パラレル日本国召喚   作:火焔

30 / 75
登場人物
●日本
佐久間:国立魔法研究所職員

●クワ・トイネ公国
シャロット:公国魔法士(エルフ)

●クイラ王国
アフヴァ:王国魔法士(狐系獣人)

●ロウリア王国
ダイダロア:王国大魔術師



03. 国立魔法研究所

 西暦2020年4月(中央暦1640年4月)

 

◆◆ 日本 国立魔法研究所 ◆◆

 

 私は佐久間、この国立魔法研究所の職員です。勿論魔法は使えませんよ。

 国立魔法研究所は今年設立された機関で外務省の直属です。なんで外務省と思うかもしれませんが、外国の魔法使いを招いて研究のお手伝いをしてもらっているからです。

 

 ここでは魔法と魔石に関する研究をしています。

 魔法って何?を調べて何か体系化出来ないかを目的としています。

 漠然としすぎですか?そうですね。それだけ日本は魔法について何も分かっていないのです。

 もっと研究が進めば、細かな機関や研究所が設立されるでしょう。

 

 

 少し話は変わりますが、魔法使いという職には称号があるそうで

 

 『魔法学生』『魔法助士』『魔法士』『魔術師』『大魔術師』『魔導師』『大魔導師』の7つの称号が存在しています。

 

 どの国もこの称号は同じとのことですが、国家間で魔法技術に差がある場合、同じ「魔術師」でも力量は異なるらしいです。ややこしいですね。

 まぁ、基本的に文明国の「魔術師」は非文明国の「大魔術師」より強いと覚えていただければ結構です。

 

 そこで、私達はクワ・トイネ、クイラ、ロウリアの三カ国に協力をお願いして、日本に来ていただきました。

 ただ高位の方々は非常にお忙しいので、少し余裕のある「魔法士」階級に方々をお願いしました。

 

 そして私たちのチームに協力してくださっているのは、クワ・トイネからエルフのシャロットさん、クイラ王国から獣人のアフヴァさん、ロウリア王国からは人間のダイダロアです。

 ダイダロアさんだけは「大魔術師」の称号をお持ちです。ロウリア王国の協力に感謝しなくてはいけませんね。

 

 魔力量は基本的にエルフ>人間>獣人>ドワーフらしく、ドワーフで魔法使いの職をもつ方は余りいません。

 

 

「それでは、シャロットさん、アフヴァさん、ダイダロアさん、よろしくお願いします。」

 

「ええ、構いませんわ。」

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

 

「日本国のお力になれる様、わたしの力の限りを尽くします。」

 

 ダイダロアさんは真面目な方なのか、肩に力が入りすぎている感じがしますね。緊張しているのでしょうか?

 

「では、魔法について基本的なことからお伺いしたいのですが、構いませんか?」

 

「でしたら、わたくしから説明させて頂きますわ。

 魔法とは自分の体内にある魔素を使用して、攻撃や治療などの力を発現させるものです。

 魔法はいくつかの系統に分かれていて、火・水・風・土・雷・氷・光・闇・回復の9系統が存在しますの。」

 

 シャロットさんが魔法の発現方法、系統というものを説明してくれました。

 

「ありがとうございます。魔素ですか……。それが、どのようなものかはご存知ですか?」

 

「魔素は空気中に存在していますの。どのようなもとと言われますと……魔法を使うための力としか分かりませんわ。魔法で消費した魔素は時間をかけて空気中の魔素を体内に取り込みますの。皆様もそうですわよね?」

 

「そうだね。」「その通りです。」

 

 アフヴァさん、ダイダロアさんも頷きます。

 なるほど。魔素自体を学術的に研究しているわけではないと言うことですか。

 リンゴが木から落ちるのは当たり前で、何故落ちるのかはわからないといった所でしょうか。

 

「ありがとうございます。次に、9系統に分けられているのは何故でしょうか?」

 

