パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
阿野:首相
林田:陸軍伍長
●ロウリア
管理者:とある亜人繁殖施設の管理人
西暦2019年11月(中央暦1639年11月)
◆◆ ロウリア 亜人繁殖施設 ◆◆
「なんでまた俺なんだ……」
林田は悪態をつく。クワ・トイネ農村の惨状以降こんな役回りが多いと。
ロウリア先遣隊跡地であった村人串刺し現場も、林田の所属する部隊が最初に発見した。
次は亜人繁殖施設という亜人を家畜扱いする物騒な施設だ……
「はぁ……。仕方ない、入るか。」
見た目は木造の学校の様な施設で、林田は施設の中に入ると息を呑む。
一糸纏わぬ姿の獣人、エルフ、ドワーフの女性達が佇んでいたからだ。
林田は出来るだけ直視しない様に、彼女達を見ると妊娠している女性がかなり多い。
ただ、陵辱や暴行を受けた様子はなく瞳に光を失ってはいなし、施設内も彼女達も清潔に感じる。
もし、何も知らずこういうプレイの店だといわれたら林田は信じていたかもしれない。
今までの惨状に比べればそれだけマシなのだ。
だが、そこかしこで男女の行為がされている……。なんて大っぴらなと林田は思う。
人のを余り見ていいものではないと、足早に奥へと進んでいく。
(うぅ……、いけないとは分かりながらも、チラチラ見てしまう……)
兵士には男性が圧倒的に多く、女性の体を見ることなんて殆どないから仕方のないことかもしれない。
林田はチラっと見たときにその女性と目が合ってしまい、顔を赤くし管理者の元へと急いだ。
「日本国の林田様でいらっしゃいますね? 私は亜人繁殖施設の管理を任されているものです。」
「ご丁寧にありがとうございます、私は日本陸軍の林田です。」
ロウリア王国では亜人を奴隷として家畜のように扱っている。
日本としては奴隷を認めるわけにはいかないので、ロウリア国王に是正を求めたところ快諾?を貰った。
林田は管理者にそのことを伝えると快諾されてしまった。
もっと抵抗があると思ったが、素直に行き過ぎて心配になる。
「ご理解頂き感謝します。それにしても随分と室内が暖かいようですが……?」
暖房器具が全くないのにこの部屋だけでなく、この施設全体が暖かく快適なことに林田は気が付く。
先ほどまではそれど頃ではない状態だったので、今頃気が付いたわけだ。
「はい。私たちや亜人が魔法で気温を調節しております。」
「そうだったのですか。それは素晴らしい魔法とあなた方の魔力ですね。」
「滅相もございません。長時間の魔法行使は出来ず、交代で環境を維持しておりまして……」
施設管理者は魔帝である日本人に魔力の量と質を問い質されたのだと思った。
もちろん林田にそんな気はなく、魔法の凄さとそれが出来る管理者を褒めただけなのだが。
「それでは、自由になる事をここに住まう彼女達に伝えなくてはなりませんね。」
「では私も林田様のお手伝いをさせて頂けますか?」
「えぇ、お願いします。たくさんの方がいらっしゃるようですし。」
管理者はこの後どうなるかは分かっているのだが、林田に助言するのは失礼に当たるかもしれないと口を噤んだ。
自身が迅速にフォローして、役に立つ事を示したかったという欲があるのも否めないのだが。
(どうにも、女性の裸体を見るのは……。いや、美しい方たちだから嬉しいのだが仕事で来ているのだし……)
林田はとある一室の亜人女性を呼び集めて、開放する旨を伝えると――――
「い、いやぁ!まだ産めます!!死にたくないです!」
「どうか!私たちを処分しないで下さい!!」
「私もまだ使えます!廃棄しないで下さい!!!」
自由になれる事を伝えた途端、彼女達は林田に縋り、助命を嘆願する。
余りの必死さに、林田は圧倒され頭が真っ白になってしまう。
本来であれば女性に群がれて気分がいいはずなのだが、この異常さに林田は恐怖を覚えた。
「お前達に自由などあるはずもなかろう! お前達が家畜である事を忘れていないか確認したに過ぎん! 持ち場に戻れ!」
管理者の一喝で亜人女性達は冷静を取り戻した。
あんな言葉で平静を取り戻すなどおかしいのだが、ここで産まれ、繁殖することが存在意義と教え込まれ、命令に従い生きてきた彼女達にとってはこれが普通なのだ。
「林田様、少し休憩致しましょう。さぁ、こちらへ。」
林田は管理者の成すがままに部屋を後にした。
林田は何故、自由という言葉にあんな反応したかを尋ねると……
「彼女達には、繁殖できなくなると死を与えられます。このとき我々は彼女達に自由になると教えてきました。
死ぬときのみ自由になる。自由になる事は死ぬ事だと、彼女達は刷り込まれているのです。実際に自由という名の処刑を何度も見ていますしね。」
