パラレル日本国召喚 作:火焔
カイオス:第3外務局局長
ニコルス:第3外務局局員
●ロウリア王国
シャークン:海軍大将
ハーク・ロウリア34世:国主
時は少し遡る――――
◆◆ パーパルディア皇国 第3外務局 ◆◆
「ほう? それは面白い提案だな。よろしい、やってみろ!」
局長のカイオスは部下であるニコルスの提案を聞きニヤリと笑う。
蛮族から搾り取る事を一心に考えた素晴らしい提案だと思ったから、部下に経験を詰ませてやろう。
カイオスはそう判断したのだ。
「はっ!! 早速向かいたいと思います。」
ニコルスは局長が自分の提案に賛同してくれた事。そして、ヒラの局員である自分に任せてくれた事を嬉しく思う。
局長の為にも必ず成功させなければとニコルスは奮起する。
「では、行って参ります!」
「あぁ、頑張って来いよ!」「期待しているぞ!」
ニコルスは第3外務局の入り口で深く頭を下げると、同僚達が激励を送ってくれた。
これは大仕事だ。必ず成功させたい。ニコルスは頭の中でシミュレーションしつつ、外務局を後にした。
◆◆ パーパルディア皇国 近海 ◆◆
「ふふふっ。少し大げさすぎるかな?」
ニコルスは100門の大砲を持つフィシャヌス級戦列艦に乗船しロウリア王国へと向かう。
目的は今年で切れる、ロウリアの返済を継続させようという目論見だ。
今までは国家戦略局の管轄で、第3外務局は口を出す事ができなかった。
だが今年もそれで終わる。いや、折角の金づる、ここで終わらせるなんてパーパルディア皇国の利益にならない。
延々と毎年金を搾り取り続けるのだ。そうすれば、今年からは第3外務局の功績となる。
これを思いついたときは、ニコルスは自分で自分を褒めてあげたくらいだ。
フィシャヌス級戦列艦で威圧すれば容易いこと。
いや、フィシャヌス級まで持ち出すのは少々やりすぎかな?そう思ったくらいだ。
ロウリアは商船は大型の船を建造するまでに至ったが、帆船は大砲が無ければ櫂船にすら劣る。
恐らく三段櫂船くらいは建造しているだろうが、その程度、戦列艦の相手ではない。
「ハハハハハッッ!! 楽しくなってきたぞ!!」
ニコルスはロウリア王国の真の姿など知る由もなく、航路を進むのだった。
◆◆ ロウリア王国 ◆◆
2025年2月(中央暦1645年2月)
シャークンは毎年恒例であるヴァルハルへの支払いを港で待っていた。
新ロデニウス硬貨の普及のために、旧硬貨を回収しパーパルディアへと送っていた。
鋳潰しても良かったのだが、日本国にそんな手間を取らせるわけにも行かない。
日本国のサイクルで採掘、精錬、鋳造しているのだから、余計なものを混ぜ込む方が失礼だとロデニウス大陸の三ヶ国は思っていたのだ。
ヴァルハルの提案が渡りに船で、処分に困る旧硬貨をパーパルディアに送る事で新硬貨への交換がスムーズに進み、パーパルディア皇国を欺く作戦も上手く行った。
「これが最後になるな。後3ヶ月で、我々は新たな道を進む事になる」
4月にはロデニウス連合が世界に発表されて、遠くない未来に日本国が列強へと名を連ねるだろう。
そうすれば日本国を宗主国と仰ぐ我々はパーパルディア皇国からの圧力に怯えなくて済む。
シャークンは大量の旧硬貨が入った樽の隣で、その時を今か今かと待ち侘びる。
「あの旗は……来たようだな。
――――ん? なんだかいつもと違うような気がする。」
シャークンは日本製の高倍率単眼鏡でやってくる船を覗くと……
「アレは戦列艦ではないか!? それに乗っているのはヴァルハルではない?」
最期にしていつもと違う状況に、シャークンは警戒レベルを最大に引き上げる。
すぐさま発射できるように準備した大砲を配置して布と運搬用木箱で隠す。
この距離なら、あちらからは何をしているか見えまい。武装船で来たのだ。万が一に備えるべきだと。
「やぁやぁ、蛮族の諸君! 今回はこの私、ニコルスが貴様が金を受け取りに来てやったぞ!」
話をを聞くとニコルスはヴァルハルの代わりに金を徴収しに来たとのことだった。
ならば金を渡してお引取り願えばいい。
「ふむ。これがパーパルディア皇国への献上金だな? 肝心の借金の返済だが如何した?」
ニコラスは借金の返済ではなく、パーパルディア皇国への献上金にすり替えてロウリア王国から金を巻き上げようとする。
「ニコラス殿。今お渡しした硬貨が今年の返済金でございます。」
「はぁぁ?? これはパーパルディア皇国への献上金であろう? ふざけた事をぬかすな。
払えぬのであれば、来年の返済でツケにしておいてやろう。私は謙虚だ、利子は100%にしておいてやる。感謝するがいい。」
シャークンは察した。コイツはハイエナだと。
シャークンはそのような戯言はまかり通らないと毅然とした態度で対応する――――
「蛮族は理と言うのが理解できないようだ。ならば、犬猫のように躾けてやらねばなるまい。――――撃て。」
ニコルスは、戦列艦の大砲で建造中のガレオン船に向けて発砲する。
至近距離から砲弾の雨を受けたガレオン船は無残に砕け沈没した。
(偉大なる日本からの知恵と技術で作られた、素晴らしきガレオン船になんてことを――――!!)
