パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本国
大川:空母大和の艦長、階級は大将。日本海軍総旗艦であり、横須賀艦隊旗艦。
水瀬:もう1つの大和の艦長、階級は中将。
大変お待たせしました。
何もかもサマーセールがいけない。
◆◆ 横須賀艦隊 ◆◆
「敵影、方角2-7-7、距離8000、数およそ1000。こちらに向かって進行中。」
5時間前から無人航空機「MQ-4C トライトン」がパーパルディア皇国艦隊を捕え続けている。
敵国のワイバーンは、自身の運用高度である4,000mの4倍以上、高度18,000mから監視されている事に全く気が付いていないようだ。
「監視を継続。敵艦隊と距離5000になったときに仕掛ける」
原子力航空母艦「大和」艦長の大川は航海長へと告げた。
航海長の返事を受け取り、頭を次の懸念事項に切り替える。
大川の指揮する空母大和は日本海軍総旗艦であり、横須賀艦隊旗艦である。
今回もロウリア海戦時と同じく旗艦として参戦はしているが、活躍する機会はない。
航空部隊が出撃する必要が無いほど戦力差があるからだ。
日本の軍事力からすれば、以前戦ったロウリア王国のガレー船も、パーパルディア皇国の魔導戦列艦も竜母も誤差レベルでしかなく、艦砲1発で撃墜できるか、1~3発必要かの違いでしかないのだ。
それ故に、大川はパーパルディアとの戦況に危機感は抱いていない。
それよりも――――
(試用運転はクリアしたと聞いたが、あの新兵器は無事運用できるだろうか……)
大川は本作戦で運用する新兵器の心配をしていた。
成功すれば士気も今後の海軍兵装にも大きな影響を与える事は間違いない。
誰もが期待をしているし、大川もその一人だ。
だからこそ実戦で失敗すれば落胆も大きく、士気も低下してしまうだろうと。
「こちら
そう言葉を投げかけ、大川は空母大和の左弦を並走する、もう1つの「大和」に視線を向ける。
「――――こちらMBB大和艦長、水瀬。全兵装、問題無し」
◆◆ もう1つの大和 ◆◆
もう1つの大和。全長は263m、幅38.9m。
そしてフォルムは――――大和記念館で飾られている……そう、戦艦大和を模して建造された軍艦なのだ。
ただ、兵装は大きく異なる。
45口径46cm3連装砲塔は全て前面に配置され、3連装砲塔も単装砲塔に変更された。
そして副砲は無く、かわりに多数のミサイル発射管が船体後部に配備されている。
この大和は、現代の技術を以って異世界で再誕したのだ。
今の時代に戦艦は無用の長物だろうか? たしかに、地球であれば他の艦を建造すべきだろう。
だが、[M]BBと冠している通り、戦艦大和はただの戦艦ではない。
船体の内外部には大小様々な魔法陣が施され、魔力電池が各所に設置されていた。
この大和は異世界の技術を取り入れた――――魔導戦艦だ。
魔法という不可思議な現象をいち早く取り入れたのは海軍だった。
軍艦というのはその大きさ、海を進む特性上、速度を簡単に上げることはできない。
地球と同じく科学のみでは、日本国の科学力だけでは、速度の向上は今までより遅くなってしまうだろうと安易に予測できた。
打開策として目を付けたのが魔法だった。
日本国立魔法研究所でクワ・トイネ人、クイラ人、ロウリア人の協力を得て、船舶用の魔法陣を生み出し、ロデニウス大陸で建造された多数の戦列艦、ガレオン船に施された魔法陣から多くの運用データを収集し続けてきた。
その結果、魔導戦艦大和はその巨体に似合わず最大速度は駆逐艦島風と同じ40ノットを叩き出すことに成功する。
これを民生転用できれば貨物船の航行速度を大きく上げる事ができる。
地球の2.5倍の直径を持つこの世界では非常に重要な事なのだ。
何せ、ムー大陸とブラジルがほぼ同じ距離で45日ほど掛かってしまうのだから……。
航行速度を向上させる目的ならば、何も戦艦を新造する必要は無かったのではないか。
勿論、そうなのだ。
当初は既存艦を改修する方針だった。だが、ロウリア海戦の経験とロデニウス各国の情報を元にすると、ミサイルはこの世界は早すぎる兵器という問題点にぶつかってしまったのだ。
列強と呼ばれる世界の覇者の1つであるパーパルディア皇国ですら木造船なのだから……。
そうなると艦砲を主体とする軍艦が必要である事がわかってくる。
木造船にミサイルなど、下手したらミサイルの価格の方が高くついてしまうのではないか?と。
いや、これらは言い訳だ。一番大きな要因は、新たな日本を切り開くのは「大和」であって欲しい。
関わる者の想いが魔導戦艦大和を産む事となったのだ。
「パーパルディア海軍。距離5000。戦闘範囲に入ります」
再び、空母大和に場面は戻る。
半刻が経過し、ワイバーン隊が3kmまで接近、艦隊との距離は5km。
大川の喉がゴクリと鳴る。
期待と不安が混ざり、何ともいえない心持ちだ。
「魔導戦艦大和に繋いでくれ。」
大川は航海長に指示する。
直ぐ様2隻の大和の間に通信は繋がり、大川は「ふぅ……」と息を吐く。