そんなことを平然と話す、平然と出来る管理者に林田は戦慄した。
自分達と彼らには常識や思考に隔絶した差があることを理解してしまったからだ。
「そ、そうですか……。とりあえず彼女達をどのように扱うかは、上に相談せねばなりません。今回はこれで失礼します。
それと、先ほどのフォローはありがとうございました。」
林田は逃げるように施設から出て行く。
(ここは異常だ……。肉体が正常である代わりに、心が異常なまでに壊れている……。それがここまで恐ろしいなんて……)
林田は上司へこのことを報告すると、他の繁殖施設も似たようなものだと知ることになる。
◆◆ 東京 内閣府 ◆◆
「はぁ……これは、異常事態ですね……」
阿野はロウリアの態度も、軍から報告を受けた繁殖施設という名の奴隷収容施設の実態を聞き溜息をつく。
本戦争に介入したのは、戦争の後処理でロウリアにクワ・トイネとクイラに対して永久的な不可侵条約を結ばせる事。2国が平和でないと食と資源を2カ国に頼っている日本は非常に困るからだ。
だが蓋を開けてみれば、クワ・トイネ、クイラ、ロウリア間の関係はこちらの思った以上に友好的な関係となった。だが、ロウリアと日本は想像だにしなかった。ロウリアと間に大きな亀裂が入らなければいいだろうと思っていたのだが、まさかロウリアが事実上の属国になってしまったのだ。
まぁ、ロウリア国王が会見で「我々の目を醒まさせてくれて感謝している」や「これから日本と共に平和な道を歩んで行きたい」など日本にとって友好的な発言をしてくれたため、国民感情はさほど政府に対して攻撃的ではなかったのが救いだ。
ただ、亜人繁殖施設という案件には頭が痛いと阿野は頭を抱える。
先の海戦で50万以上の亜人と呼ばれる獣人、エルフ、ドワーフの捕虜、そのほかにロウリア本国に1500万人近い亜人が存在する。
彼らを救わなくてはならないのだが、クワ・トイネ、クイラに亡命させるわけにも行かないし、日本でも流石にこの人数は保護できない。
だからといって、このままは最も悪手であることも分かっている……。
とりあえず、何かいい案が出るまでは先送りにしようと阿野は決めて気持ちを切り替えた。
頭が痛いこともあったが、喜ばしい事も多数あった。
1つはロウリア王国の領土では木の成長速度が異常に早かったのだ。だから4500隻という無謀な数を揃える事ができたのだろう。
また、航空調査によると、この世界では木造船が主流で西にある第3文明圏というところでも大体がキャラック船や初期のガレオン船クラスのものが殆どだ。
ロウリアで造船業を振興すれば、戦後の復興も早くなるかもしれない。
それに、クワ・トイネ、クイラ、ロウリアにガレオン船が行き渡れば彼らの交易がしやすくなるだろう。彼らが富めば日本製品も売れるし、悪いことはない。
ロデニウスの船はガレー船が主体なので大きく進化してしまうが、大砲技術を提供しなければ軍事技術の進化にはならないだろう。
そして2つ目。1つ目に近いのだが、成長が早いのは材木用の木だけでなく、果樹も実を付ける成木になるまでの速度がとても速かったのだ。
ロウリアでは葡萄の木の成長が早いと聞いていたのだ。ためしにリンゴの苗を植えたところ、異常なまでに成長速度が速かったのだ。
そして、様々な果樹を植えてみた結果、木に属する全ての樹木の成長が早いことが分かったのだ。
果実をロウリアで育てて日本に輸入すれば、国民に今までより格安で提供できる可能性がある。
生は中々難しいだろうが、缶詰やドライフルーツ、ジュース、カカオやコーヒーなど食生活を豊かに出来るものばかりだ。
そして3つ目、これが最も驚いた事だ。
本格的な調査はこれからなのだが、ロウリアでウランの鉱脈が見つかったのだ。しかも簡易調査で100年以上は採掘できるほどの大鉱脈だ。
ウランはクイラには残念ながら存在せず、原子力関連の施設に不安があったのだが、これで一安心だろう。
このようにロウリアと友好的な関係を築ければ、日本は様々な恩恵を受けられる。
そういう意味では、事実上の属国はロウリア国内で動き易くなりありがたいのかもしれない。
国外の環境を整備すれば、年々上昇傾向にある失業率の増加にもストップがかけられる。
やる事は山積みだが、1つずつ着実に片付けていこう。
阿野は次の会議へと足を運んだのだ。
う~ん、最初のは生活魔法の登場と亜人開放の失敗をもっと簡潔に書きたかったのだけれど……
でもR15的なのは入れたかった!
あと、出来るだけ3000文字オーバーになってから投稿しようと思ってるけど、
短くても場面ごとが良いか、3000文字は欲しいか。
前半は場面も違うし、昨日投稿できたかなぁと……