パラレル日本国召喚   作:火焔

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登場人物
●日本国
大内田:陸軍中将
草凪 :日本空軍空挺部隊

●ロウリア王国
パンドール:クワ・トイネ討伐軍大将
ハーク・ロウリア34世:国王

ロウリアの人間至上主義の原因をちょっと改変させていただきました。



06. ロウリア王国陥落

 西暦2019年10月17日(中央暦1639年10月17日)

 

◆◆ ギム市南の平原 ロウリア主力 ◆◆

 

 先遣隊の更に200km南方にはロウリアの主力部隊が居た。その総数は23万。

 そして、その100km南には後続部隊10万が控えている。

 

 クワ・トイネ征伐軍の将軍パンドールは、心に不安を抱えたまま北の空を見る。

 

「もう4日もアデムから連絡がない。それに海軍は全滅したと、捕虜になった海兵所属の魔法使いから魔信の連絡があった……。シャークンまでもが捕えられたと……。きっとアデムも……。」

 

 パンドールは既にクワ・トイネ軍に拷問を受けて絶命しているアデムを心配する

 

 

 明け方の静けさに、北の空からババババ……とやかましい音が聞こえてくる。

 

「こちらは日本国陸軍。貴公らに降伏を勧めに来た。直ちに武装を解除せよ――――」

 

 なるほど、これが降伏勧告してくる謎の飛行物体か。海軍の魔信から通達のあったとおりだ。

 

「悪いがそちらの言い分を聞く事はない。我々はクワ・トイネとそして日本を打ち破り、ロデニウス大陸を制覇させて貰う。」

 

「そうか、それは残念だ。」

 

 ヘリコプターが北へ去っていき、1時間後ロウリアは北伐を再開する

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

「大内田将軍閣下、敵軍進軍を開始しました。」

 

 大内田は、多目的ミサイルシステムの最終発射シーケンスのボタンに手を添える。

 ミサイルの弾頭は焼夷弾、いわゆるナパーム弾というものだ。

 人道的な兵器ではないが、この世界では飛竜のブレスは火炎弾の燃焼後に酷似しているため採用された。

 大内田はオペレータに秒読みを頼む

 

「畏まりました。10……9……8……7……6……」

 

(申し訳ないが……貴公らは民間人、村人達の虐殺に対して責任を取らなければならない。)

 

「5……4……3……2……1……発射どうぞ」

 

「ミサイルシステム、発射!」

 

 大内田の言葉と共に、いくつものナパーム弾頭ミサイルが発射されていく。

 

 

 その攻撃は圧倒的だった。

 ロウリア軍後続隊隊長は主力の燃え盛る光景を見る。

 

「我が兵が燃えていく……。火竜の群れがドラゴンブレスを吐いているかのようだ……。こんな事、人のなせる業ではない……。」

 

 23万のロウリア兵が一様に燃え尽きていく。

 そして数時間後、そこに残されたのは炭化した人であったモノだった。

 この数時間後、ギムの街にロウリア軍後続隊から降伏の意思が伝えられた。

 

 

 

 西暦2019年10月22日(中央暦1639年10月22日)

 

◆◆ ロウリア王国 王都ジン・ハーク ハーク城 ◆◆

 

 虫も寝入る深夜――――

 

 ハーク・ロウリア34世は恐怖に震えていた。

 海軍も陸軍も一日で全滅、それを日本国という文明国家が成し遂げたと。

 

 それだけではない。港の軍事施設は全て破壊され、ジン・ハークの軍事施設も爆炎魔法(空爆)で焦土と化した。

 

(文明国とはこれほどに恐ろしいのか……。違う、少なくともパーパルディアは手も足も出ないほど脅威ではない。日本とは一体何なのだ!?)

 

 怯えるハーク・ロウリア34世の目の前に、まるで昼の様な明るい光が、太陽のような光が降り注ぐ。

 

「ぐぅ……!何だ!?何が……?」

 

 咄嗟に眼を閉じたハーク・ロウリア34世は、しばらくした後、まぶたの裏から光が消えるのを確認して目を開く。

 すると――――

 

 タタタッ……タタタッ……タタタッ……

 

 今まで聴いたことのない音が聞こえ、倒れる金属音が聞こえる。

 だんだん近づいてきている様だった。

 

 すると唐突に扉が蹴破られる。

 

「あぁ…………私は何てことを……」

 

 暗闇に慣れた目で日本兵の斑模様を刻む迷彩服と禍々しい尊顔(ヘルメットに暗視スコープ、顔全体を覆うマスク)を確認する。

 そして、先ほどの人の手で作り出された太陽をみて、ハーク・ロウリア34世は理解してしまった。

 