「ベースとなる魔法陣が全く異なるからですわ。9系統と言われているのは、神聖ミリシアル帝国が古代遺跡を解析して9系統存在すると発表したからですの。

 ただ、全てを発表したかは分かりませんわ。古代魔法には物質複製魔法や転移魔法、時の流れを遅くして物の劣化を押さえる魔法が存在したそうですが、今の9系統に当てはまるとは思えませんもの。」

 

「現時点で解明されているのは9系統ですが、他にもありそうという感じなのですね。それと、先ほど魔法陣という言葉が出てしましたが、どういうものなのでしょうか?」

 

「魔法発動のための陣?といえばいいのでしょうか……。

 魔法発動には2種類ありますの。1つ目は魔法陣に魔力を流して発動させるもの、もう1つは詠唱によるものです。

 多分、詳しく説明したほうが宜しいのですよね?」

 

「はい。そうして頂けると助かります。」

 

「魔法陣を利用する場合、魔力を流して現象をイメージすると魔法が発動します。魔法陣を書くのは何でもいいですわ。地面に書く場合もありますし、紙に書く場合もあります。魔石による、魔法の発動はこの技術の発展系ですわね。」

 

「補足しますとと魔法陣の再利用は可能です。ですが、魔力を流すのに時間がかかるので、詠唱の方が発動は早いですね。ただ、現象のイメージだけで済むので、詠唱より難易度が低くなります。

 それと、魔法のイメージは完全に一致せずとも発動します。発火の魔法で火を起こすとイメージすれば発動します。火力は魔法陣の質によりますね。また、発火の魔法陣で水を生み出すイメージをすると、魔力だけ消費して何も発生しません。これに関しては詠唱も同じですが。」

 

 シャロットさんの説明に、ダイダロアさんが追加で説明してくれます。

 イメージと魔法陣の意味が異なる場合、何も起こらないとすれば適当に魔法陣を書いても何も起きないと言う意味ですね。

 ただ、発火魔法の魔法陣に変更を加えていき、発火のイメージをすれば火力の強弱、質の変化は出来るそうです。

 

「詠唱を使う場合ですと、先ず頭の中に魔法陣を描きますの。これが難しくて、正しくないと魔法は発動しませんわ。そして、魔法の起動詠唱を唱えると同時に現象をイメージすると魔法が発動します。発動は早いのですが、魔法陣の構築が難しいので難易度は高いですわ。」

 

「なるほど、魔法陣と詠唱どちらもメリットが存在するのですね」

 

 魔法陣は、魔法陣そのものの構築が省略されている代わりに発動が遅い。また、なんらかの媒体に魔法陣を書く必要がある。

 詠唱は、自身の中で全て完結するし発動も早いが、そもそも発動自体が難しい。

 

「そうですわ。ですので、魔法を覚えるときは師匠に魔法を見せていただき、魔法陣を使って発動して覚えますの。その後、詠唱での発動を覚えますわ。

 魔法陣は魔法使いの財産なので、難しい魔法が公開される事はありませんの。」

 

 知識は財産と言うわけですね。誰もまねできない術を持っていれば、それは力ですしね。

 それにロデニウス大陸では、現代のような学校は存在せず、ギルドに所属して教わる、家庭教師を雇うというのが一般的です。

 活版印刷もそれほど普及していないので本も筆写でしょうし。

 

 今の情報を簡単に纏めると

・魔法は体内の魔素を使用して発動する

・魔法は「魔法陣」「詠唱」の2パターンある

・魔法は現時点で9系統存在する

・イメージと魔法陣に大きな差異がある場合、魔法は発動しない

 といった所でしょうか。

 

 

 

「それでは、発火などの簡単な魔法の魔法陣を描く事はできますか?」

 

「勿論ですわ。それくらい出来ないと魔法学生にもなれませんわ。」

 

「問題ありません。都市で使われている魔法陣でしたら幾らでも書きますよ。」

 

