パラレル日本国召喚   作:火焔

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●フェン王国
アイン :王宮武士団十士長
マグレブ:騎士長
クシラ :海軍武将

●パーパルディア皇国
ポクトアール:皇国監査軍東洋方面艦隊提督

フェン王国Sideに戻ります。


04. 武士道と云ふは死ぬ事と見付けたり

◆◆ フェン王国 ニシノミヤコの港 ◆◆

 

 フェン王国の西端にあるニシノミヤコの港には20隻の戦列艦、そして1隻の大盾を装備した鉄甲船のような船が停泊している。

 ただ、この鉄甲船には武装が一切無かった。他の船を護る為だけにガレオン船を独自に改造したものなのだ。

 

 何故このような船があるかというと、フェン王国の戦列艦は有効射程が1.5km。日本からの情報ではパーパルディア皇国の最新型戦列艦の有効射程は2.0kmある。

 

 最新型がここに来るとは思えないが、それでも自分達より射程があると考えるべきだ。

 だとすれば、こちらの有効射程に入るまでに戦列艦を護る船が必要となる。そのために生み出されたのが、防御のみに振り切ったこの護甲艦「大鎧」である。

 

 普通の国であれば、他の船を沈めた後にこの船を沈めるだろう。

 だが、自尊心の高いパーパルディア皇国であれば、わかりやすい挑発に必ず乗ってくる。格下相手の策略ごと粉砕する事に拘るはずだ。

 

 

 王宮武士団十士長のアインは「大鎧」の船長だ。

 勿論、志願してこの任についている。マクレブには最期まで心配されてしまったが……。

 

 最も敵の砲撃を受けるのだ、間違いなく死ぬだろうし、綺麗に死ぬことなど叶わない。

 だが、この「大鎧」こそフェン王国の守護神。祖国を護るために戦えるのだ。これ以上の誉れはない。アインはそう思っているし、同乗する船員達も同じ想いだ。

 

 

 

◆◆ フェン王国 ニシノミヤコ 西側近海 ◆◆

 

 それから数日後

 

 40隻の戦列艦、そして4隻の竜母を率いるパーパルディア皇国監察軍が堂々たる様相でやってきた。

 周囲を飛ぶワイバーンは少数で、今回の海戦に参戦する気配は無かったのが救いか。

 

「アイン。本当にいいのだな?」

 

「はい、ここを死地と決めたのです。クシラ殿、我らが血路を切り開きます。後の事は……よろしくお願い申し上げます。」

 

 アインの顔に悲壮感はまるで無く、歴戦の(つわもの)の面構えであった。

 クシラはアインを心配した事を恥だ。(おとこ)の出陣に無粋な言葉をかけてしまったと。

 

「あぁ、任せろ。必ずいい報告を聞かせてやる。」

 

 その言葉を聞き、アイン達は先頭に立ち敵艦隊に向かっていった。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

「面白い船を持っているな。アレで大砲を防ぐつもりか? 

 子供騙しの作戦など、栄えある我が艦隊の大砲で打ち砕いてくれよう!」

 

 皇国監査軍の東方方面を任せられているポクトアールは髭を撫でつつ、まんまとフェン王国の思惑に嵌っていた。

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 パーパルディア監査軍とフェン王国水軍の距離が2000mを割り……1900m……1800m……

 

「パーパルディア海軍、旋回を開始しました!」

 

 アインの耳に部下の声が届く。

 

「大盾を前方に構えろ!」

 

 部下達が大盾を構える。通常砲弾であれば意味はないが、ぶどう弾のような殺傷能力を重視した砲弾であれば防ぐ事ができる。

 自分達の使命は、1mでも相手との距離を詰めること。1秒でも敵の攻撃を引き付ける事だ。

 

 大盾の準備を終えると、パーパルディア海軍から大砲が火を噴くのが見えた。

 

「当たらないでくれよ……」

 

 自分達も砲撃戦の訓練をしているからわかる。波に揺られながら目標に当てることがどれ程難しいか。

 だからこそ大砲を大量に積み、数撃ちゃ当たる理論になるのだ。

 

 幸いにして第一撃は「大鎧」直撃しなかった。

 相手が装填を終える前に少しでも前に進む。一心不乱に前へ!

 

 

 50mほど進んだところで、第二撃が放たれる。

 

「ぐうぅ……!! 各員!損害状況を調べろ!」

 

 「大鎧」は衝撃に大きく揺れる。今度は数発の砲弾が着弾したのだ。

 だが、致命的なものはなく、今だ航行は可能。

 船員の何名かは衝撃によって吹き飛ばされ船外へと落ち、ある者は壁に激突して意識を失った。

 

 

 さらに50m進む、

 続く第三波には、ぶどう弾が織り交ぜられていた。

 

 散弾の多くは大盾によって防いだが、それでも何名かの船員は散弾に貫かれ絶命。

 「大鎧」も鉄板によって大きな被害は受けていないが、着弾する数が増えてきた。

 

 

 そしてまた50m

 仲間が一人、二人と倒れ「大鎧」の損傷も大きくなってきた。

 

 

 50m――――

 後100m、仲間の戦列艦は後150mもある。

 

「後、150……届いてくれ……!!」

 

 敵砲弾によって砕かれた「大鎧」の木片が右目を貫き、視界の半分を失ったアインは真っ直ぐと敵を見据え前進を続ける。

 

 

 50m進む――――

 フォアマストの帆がボロボロになり、船速が落ちる。

 大盾は半分が散弾により砕かれて、周りには仲間の血が広がっている。

 

 

 30m進めた。

 同胞たちの戦列艦の有効射程が100mを切った。

 「大鎧」の甲板は至る所が穴だらけだ。だが幸いな事に浸水はしていないようだ。

 

 

 30m。

 乗っていた仲間たちも3割ほどしか残っていない……。

 いや、ここまで3割も残ってくれた。

 

 

 後、20m。

 メインマストもついに折れる。

 「大鎧」の前面はひしゃげ、大盾はもう無い。俺の右手も、左足もだ……。

 だが、進まねば……。

 

 

 10m――――

 後、10m……。意識は殆どなく。甲板に立っているものは居ない……。

 遂に船底に穴が開いたようで「大鎧」が沈んでいくのを感じる。

 よく耐えてくれた……。

 

 

 空から、砲弾の落ちてくる音が聞こえる……。

 どのくらい前に進めただろう……。

 もはや視界は無く、音を頼りに進むしかない……。

 砲弾が隣に落ちた衝撃で俺は吹き飛ばされた。もう感覚はない……。多分、吹き飛ばされたのだろう。

 そして、散弾の雨が降り注ぐ……。

 

(俺は……。使命を果たせただろうか……?)

 

 

 

「…………てぇーーーーーー!!」

 

 薄れ行く意識の中、後方から聞きなれた声と音を聞いた……

 

 アインは穏やかな笑みを浮かべ意識を手放した。

 

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