パラレル日本国召喚   作:火焔

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●日本
青井森一:40代後半の船大工


09. 【閑話】青井森一の場合:ロウリア造船業

 西暦2019年11月(中央暦1639年11月)

 

◆◆ 日本 とある町工場 ◆◆

 

 俺は青井森一(あおいしんいち)。日本ではもう殆ど居ない船大工をやっている。

 今では小さい船ですら繊維強化プラスチックで作られていて、屋形船とか風情を楽しむ場合でしか木造船は使われていない。

 ウチもプラ製の船を作っているし、というかそっちの方が仕事も多い。

 

 今回は政府からロウリアという国で、若い奴らに木造船の技術を教えてやって欲しいと依頼が来た。

 仲間に聞いた話じゃ、俺だけじゃなくて木造船に関わっている人たち全てに依頼が来ているらしい。

 

「今時、木造船だけじゃ食っていけないのは分かっているから引き受けるけど……一体何を作るんだい?」

 

 お役人の兄ちゃんから話を聞くと、昔に存在していたガレオン船ってのを作るらしい。

 

「そんなにデカイ船を作れるのは嬉しいけどよ、木材とは費用はどうするんだい?」

 

 兄ちゃんの話では、木材はロウリア、俺の給料は日本から、ロウリアの若い奴らにはロウリアから給料が出るそうだ。

 それに俺が教えるロウリアの人たちはガレー船っていう、ガレオン船より古い船を何隻も作った経験があるそうだ。

 

「そうかい。むしろ俺が教えて貰う立場かも知れんなぁ……。」

 

 屋形船は作った事も整備したことも何度もあるが、ガレー船はもっとデカイ。

 足手まといにならないように頑張らんとな。

 

 

 

 西暦2019年12月(中央暦1639年12月)

 

◆◆ ロウリア メイプ市 造船場 ◆◆

 

「すげぇな。石畳に石造りの家、何かそういう舞台のテーマパークに来たみたいだ。」

 

 話には聞いていたが、エルフっていう耳の長い兄ちゃんや、動物の耳や尻尾がある獣人の兄ちゃん、すげぇゴツイドワーフの兄ちゃん、人とはちょっと違う人たちもいるんだな。

 英語とか殆ど喋れねぇから不安だったけど、日本語で通じたときは安心したぞ。

 

 俺は亜人って呼ばれている兄ちゃん達とガレオン船を作るのが仕事だ。

 設計図は日本が用意してくれて、昔のヨーロッパで実際に作られていたガレオン船のものらしい。

 確かにこれなら実際に浮かべられそうだなと思う。

 

「俺は青井森一(あおいしんいち)ってんだ。よろしく頼む!」

 

 500人近い人の前で挨拶するのはかなり緊張するな。

 みんな若いし体力もありそうだし、ガレオン船をつくろうってのが本気なのが良くわかる。

 

「「「よろしくお願いします!親方!!」」」

 

 たくさんの人の上に立つって何か感動するな。彼らの頑張りを無駄にさせないためにも頑張らないとな!

 

「丸太は乾燥しているのか?」

 

 木は乾燥させて置かないと木材にしたとき曲がっちまうからな。

 まぁ、経験者だから分かっているとは思うが。

 

「いえ、今からです。魔法で水分を抜きますけど、何本くらいやりますか?」

 

「ま、魔法ぅ? そんなことできるのか? ま、まぁ試しに一本やってみてくれねぇか?」

 

 地球じゃないこの世界じゃ、そういうのが普通なのか?

 するとエルフの兄ちゃん達が木に集まって何か唱えると、木の断面から水が流れ出してきたんだよ。

 しばらくすると水が出なくなって――――

 

「親方、終わりました。」

 

「お、おぉ……」

 

 俺は持参した水分計で水分量を計ると……10%!?

 普通ならゆっくり時間をかけて乾燥させないとひび割れが生じてしまうのに、それもなく綺麗な丸太のままだ。

 

「魔法ってすげぇんだな。じゃあ、兄ちゃん達丸太をドンドン乾かしてくれ。俺は丸鋸で木材に変えていくからよ」

 

 たくさんの丸太が乾材になっていき、俺も結構の数の木材を製材に変えていった。

 

「ちょっとエルフの兄ちゃん、こっち来てくれ!」

 

「はい! 何でしょう親方? おぉ、すごいですね!もうこんなに切ったのですか?」

 

 最初に丸太を乾燥させたエルフの兄ちゃん達を呼ぶ。

 俺は魔法の方がすごいと思うが、機械見たいなのは無いそうだから他人の芝は青いって奴かもしれねぇな。

 