シャークンは激怒し、激情に駆られそうになる。だが、理性を動員して必死に感情を抑える。
今は大事な時期だと、今、感情に捕らわれて行動してはこの5年が無に帰すかもしれないと。
今回だけロウリアが我慢すれば全て報われると。
「わ、わかった……。直ぐに金を用意する。待っていてくれ……。」
シャークンの怒りに震えた声を、ニコルスは恐怖に震えた声と勘違いした。
「ふんっ! さっさとそうしていれば良いものを」
シャークンは内政官に事情を説明し、特別予算の中から返済金と同等の金額を捻出して貰い港へと運ぶ。
しかし――――
「足りない! 貴様の所為で撃ってしまった砲弾、弾薬の金が入ってはいないではないか!!
貴様達蛮族は大砲を一発撃つのにどれだけ金がかかるか知らぬ様だな!!」
そうして、ニコルスは合計で例年の5倍の金銭を要求してきた。
(そんなに砲弾が高いわけあるか!!)
日本から消耗品を購入しているシャークンは、法外にも程がある金額に血管が切れそうになる。
それを抑えつつ、そんな大金国庫にはないと告げると――――
ニコルスは積荷を積載し、港に停泊しているロウリア王国のガレオン船に大砲を放つ。
先ほどと同様に、ガレオン船は無残に砕けて海へ沈んでいく。
あのガレオンには建材に向いていると日本が贈ってくれた、桧や欅、杉、桜など様々な樹木の苗が積まれていた。
ここにて、ついにシャークンの堪忍袋の緒が切れた。
「この愚か者を沈めろォ!!!」
シャークンの怒号共に木箱や布で隠された大砲が姿を現し、並べられた大砲が火を放つ。
ガレオン船と同様に……いや、それより脆いパーパルディア皇国のフィシャヌス級戦列艦は残骸へと変貌し瞬く間に海へと沈んだ。
そして、ニコルス達水夫は捕虜としてロウリア王国に拿捕された。
「やってしまった……」
念のため、写真の魔石で一部始終は撮影していたが、陛下たちの努力を無に帰してしまった……
部下達は、あそこまで耐えたシャークンを励ましていたが……
(いや、落ち込んでいる暇はない。直ちに陛下に報告しなければ!)
自身の裁量では如何にもならないことを理解しているシャークンは、ハーク・ロウリア34世に事の顛末を報告した。
「――――というのが事の顛末です。皆には申し訳ないことをした……。」
テレビ電話会談で、ハーク・ロウリア34世は阿野首相、テンヘラ国王、カナタ国王に今回の事件の顛末を述べる。
「いや、仕方ねぇぞ!! そんなことをされれば、誰だって同じ対応をする。俺だってそうする! 寧ろ、1回目の暴挙で我慢したことを褒めるべきだ!!」
テヘンラはシャークンを擁護する。
実際テヘンラであれば、5分と持たなかったであろう。
「えぇ、彼に非はありません。それより、これから如何するかを話し合うべきかと。」
カナタもテヘンラに賛同し、責任の追及など全くせずにこれからのことを話し合うべきだと主張する。
「互いに死者が出なかった事が幸いでした。ロウリア王国への補填は日本国が致しましょう。
それに、証拠写真を収めてくださったことに感謝します。
これならば、きっと上手く事を収められるでしょう。」
阿野は今回の件を可能な限り公にせず治めようと結論付ける。
日本の民意が安定しない今、余計な波風を立てるべきでないと。
「外交官をそちらに向かわせます。証拠写真を収めた魔石の保管を厳重にお願いします。ハーク・ロウリア陛下。」
そうして、主機関を積んだ帆船である海王丸がロウリア王国へと向かった。
ヴァルハルからは軍艦がいいと言われていたが、今回のような揉め事の解決に軍艦で向かうのは挑発しているようにしか見えないとの判断によるものだった。
それが、良かったのか悪かったのかは、誰にもわからなかった。
ロウリアの西側の港にはロデニウス級戦列艦などの軍船は停泊していません。
他大陸の船が来ない南や東に隠してあります。
クワ・トイネもクイラも同様です。
前話の「日本は日本でパーパルディア皇国と問題を抱えている中」というのは本話のことになります。