パラレル日本国召喚 作:火焔
クシラ :海軍武将
アイン :王宮武士団十士長
マクレブ:騎士長
●パーパルディア皇国
ポクトアール:皇国監査軍東洋方面艦隊提督
ドルボ :皇国監査軍陸将
◆◆ フェン王国 ニシノミヤコ 西側近海 ◆◆
「総員! 撃てぇーーーーーー!!」
クシラたちはアインの切り開いた文字通り血路を進み、パーパルディア海軍を有効射程距離に捕えた。
放たれた砲弾の1割がパーパルディア海軍の戦列艦に直撃する。
そして、沈み行く「大鎧」の横を通り過ぎ、更に距離を詰める。
「皆の者、振り返るな。俺達がやるべき事は只の一つ。英雄達の稼いだ時間を
振り向くことこそ彼らを貶める事と知れ。」
アイン達が命を賭してここまで連れてきてくれた。
ならば自分達のするべきことは死者を悼むことではない。彼らの遺志を継ぐことだ。
皆の想いが一つになり、20隻の戦列艦が一つの生き物の様に敵方の戦列艦を屠っていく。
だが、そこまでしても戦況は互角。
数、錬度に勝るパーパルディア。
戦列艦の質、大砲の質、士気の高さに勝るフェン。
互いが大砲を放つたびに砲弾の直撃を受けた戦列艦が海へと沈んでいく。
それでもクシラ達は止まらない。一人、また一人と散って逝こうとも命尽きるまで止まる事などありえない。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「戦列艦パオス! 轟沈! 戦列艦マミズ! 大破!」
「おのれぇぇ!!! 何故蛮族どもにここまで押されるのだ!!」
観測兵の報告を聞き、ポクトアールは怒りでどうにかなりそうだった。
既に10隻の戦列艦を失ってしまった。本来ならば無傷で葬り去るはずだったのだ。
(何を間違えた……!? これでは折角の録画も意味を成さないではないか!!)
ポクトアールは傲慢さゆえの過ちである事に気づく事も無く……。
(いや、蛮族如きにこの武装。何処かの介入があるのかもしれん。分析せねばなるまいし、カイオスへの言い訳にもなる。)
もし背後に列強が付いていたのであれば、調査を怠った第3外務局の責任を問える。
そのためにもこの映像は証拠になる。
だとしても、これ以上の損害は認められない。
「竜母から竜騎士隊を発進させろ!! 一隻残らず海の藻屑に変えてしまえ!!」
本来、蛮族如きに竜騎士隊まで出す予定は無かった。
「くそぉ!! くそがァ!!!」
ポクトアールは積荷の樽を蹴り飛ばし、怒りのままに当り散らした。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「クシラ殿! パーパルディアの竜騎士です!」
「構うな! どうせ大砲では当たらん! 一隻でも多く奴らを沈めるのだ!!」
武士達はワイバーンを落とすのではなく、火球を放たせない様に立ち回る。
少しでも長く船が持てば、一発でも多く大砲を放てる。
それでも何十騎にもなる竜騎士隊の全てを止める事などできず、火球によって船が炎上していく。
そこに何を思ったのか、とある武士が火球の射線上に飛び出す。
火球の直撃を受けた武士は、身体を炎に焼かれながら自ら海へと飛び込んでいく。
自殺とも取れる暴挙のお陰で戦列艦「マサムネ」は炎上を免れた。
その散り様を見た者達は、後に続くように己が身を盾として船を護り散っていった。
だが、そこまでしても劣勢となった状況を覆す事はできなかった。
「俺達が最期か……」
最後に残った剣神が燃える。
もうじき火薬に引火して爆散するだろう。
だが、クシラに後悔はなかった。
最善は尽くした。後の事は剣王とマクレブに任せよう。
「ふふ……。アイン、お前に面白い話を聞かせてやれそうだ……」
剣神が爆発し、フェン王国の敗北を持って海戦を終えた。
・パーパルディア海軍
戦列艦40隻、内15隻撃沈。5隻大破
竜母4隻、全隻健在。
・フェン水軍
戦列艦20隻、全隻撃沈
護甲艦「大鎧」撃沈
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「これでは敗北も同然ではないか……」
ポクトアールは戦績を確認し、気が遠くなりそうになるのを必死で抑える。
「いや、この事実を重く受け止めなければならない。
揚陸部隊に伝えろ。敵は列強の援護を受けている恐れあり。気を引き締めて事に当たれと。」
ポクトアールは映し出されたフェン王国の戦列艦を眺めつつ
(このような意匠の船は見たことが無い。我が国の技術ではない事は確かだ。ムーやミシリアルが敢えて戦列艦を作った場合このような形のなるのだろうか?)
ポクトアールは知らない。
その戦列艦は地球世界の設計図を基に作られていた事を。
ポクトアールは知らない。
ロデニウス大陸には、今回戦った戦列艦を遥かに凌駕する魔導戦列艦が600隻もあるという事実を。
ポクトアールは知らない。
東洋方面艦隊を一隻で葬り去る事ができる軍艦が東の果てにある事など……
◆◆ ニシノミヤコ 付近の平原 ◆◆
「総員配置に付け! 弓兵は櫓にて待機だ!」
マクレブはニシノミヤコの防衛部隊を指揮する。
武装は刀、足軽は槍、弓兵は和弓と、海戦に比べて余りに貧弱。
戦列艦の配備に軍資金を使いきってしまったためだ。
本来であれば20隻も揃える金など無かったが、援助してくれた日本には感謝しかない。
「アインとクシラは逝った……。我等も後に続くぞ。」
西に見えるはパーパルディア陸軍。
細身の軍服に身を包み、不思議な鉄の棒を持っている。それに――――
「アレが地竜か……」
民家のように大きい地竜。堅そうな鱗は刃を通しそうに無い。
(あれをどうやって倒せばいい? 狙うなら頭か?)
それにパーパルディア陸軍の人数は3000を超えている。
対してこちらは3000人。アマノキの防衛にも兵を裂く必要があるためこれが限界だった。
(だが、引くわけには行かぬ。)
マクレブは決死の覚悟を持って、パーパルディア軍と相対した。
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パーパルディア皇国監査軍陸将ドルボはフェン王国の兵たちを眺める。
「竜騎士隊もおらず、武装は一見貧弱に見えるが……
こちらの竜騎士隊で制空権を取れ。気を抜くなよ!!」
ドルボは戦列艦の無残な姿を見ているため、一切気を抜かない。
定石どおり制空権を確保。
竜騎士隊の支援を受けつつ、地竜とマスケット部隊で制圧、戦線を押し上げる。
ドルボは様々な事態を想定して、万が一に備えるが――――
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「余りに呆気なさ過ぎる……」
まるで通常の蛮族を相手にしている……いや、竜騎士隊すら居ないため、通常よりも簡単に敵兵を殲滅できた。
ドルボは陸軍と海軍の強さがかみ合ってない事を不思議に思うが……
(もしかしたら、戦力を海軍に集中していたのかも知れんな。
こんな人口も少ない貧乏国家にアレだけの軍船が異常だったのだ。)
地竜のブレスで炭化した敵将――――マクレブを見下ろして、ドルボはニシノミヤコへと進軍した。
大した防衛部隊も残っていないニシノミヤコは、一日で陥落した。
捕えた者達のほぼ全てはフェン王国民だったが、一人だけ日本人という見知らぬ国の人物が居た。