パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
田中:外務大臣政務官
阿野:日本国首相
●クワ・トイネ公国
ハンキ :中央第1騎士団団長(ドワーフ)
マイラ:マイハーク市の筆頭外交官(ウサ耳獣人)
2019年2月1日(中央暦1639年2月1日)
昨日、クワ・トイネ使節団は東京の街を観光し、これが文明国だ!
というものをまざまざと見せ付けられた。
300mを超えるビル群が立ち並ぶ、東京スカイスクレイパー(一般的にはトウキョウマテンロウというらしい)
ビルの壁一面に取り付けられた巨大な魔導通信(街頭スクリーン)、
国民のほぼ全員が持っている小型の魔導通信機(スマホ)、鉄の馬車(自動車)がスムーズに進めるように作られた高度な交通システム。
様々な店が1つのビルの中に店を構えていて、何でも揃ってしまう商業施設。
分単位で沢山の鉄蛇(電車)が沢山の線路を行き交う。
食べ物も様々な種類があって、しかも美味い!
とにかく素晴らしいものが多いが、何よりも凄いのは、
誰もが戦争など起きるはずも無いと確信して生活している。
これは軍備に絶対の自信がある表れだと思う。
これらの全てに魔法技術が一切使われていないというだから、
機械技術というのも極めれば魔法技術にも勝るという事がよくわかる。
――――そして、会談当日。
「私達、クワ・トイネ公国からは食料を6000万トン納める事ができます。」
マイラの爆弾発言に田中を始め、日本国側の出席者は驚愕に包まれる。
現代のオーストラリアでさえ主要農産物の生産状況は8000万トンなのだ。
その1/4の国土で、さらに技術力も中世程度。
それなのに国土あたりの生産量はオーストラリアの3倍だ。
日本は比べるのが恥ずかしいくらいだ。
農産物に関してクワ・トイネは、既に現代以上という事になる。
北海道の更なる開発や国内の休耕地の復活、水産資源が大幅に増えた事、食品廃棄の自主規制により国内で2000万トンは賄える試算だ。
つまり、クワ・トイネからの輸入を合計すれば8000万トン。
年間の不足量を補う事ができる。
相変わらず輸入に頼る事にはなるが、クワ・トイネのおかげで国民を飢えさせる事はなくなる。
日本国側は一安心した。
「ただ……」
マイラの申し訳なさそうな顔に、日本国側も表情が陰る。
(やはり、そう簡単には解決しませんか……)
「内陸部から沿岸部までの輸送に時間がかかってしまい、半分以上は腐敗してしまう事も分かっていて……」
「でしたら、クワ・トイネ公国の交通整備を我々日本国にやらせて頂けませんか?」
トラックや鉄道をクワ・トイネ内に持ち込む事になるが、「新世界技術流出防止法」通称「技術防止法」も命に関わる場合は適用範囲外となる。
「おぉ!それはありがたい!」
今度はハンキをはじめ、クワ・トイネ側が驚く事になる。
文明国の製品がクワ・トイネ国内に流れ込めば、間違いなくクワ・トイネは発展する。
誰もがそう確信している。
食糧輸入に関しての話が終わり、次は日本国からクワ・トイネ公国への輸出の話になる。
「田中殿、不躾なお願いなのは重々承知しています。日本の武器を輸出願えませんか?
もちろん今回見せて頂いた最新の武器ではなく、剣や槍、鎧や弓矢など我々が使用しているものを、日本国の技術力で作って頂けるだけでも十分強力になると思うのです。」
確かに旧世代の武器であれば「技術防止法」適応範囲外だろう。
素材に関しては元々「技術防止法」で定義されていない。これはプラスチック製品を輸出できる様にするためでもある。
ハンキ将軍の言葉に日本国側は悩む――――そのとき
「分かりました。クワ・トイネ公国との友情のために輸出しましょう」
会談の同席していた阿野首相が口を開く。
「首相、よろしいのですか?」
「はい。クワ・トイネ公国がこれだけ努力して下さっているのです。我々も受けた恩に報いねばなりません。」
「ですが、鉱物資源が……」
そうなのだ。鉱物資源を殆ど輸入に頼っていた日本では、鉄でさえ大盤振る舞いは出来ない。
そこにマイラが口を挟む。
「鉄などの鉱物資源でしたら、我が国の東にあるクイラ王国が主要生産物としております。クワ・トイネ公国はクイラ王国から鉱物資源を輸入していますので、資源量は十分あると思います。」
マイラの言葉によると、鉄だけでなく銅、銀、錫など様々な鉱物が産出されるらしい。金、プラチナも少量だが産出するそうだ。
農産物だけでなく、工業資源も解決しそうな勢いに日本側の顔が明るくなっていく。
「マイラさん、このような色や形鉱石をご覧になった事はございますか?」
