パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
佐藤:外務大臣政務官(クイラ王国担当)
阿野:日本国首相
●クイラ王国
テヘンラ:クイラ国王(狼系獣人)
マシュハ:クイラ王国宰相(エルフ)
西暦2020年4月(中央暦1640年4月)
◆◆ クイラ 王都オイルー 執務室 ◆◆
「佐藤様、お待ちしておりました。」
クイラ王国宰相のマシュハが、日本国外務大臣政務官の佐藤を歓迎する。
「こちらこそ、お招き頂きありがとうございます。それと、貴国に空港を開設させて頂けたこと、改めてお礼をさせて下さい。」
日本はロウリア王国との戦争、ロデニウス戦役の後、クイラ、クワ・トイネ、ロウリアに小規模な空港を設置させて貰ったのだ。
有事の際に直ちに行動できるように、また最悪の場合、各国の重鎮を日本に亡命出来るようにするためだ。
王都付近の空港は政府、軍事用なので、一般市民は日本特区付近にある空港のみ使用できる。
「クハハハッ!相変わらず固い男だな佐藤!! もっと砕けて行こうではないか!」
佐藤は豪快に笑うクイラ国王のテヘンラに、相変わらずな方だと心の中で苦笑いする。
だが、心なしか機嫌がいいようにも感じる。
「すみません陛下――――じゃなくて、すまないな陛下。機嫌が良さそうに見えるが、何かあったのかな?」
他国の王にこのような口調をしなければならない事に、胃が痛くなる思いをしつつ佐藤はテヘンラに上機嫌の理由を尋ねる。
「良くわかるな、佐藤!! そうなんだよ!とてもいい事があったんだ! 聞いて驚くなよ?」
「陛下……日本国にとっては驚くような事ではありませんよ……」
身を乗り出すわりに、勿体つけるテヘンラをマシュハが嗜める。
そういえばそうかと、テヘンラは椅子に深く腰掛けて話し始める。
「とある筋からな、火薬技術の火器の製造方法を伝授して貰ったんだ。その結果、自国でも火薬の生成に成功してな。喜ばすにはおられんだろう?」
話すうちにテヘンラのテンションは上がっていき鼻息が荒くなっていくのが、それなりに距離のある佐藤にも伝わる。
佐藤も火薬技術をクイラが手に入れたことには大きく驚いた。自力ではまだ先になるだろうと推測していたのだが、まさか外国から入手するとは思ってなかったのだ。
「それは素晴らしいですね!おめでとうございます!」
「うむ!これで一歩、文明国への道のりが近づいたぞ!今日は、いや今日もパーティーがあるのだ。この案件の後、参加していかないか?
とはいっても、パーティー料理は日本から輸入した食品や調理方法が多いのだがな!! クハハハッッ!!!」
「それは素晴らしいお誘いですね、是非とも参加させてください。それと、私たち日本からもお祝いのプレゼントをさせて頂きましょう。」
佐藤はこの世界の友好国が火薬技術を開発した場合の手札を切る。火薬は取り扱いが難しいし、生兵法で彼らに怪我をしてもらっても困る。
であれば、日本の火薬取り扱い方法を伝授する事で事故を未然に防ごうとの想いからだ。
武器庫で大爆発なんて起こされたら堪ったものではないと佐藤は思う。
「それは、本当なのか?佐藤。」
「はい。火薬は危険なものです。大事故が起こる前に正しい管理方法、使用方法を身につける必要があると思います。日本が蓄積してきたノウハウであれば、事故が起こる確率を下げる事ができると思います。」
テヘンラは予想外の大収穫に、佐藤の口調が戻っていることにさえ気が付いていない。
それほどにテヘンラにとって、クイラにとって大事なのだ。
テヘンラの尻尾は興奮でぶわっと逆立っているくらいだ。椅子の後ろなので佐藤もマシュハも気が付いてはいないのだが。
「そうか、それは助かる。是非とも我々に教えられる範囲でいい、教授して欲しい。」
火薬に関しては後日、日本軍から取り扱いについてのノウハウをクイラ軍と科学者は受ける事になる。
「話が脱線してしまったな。余りに大きなことだったから、後回しにすることも出来なくてな。それではマシュハ、頼むぞ!」
「はい、陛下。話を戻させていただきますと……今回、佐藤様を招待させていただきましたのは、ロデニウス大陸で新たに単一通貨を発行しようと思うのです。これはクワ・トイネ、ロウリア双方とも合意を得ています。」
「それは、おめでとうございます。」
