パラレル日本国召喚   作:火焔

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登場人物
●日本
田中:外務大臣政務官
後藤:日本海軍大佐。金剛艦長

●クワ・トイネ公国
ハガマ:侯爵。マイハーク市の領主(人間)
マイラ:マイハーク市の筆頭外交官(ウサ耳獣人)

●備考
クワ・トイネ公国は領主が街を統率している。
都市の事を市と呼ぶ。都市未満は町、または村。



02. 日鍬会談

 2019年1月7日 沖縄より更に南西へ1000km

 

 ミサイルイージス艦「金剛」の艦上に外交官の田中は立つ

 

(本当に軍艦で来て大丈夫なのだろうか……?)

 

 2日前の会話は録音されており、何度も聞きなおし、外務省内で確認し、阿野首相にも確認していただいた。

 その結果、金剛でクワ・トイネ公国へ向かうこととなった。

 

 当初は人命優先でミサイルイージス艦「霧島」や原子力空母「大和」を同行させるか内閣内で揉めたが

 UAVの偵察により、クワ・トイネ近海で発見した船は四角帆のガレー船が殆どであり、金剛のみでも過剰戦力ではないかとの判断が下された。

 その結果、金剛1隻でクワ・トイネへ向かうこととなった。

 

「この度はありがとうございます。後藤大佐。」

 

「いえ、日本国の危機なのです。田中さんの、ひいては日本国の力になれて光栄です。」

 

 金剛艦長の後藤大佐と外務省政務官の田中が、何度目か分からない挨拶を交わす。

 

「大佐、客人がいらっしゃいました。」

 

 二人は海の先を見つめる

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 三段櫂(ガレー)船に乗るマイハークを治めるハガマ侯爵と外交官マイラは戦慄していた。

 豪華な服に身を包む40代、天然パーマの茶髪の人がマイハーク領を納めるハガマ・マイハークその人だ。

 

「し、城が海に浮いている……」

 

「あ、あれが文明国なの……? 帆が無い船なんて本当にあるんだ……」

 

 恐らく鉄で出来ているのであろう船が、荒波をものともせず海上を進んでくる。

 二人は自国とニホン国の戦力差を実感する。

 ニホンがその気になれば、クワ・トイネは簡単に滅びると……。

 

 ぼんやりとニホンの船を見上げていると、小さな船が紐につるされて降りて来る。

 そして着水するとこちらへ向かって高速で、空を飛ぶように海の上を疾走してくる。

 

「おはようございます、マイラさん。そちらのお方は?」

 

 小型の高速船に乗っていたタナカが挨拶をしてくれる。

 

「初めまして。私はマイハーク市とその周囲の町を治めるハガマと申します。爵位は侯爵を拝しております。」

 

 おぉ、爵位なんてあるんだ……とタナカは驚く。

 

(ニホンには爵位はないのだろうか……?)

 

 文化の違いを感じたハガマはフォローする。

 

「貴国にとって街を治める者の役職と思ってください。」

 

「ありがとうございます。お気遣いありがとうございます。」

 

 田中は日本の県知事相当なのか、戦国の大名相当なのか判断に困った。

 ハガマは格上であるはずのタナカが異様に腰の低いに警戒してしまう。

 

「さぁ、タナカ殿。我が市へお越し下さい。そちらでお話をお聞かせ願います」

 

 ハガマ黒い魔法の杖を持つ護衛を引き連れた田中をマイハーク市に招く。

 マイハークの港から城へと続く街道には、兵士が一糸乱れぬ姿で整列していた。

 ハガマが田中もてなす為、我が国の力を示すために用意しておいたものだ。

 

 田中は紛争地域に来てしまったのではないかと思うほど、物騒な歓迎に招かれざる客ではないかと身構えてしまい、同行する陸軍兵士にも緊張が走った。

 ハガマの思いは伝わらなかった様だ。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「タナカ殿、そちらの方々もお掛け下さい。」

 

 メイド達がイスを引き、始めに田中が座る。

 陸軍兵士達は、田中の座ってくださいという視線を受けて着席する。

 本来であれば田中を護衛するために立っている所であるが、今回は止む終えないだろう。

 

 その後、ハガマとマイラも着席する。

 

「この度、ニホン国は会談を開きたいとの事でしたが、どのようなお話でしょうか?

 私に決断できない事であれば公都からの指示を仰がねばなりませんが、先ずはお話をお聞かせ頂きたく。」

 

 ハガマは無茶な要求であれば、公都の指示を仰ぐと時間稼ぎが出来るようにマイハークへと日本の使者を招いた。

 

「はい。お願いというのは食料を購入させて頂きたいのです。」

 

 ハガマは安堵した。わざわざ第二文明圏から来るとすれば「食料」「奴隷」のどちらかだろうと公都から言われていた。

 「食料」であれば大した問題ではない。適当に種を播けば勝手に育ち、収穫し切れてないくらいなのだから。

 食料を収穫する人員が労力として徴収されるくらいだろうと。

 

(……ん?購入?)