田中はアルミ(ボーキサイト)やクロム、ニッケルなどの鉱物資源の写真をマイラに見せる。
「う~ん……。鉱物はあまり詳しくないので……。でも、このボーキサイトっていう赤い鉱石は見た事あります。
以前、クイラ王国から使い道が無い鉱石として見せて貰った事があります。」
おぉ……! 日本国側からどよめきが起きる。
「マイラさん!もしかしたら、ですが。このような黒い水。石油、もしかしたら燃える水というかもしれませんが、見た事ありますか!?」
テンションの上がる田中は身を乗り出して、石油の写真を見せる。
「む、それなら私が見た事ありますぞ!クイラ王国はそんな使い道の無い危険な水が湧いて困っているようでしてな。海を汚すから捨てられもしないと嘆いておりましたぞ。」
ハンキ将軍の言葉に日本側から悲鳴にも似た歓声が上がる。
「田中殿。私からクイラ王国に話をしておきましょうか? 日本国がクイラ王国と国交を要望していると。クワ・トイネとクイラは長い間、同盟関係を結んでおりますのでな。」
「是非お願いします!!」
鉱物資源の目処が立ったため、鎧は胸甲、ヘルメット、ガントレット、グリーブなどのある程度共通規格化できる主要部を日本が輸出し、調整や他の部分の作成をクワ・トイネが行う事で産業を潰さないように配慮する事で合意。
盾や剣、槍は金属部分のみ日本が輸出。持ち手など金属由来でない部分をクワ・トイネで製造する。
(実際にはクイラ王国の輸入に頼るらしいが)
「これが弓なのですか? ゴテゴテして不思議な形状ですな。」
ハンキはアーチェリー場でコンパウンドボウを持って色々な方向から見る。
アーチェリーの講師から、使い方のレクチャーを受けて放つと
「おぉ!これは凄い!私たちの使うものより、命中精度も射速も射程距離も全てが素晴らしい。
敵に当てるだけなら、今まで使っているものより訓練期間が短縮できるだろうし、
弓ごとに質が変わらないなら習熟訓練の時間を省くことも出来る。」
一般兵には価格の抑えられたリーカブボウでも十分、戦力向上が図れるだろう。
弓矢の扱いが長けるものにはコンパウンドボウ部隊、
通常弓兵のリーカブボウ部隊で分ければ、射程距離毎に部隊配置を変える事もできる。
「こちらも輸出していただけると?」
「はい、問題ございません。」
技術的には後世のものであるが、精密機械でも電気機械でもないため技術防止法には抵触しない事は確認済みだ。
最悪の場合でも機関銃、ミサイルに比べれば遥かに劣るのも一因だ。
弓一つでこれだけ違うのだ、他の武装も楽しみでならない。
ハンキはそう思うのだった。
因みに日本円とクイラ硬貨のレートは下記のようになった。
銅貨1枚=10円
銀貨1枚=1,000円
金貨1枚=100,000円(10万円)
白金貨1枚=10,000,000円(1,000万円)
当面は固定相場制で、両国が安定してきたら変動相場制に移行する予定だ。
会合を終えて、ハンキは田中と話す。
「私たちは日本と国交を結べて非常に嬉しく思います。」
「それはこちらも同じです。親しい隣国として共に繁栄していければと思います。」
「それを更に確実とするためには、クワ・トイネ人の多くが日本の素晴らしさを知る必要があると思うのです。」
話の雲行きが変わっていき、田中は心の中で身構えつつハンキの言葉の続きを聞く。
「そこで、今回行っていただいた軍事演習をクワ・トイネでも行って欲しいのです。」
「えぇ!!?」
田中はハンキの爆弾発言に驚愕する。
自国に他国の兵を向かわせるだけでも大問題なのに、国内に駐留し、さらに演習まで行えというのだ。
「ほ、本気なのですか……?」
「うむ。ロウリアという外敵がいる以上、軍事力の頼もしさが最もクワ・トイネに大事なのです。
もちろん陛下にも上奏しますが、恐らく問題ないでしょう。
土地も私の家が持つ領地を使えるよう、弟に打診します。」
ハンキは本気だと田中は直感する。本当に軍を国内に入れろといっているのだ……。
「わ、私の権限では……決定権がございません。首相に報告いたしますが……何分繊細な案件ですので……」
ハンキの提案をビデオカメラに収めることを依頼して、撮影した動画を首相に見せる事になった。
生産量は農林水産省の資料から抜粋。
オーストラリア: 8,000万トン
アメリカ :69,000万トン
ロシア :23,000万トン
中国 :91,000万トン
EU加盟国合計 :73,000万トン
インド :88,000万トン
こう見ると、米中印が激ヤバですね
●クワ・トイネ弓兵隊
木材と植物繊維を使った長弓を使用する。
個体差も大きく、弓兵の訓練には長い時間を要する。
有効射程距離は40m程である(和弓は50mほど)
クロスボウはない。