パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
秋津田吾作:50代後半の農家
秋津遼平 :田吾作の長男
秋津権兵衛:田吾作の兄
●クワ・トイネ
スラガス:バニル領日本特区南にある農村の村長(エルフ)
西暦2019年8月(中央暦1639年8月)
◆◆ 日本 ◆◆
日本は今年、いせかい?という所に来ちまって、てんやわんやだ。
俺らは海外旅行とかいかねぇもんだから、あんまかんけーねぇべな。野菜や穀物の値段が少し上がって、むしろ生活が助かってるくれぇだ。
んだども……オヤジから継いだ農地は兄貴と俺らで折半だから、このままじゃよぐないことも分かってるだ。
んなとき、せがれの遼平がロデニウス大陸っていう、新天地に行かないかと相談されたべ。
「んだども遼平、外国は危険じゃねぇべか?」
「でもさ日本人街ってのがあって、そこには日本人がたくさん居るみたいだよ?
それに、食品加工会社の工場が結構あるから、売り先には困らないと思うんだ。一度現地調査に行ってみない?
父さんも権兵衛叔父さんと農地を半々に分けるのはよくないって分かってるんでしょ?弟家族の俺達が新しい場所に行くべきだよ。」
「まぁ、おめぇがそこまで言うなら一度行ってみるべか?」
今は繁忙期でもねぇし、一度行ってみるべ。
西暦2019年9月(中央暦1639年9月)
「ここが外国かぁ……。あんま日本と変わんねぇんだな。」
都会にありそうな、マンションや郊外にありそうな工場が一緒くたになってて変な感じだべが、建物の雰囲気が日本そっくりだ。
「ここは日本人街だからね。レンタカーが借りられるみたいだから、外に出てみよう。」
遼平の言うとおりにレンタカー(といっても乗りなれた軽トラなんだけどな)で、外に出ると一面黄金色の穀倉地帯だったべ。
片側2斜線で舗装された道路を進むと、穀倉地帯がなくなって一面野原が広がっていただ。
穀倉地帯も、野原も区画整理のあぜ道がないと不思議な感じだなぁ……。
「これだけ広ければ、広い農地が確保できそうだよね。」
「そうだなぁ……。でも、都市部に近い土地だから高い土地なんじゃねぇべか?」
日本人街から10分ほど走った程度だがら、新鮮な完熟野菜も販売、納入できるし、土も悪く無さそうだ。
「じゃあ、もうちょっと先に行ってみようか?」
日本人街から40km程南にいって、舗装していない道を進むと小さな村を見つけただ。
日本人街の人から聞いた話だど、日本語が通じるそうだべが……
そう思っていると、遼平が農作業している男性に話しかけたべ。物怖じしない自慢の息子だべ。
「こんにちは、お話を聞きたいのですが少しお時間ありますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。日本の方ですか?」
多分服装を見て、俺らたちを日本人だと思ったんじゃねぇかな?
なんか色あせて修繕の跡がある服を着てるべ。貧しいんかなぁ……?
「はい。ここらへんの土地についてお聞きしたくて。土地管理に詳しい方はいますか?」
「村長なら詳しいかと……ちょっと待っててくださいね。スラガス村長~~!日本のお客さんが聞きたい事があるって~~!」
男性が村のほうに向かって叫ぶと、一人のなよっとしたな俺らと同じくらいの歳にみえる男性が来ただ。
あんなひょろくて農作業できるんだべか?
「ようこそお越し下さいました。日本の方々。私はこの村の村長をしている、スラガスといいます。
私にお話があるとのことですが、一体どのような?」
「あぁ、そうだべ。このあたりで農家やる場合の土地の価格を聞きたいだ。1haどの位するだべか?」
最初のうちは借地でもいいけんど、いつかは遼平に土地を残してやりてぇがらなぁ……。
ここだど、村の回り以外はまだ手をつけて無さそうだし、安く買えねえかなぁ?
「土地の価格ですか……? すみません、ちょっと良くわからないのですが……。村からちょっと離れますが、村人が世話してないあの辺り土地でしたら使えますよ。」
「使ってもいいって、タダということだべか!? ちょっとといっても50m程でねぇか。」
もしかして、周囲は村のもんだから小作農みたいな形になるのだべか?
そうなると、遼平に土地を遺してやれねぇな……。
俺らが悩んでいると――――
「あぁ、自分の土地にしたいって言う意味ですか? それでしたら、耕した人のものですよ。たくさんの農地が出来れば村も潤いますしね。
耕やすだけでも自生する小麦の生育がよくなりますし。」
「えぇ!? ホントだべか? 税金は土地にかかるだべか?」
「そんなことしたら、誰も開墾しなくなっちゃうじゃないですか。人頭税と収穫量に応じてですよ。」
何を馬鹿な事をと村長は笑うが、俺ら達にとっては衝撃だべ。
トラクターで耕せば一面が秋津家の土地になるだべか?んだど、本家より広大な土地が手にはいっちまうでねぇか!?
村長に色々話を聞くと、村の敷地で空いている場所なら家も倉庫も建ててもいいそうだし、俺らたち騙されてるんじゃねぇか?と思うような破格の待遇だべ。
それに、農作物は良く育つし、自生もしているらしいんだ。疫病や虫害、連作障害もなくて肥料を使わなぐても今見ている位にはしっかり育つそうだ。
農家の天国でねぇか!?
穀物の売価を聞いてみると、日本街で売ると日本の1/3くれぇとの事だ。他の町ではもうちょっと安いからそれでも高い方だそうだ。
ちょっと野菜の食味を調べさせて貰ったところ、日本の野菜のほうが味はいいべな。
日本の穀物や野菜を育てたら、単位面積当たりの収穫量も、味もよくなって売価も上がるんじゃねぇが?
いつの間にかここで農家やる気になってただべ!?
しがだねぇ、それだけ魅力的な土地だべ。
こんな着眼点をもってるうちの
「んなら、ウチの家族がここで農家してもいいだべか?」
「もちろんです! 日本の方々が使われている機械?という道具だと、農作業が凄く楽になるって聞きますし。」
「開墾や畝作り、種まきくらいならやってやるべ! 野菜の収穫は手作業が多いのは仕方ねぇべな。」
最近は軽油の値段も安定していて、農薬とかの経費が少なくて済むならそれくらいお安い御用だべ。
「助かります!収穫の際には村一同でお手伝いさせてください!」
「きにすんな。農村は持ちつ持たれつだべ」
西暦2019年11月(中央暦1639年11月)
「最近の家はこんな早く出来るんだべな。スリーデープリンタ? なんで印刷で家が出来るんだべか?」
「3Dプリンタだよ。良くわからないけど、塗り重ねていく感じみたいなんだってさ。でも、せいぜい2階建てが限界なんだって」
遼平の言ってることは難しいが、ソーラー発電付きでまあまあな家が安く建ったから良しとするべ。
本格的な家は、遼平の好きに立てたいだべな。
この一月の間に、地元で兄貴に農作業の引継ぎとあいさつ回り、日本人街のお役人さんと会って需要の高い作物を教えて貰って、適した種を買ってきただ。
ここから秋津家の新しい生活が始まるだ。
中古のトラクターが、新しい土地を開拓していく。
「ふろんてぃあすぴりっと」ってのもこんな気持ちだっただべかなぁ……?
クワ・トイネの農業事情です
1章の高群さんや、本話の秋津一家のように、クワ・トイネと融和していく人はこれから増えてきます。
クワ・トイネにとっても日本人特区の税収で想像以上に儲かっているので、今後、他の領主も日本に未開の土地を貸すことも増えてきます。