パラレル日本国召喚   作:火焔

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●フェン王国
シハン :国主
マグレブ:騎士長
クシラ :海軍武将

●パーパルディア皇国
ブリガス:第3外務局局員
カイオス:第3外務局長



02. フェン王国の決意

◆◆ フェン王国 国主の間 ◆◆

 

「くっ! ついにパーパルディア皇国が我が国を標的にしてきたか……!!」

 

 パーパルディア皇国から届いた勧告書を見て、剣王シハンは苦虫を潰した様な顔になる。

 我が国の西側半分、そして、娘の全てを差し出せという暴挙、到底受け入れる事ができない事案を突きつけて宣戦布告の大義名分を得る。

 たとえ受け入れても、毎年奴隷を差し出せと要求はエスカレートするだけだ。

 

「たとえロウリア王国から戦列艦を輸入していたとしても、パーパルディア皇国軍を追い返すのは困難でしょう。」

 

 騎士長マグレブは彼我の戦力差を冷静に分析する。

 剣王シハンの娘であり、自身の妻を差し出せと言われているにも関わらず冷静なものだとシハンは思う。

 

「となると、日本国、またはロウリア王国に援軍を求めるか……?

 だが、彼らは頷いてくれるだろうか?」

 

 新たな剣神を建造したロウリア王国、そして『霧島』という強大な力を持つ日本国ならば、パーパルディア皇国にも引けを取らないだろう。

 だが、彼らが参戦してくれるメリットを提示出来るかと言えば……

 

「難しいでしょうな。ですが、何もしなければ皇国に蹂躙されるだけに御座います。

 ひとまず、フェン王国に観光に参っている日本人にそれとなく聞いてみましょう。

 日本国の戦争における姿勢がわかるかもしれませぬ。」

 

「うむ。頼めるか?」

 

 

 

◆◆ フェン王国 アマノキ市街地 ◆◆

 

 フェン王国には、年間100万人の日本人観光客が訪れる。

 

 地球世界では仕事を含め、年間3000万人が海外へ出国していたが、この世界では海外が危険という事もあり

 国外観光はロデニウス大陸3カ国、ガハラ神国、フェン王国しかない。

 それ故に、この5カ国への観光客は必然的に多くなる。

 

 親日のロデニウス大陸3カ国は当然このこと、ガハラ神国、フェン王国も何故か和風染みていて、古き時代の日本を見ているようでそこそこ人気がある。

 

(彼らはたくさんのお金を使ってくれるし、礼儀正しくもある。ただ、戦士としての気迫は無い様にも見える。我が国のように全ての人が戦う術を持つというわけではないのかも知れない。)

 

 マグレブはもしかしたら、期待する答えは返ってこないかもしれないと思いつつも、日本人の観光客に声をかける。

 

「そこの者。貴公らは日本人であるな?」

 

「え、えぇ。そうですけど、何か御用でしょうか?」

 

 一組の日本人男女がマクレブの質問に答える。

 

「うむ、御用があるのだ。私は騎士長マクレブという。いくつか質問をさせて頂きたい。時間を頂戴できぬか?」

 

「構いませんよ。お侍さんと話せる機会なんてありませんし。」

 

 マクレブは近くの茶屋に二人を誘う。軒先に立てられている真っ赤な野点傘に、竹で作られたような長いすが置かれている。

 そこで団子やお茶を楽しみつつ、マクレブは日本人に質問をしていく。

 

 

 

「うむ。助かったぞ日本の方々。」

 

「いえいえ、何か余り力になれず、すみません。」

 

 やはりマクレブの予想通り、軍事関連の質問をしても知らない事は多いみたいだ。

 ただ、日本がロデニウス連合という国家間連合体に所属したということを聞けた。

 つまり、日本とロウリア王国は同盟を掬んだということだろう。

 同盟を結んだ理由は、やはり対パーパルディア皇国のためだろうと。

 

 それからも何人かの日本人に軍事関連の質問をしたが、殆ど同じ回答だった。

 これ以上は余り進展も無いだろうと判断し、マクレブはシハンの元へ戻った。

 

 

 

◆◆ フェン王国 国主の間 ◆◆

 

「剣王! 何故パーパルディア皇国と戦わぬのです!!」

 

 マクレブが城に戻ると怒号が聞こえた。この声はクシラであろうと。

 そして、何故怒っているかもマクレブにはわかっていた。

 

「ただいま戻りました、剣王。――――やはりクシラだったか。」

 

 マクレブが部屋に入ると、クシラが物凄い形相でシハンに詰め寄っていた。

 そしてクシラはマクレブに気が付くと。

 

「おぉ! マクレブ戻ったか!! お主も何故そんなに冷静でおるのだ!!」

 

「クシラ。お主の思いも良くわかる。だが、剣王の思いも汲んではやれぬか?」

 

 マクレブは剣王の表情をみると困ったような悲しいような顔をしていた。

 剣王もクシラ、マクレブの気持ちを痛いほどわかっている。そんな表情だ。

 クシラは剣王に詰め寄るのをやめるが、憮然とした表情だ。

 

「わかっておる! 俺も水軍を率いるものだ! だからこそ、このままではイカンのだ!!」

 

 クシラはドカッと木の床に座る。

 

「どういうことだ? クシラ。俺達は皆を率いるものだ。自身の心のままに戦えぬことはわかっているのだろう?」

 

 マクレブはクシラが勝てぬ戦いと知っても武士の矜持は貫くべきだ。そういっているのだと思った。

 

「お主もわかっておらぬのか……。いいか、このまま戦いもせずに日本国やロウリア王国に頼ってみろ。

 かの国は如何思う? 以前、こちらから力を示せと言って置きながらこの体たらく。

 そんな甘えた国を彼らは救ってくれると思うか?

