パラレル日本国召喚 作:火焔
●パーパルディア皇国
ルディアス:皇帝
レミール :皇女
アルデ :皇国軍最高司令
バルス :海軍最高司令官
カイオス :第3外務局長
ミノルタ :諜報部門長官
ムーリ :経済担当局長
◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆
―――― 帝前会議 ――――
「アルデ、海軍からの情報に新しい物はあるか?」
パーパルディア皇国皇帝ルディアスは、アルデに状況を尋ねるが……
アルデの返答は芳しくないものだった。
「その、陛下のお耳に入れていいものか……」
「構わん。お前が判断に困るほどのモノなのだろう? 話せ。」
ルディアスは全軍を任せていいと評価しているアルデほどの者が判断に困るという情報。
他部署の有識者であれば、他方面の視点で何か気づく事があるかもしれない。そう判断した。
「はっ! それでは――――」
アルデからもたらされた情報は
・バルスとの連絡が途絶した事
・その後、他の艦隊とも連絡が取れなくなった事
・海軍の情報網に混乱が発生していて、上記すら事実か不明である事
そして、さらに事実が不確かな事柄が
・謎の光が通過した後、バルスの艦隊が壊滅
・轟音が断続的に発生し軍船が沈没している
アルデの報告を聞いた各部署の長官は荒唐無稽な話だと思う者と、アルデやバルスと知人であるが為、彼らがそんな状況に陥る事が異常だと、何か理解を超えることが起きているのではないかと思う者、その2つに分かれた。
ルディアスはアルデの報告を一句逃さずに聞き取り、内容を咀嚼する。
しばし考えた後に、彼は口を開いた。
「ふむ、確かに話を聞く限り荒唐無稽と思うのも無理はない。だが、これは事実だと判断するべきだろう。」
帝前会議に出席する全員がどよめく。
陛下は一体何を持ってそう判断なされたのかと。
「余は日本国が古の魔法帝国の古代兵器を使用したと推測する。」
「そ、それは一体何故でしょうか……?」
一層どよめき立つ場の中、アルデはルディアスの心の内を伺いたてる。
「1つ、バルスほどの者が艦隊を率いているにもかかわらず、情報系に混乱が生じている事。あ奴ならば、ミリシアル帝国が日本の背後に付いていたとしても正しく情報を我々に伝える事ができる。
それくらい、余はバルスの事を信用している。
にもかかわらず、情報を遺す事すら出来なかった異常事態が発生した。そう判断すべきだ。
1つ、日本がそれだけの兵器を持ちつつ何故、奴らから停戦を持ちかけてきたかという事だ。
それは多用出来ない兵器であるからだ。自国で製造出来るのであれば停戦などせず攻め込んでこればいい。
それが出来ないという事は、極力使用を避けたいに他ならない。
ミリシアル帝国ですら、只の一度も実戦で使用した記録が存在しないのだからな。
1つ、魔法の様な光を放つ兵器ということだ。」
そういい、諜報部門の長官ミノルタに視線を向ける。
視線の意図を察した彼はルディアスの代わりに説明を始める。
「我々諜報部がミリシアル帝国から入手した古代兵器の情報によりますと、かの国が所持している古代兵器は光を放つものという事が判明しております。具体的にどの様な光かは掴めておりませんが、強力である事は間違いありません。」
諜報部門の話を聞き、各部門の長官達は
ルディアスのバルスに対する信頼、日本の異常な行動、光の兵器、その3つを以って古代兵器と判断したのだと理解した。
それと同時に顔を青くした者が2名。
「カイオス。」
「はっ!!!」
真っ青な顔をしたカイオスは立ち上がり直立不動の姿勢を取る。
日本を最初に相手取ったのはカイオスであるからだ。日本が古代兵器を隠し持っていようと関係ない。
知らなかったで済む問題ではないのだから。
「余は怒りを感じてはおらぬ。だが、何の責もないという事も出来ん。わかるな?」
「はっ!!! 陛下の仰るとおりに御座います!!」
情報が全くといっていいほど存在しない古代兵器を見抜くなど到底不可能。
だが、知らなかったからといって済んでしまえば国として成り立たない。
「名誉挽回のチャンスをやる。属領、属国、特にパンドーラ大魔法公国、奴らの海上戦力を日本にぶつけろ。手段はお前に一任する。」
「はっ!! 寛大な御心に更なる忠誠を捧げます!! 直ちに行動致します!!」
「あぁ、席を立って構わん、直ぐに行動に移せ。」
カイオスは深々と頭を下げ、帝前会議から姿を消した。
カイオスなら結果を示せるはずだとルディアスは頷く。
「さて、レミール」
「はっ!!!」
もう一人の青い顔をした人物、レミールがカイオスと同じ直立不動の姿勢を取る。
「お前の任は……といいたい所だが、今は特にない。
だが、いつでも任を果たせるよう心構えはして置け。」
「はっ!!! このレミール、身命を賭して24時間万全の体制を維持する事を誓います!!」
「さて、カイオスを動かした理由が分からぬ奴はいないな?」
各部署の長官は頷く。レミールも頷いてはいたが、アレは分かっていない顔だとルディアスは心の中で溜息をつく。
「アルデ。念のため、カイオスを動かした意図を皆に説明せよ。
僅かなズレから綻びが生じるものだ。」
「では、説明させていただきます。
本件の目的は、第3文明圏全ての海軍を消耗させて、我が国とその他の相対的な海軍軍事力の均衡を保つ事
もう1つは日本国に古代兵器を使用させて、日本国の切り札を消耗させる事。以上の2点となります。
我が国の屋台骨である陸軍は健在。空軍も少しのワイバーン・ロードを失いましたが、ワイバーン・オーバーロードは無傷です。
陸戦であれば第3文明圏を押さえる事は容易い事です。」
パーパルディア皇国海軍は壊滅的な被害を受けている。
このままでは皇国海軍と第3文明圏海軍の力量差が殆ど同じになってしまう。
だが、そこそこ数のある第3文明圏の船を日本にぶつける事で、軍事力の差を取り戻す算段だ。
ついでに日本の古代兵器が故障すれば御の字という事になる。
1つの国で多数の船を相手取るには古代兵器を使うしかないだろうと。
(端から第3を日本ぶつけて力量を測ればよかったが……今更詮無き事だな。)
ルディアスは自身のミスに反省する。
そしてレミールは安堵する。間違ってもパーパルディア皇国に土がつけられることは無いと理解できたからだ。
「陛下。第3文明圏の調律を終えられた後は日本と停戦為さるのでしょうか?」
経済部門の長であるムーリはルディアスにお伺いを立てる。
海軍がガタガタになってしまった以上、早急に立て直す必要がある。その財源を確保しなければならないため、平時に戻って欲しいからだ。
臣民統治機構と協力して奴隷の増産、最近景気のいいロウリアに卸して木材を購入。
そこから奴隷を使用して戦列艦の建造へと繋げれば、早急に立て直す事も可能だろうと。
そのためには、東の海が平時に戻る必要があるのだ。
「そうだな――――。」
「だが、それは不可能だ。」
ルディアスの言葉はムーリの願いとは遠くはなれたものだった。
誤字報告、いつも助かってます。