パラレル日本国召喚 作:火焔
【登場人物】
●パーパルディア皇国
ルディアス:皇帝
レミール :皇女
アルデ :皇国軍最高司令
エルト :第1外務局長
◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆
―――― 帝前会議 ――――
この会議では軍関係、外交関係、行政関係のトップが勢揃いし、定時報告を行っている。
もちろん、レミールも関係者として同席している。
「アルデ、ニシノミヤコに向かわせた軍からは新しい情報はないのか?」
今回の会議も粗方終わり、ふと思い出したように皇国軍最高司令のアルデに問う。
「はい。何もございません。先日の定時連絡でも日本軍の影すら見ておらぬと報告が上がっております。」
アルデの報告を聞いて、ルディアスは詰まらなそうに目を閉じる。
ルディアスの知る情報の中では
・転移国家を自称する事と機械文明らしき事より、ムーの関連国家である可能性が高い。ただし、当のムーは否定している。
・人口は1600万人未満、巨大ではあるが大砲の無い軍船で当国へ来た事。
・たった一人殺した程度で激情する堪え性の無い国家である事。
(宣戦布告をしておきながら、一体何をしている?
宗主国と懸念のあるムーと連絡を密に……? それとも、フィルアデス大陸北部か?
とするならば、狙いは挟撃か?
だが、ムーは正式に本件には関わらないと宣言している。敢えて宣言するところが解せんな。)
ルディアスは北部は大したことはないと考えから切り離す。
そもそも非文明国など、自分が意識を裂くまでもないのかもしれないと、ルディアスはアルデに任せる事とした。
「そうか。ならば今後はアルデに任せることにする。レミールと共に事に当たれ。」
「「はっ! 陛下の御心のままに!!」」
レミールとアルデはルディアスから直々に拝命できた事に感激する。
二人は日本という愚か者のお陰で陛下から勅命を頂けたと、日本に感謝したいくらいだと思っていた。
レミールは宣戦布告から一週間以上経つにもかかわらず、何も音沙汰が無いことから、日本が強敵かもしれないなんて考えはとっくに抜け落ちていた。
「他に気にかける点は……特に無かったな。」
ルディアスは帝前会議を終えようとしていたところ、軍関係者らしき者がアルデに耳打ちするのが見えた。
「陛下、先ほどの件ですが……その……動きがございました。」
「何だ? 構わん、申してみよ。」
アルデが言い辛そうにしているのを見て、ルディアスは先を促すようにフォローを加える。
「はっ!日本が和平交渉を申し立てました。」
アルデの言葉にルディアスは眉をひそめる。
(戦ってもいないのに和平だと? ふんっ!大方、我々に恐れを成したか、頼みの伝手に見捨てられでもしたのだろう。愚かな事だ。)
「ふんっ!所詮その程度か。何と言って来ている?」
「それが……、魔写映像にて世界放送しております。」
「全世界に向けて降伏でもするつもりなのか? 面白い見てやろう。――――おい!」
ルディアスは配下に命じて、水晶の豪華な魔写投影機を用意させた。
ただ、ルディアスからは大事な事が抜け落ちていた。全世界に向けての魔写映像など、強い力を持つ文明国で無ければ出来ないことを。
パーパルディアに対して何も出来なかったと思い込み、雑魚と切り捨てていたため通常の判断が出来ていなかったのだ。
だが無理も無い。ルディアスは全ての文明国の国名、現在の国王の名、その国がどの程度の国力を持つか、どの技術が優れているかを把握している。
その中に日本という名は欠片もヒットし無かった。
大量の知識を持つが故に、知識がルディアスに正しい判断をさせてくれ無かった。
「――――繰り返します。私は日本国首相の阿野と申します。
日本国軍はパーパルディア皇国をニシノミヤコ、フェン王国から撤退させる事に成功しました。
我々はパーパルディア皇国軍に屈する事はありません!