佐藤はロデニウス大陸内で、国家同士のいがみ合いが無くなる証明になるのだろうと心からの祝いの言葉を贈る。
ロデニウスの三カ国には日本人が進出し始めている。国内が安定するのは日本にとっても非常にありがたいことだ。
「その硬貨の発行を――――日本にお願いしたいのです。」
突然の飛び火に佐藤は驚く。だが考えれば理解も出来る。
「貨幣の価値、信用性を向上させたいのですね?」
「はい、お察しの通りです。クイラ硬貨もロウリア硬貨も第3文明圏の通貨に比べると些か質が悪いのです。品質が悪いと偽造されやすく通貨の信用が下がってしまいます。
それに比べて日本の硬貨は、非常に精巧で美術的な価値があるほどです。」
マシュハは日本円を取り出して、自分の目の前に掲げる。
「特に10円硬貨と500円硬貨は別格ですね」
マシュハは10円玉の平等院鳳凰堂の精密さ。500円玉は桐のデザインも悪くはないが、0の中に500円の文字が浮かび上がるのが非常に気に入っている。
500円には他にもNIPPONのマイクロ文字や桐の描かれている面にも微細な線や点があり偽造対策がされているのだが、そこまでしている事をマシュハやテヘンラは知る由もない。
「ですが、貴国の通貨を日本が作ってもいいのでしょうか?」
日本がやることはないが、他国の通貨を製造するという事は日本が貨幣の流通量を好きに出来てしまうということでもある。
「日本であれば、その気になればクイラ硬貨を製造する事などたやすいでしょう?
そのことを心配するくらいでしたら貨幣価値を高める方が効果的です。
それに、クワ・トイネはクイラ硬貨を使っているのはご存知ですね?拙い技術を使い自国で粗悪な貨幣を作るより、友好国の信用がある貨幣を使ったほうがいいこともあります。
ご存知かもしれませんが、ロデニウス大陸外と交易するとき、クイラ銅貨はロウリア銅貨よりも変換レートが高いのですよ。」
佐藤は腑に落ちないところもあるがマシュハの言い分もわかる。
地球との文化の違いなのだろうかと納得するほか無かった。
「わかりました。最終的に可否は持ち帰って検討しなくてはなりませんが、前向きに検討させていただきます。」
「それは助かります。では銅貨、銀貨、金貨、白金貨のデザインをお持ちします」
「こちらが、各硬貨のデザインとなっております。細かな装飾もあるのですが、実現可能でしょうか……?」
マシュハが持ってきたデザインを佐藤は確認する。
先ずは銅貨。丸い硬貨で、大きさは10円玉と同じくらいだ。
外周部は中世の壁画にありそうな、植物をモチーフとした細かな装飾とロデニウスというこちらの世界の文字が書かれていた。
そして、中央部は片面に人と獣人の顔が、もう一面にエルフとドワーフの顔が描かれている。
4つの種族が共栄していくという意志の表れなのだろう。ロウリアが憑き物が落ちたみたく理性的になってくれたのは非常に嬉しい限りだと佐藤は思う。
銀貨は正方形で大きさは銅貨と同じ。
デザインも正方形用に調整されているだけで銅貨と同じだ。
「ええ、銅貨は……銀貨も問題無さそうですね。製造は両面に記載したほうがいいのですよね?」
1円や5円に比べればかなり緻密ではあるが、10円程ではないので造幣局で十分対応可能だろうと佐藤は判断する。
「それはよかった……!そうですね。銅貨、銀貨に表裏は無いのでそうしていただけると助かります」
安堵したマシュハに笑顔で対応した佐藤は、金貨のデザイン図を確認する。
金貨はエメラルドカットの様に長方形の角を落とした形で、大きさは500円玉を縦に伸ばした位だ。
こちらは一つの面に4種族の顔がデザインされている。中央で十字に区切られていて、左上に人間、右上にドワーフ、左下にエルフ、右下に獣人という配置だ。縦に180度回しても同じ様に見えるようデザインされていた。
そして裏面にはロデニウス大陸の地図が描かれている。国境は書かれておらず、山などの地形のみが描かれていた。
「これは素晴らしいですね。ロデニウス大陸が一丸となっている感じが伝わってきます。」
「はい。その様な意図で作られましたので、分かって頂けたのでしたら幸いです。」
素敵な意匠だが、一般市民が金貨以上を持つことは余り無いそうなので、裕福な人か国外との商用に使われるのだろう。
そして白金貨だが、ダイヤモンドのブリリアンカットをイメージした形になっていた。ここまで来ると勲章みたいだなと佐藤は思う。
