パラレル日本国召喚 作:火焔
●パーパルディア皇国
アルカオン:第3艦隊司令官(北西艦隊司令)
バルス :海軍最高司令官(中央艦隊総司令)
ルトス :東部方面司令(南西艦隊司令)
◆◆ 東パーパルディア海 皇国海軍 ◆◆
北西から日本に侵攻する北西艦隊。
戦闘中では無い場合、パーパルディア海軍のオープンチャンネルを使用するため、
バルス率いる中央艦隊、ルトス率いる南西艦隊、アルカオン率いる北西艦隊全ての通信が流れる。
「こちら、南西艦隊第一飛竜偵察隊。敵影なし!」
(ここの所ずっと同じ様な報告が流れている。
そろそろ海流が強くなる海域だ。本当にこんな所に日本はあるのだろうか……)
アルカオンは報告を聞きつつ考える。実は東に日本は無く、この海域に足止めする罠ではないのかと――――
だが、確証の無いことを言っても軍を混乱させるだけだと、アルカオンは進軍を続ける。
フェン王国に日本軍が現れた事から西や南は考え難い。
だが、東方の海流が荒れている海域以外はパーパルディアの調査の歴史が何も無い事を証明している。
消去法で東方が最も確率が高いと軍儀で決まった事だ。
(俺の考え過ぎか……)
余計な考えを振り払い、アルカオン率いる北西艦隊は進軍を続ける。
「中央艦隊第三飛竜偵察隊。敵影らしき物体を発見!? な、何だ!?この距離から補足出来るのか!?」
「第三飛竜偵察隊。誇り高きパーパルディア軍人がうろたえるな。貴君の見たままを報告せよ。」
中央艦隊が慌しくなり、アルカオンは魔信の報告に聞き逃さないように目を閉じる。
「恐らく3km離れているが、船の形が分かるくらいに大きい。まるで島のようだ!」
「日本の船が大きい事は分かっていることだ。敵船は何隻だ?」
「1……4……9隻…………いや、違う。他の方角にも似た様な船が……全部で25隻だ!!」
(ふむ、やはり数は少ないな。数は力になる。いくら大きくとも中央艦隊800隻に飛竜200機オーバーをたった25隻で迎え撃とうとは……)
「各方向に何隻ずつ艦隊を組んでいるか?」
「中央が9隻。北東、南東は8隻だ!」
「船の形は全て同じか?」
「違う! 各艦隊に島の様に大きい船が7隻、その奥に大地のような……竜母に見える船が1隻。そして、中央には山のよ――――」
報告していた竜騎士の通信が途絶える。
「第三飛竜偵察隊の魔力反応が消失しました!」
「何!? 3kmも離れていたのだろう? 一時的に消失しただけではないのか?」
「わかりません! 現在も第三飛竜偵察隊を補足する事が出来ません。」
(ムーから技術を盗んだと聞いているが、先ほどの竜母といい、まさか飛行機なるものを投入できるという事か? だが、アレはブラフでは?)
アルカオンは得体の知れない日本という国について理解に苦しむ状況。嫌な予感はするが、日本という国など全く知らないのも事実。
力を持ちつつ姿を隠す国など、狂人の行為に等しい。
人であれば能ある鷹は――――というが、国がそんなことしてはいけない。他国との外交に戦力を全て隠すなど、自分達の不利にしかならず愚かどころではないからだ。
国がそれを知らないのであれば、そんな国は早晩に滅ぶ。
この異世界で軍事力は、国家の地位を最も分かり易く示すもの。
列強と呼ばれる国々は軍事力の高さ故に「列強」と呼ばれているのだ。
この世界に生きてそれを知らぬものなどいない。
日本国を除いて――――
「北西艦隊、南西艦隊。どうやら我々中央艦隊が敵軍主力と会敵したようだ。貴公等はどうか?」
「提督。こちらは敵影確認できず。」
「こちらも敵影は確認していません。提督。」
「そうか。日本軍は我々、中央艦隊に決戦を挑む様だ。貴公等はそのまま進軍し、日本国を海上封鎖せよ。」
「「ハッ! 提督!ご武運を!!」」
「フッ……。私を誰だと思ってい――――」
ドゴォォォオオオオ――――!!!!!
その時、爆発の様な……それよりも強烈な炸裂音が魔信の先から発せられた。
(中央艦隊? 南西艦隊? どちらだ?)