「大魔術師である私の腕の見せ所ですね。ロウリア人間流宗家の技術をお役に立てて見せます。」

 

「……ん? ダイダロアさん、ロウリア王国人間流宗家と言うのは……?」

 

 なんかややこしいのが出てきました……。

 なんか火魔法に特化したとか流派とか出てきても、おかしくない流れですね……。

 

「えぇ、ロウリア人の人間が扱い易いように改良された魔法陣を使用する流派です。もちろん獣人、エルフ、ドワーフが扱い易いように改良されたものありますよ。宗家と言うのはもっとも一般的な流派ですね。才能ある人が弟子達のために分派したり、水魔法を極めたい人たちが分派したりする事もあります。」

 

 やっぱり大変な事になってきましたね……

 

「と言うことは、シャロットさん、アフヴァも……?」

 

「えぇ。わたくしはクワ・トイネ公国エルフ流バニル派ですわ」

 

「俺は、クイラ王国獣人流採掘派です。鉱山で働いているので、採掘に特化した魔法を習得しています。」

 

 ここまで異なると、魔法陣がどう違うのかは気になりますね……。

 

「では皆様、最も初歩の発火魔法の魔法陣をお願いします。」

 

 

 

 紙に魔法陣を描いてもらい、どのような違いが出るのかと観察すると……

 

 ベースらしき魔法陣の形は同じで、そこから徐々に個性が出ていき、

 それぞれの魔法陣は似ているけど似てないという不思議な魔法陣が出来上がったのです。

 それぞれの魔法陣の火力も肉眼ではほぼ同じ、温度もサーモグラフィでほぼ同じ。

 

「なるほど……。この魔法陣って、例えばアフヴァの魔法陣をダイダロアさんが発動する事ってできるのですか?」

 

「いや、難しいですね。同じ人間であれば、また、同じ国に属する場合であれば可能性はありますが、ここまで違うと不可能でしょう。」

 

「そうですか……。」

 

 

 

 今日の実験を終えて、同僚と魔法陣の検証に入ります。

 

「同じロウリア王国人間流宗家ですと、殆ど同じですね。」

 

「ええ。同じサイズにして重ねると細かい差異があるくらいですね。このあたりは魔法使いの癖なのでしょうか? それとも、師が違うことによる差異なのですかね? 何か知っていますか? ダイダロアさん。」

 

 あまり魔法を使っていないため、魔力を持て余しているダイダロアさんが魔法陣の検証に付き合ってくれています。

 勤勉なダイダロアさんには特別報酬を渡さないと、所長に怒られてしまうかもしれませんね。

 

「同門でも師によって細部が違う事はよくありますね。私ならどちらもつかえると思いますよ? 見てみますか?」

 

 ダイダロアさんにお願いして、発火を見せてもらうと先ほどの火と全く同じものでした。

 もしかしたら――――?

 

 スキャナでPCに取り込んである魔法陣の差異がある部分を消去して……

 出来上がった魔法陣をプリントアウトします。

 

「この魔法陣で試して貰えますか?」

 

「おや? このあたりの紋様が消えていますね? まぁ、同じ流派ですし問題ないと思いますが……」

 

 ダイダロアさんに再度、発火魔法を使ってもらうと――――

 やはり魔法は発動した。

 

「やっぱり。隠蔽なのかはわかりませんが、先ほどの部分は不要である可能性が高いですね。

 ダイダロアさん、ロウリア王国人間流で分家の魔法は使えますか?」

 

「問題ございません。多少魔力の消費は大きくなると思いますが、私でしたら誤差の範囲で出来ると思います。」

 

 分家の魔法陣を問題なく発動させるダイダロアさん。

 魔力の消費量を測るすべを持たないので、ダイダロアさんのいうとおり、消費量は増えているのだろうと推測せざる終えません。

 

 

 宗家、分家でも、この魔法陣であれば余り差異はありません。

 しかも、先ほど削除した宗家の差異は分家の魔法陣には、分家によってあったりなかったり、一部あったり……。

 その差異の部分はロウリア王国エルフ流には存在せず、獣人流にはあって、ドワーフ流には紋様が大きくなっています。

 

 訳が分からなくなってきましたね……

 いっそのことロウリア王国人間流の全ての流派で使われている紋様のみ抽出した魔法陣ならどうなるのでしょうか……?

