パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
林田:陸軍伍長
●アルタラス王国
ルミエス:元・第1王女
シトミー:奴隷生産工場の収容者の一人
●パーパルディア皇国
ソトノコス:元・奴隷生産工場管理者の一人
たくさん感想頂いてますが、まだ序章なんですけど……
地獄の一丁目というか……
まぁ被害者が感情を吐露するのはルミエスだけなので、嫌な気分は減るかもですけど。
今回はパーパルディア側とアルタラス側の2視点になります。
ちょくちょく入れ替わるので読み辛いかも。
◆◆ アルタラス王国 アテノール城 とある部屋 ◆◆
どれくらい経っただろう、ルミエスは落ち着きを取り戻して恥ずかしそうに林田から離れた。
「すみません……取り乱してしまい……。それに服も汚してしまって。」
「いいえ、女性に胸を貸せたのです。男の勲章ですよ。」
林田はニコリと笑った。
林田はルミエス目に光が灯ったように見え、彼女が人としての心を取り戻したかの様に見えた。
(壮絶な5年を送ってきたにもかかわらず、何て強い女性なのだろう。)
実際はそんな都合のいい話は無く、ルミエスが心を取り戻すのはまだまだ先であった……
◆◆ アルタラス王国 日本国仮設駐屯地 ◆◆
「林田伍長、ご苦労であった。」
林田は、日本の仮設駐屯地に戻り上官に報告書を提出した。
小隊長は報告書を読み進めていくにつれ、眩暈がするほどに酷い内容だった。
「これ程とはな……。」
だが、報告書の中にルミエス王女殿下が国民は自分より酷い状況下に置かれている
ただ、聞くに堪えぬ内容ばかりで言葉を遮ってしまい、聞き取る事はできずに終わったと。
「よし、次は奴隷生産工場と呼ばれている所に行ってくれるか?」
今度は林田に眩暈が襲った。
「小隊長殿、処罰は受ける覚悟であります。
ですが1つだけ進言してもよろしいでしょうか?」
林田が何を言わんとしているかは、小隊長も十分承知している。
こんな精神がおかしくなりそうな任務だ。林田のメンタルケアも上官としての責務だと承知しているからだ。
戦場より酷い惨状を経験してきた林田以外の隊員ではこんな任務に心が耐えられないだろうと。
「いいだろう。ここで言われたことは俺は聞いていないし、
存在していない言葉に対して責任など当然発生もしない。」
「小隊長殿、お心遣い感謝します。」
林田は一息つき――――
「小隊長殿、『よし、』じゃないです。」
幾ら不問にするとはいえ、これくらい言うのが精々だ。
「それだけでいいのか?」
「はい。」
◆◆ アルタラス王国 旧奴隷生産工場 ◆◆
林田は今回、ここの管理をしていたパーパルディア人と、ここに収容されていた女性に簡単な聴取を行う事になっている。
結構大きな木造の施設で、天井の低い体育館を中心に色々な部屋がくっ付いている感じか。
天井は吹き抜けで、隣の部屋の物音が聞こえてくる。
(プライベートもクソもない施設だな。こんなところに500人も……)
そう思いつつ、聴取する部屋で待っていると一人の中年男性が陸軍兵士に連れてこられた。
見た目はただのおっさんで、武術の心得とかは全く無さそうなだらしない体つきだった。
■■ パ皇国管理者Side――――
「初めまして、私は日本国陸軍伍長、林田です。」
「これはどうも、私はソトノコスです。」
普通に会話が出来そうな感じで林田は拍子抜けする。
もしかして、スケープゴートの一般人なのかもしれないと。
「では、色々と聞きたいことがありますが、よろしいですね?」
「はい。私に答えられる事でしたら。」
「では、この施設が何か知っていますか?」
「はい。ここはアルタラス人奴隷を孕ませて奴隷を生産する工場です。」
ソトノコスという男は、普通に会話をするのと同じ体で異常なことを口走る。
特に悪びれる事も無く、ただ単に質問されたから答えただけ、そんな感じだった。
「そ、そうですか……。ソトノコスさんは、ずっとこういう事を?」
「いえ、5年前に臣民統治機構雇っていただき、こちらに来ました。」
「その前はどんなお仕事を?」
「恥ずかしながら、仕事で怪我してしまって3年ほど無職でした。」
ソトノコスはアハハと笑いながら恥ずかしそうに頭を掻く。
話の内容が違えば、ちょっと冴えないおっさんにしか見えないのが余計異質に感じる。
「ここの女性達がどうやって集められるか知ってますか?」
「はい。見た目がいい方が産まれる
私はその時は研修中だったので、その仕事には参加できませんでした。」
(頭がおかしくなりそうだ。なんでそんな普通に話せるのか?)
