それが自分の順番になっただけだ。

 

 

 

◆◆ 西ロデニウス海 ロウリア艦隊 ◆◆

 

「な、何が……何が起きたのだ!? 竜騎士はどうした!? 何処へ行ったのだ!!」

 

 シャークンは目の前の光景に、目の前で肉片になって落ちていく竜騎士を、現実を受け入れられずパニックに陥っていた。

 いや、シャークンだけでなくこの光景を見たもの全てがパニックに陥っている。

 竜騎士400騎もいれば、クワ・トイネもクイラも安易に制圧できる圧倒的な数なのだ。

 それが一分も経たずに消え去った。誰もがこれは夢だと思うのも無理はない。

 

(いや、これはチャンスだ……! 実際、日本軍の攻撃は止まっている。弾切れか、魔力切れを起こしているのだ! 今進まなければ、回復した日本軍に我々はやられてしまう!!!)

 

「総員!! 亜人(どうりょく)を動かせ!! やつらは弾切れだ! 今、動かなければ死ぬぞ!!!」

 

 シャークンの怒号に船員が我に返る。

 確かに将軍の行ったとおりだとそう思ったのだ。

 水兵は船底に下りて漕ぎ手の亜人たちにムチを叩く

 

「全速だ!! 死にたくなければ全力で漕げ!!!」

 

 シャークン達ロウリア海軍は、自らの足で死地へ、半径2km以内へと進んでいくのだった。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「あの攻撃を見て、まだ進むのか……。いや、戦わずして退く事が許されていないのだろうな。各艦、微速前進!」

 

 大和の艦長大川は覚悟を決める。

 

 互いに距離を詰めていき、イージスシステムのキルゾーンにロウリア軍船が入る。

 駆逐艦の主砲がイージスシステムの指示に従い発射され、ロウリア軍船が爆散する。

 

 日本艦隊の半径2km以内のロウリア軍船は、近づく事も許されぬまま海の藻屑と化していく。

 

 

 ロウリア海軍の兵士達は逃げようとする行動をとる事すら出来ぬまま命を消費していく。

 

「い、いやだ……!死にたくない!! ……ハッ!そうだ!」

 

 ロウリア海軍のとある船の船長は思い出す。

 降伏したければ白旗を揚げろと言っていたのを――――

 

「白旗だ! 白旗を揚げよ!!」

 

 前方のロウリア軍船が沈んでいくのを、まるで処刑台に上がっていく気持ちになりながら水兵たちに怒鳴る。

 

「船長……!白旗なんてありません!」

 

 船員の悲痛な叫び声が耳に入る。

 

「帆だ!破って白旗にするんだ!!」

 

「「「はいっ!!!」」」

 

 マストの帆が外されて白旗に作りかえられていく。

 目の前のロウリア軍船が沈み、次は自分たちの番か……。本当に白旗を揚げれば生き残れるのか……。

 僅かな望みに縋り、水兵達は必死に白旗を振る。

 

 左の船が沈み、右の船も沈む……。

 

(たのむ……! 殺さないでくれ……!)

 

 後方の船が沈み、更にその周囲の船も沈んでいく……。

 彼らの乗る船のみ船の形を残し、周りには瓦礫がかつて船であったもの、人であったものが浮かぶ。

 

「た、助かった……! 助かったぞ!! お前達!下の奴隷(あじん)達にも旗を振らせろ!!」

 

 他の船長達も、甲板の上で白旗を振っている船のみ生き残っている光景を見て次々に白旗を降り始める。

 しかし、判断に迷った者、躊躇った者達は、間に合わずにイージスシステムに駆逐されていく。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 海に残った船はおよそ2000隻の白旗を揚げたロウリア軍船と16隻の日本艦のみだった。

 敵軍の提督であるシャークンとその船に乗船していた、第3文明圏の列強パーパルディア皇国の観戦武官ヴァルハルを捕虜にし、海戦は日本軍の完勝で終わりを告げた。

 

「各艦、これより救助活動に入る。」

 

 イージスシステムを半自動モードに変更した大川は、海に浮かぶロウリア海軍兵士の救助活動に入る。

 

「何を為さるのですか……?」

 

 クワ・トイネの観戦武官のブルーアイは、日本の圧倒的武力に畏怖、むしろ恐怖していた。

 アレだけの大艦隊が竜騎士の軍勢が蜘蛛の子を散らすように消滅した……。

 列強パーパルディアでもこんな事は出来ないはずだ。何より、この大海原の上で100発100中の艦砲という攻撃をどうやって報告すればいいのかわからない。

 それに、救助活動?日本軍は無傷なのに何を……まさか、敵兵を?

 

「もちろんロウリア兵士の救助ですよ。もう戦いは終わったのです、何も全員を海に沈めようとは思っていません。」

 

 大川の言葉にブルーアイは驚愕を通り越して、凪になった心で感じる。

 日本は勝利など当たり前で、敵兵を救うだけの余力も度量もあるのだと。その力と高潔さに、クワ・トイネは未来永劫決して敵わないのだとブルーアイは理解した。

 




ヴァルハル君には役に立っていただきます

●クワ・トイネの主要都市
公都クワ・トイネ:首都。クワ・トイネの中央に位置する
マイハーク市:北東の経済都市。クイラとの玄関口
イズーダ市 :北西の経済都市。第3文明圏内の非文明国と交易している。
小ギム市  :南西の経済都市。西ロデニウス海の南西にある国々との玄関口(ロウリア除く)
東モロコ市 :南東の主要都市。
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