 

 家畜でさえ美味い穀物を食べて育つ。

 クワ・トイネにとって「食料」「水」はあって当たり前のものなのだ。

 クワ・トイネは「食料」を隣のクイラ王国に売却して、クイラからは武具を傭兵を購入している輸出品ではあるが、それは立場が対等だから成り立つ事なのだ。

 

「それは構いませんが、如何ほどの量を?」

 

「我が国は年間8000万トンの食糧を求めています。」

 

「8000万!?」

 

「お待ち下さい。8000万トン全てを貴国で賄おうとは思っておりません。その内いくらかを購入させていただければと。」

 

 8000万トンの量に驚くハガマ侯爵を田中は慌ててフォローする。

 

「そ、そうですか……。どのくらいの量を輸出できるかは公都に問い合わせませんと……。」

 

「ハガマ様の一存で決まらない事は重々承知しています。貴国の政府にお伝え頂ければ幸いです。」

 

(8000万トンか……。ニホン国はムーから食料を集めて来いと指示されたのだろうな。文明国も大変なのだな……)

 

 ハガマは、あれだけ巨大な軍船にのる文明国であれ、苦労が絶えないのだと思い不思議と親近感が湧いてきた。

 8000万トンも集めないといけないのでは、東の果てまで来るのも納得できる。

 

「どれだけ集められるか分かりませんが、最大限の努力はさせて頂きます。」

 

「おぉ……!助かります。」

 

 田中はハガマ侯爵の前向きな発言に安堵する。

 

「それで、購入費なのですが……。こちらから同額の相当するものを輸出することで対応願えませんか?」

 

 クワ・トイネの通貨は金貨・銀貨・銅貨でクイラ王国で製造されている物だった。

 このあたりの共通通貨はパーパルディア通貨だそうだが、日本にはない。

 日本円で支払ってもクワ・トイネは喜ばないだろう。

 

「問題ありません。我が国を豊かに出来る物でしたら何でも買わせて頂きたい。できれば……」

 

 ハガマは思う。もし、あの軍船を購入できたら……

 もしくは同席している、禍々しい服を着た魔法使いの持つ杖が購入できたらと。

 文明国が最新の技術を非文明国に売ることはないだろうが、ダメ元で言ってみる。

 

「タナカ殿が乗ってこられた軍船と同じ物、もしくは旧型のものを輸出できますか?」

 

「申し訳ございません。新世界技術流出防止法により、軍艦の輸出が禁じられており……。」

 

 日本がこの世界に来て直ぐ、いや、調査した結果、近隣国家が木造船ばかりだと知って、

 日本の技術がオーバーテクノロジーになるのと判断し、新世界技術流出防止法がスピード可決されたのだ。

 

 そう、我々はこの世界では部外者なのだ。

 

「タナカ殿、頭を上げてください。では、こうしませんか?

 互いに使節団を派遣し、貴国から見た我々に必要なもの。

 我が国の使節団が日本を見て、法の適用範囲外になるもの輸出していただくと。」

 

 そう、ハガマの狙いはこれであった。

 ロウリアと対抗するため文明国からみて、どうすれば発展できるか

 クワ・トイネ使節団が、ニホンという文明国をみて未来技術の一端を掴んできてほしいと。

 

「素晴らしい提案です。その方向で調整させていただきます。」

 

 こうして、日本とクワ・トイネの初会談は成功裏に終わった。

 

 

 余談ではあるが、この後に催されたパーティーで食べたクワ・トイネの食物は結構美味しかった

 日本産には少し劣るが、前中世レベルでこの味は想定外だったと。

 

 

 

 

「田中さん、あの兎耳って本物なんですかね?」

 

 護衛の陸軍兵士が尋ねる。

 

「動いていましたし本物だと思いますけど、あまりジロジロ見ては失礼かと思いまして」

 

「本物かは聞いてみないのですか?」

 

「気になりますが、文化も違いますし触れないほうが安全でしょう。」

 




●通貨
クワ・トイネ公国とクイラ王国はクイラが発行するクイラ硬貨を使用している
金属加工が盛んなため品質はいいが、細部の装飾は潰れていたり、形も歪んでいたりする。

ロウリア王国ではロウリア硬貨を使用している。
クイラ硬貨より質は悪い。

●クワ・トイネ海軍
ガレー船の一種、三段櫂船が主力。
左右にバリスタが1つずつ設置されている。

●マイハーク市
北東の経済都市。クイラ王国との玄関口で交易が盛ん。
主な輸入品:金属製の武装、傭兵

●人物詳細
ハガマ・マイハーク侯爵
種族:人間
年齢:47歳
身長:173cm
顔 :西洋風のダンディ。彫が深い
髪 :天然パーマの茶髪
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