「そうですか……。ここではどういうことをしてきたのですか?」
「女の奴隷と男の奴隷で
■■ 被害者女性Side――――
「嫌な事思い出させる様で申し訳ございませんが、いくつかお話をお聞きしてもいいでしょうか?」
「え? は、はい……。」
金色の長い髪をしたエルフ女性で非常に美人な方だった。
召し物も裕福な人が着る様な衣服で、きっと高貴な身分だったのだろう。
ただ、ルミエスの様な異質な雰囲気が無いのは気になる。
「シトミーさんがこちらに連れてこられたときのことをお聞きしても?」
「はい……。私は農村に暮らしていて、パーパルディア皇国の兵士達がやってきました。
そして、私が反乱勢力の一員の可能性があるといって、ここに連行してきました。」
「実際はそんなことなく、パーパルディア皇国のでっち上げなんですよね?」
「はい。ここに連れてこられたとき、そういうコトをするために集められたって気が付きました。
皆さん美人な方でしたし……。その私も、村一番の器量良しと言われていましたし。」
「では、お聞きし辛いのですが。そこで辛い思いをされたと……?」
「いえ、私はそこまで……。」
(ん? あまり被害に遭わない人もいるということか?)
「ここに無理やり連れてこられた人たちの中で、パーパルディア兵士に反抗的な方が数名いるんです。
多分、裕福な生まれの方々だったと思います。」
「そういう人たちが犠牲にですか……。」
「はい。教育が必要だって、連れて行かれます。
しばらくすると、その方たちの悲鳴が聞こえるんです。ずっと……。ここ、天井付近だけ壁が無いでしょう?
隣の声や物音なんか耳に入ってきますし、叫び声なんかは遠くからでも聞こえるんです……。
何が起きていたかはわかりません。叫び声や泣き声、懇願する声が聞こえてきて、恐くてどうにかなりそうでした……。」
見えないからこそ、声しか聞こえないからこそ余計に恐いのだろう。
恐ろしい事が起きている。だが、どれ程恐ろしいのか見えないから分からない。恐ろしいイメージだけがどんどんエスカレートしていくのだ。
「そして、2週間ずっと続いた後、反抗していた人たちが戻ってくるんです。
服はボロボロですが、傷一つ無くて……。何があったか全く分からないんです。
そして、彼女達は猫が甘えるみたいにパーパルディア皇国の兵士達に縋るようになってしまっていたんです……
今でも何があったかはわかりません。性格が変わってしまった彼女達に聞く事なんて出来ませんし……」
■■ パ皇国管理者Side――――
「兵士さん達が、反乱が起きないようにって教育をするんです。
確か――――王族、貴族の人たちと同じだって言ってましたね。」
(やっぱりか…………)
「ソコノトスさんは、何が行われていたかご存知で?」
「実際に見た事はありませんが、火炙りだとか、電気ショックだとか、鞭打ちだとかは聞いています。」
「その方達が可愛そうだとは思わなかったのですか?」
「二週間毎日は少しは可愛そうだと思いますけど、反乱の芽を摘むため、私達の安全の為でしたし仕方がありません。
少しの犠牲で反乱の目を摘めるのですから。」
「そうですか……。それが終わった後は如何したのですか?」
林田は割りと冷静な自分に驚く。
散々な光景を見て、体験談を聞いて、耐性が出来ていることに気が付いた。
「その後は、兵士の方たちは数名を残して他の施設に向かいます。
そしたら私達の仕事です。」
遂にか……と思ったら、そうではなかった。
「女性達の部屋割りや、部屋の整備などいくつかの業務ですね。」
「具体的にはどんな……?」
「6つの要素が充たされるようにするんですよ。衣食住、そして三大欲求ですね。
食が被るので、正確には5つですけどね。」
(ん……? ここは結構まともだぞ……?)