 

 魔帝に逆らってしまったのだと――――

 

 

 

 古の魔法帝国、通称魔帝。

 遥か昔、この世界を統一した帝国。後世の有識者により、正式名称はラヴァーナル帝国だっただろうとされている。

 「だろう」というのは、彼らの使用する文字は難解を極めているため、確証が持てなかったのだ。

 故に、世界では「古の魔法帝国」または「魔帝」と呼称される事が多い。

 彼らの力は強大で、これらの残した遺産を最も解析した神聖ミリシアル帝国がこの世界を制覇しているくらいには。

 

 そんな彼らは、あるときを境に突如消えたとされている。

 この世界を捨てたのか、神と戦い滅びたのか、それは分からない。

 だが、こんな言葉が残されていた。

 

「我々は太陽だ。日が昇るとき、この世界に還るであろう。」

 

 何の暗示何処までは真実かは分からないが、いずれ戻ってくる。それだけは誰もが確信していた。

 

 初代国王ハーク・ロウリア1世は国力を高めるために魔帝の威光にあやかり、人間至上主義を唱えた。

 確証はないが魔帝の原初は人間族だったと伝えられていたからだ。

 初代の唱えた人間至上主義は正しく現在ではロデニウス大陸の半分を制覇するに至った。

 

 そう、正しかったのだ。今この時までは……。

 あろうことか魔帝に、日本国に盾突いてしまうまでは――――

 

(今日、ロウリアは滅びるのか? いや、まだだ!ロウリアが消し炭になっていないということは、お許しを頂ける可能性が残されているはずだ!)

 

「魔帝様!申し訳御座いません!!」

 

 ハーク・ロウリア34世は、寝室に押し入った日本兵に平伏した。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 日本空軍第3空挺部隊隊長の草凪(くさなぎ)大尉は、敵国の重鎮を捕えるために4名の部下と共に国王が居るであろう寝室へと押し入った。

 閃光弾で彼らの視界を潰していたため潜入は容易かったし、ここまでも順調だった。

 国王らしき人物が平伏するまでは。

 

 草凪は何かの合図だと判断し、周囲の警戒を強めた。

 

「御方々だとは露知らず、取り返しの付かないことをしてしまいました!ですが、申し開きの機会を頂けるのでしたら、光栄に存じます!!」

 

 しかし、草凪達が確認したところ、この周囲には討ち取った敵兵以外に温度を発するものはなく。

 状況を打破するためには、話をさせたほうがいいかも知れないと判断した。

 

「貴方はロウリア王国の国王、ハーク・ロウリア34世で間違いありませんね?」

 

「ははぁっ!おっしゃる通りでございます!偉大なる御方に不肖なる私の名を呼んで頂けるとは、恐悦至極に存じます!!」

 

「あの……普通に喋って頂いていいので。それで、我々に何を伝えたいのでしょうか?」

 

 草凪達は国王の異常さに警戒を強めつつ話を促す。

 

「滅相も御座いません! いえ、御方が普通にしろと仰るのでしたら。謹んで指示に従わせていただきます。

 我々ロウリアは古の魔法帝国である御方々に、この国を捧げるために邁進して参りました。

 どうか!どうか!あなた方の足元に跪く事をお許し下さい!!」

 

 ハーク・ロウリア34世はこの国を残すため、家族を臣下を生き残らせるためには服従するしかない。

 魔帝に盾突いて生き残れるとしたら、これ以外存在しないとそう思ったのだ。

 

 それに対し、草凪達は困惑していた。

 古の魔法帝国とは何か?国王は何か勘違いをしているらしいことは分かる。

 だが、狂信者の様な振る舞いをする国王を如何正せばいいのかわからなかった。

 

「ええと……我々は日本国です。古の魔法帝国というのは良くわかりません。今回ここに来たのは、貴方の身柄を確保しに着ただけです。来て頂けますね?」

 

 草凪達は一応日本国であると訂正して国王に身柄を要求する。

 騙すようで悪いが、これで戦いが終わるのならば……と。

 

「はっ!日本国の皆様にお供させて頂きます!」

 

「後、この城の兵士達に武装の解除をお願いできますか?」

 

「もちろんでございます!」

 

 ハーク・ロウリア34世は魔信で全武装の解除と魔帝の光臨、そして全面降伏を伝えた。

 ロウリア主要都市には、これらの内容がすぐさま伝えられ全ての都市が夜明けを待たずに降伏を申し出る事となった。

 

 そして、日本は非常に頭の痛くなる戦後処理に追われることになる。

 


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