そして――――
「こちら空母大和。魔導戦艦大和、レールガンの実戦使用を許可する。」
「了解した。こちら
水瀬が応答した後、MBB大和の船体前方上部が2つに割れるように開いていく。
その中から現れたのは口径60cm、砲身長は100mという、大和の全長の1/3を超える巨大なレールガンだった。
名称は大和砲。推定有効射程は250km、初速は2700m/秒。
60cmもの大きさを持つ質量体がマッハ8.0程の速度で打ち出されるのだ。木造船など衝撃波で木っ端微塵である。
いや、何であろうとそれだけの運動エネルギーを防げるものなど存在しない。
このレールガンも魔法によって実現できた部分は多い。
大きい所でも、砲弾と砲身の摩擦力の軽減、巨大な電力と摩擦により発生する熱の除去、超加速で発生する減速に働く磁界を低減。
他にも電力の補助など様々な魔法技術が盛り込まれている。
「艦長、大和砲の発射準備整いました。各所、異常なし。」
魔導戦艦の艦長である水瀬は各艦に通信を送る
「当艦、これより大和砲の発射に入る。各艦は当艦から十分に距離をとってほしい。」
万が一、暴発すればこの艦は自沈してしまうだろう。
それに友軍を巻き込むわけには行かない。
だが、日本の未来のためにと、水瀬他、魔導戦艦大和の乗員の心が1つになる。
(貴公等に恨みはない。だが、一兵たりとも通す訳には行かないのだ)
全日本人を奴隷化する等と宣言する彼らを一人通せば、一人日本国民が死ぬかもしれない。
他の艦隊が止めてくれるだろうが、その意気なくして護り通せるものかと。
「大和砲!発射!!」
巨大なレールガンからの発射音で気密・防音、これに関する魔法が施された乗務員退避室や艦橋でさえビリビリと大きな音が響く。
もう砲弾はとっくに見えない。
見えるのは流星の様にプラズマ発光の残滓が残るだけだった。
「上空のトライトンからの状況を報告してくれ。」
大和砲の発射による耳鳴りが残る中、水瀬は状況報告を航海長に求める。
ASM-3を超える射程を持つレールガンの1撃にどれほどの効果があるのか。
「敵艦隊1,000隻の内、残存数400。600程が大和砲により撃沈されたと考えられます。」
十分すぎる成果に皆の顔に喜色が浮かぶのが分かる。多分、自分もそうなのだろうと水瀬は思う。
(水平線を越えた先の艦隊も問題なく撃破出来たのは、砲弾内にある重力の魔法陣のお陰だろうな。)
「大和砲の状態は如何だ? 次弾の発射までにどのくらいかかりそうだ?」
「それが……。先ほどの発射で故障してしまった様です……。」
「そうか……」
砲術長の言葉に水瀬は落胆と同時にやはりかとも思う。
大和砲は新しい技術ばかり故に故障も多い。停戦の映像撮影時も故障の為にドッグで整備している最中だったのだ。
「ならば仕方ない。こちらMBB大和、大和砲の実戦データ取得は完了した。これより45口径46cm単装砲の実戦データ取得に移行する。
当艦をイージスシステムにリンク願う。」
「CVN大和、了解した。これより45口径46cm単装砲の運用試験に移行する。」
大川大将の言葉と同時に45口径46cm単装砲の砲塔3基がそれぞれ動き出す。
この単装砲もいくつかの魔導試作技術が盛り込まれている。砲身の排熱、砲塔の移動を滑らかにする為に各所の摩擦低減、弾薬の起爆力の向上など。
砲弾にも空気抵抗軽減で射程の向上。爆発力強化の魔石を埋め込む事で着弾時の破壊力を向上させている。
これにより、有効射程は35kmと「Mk45 5インチ砲」の最大射程に匹敵するほどだ。ただ、その長い射程が何時使われるかは甚だ疑問ではあるが……
大和砲がレールガンの実用化に向けたものに対し、こちらは火薬兵器の性能向上を目的としていた。
……ドフッ! ……ドフッ!と各砲塔から10秒に1発発射されて、1分間に18隻が爆発四散していく。
40ノットで追い、1/4未満の船体しかないパーパルディア戦列艦を1撃の元に沈めていく。
最早この場は、MBB大和の独壇場でしかない。
この海域に限っては、随伴のミサイル駆逐艦、イージス駆逐艦ですら何もすることが無かったのだ。
「こちら横須賀艦隊。敵艦隊の撃破を完了した。」
日本の力は示した。
惜しむらくは、殲滅しすぎた所為でパーパルディア本国に正しい情報が届かなかった事だ……
・魔力電池
魔石から魔素を抽出してバッテリーの様に蓄魔する魔道具。
蓄電池を参考に開発された日本製魔道具。
・魔導戦艦大和
巨大レールガン「大和砲」を搭載する魔導戦艦実験艦。
魔導化による、航行能力、火器兵器の強化も行っており、運用データを採っている。
運用データを元に、既存艦を改修することになっている。
尚、故障しやすい。
「大和砲」の正式名称は「魔導戦艦大和内臓式600mm口径試作電磁加速砲」
これらのデータ取りが終わった後は、機密部を取り除き海軍の広告塔になる予定。
そのため、大和の艦橋最高部は展望室として設計されている
大和砲1発で600隻は多いかもと思いましたが、1撃で壊滅状態にしたかったので「出来る」という事にしました。