パラレル日本国召喚   作:火焔

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【登場人物】
●パーパルディア皇国
ルディアス:皇帝
エルト  :第1外務局長
ムーリ  :経済担当局長

●日本
阿野:首相
今田:政務秘書官



18. 終わらない戦い

◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆

 

 ―――― 帝前会議 ――――

 

「陛下、何故に御座いましょう? 栄光あるパーパルディア皇国軍がいかに精強であれど、魔帝の古代兵器では分が悪く存じます。」

 

 ムーリはルディアスの決定に理解が出来なかった。

 魔帝の古代兵器の強力さは想像を遥かに上回る。神聖ミリシアル帝国が技術を解析するだけで、列強1位になるのもむべなるかなと理解してしまうほどに。

 それに、陛下であれば真っ向勝負をせず、此度の戦争は痛み分けで終わらせて、その後、搦め手で勝利を収める事も可能であるはずだと。

 

 

「陛下、代わりに説明する事をお許し下さい。」

 

「あぁ、許す」

 

 外務の最高責任者である第1外務局長エルトはルディアスから許可を頂き、ムーリへと向き直る。

 

 

「ムーリ。それは内政官である者の考えだ。」

 

「だが、このまま日本と――――古代兵器とぶつかるのは危険である事は貴公も理解しているだろう?」

 

「そうだな。だが、列強である我が国が、『一介の』文明国に勝利できなかった。それが問題なのだ。」

 

「それは分かっている。だが、古代兵器を持つものを『一介の』文明国とは呼べぬだろう。」

 

 

 その時ムーリは発言した言葉に違和感を覚える。

 それが表情に出たのか、エルトはムーリを諭すように言う。

 

 

「古代兵器の存在を誰が証明するのだ?」

 

「陛下が仰るのだ。誰もが信じる……。」

 

「そう。我々パーパルディア皇国民はな。だが、ミリシアルは? ムーは?」

 

「ミリシアルであれば……いや、信じて尚、否定するか。」

 

「そうだ。こちらに情報を出させるだけ出させて、否定するだろう。

 古代兵器の情報を頑なに隠すのだ。肯定してしまえば、ミリシアルが持つ古代兵器も日本の古代兵器に通ずる事が証明されてしまう。

 あまつさえ、文明国に辛酸を舐めさせられたモノが列強を名乗るべきではないと糾弾してくるだろうな。

 ムー国が同じ状況に陥った際、ムーリ、貴公は古代兵器の存在を信じてあげるのかね?」

 

「いや、この機をチャンスにムー国を列強から追い落とす事に注力するだろう。」

 

 

 二人の言葉が帝前会議の場に広がる。

 古代兵器を撃退しない限り、パーパルディ皇国の未来は暗いものとなる。

 非常に苦しい状況に皆の顔色が悪くなっていく。

 現状、古代兵器が故障するのを、または、日本がこれ以上古代兵器を使用できないという状況に持ち込むしかないのだから無理も無い。

 

 

「ふっ、ミリシアルやムーが何故、軍船の数を減らしてまで個の戦力に拘っているのか、なるほど納得だな。幾ら数を揃えようと薙ぎ払われては敵わん。

 ミリシアルが列強第1位の座でふんぞり返る訳だ。

 だが、今回経験できた事は大きい。ミリシアルと戦うときにこの経験をしていたら我が国は滅んでいただろう。」

 

 ルディアスの言葉が響き渡る。

 確かにそうだ。苦しい状況だが、古代兵器の力を経験したお陰で、最悪の状況を回避出来たのは間違いない。

 未来のミリシアル戦で古代兵器を初めて知ったとしたら、艦隊が壊滅した後にミリシアルの既存戦力で制圧されていただろう。

 皆の顔に生気が戻る。

 

(意気消沈していては出るアイデアも出んからな)

 

 

 

 会議は幾分紛糾したが、日本に対しての戦略は――――

・無傷の陸軍、空軍を以ってフィルアデス大陸にて日本軍を迎え撃つ

 パーパルディア国軍の主力たる陸軍が健在であれば、戦闘継続に問題はない

 

・戦場は属国、属領を選択する

 本国以外が焼かれようと、パーパルディア皇国にとって痛手はない。

 属国などは焼かれてくれた方が得なくらいだ

 

・日本軍には内陸部を進軍させて補給路を冗長化させる

 内陸部であれば古代兵器は使用できないだろうとの思惑もある

 

・日本軍の戦闘継続が困難に陥った際、日本に敗北を要求する

 最低限形式上の勝利でも構わない。勝利で終われば如何あれ列強の面目は保てる

 

 

「まぁ、こんなところか。余の代で最も困難な事態となるだろう。各自、自身の能力を最大に発揮し事に当たれ。

 貴様達であれば可能であると、余は知っている。」

 