ご覧下さい、我が軍の勇姿を――――」
アルデ達重鎮の面々は日本国の言葉や映像を見て、ルディアスが静かに怒りを宿している事に気が付き始める。そして自分達の顔が青ざめていくのを感じた。
日本の和平交渉を求める言葉を持って映像が消えた後、帝前会議の場には緊迫した空気が漂っていた。
この場で口を開く事ができるのはルディアスだけ、それが分からない愚か者はここには居なかった。
レミールでさえ顔が真っ青なのだ。
どのくらい時間が経っただろうか……。体感時間が長く感じただけで、思ったほど時間は経ってないのかもしれない。
ルディアスは無言のまま、手に持つ重厚なクリスタルグラスを水晶の魔写投影機に向かって思いっきり投げつける。
2つの水晶が激突し『ガシャァァンン!!!』と砕ける音がこの場に響き渡るが、誰一人として微動だにしない。いや、出来ない。
「余は今、機嫌が悪い。」
機嫌が悪いなんてレベルではなく、激怒しているのは明らかなのだが、そんな事口にすれば極刑も免れないだろう。
普段なら余程の罪を犯さない限り極刑などありえないが、それほどまでに激怒しているのだ。
「アルデ」
「は……はっ!!」
アルデはガタガタと震えながら、返事をしてルディアスの言葉を待つ。
「先ほど何も無いといったが、何の【連絡】も無かったのか?」
ルディアスは暗に敗走を隠していないかとアルデに聞いているのだ。
「はっ!御座いませんでした!!
必ずや何処で報告が滞っているか突き止めますが故!
何卒、何卒、この身に猶予をお与え下さい!」
「許す、早急に付きとめよ。」
ルディアスは状況からアルデに報告が届いていない事を察する。
ならばアルデには温情を与える余地があると。
それと同時に怯える配下達に気が付き、ルディアスは少しだけ冷静さを取り戻した。
「やはり、
「真にその通りでございます、陛下!!
愚かにも牙を剥く獣には、調教という躾が必要かと存じます!」
少し怒りが収まったのを感じたレミールは、直ぐ様ルディアスの言葉に乗っかる。
「多少、知恵を付けた獣は直ぐに付け上がるな。余とした事が冷静さを欠いていたようだ。」
怒りは宿したままだが、冷静さも取り戻したルディアスを感じて配下達はホッと息を撫で下ろす。
実際に撫で下ろした奴はいないが。
「エルト、お前なら分かるだろう? あの映像のミスを。」
「はっ!!」
第1外務局長のエルトであれば、ムー国に何度も足を運んでいるし兵装も知っている。
だからこそ、ルディアスの気が付いた点にも、それ以上もエルトなら分かるだろうと。
「先ず、最も大きなミスが2つございます。」
エルトはルディアスが頷くのを確認し、続きを話す。
「1つ、ムーの戦車は映像ほど巨大なものではありません。映像に映る人間から察するに大きさは5mを超えるでしょう。
それに砲塔が細長すぎて使い物になるとは思えません。
次に戦闘機についてですが、ムーでは複葉機と呼ばれる2枚の羽が付いています。これは機械技術が空を飛ぶのに必要なものらしく、1枚の羽で飛ぶことは不可能です。しかもプロペラがあんな所に2つもあるなんて非合理的です。これから推測するに――――」
「あれらはダミー、ハリボテ。そうだな?」
「はっ!陛下の仰るとおりに御座います。」
「ハハハッ!ハッタリとは知恵の付けた猿がやりそうな事だ。
いいだろう。獣風情が人間に逆らった事を身を持って思い知らせてやらねばならんな。
少数の旧式艦を倒したくらいでいい気になったのが仇になったな。」
(大方、これ以上戦闘継続が出来ないための和平交渉なのだろう。
老朽化が進んだ艦隊でも十分だと判断したが、これは余のミスだな。
だが、この先10年以内に朽ちる船だ。それほど惜しくも無い。)
「日本を制圧した暁には、住民の所有権をお前達にやろう。好きに使え。」
「――――!!! 有り難き幸せに御座います!!」
各部門の長達はルディアスの寛大さに平伏する。
1600万人の奴隷、一体どれだけの奴隷を産ませ、生産出来るだろうか。
そこから生み出される物資は――――つい、皮算用してしまうほどだ。
後日、パーパルディア皇国は日本の和平交渉を蹴り、日本国民全てを奴隷化することを宣言した。
多分ですけど、ムーの戦車はWW1のフランス戦車「ルノー FT-17 軽戦車」くらいの大きさなんじゃないかと。
グ帝の戦車が九七式中戦車(1930年代)とするならば、FT-17(1910年代)でも時代が近すぎるかもしれませんが、
これ以前だとまともな戦車の形してませんし……。
ムーの飛行機はマリンが主力なのですから、複葉機しか見てはいないでしょう。
単葉機の開発が行われていても、他国が見る事は不可能でしょうし。
間違いなくミシリアルの兵器に近いのに、誰一人として気が付いてないです。
魔導兵器と機械兵器が同じ形をするわけないと。
○評価にメッセージがついてたんですね。初めて知りました。
ありがとうございます。