 木材の表面加工は、魔法を使わないらしく人力だそうだ。ここなら俺の技術が活かせそうだな。

 この作業はドワーフの兄ちゃん達が得意で、教えた事をドンドン吸収して行ってくれた。

 ここまで覚えがいいと教え甲斐があるな。

 

 時間とコツが居る木材の曲げは魔法でやっているらしくて、木そのものに曲がる力を与えているとかなんとか……

 良くわかんねぇけど、木材へのダメージが最小限で出来るなら越した事たぁないな。

 

 

 

「おっと、もうこんな時間か。今日はあがりだぞ!」

 

 いつの間にかもう定時じゃねぇか。教え甲斐もあるし、船のパーツがドンドンできてくると楽しくて時間を忘れちまう。

 だが、しっかり休んで明日に備えるのも大事だ。

 

「え?何があがりなんですか?」

 

 獣人の兄ちゃんが作業を中断して俺を見る。

 

「今日の仕事はもう終わりってことだ。また、明日頑張ろうや。想像以上に進んでるし残業もいらないだろ。」

 

「えぇ!? もう終わりなんですか!!??」

 

「まぁ確かにまだ午後3時だけど、午前6時から働いているんだ、十分だろう?ちゃんと休んで、心も体もリフレッシュしねぇとな!」

 

「でも……働かないと……」

 

 

 なんでかコネる兄ちゃん達から話を聞くと、何てヒデェ暮らしをさせられていたがが分かった。

 夜寝る時間と飯の時間以外は、ずっと仕事させられていたらしい。

 1日16時間以上労働かつ無給が当たり前の生活だったようだ。しかも、それが亜人には普通の生活だと子供の頃から教え込まれていたそうだ。

 だから中年世代は体力が付いていかず……若い世代しか残っていないとのことだ……。

 

 日本政府から聞いていたが、冗談だと信じてなかった奴隷のような暮らしというのが少しだけでも分かった気がする。

 

「今日はここで終わるのが業務命令だ! これ以上働いても効率は上がらん!」

 

 

 仕事を切り上げさせれたのはよかったが、次の問題が発生した。

 彼らは、余暇に何をすればいいか知らねぇんだ。

 

 とりあえず海が直ぐそこだし、海水浴や水泳とかか?銛も持ってきてるし……え?水を固めて撃つのか?そ、それでいいんじゃねぇかな?

 後はサッカーくらいか?スパイク、ボールとかに金かけなきゃ始め易いスポーツだろ?

 いくつか持ってきたサッカーボールと、ルールを教えて好きにさせたら結構上手いもんだ。

 

 獣人は足が速くてアタッカーで活躍しだすし、ドワーフは強靭なフィジカルで上手いこと防ぐもんだ。

 エルフは……苦手みてぇだな。

 

 そんなこんなで、上手く自由な時間を過ごし方ってのが分かって貰えたと思う。

 

 

 

 西暦2020年2月1日(中央暦1640年2月1日)

 

◆◆ ロウリア メイプ市 造船場 ◆◆

 

「よし、これで完成だな!!」

 

 先月進水式も無事終えて内装の取り付けも完了し、今日が竣工日だ。

 初めてということもあってガレオン船の大きさは40m級。ゆくゆくは60m級を建造したいが、こればっかりは俺達の技術次第だな。

 それに驚いたのが、防水魔法ってのがあって数日掛けて各所に防水をかけていったことだ。これをやると木が腐りにくくなるらしい。

 定期的に掛けなおさないといけないそうだが、外周部を防水するだけでも寿命は伸びるだろう。

 

 これからこいつは貿易の仕事に従事して、たくさんの人の役に立つ仕事をする。

 ロデニウス大陸内だけじゃなく、西の国々とも貿易するそうだ。

 日本との貿易はタンカーが桁違いに有利だし、潮の流れがガレオンでもキツいらしいからな。日本ではきっと見れねぇだろう。

 

 デカイ仕事を終えた達成感に、共に仕事をした仲間達もイイ顔してやがるぜ。

 

「お前ら!今日はパーティーだ!!」

 

 俺の会社として国が興してくれた青井造船の通帳には、みんなの給料とか材料費とかを差っぴいた(税金もな……)純粋な利益が入っている。

 なんでも、ウチから日本が買い上げて、ロウリアやクワ・トイネ、クイラに売却するらしい。

 良くわかんねぇが、日本で仕事してたときより儲かってるからいいか!

 

 日本より物価がかなり安いメイプ市で、俺達はガレオン船の処女航海を祝った。

 




こういう、市民の生活もちょくちょく書いていきたいです。
多分、話は短い事が多いけど
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