「こちら北西艦隊!! 中央艦隊! 南西艦隊! 応答願う!!」
ザザザッ……――――
「こち……南……ッ! ……艦隊、……う!」
魔信のノイズの先に応答する声をアルカオンは聞いた。
「こちら北西艦隊!! 南西艦隊は無事か……!!?」
何度か通信を試みるとノイズが取り除かれていき、魔信の声が鮮明になる。
「こちら南西艦隊だ! アルカオン! 無事か!?」
どうやら中央艦隊が何らかの攻撃を受けたらしい。
アルカオンもルトスもそう思った。
「中央艦隊。誰か、応答せよ!」
「こちら、中央……艦隊……。」
「私は北西艦隊司令、アルカオンだ。何があった?」
「中央……艦隊が……消えた……光が……アァァぁァぁッッ――――!!」
声の主は動揺のあまり狂乱状態とみえる。
「落ち着け。パーパルディア皇国軍人がうろたえるな。キミの目に映っている状況を報告せよ。」
映像魔信は設置に時間がかかるため、船には載せられないことがもどかしく思う。
だからこそ、彼の目に映る状況を聞き出さなければならない。
「わ、私たちの船は……中央艦隊の端に位置しています。
中央部に位置する艦隊群が、消失しましたッ!!」
「消失だと?貴様の目に映らないということか?」
「はい!まるで初めから何も無かったかのように何もありませ――――」
魔信の先にいる声が消え去る――――。そして、その後にパァァァンン――――と何かが弾ける音が聞こえる。
恐らく、先ほどの声の主が乗船する船に何かがあり、他の船がその音を拾ったのだろう。
中央艦隊の別の船から通信が入る。
「戦列艦カイルが――――弾け飛んだ!? 司令部――――我々中央艦隊はどこからか謎の攻撃を――――」
また、魔信の通信が途絶える。
(日本との距離は偵察隊と3km、本隊とは5km以上離れているはずだ。一体何が……!?)
アルカオンはまさかという思いに捕らわれる。
日本という今まで全く表舞台に出てこなかった異常さ。戦う事を異常に嫌う性質。
戦う力を持ちながら戦わない理由。1つだけ心当たりがある――――
(魔帝の遺産を掘り起こしたのか!?)
神聖ミシリアル帝国のように、魔帝の力を一端でも自分達のものにすれば力は絶大。
ミシリアル帝国でさえ古代兵器を使う事は無い。万が一にでも故障すれば被害は甚大だからだ。
日本が古代兵器を掘り起こしたのであれば、戦いたがらないのも、今まで表舞台に出てこなかったのも理解できる。
恐らく、中央艦隊に強大な打撃を与えたのも古代兵器の力なのだろう……。
あの映像も魔帝の遺産を解析したもの、もしくは遺産そのものだったのかも知れんな。
(いや、全て俺の妄想に過ぎん。「かも知れないで」撤退など、あってはならんことだ
まさか、中央艦隊を滅ぼすだけの戦力が2つも3つもあってたまるか)
「中央艦隊が敵軍を抑えている間に我々は日本本土へ向かう!」
そこに北西艦隊第二飛竜偵察隊から報告が入る。
「こちら第二飛竜偵察隊! 中央艦隊の報告に似た船を発見! 山の様な船以外、構成はおな――――」
「第二飛竜偵察隊の魔力反応、消えました!」
◆◆ 東パーパルディア海 日本国海軍 舞鶴艦隊 ◆◆
「中央に位置する横須賀艦隊。敵軍を撃破したとの事。」
原子力航空母艦「三笠」が率いる舞鶴艦隊は、横須賀艦隊の任務完了の報告を聞く。
現在はもう1つの試験装備で残党を掃討中だそうだ。
「提督。こちらも半径3kmに飛竜が侵入するのを確認。迎撃許可を願います」
「うむ。各艦に伝えよ。イージスシステム、フルオートモードにて撃滅を許可する。
必要とあらばシステムの起動は私が行う。」
フルオートモードは設定通り、機械的に敵を撃墜するモード。
淡々と敵を滅していく姿を快く思わないものも多い。艦長たるものがそれでいい訳はないが気持ちいいものではないのも理解は出来る。
それ故にこの艦隊を率いるものである私が受け持とう。
そう思っているうちに――――
「各艦、イージスシステムの起動準備完了。
設定は対空3km。対艦5km。優先武装を艦砲、次にミサイルシステム。」
余計な杞憂だったようだ。
「各艦。攻撃を開始せよ。」
5年前に見た無慈悲な攻撃が再現される。
竜騎士になるため費やした時間。より強くなるために訓練した時間。
竜母の戦列艦の乗員になるために勉強に明け暮れた、厳しい訓練に明け暮れた時間など――――
無意味だ
そう言うかの如く、イージスシステムは21隻の駆逐艦を制御して淡々と敵を処理していく。
そうして1時間経つ頃には、イージスシステムの目標はこの世から消失し、システムは再び眠りにつく。
「横須賀艦隊、呉艦隊。どちらも敵機の撃破を完了したと通信が入りました。」
南西に展開していたパーパルディア艦隊は、こちらと同じく呉艦隊が撃破したようだ。
では敵軍の最も多かった横須賀艦隊も同じだったのだろうか――――?
敵軍の半数以上が消滅した一撃はイージスシステムによるものではない。
少し遡ってみる事としよう。
鶴舞艦隊は北西艦隊の撃破
横須賀艦隊は中央艦隊の撃破
呉艦隊は南西艦隊の撃破
佐世保艦隊は西日本の防衛
大湊艦隊は東日本の防衛
こんな感じにしました。
ミサイル?高いし使ってませんよ。最小限のコストで最大限の効果を得るのが大切ですから。
使った軍費が日本の方が多かったら、ある意味敗北ですしね。
新型艦も武装に関して「は」そのコンセプトです。