 

 

 

◆◆ 日本国 内閣府 ◆◆

 

 およそ2,000隻の艦隊を退けた後、その一月後に更に800隻の軍船が襲来した。

 第二波の800隻は、第一波のものよりかなり貧弱であり、魔導戦艦大和のレールガンによって一掃した。

 

 今回砲撃で大和砲が故障しなかったのは、各方面の努力による賜物だと各所で慰労会が執り行われていたようだ。

 いずれは砲塔に搭載して艦砲、対空兵器に使用したいが、まだまだ技術の発展が必要だろう。

 

 日本はこの一月、パーパルディア皇国の情報収集に力を裂いていた。

 主な情報源はロデニウス三カ国、フェン王国、ガハラ神国からの聴取。そして、数少ない人工衛星による軍事拠点、市街地の調査。

 そして、第二波で生き残ったパーパルディア皇国の属国、属領の人間を捕虜として捕えた際の聴取だ。

 

 

「正直、これが事実だと信じるのは難しいですね。

 パンドーラ大魔法公国の兵士と名乗る者が嘘を付いていると思いたいくらいです。」

 

「えぇ。ですが、ロウリア王国から聞いた話とも合致していますし、事実と判断するしかないでしょう……

 地球でも近世、奴隷貿易というものが流行った位ですし……」

 

 

 パーパルディア皇国の地理は人工衛星の画像と各国の調書を照合するだけで精度の高い情報を得る事ができた。

 しかし、統治に関する情報は地球の常識とはかけ離れた、信じがたいものであった。

 

「人を家畜の様に扱うだなんて……。その、子を作ることを「交配」、子を成すことを「生産」だなんて、狂っているとしか……

 確かに属領の人々は、人に従う事しか知らず、知識も生きるのに必要な量にすら達していない。」

 

「えぇ。今までは日本と我が国と交流のある国を護ればいいと思っていましたが、そういうわけには行かなくなりましたね。

 パーパルディア皇国から、属領の人々を救う必要があります。

 ただこれは大きな事です。あそこまで知性が低下している以上、自立できるまで日本が援助しなくてはならないという事です。」

 

「はい……。彼らの様な者しかいない場合、国が独力で立ち上がるのも不可能でしょうし、他国の侵略からも護らなければなりません……

 生半可な覚悟では、彼らを救うことはできませんね。」

 

「えぇ。ロデニウス大陸とは訳が違います。日本国への利益の還元も簡単ではないでしょう。

 我々は正義のヒーローではありません。他国を救うために、日本国民に増税という重荷を載せるわけには行きません。」

 

 

 首相阿野と秘書官今田は溜息を吐く。

 属領を無視してパーパルディア皇国に停戦を持ち込むだけなら簡単だ。

 シーレーンを確保し、軍事拠点を爆撃、皇都エストシラントの防壁を崩せば、いかに軍事力の差が分からないかの国だろうと停戦に応じるだろう。

 

 だが、それで終わってしまえば、属領、属国は救われない。

 しかも、国を立て直すために更なる圧政が、彼らを襲うだろう事は安易に予測できる。

 

 だからといって大陸の半分を日本が支えるなんてこと困難という所ではない。

 防衛費、インフラ整備、彼らへの教育、それを日本の国庫から捻出せねばならない。

 パーパルディア皇国や彼らの国庫を使用しても、大した金額にはならないだろうとの試算が出ているからだ。

 

 物価や給料から推測するに、パーパルディア皇国の総資産は日本の年間予算の20%にも満たない。

 実際ロデニウス大陸の総資産は日本が転移する前までは日本の年間予算の1%未満だったのだから、十分大きな資産なのだが……。

 

 ロデニウス大陸と大きく異なるのは2点。

 1つは、日本が食料、物資全てにおいて危機的状況であったこと。投資にかけるリターンうんぬんなんて言ってられなかった事。

 1つは、ロデニウス大陸の特性だ。作物、森林の促成。鉱物資源の回復という夢のような事象のお陰で投資すればするだけリターンも大きくなる。まさにジャパニーズドリームといった夢の大陸だったという事だ。しかも非常に親日的というのもその出来事に拍車をかける。

 

 

「とにかく、協議して何らかの打開策を出さないと、攻勢に出ることもできませんね……」

 

「はい。策もなしに行動してしまえば、きっと誰もが不幸になるはずですから……」

 

 

 知らなければよかった……

 

 

 そう思うのと同時に、知らないままでは行けなかった。

 2つの想いが交錯する。

 

 

 そうして日本の出した結論は――――

 

 

 




誤字報告ありがとう御座います。
まさかミリシアルだったとは……
今までミシリアルって読んでた……
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