 

 

 

 PCでロウリア王国人間流の魔法陣を重ねて、一致部分だけ抽出していきます。

 そうして出来上がった魔法陣は……1割ほどスッキリしていますね。

 

 もしかしたらですが、長い年月と色々な人の介在によって実は無駄な部分が存在するのではないでしょうか?

 

「ダイダロアさん。この魔法陣で試して貰えますか? きっと問題なく発動できると思うのですが……」

 

「魔法陣に隙間が増えていますね……大丈夫でしょうか……。」

 

 (いえ、日本国の方が言うなら間違いない)とボソって呟き、真剣な顔になるダイダロアさんを見て申し訳なく思う。

 物は試しだってなんて言えませんね……。ダメだったら素直に謝りましょう……。

 

「おぉ!出来ましたよ、佐久間様! しかも、魔力消費が少しですが軽減されています。流石は日本の方だ!!」

 

「よかった!成功ですね! ただ、ダイダロアさんが高位の魔術師だからと言う可能性は捨てきれませんね。」

 

「もしかしたら……佐久間様、少し時間をいただけますか?」

 

 ダイダロアさんが紙に先ほど作った魔法陣をコンパクトに纏めて再構築していきます。

 そして出来上がった魔法陣を発動すると、先ほどより僅かですが発動までの時間が減ったように感じます。

 

 2枚の魔法陣の魔法発動をビデオで撮影すると……。やっぱり0.2秒短くなっています。

 

「これはすごい……!ロウリア王国人間流の歴史に名が残るぞ……!ここから新たな魔法が生まれるかも知れない!」

 

 ダイダロアさんはかなり興奮している様子です。

 話を聞くと初歩の魔法である以上、大きな魔法はこの魔法に紋様を加えて大きくしていく様なのです。

 この魔法陣が効率化された場合、この魔法陣を各所に配置する魔法は、配置した分だけ消費と発動速度が速くなっていくそうなのです。

 

「でしたら、他のロウリア人間流の方々でも使えるか明日検証してみましょう。人数分コピーしておきますね。」

 

「はい、お願いします。それと大変申し訳ないのですが、この魔法陣を研究したいのです。魔法を使っていい場所をお貸しいただけますか?」

 

「それでしたら、実験室が空いていますのでお使い下さい。火気も想定していますので、火炎放射くらいでしたら問題なく防げます。」

 

 興奮した様子で部屋を出て行くダイダロアさんを見送り、私は大量の魔法陣に向き直る。

 

 

「先ずは3カ国の4種族の流派、計12流派の魔法陣を先ほどの様に一致部分だけ抽出してみましょう。

 もしかしたら無駄になるかもしれませんが、何か分かるかもしれません。」

 

 

 

「よし、これで全部ですね。うん!明日が楽しみです。」

 




ちゃんと日本に招いた魔法使いには、報酬を払っていますよ。
母国での収入の2倍です。渡航費は日本持ちで食事も食堂がタダです。

忘れてるかもですが、ロウリアのダイダロアさんは日本人が魔帝の系譜だと信じているので、何とか役に立とうと結構必死です。
ロウリアだけ高位の称号持ちが来ているのも、ロウリア王国の日本国の役に立ってこいとの指示によるものです。

パーパルディア公国の人間で日本に対してやらかして欲しい人間は?(パーパルディア結末が分岐します)

  • レミール
  • レミールとカイオス
  • レミールと皇帝
  • 3人ともやらかす欲張りセット
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。