表面は金貨と同じ様に4種族の顔そして、裏面は――――
クワ・トイネ、クイラ、ロウリアの国旗が3方に描かれ、中央に日本の国旗が描かれていた。
「な、何故我が国の国旗が描かれているのでしょうか……?」
「はい。我々3ヶ国が互いに手をとることが出来たのは、日本国のお陰だと誰もが思っております。
ですので、最高の価値を持つ白金貨に日本国への感謝を示させて頂きました。
どうか、我々の想いをお受け取り下さい。」
「マシュハの言うとおり、我々クイラもクワ・トイネもロウリアも日本には感謝しているのだ。日本の国旗を使う事を許して欲しい。」
マシュハだけでなく国王であるテヘンラさえは深く頭を下げる。
そこまでされて、佐藤は断る事などできない。
「こちらも国許の最終決定が必要な事ではありますが、貴国の要望が叶うよう私も尽力を尽くします。」
「ふむ、それはよかった! 頼むぞ、佐藤!」
佐藤の言葉にテヘンラは笑い、マシュハはホッと胸を撫で下ろすのだった。
◆◆ 日本 首相官邸 ◆◆
「――――ということがあり……。」
「そうですか。他国のお金を製造するのは釈然としないですね。あぁ、悪い意味ではなく腑に落ちないという意味ですよ?」
佐藤の話を聞き、首相阿野は釈然としない表情をする。
貨幣を作る事も技術的にも問題はない。日本円の硬貨は年間10億枚ほど製造しているし、40億枚を超える年もあったのだ。余力は十分ある。
メリットとしては、強い貨幣を作り、3ヶ国が豊かになれば交易をする我々にとっても利益になるし、何より、これほどまでに親日国家だと国民が知れば日本人のいい働き場所にも、旅行先にもなる。
デメリットはやはり日本の技術で作られたものが、ロデニウス大陸に流れてしまう事だろうか……。
いずれ日本に戻る可能性を捨てていない阿野にとって、この世界への過剰な介入はよくないと思っている。こちらには転移していない日本領土が無事かも心配もしている。
だが、ロデニウス大陸は今の日本にとって生命線であり、内閣にとっても政治的に都合のいい相手であることは間違いない。
だからロデニウス大陸に限っては交易もするし、多少の技術提供はやむ負えないと与党、野党間でも意見は一致している。
(まぁ、作り方を教えるわけではありませんし、許容範囲内ですか……)
「分かりました。先ずは先方宛てにサンプルを作成して、細部の調整に入ってください。
また、クワ・トイネ、ロウリアに対しても同様の処置をお願いします。」
「はい。分かりました。では、早速造幣局にデータを転送してきます。首相、失礼します。」
「はい。よろしくお願いしますね。 ――――あぁ、そうそう、そういえば例の研究所は、何か進展ありましたか?」
ある事を思い出した阿野は、部屋を出ようとする佐藤を呼び止める。
「例の――――魔法研究所の事ですか? その件については……」
ロデニウス大陸に火薬兵器が伝わりました。
それにより、日本の火器管理方法が伝わる事になります。
技術防止法的に、ほぼ黒なのですが、日本国民のいる所で大爆発とか起こされても堪ったものではないということで、特例として許可されました。
何も対策せずに日本人が巻き込まれましたなんて事件が起きたら、政府は大ダメージですからね、仕方ないね。
次は、ようやく日本の魔法研究所のお話です。
因みにサンプルは下記の代替素材で当日作成され、数日中に以内に各国のトップの目に触れています。
尚、素晴らしいと喜んでもらえたそうです。
銅貨:青銅( 10円の素材)
銀貨:白銅(100円の素材)
金貨:黄銅( 5円の素材)
白金貨:白銅(100円の素材)
パーパルディア公国の人間で日本に対してやらかして欲しい人間は?(パーパルディア結末が分岐します)
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レミール
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レミールとカイオス
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レミールと皇帝
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3人ともやらかす欲張りセット