 仮に救ってくれたとしても、我々を対等な人間とは扱ってくれぬだろう。民達にそのような生活を強いるのか?

 日本人は我々の魂を好んでくれておる。であるならば、我々は心のままに散らねばならぬ。」

 

 シハン、マクレブはクシラがそこまで考えている事に驚いた。

 全く持ってその通りだと思ったからだ。

 国のことを思うが余り、大事な事を、民の、国の誇りを捨て去るところであった。

 きっと日本であれば、民達を悪いようにはしないだろうと。

 

 

「クシラ。お主の想い、良くわかった。直ちに戦の準備を整えよ! 日本へは俺が直々に伺う。

 マクレブ。お主にはパーパルディア皇国への返答を頼めるか?」

 

「「あいわかった!!」」

 

 フェン王国はパーパルディア皇国と相対する姿勢を取った。

 

 

 

◆◆ パーパルディア皇国 蛮族用控え室 ◆◆

 

「ほぅ?では、お前たちフェン王国は、偉大なる我がパーパルディアの意に背くと言うのだな?」

 

「そのとおりだ。」

 

 ブリガスの挑発にマクレブは堂々と言い放つ。

 

「ふんっ! 少しいい軍船を手に入れたからといって、いい気になっているな。まるで、木の棒を振るう子供のようだな。

 我々のような理性ある大人が躾けてやる必要がある。何隻だ?」

 

 少しいい軍船とはマクレブが乗ってきたロウリア製の戦列艦のことを言っている。

 自尊心だけは高いパーパルディア皇国が「少しいい」というのは珍しいとマクレブは思う。

 

「どういうことだ?」

 

「わからぬのか? あのような軍船を何隻持っている。全て沈めてやらねば、身の程というものを知らぬだろう?」

 

 ニヤニヤとブリカスは笑う。

 恐らく数倍の戦力を持って完全に叩きのめすつもりだろうとマクレブは思う。

 敢えて少なく答えれば勝てるかもしれない。だが、そんな卑怯な事マクレブには出来ない。

 

「20隻だ。」

 

「ほぅほぅ。なるほどな。イキがるのも無理も無い。だが、その程度の数で……

 いや、蛮族ならばその数でも十分か。ふふっ、躾け甲斐があるな。

 さぁ、帰るといい。存分に抗って見せてくれ。」

 

 

 

 マクレブが帰るとブリガスは、局長であるカイオスの元へ向かう。

 

「局長。録画の魔石をお貸し頂けませんか?」

 

「ん? 何故だ?」

 

 ブリガスは状況を説明する。

 文明国と同等の戦列艦を20隻沈める。それも無傷でだ。

 その映像を第3文明圏の属領、そしてフィルアデス大陸の文明圏に属さない国家に見せ付ける。

 この様は、奴らの心を折るのに十分な材料となるだろうと。

 

「なるほどな。構わん。だが、奴らが盛っている可能性もある。大した数でなければ使用は禁ずる。いいな?」

 

「畏まりました。」

 

 楽しくなりそうだ。ブリガスは心の中で楽しく笑っていた。

 

 

 

◆◆ 日本国 内閣府貴賓室 ◆◆

 

「――――というわけで、我々はパーパルディア皇国と戦う心づもりでおる。

 無理を言ってすまぬが……」

 

「最後までおっしゃらないで下さい。フェン王国は我々日本が必ず守ります。」

 

 剣王シハンが突然尋ねてきたと思ったら、パーパルディア皇国に事実上の宣戦布告をされたこと、フェン王国は迎え撃つ事を伝えてきた。

 本来であれば、外交官の緑川が対応するものだが、自分が対応してよかったと阿野は思う。

 これは一外交官に対応できる案件ではない。

 

 もちろん、阿野の一存で応えていい案件でもないが、彼らの思いを汲まないなんて出来なかった。

 それほどに真剣な表情をシハンはしていたからだ。

 

「ありがたい。日本国に後を託せるのであれば、我々は思う存分戦える。」

 

「いえ、ご助力できないのが残念です。」

 

 阿野は支援を提案したが、シハンはそれを断った。

 生き様を後世に残す必要があると阿野に伝えたのだ。

 

 阿野は残念な気持ちと同時に、安堵もしていた。

 日本は日本でパーパルディア皇国と問題を抱えている中、フェン王国に手を貸せば戦火を切ることなる事を知っているからだ。

 




シハンもマクレブも地位というものが無ければ、魂に準じて徹底抗戦を選択したでしょう。
ただ、守るものが多すぎて心のままに動けなかったのです。

彼らの妻達も、侍の妻として覚悟は決めています。
むしろ彼らをひっぱたいてでも、侍として生きなさいと諌めたでしょう。
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