「健康的な生活を送れば、健康な
(やっぱり、まともではなかったか……)
「先ずは『衣』と『住』は殆ど変わらないので、纏めて話しましょうか。
これらは、アルタラス領の貴族・裕福な商人から徴収します。
彼らはもう使う必要ないですしね。リサイクルって奴です。衣服・家具をこちらへ運ぶんです。
これは、兵士の方々がここに来る前にやってくれるので、私たちは奴隷達に渡すだけですね。」
■■ 被害者女性Side――――
「えっと、この服はここで貰ったんです。
何処かの貴族の子女様のものらしいですけど、すごいですよね。着心地はいいですし、綺麗で華やかで。
村に居たときは、こんなの着た事、一度もありませんでした。」
シトミーさんは嬉しそうに服を見せてくる。
確かにロデニウス大陸でも、そこそこの立場に人が着そうな服だ。
農民なのにイイ服着ていると思ったら、そういうことだったか。
「サイズが合えば、数着もらえるんです。贅沢ですよね。
それに、家具もベッドも貴族様が使うような物なんです。
村に居るときよりも、ずっといい物ばかりなんです!」
(こうやって飴を与えてムチの感覚を麻痺させているのか……)
「それに、ご飯も凄くおいしくて。毎日ちゃんと食べさせてくれるんです。
お母さんの作った料理も懐かしいですけど、ここのお料理凄く美味しくて!
村に居たときは、食べるに困る事もあって……。不作のときは本当に空腹で辛かったのに……。
ここではそんな事ないんです。」
(そうか……。アルタラスはクワ・トイネと違って、凶作になる事もあるか……
地球でも、農業が発展するまでは餓死や食い扶持を減らすために身売りや捨て子もあったくらいだしな……
クイラ王国だってそうだったか……
生活を保障する代わりに……ってコトなのかもしれないな。
飢える苦しさなんて、俺には絶対わからないだろうな……。
飢えるくらいならって思う人がいても、異常ではないのかもしれない……。)
何とも悲しい話だが、地球の発展途上国ですら毎年1000万人以上の餓死者が居るのだ。
科学技術の低い異世界では、人口こそ少ないが餓死者の割合は地球より多い。
クワ・トイネ王国近郊が異常なだけだ。
■■ パ皇国管理者Side――――
「食は大事ですからね。食べなきゃ死んでしまいますし、
美味しいご飯を食べるだけで幸せですからね。
ここに居るシェフの奴隷は、確か王宮料理人のコックの一人なんですよ。
それに、他の施設で育てたパーパルディア皇国の作物ですからね。
美味しいに決まっていますよ。
それに祖国の料理ってのは特別なものですからね、プロの料理人ですからそういうのは熟知しているんでしょう。
誰もがおいしそうに食べてます。不満なんて聞いた事ありません。」
ソコノトスは饒舌にしゃべる。
この素晴らしいシステムを作ったパーパルディア皇国がいかにすごいか自慢するようだった。
「私も、たまに本国の料理が食べたくなりますしね。
こういう仕事柄、長期休暇でもないと本国に帰れませんし……アハハ……」
海外の長期出張者が言うような事をソコノトスは苦笑いしながらしゃべる。
「知っていますか? パーパルディア皇国には農務局ってのがありまして。
そこでは研修者の方々が、日夜作物の品種改良に励んでいるんです。
その結果、美味しさを追求したものや、病気に強くて生産量に重点を置いた作物、栄養に重点を置いた作物など、同じ野菜でも品種があるんです。
属領民には量と栄養。私たち本国民は味と栄養って感じに。
でも、量を重視した作物でも、下手な非文明国の作物より遥かにおいしいですよ!
流石は偉大なる陛下が治めるパーパルディア皇国です!」
ソコノトスはパーパルディア皇国の皇帝ルディアスの素晴らしさを熱く語りだすが、正直うっおとしいと林田は思う。
「あはは……語りすぎちゃいましたね。つい、陛下の事となると。
えぇと、衣食住は終わりましたね。残りは睡眠欲と性欲ですね。じゃあ、睡眠欲から。
ここの生活サイクルは普通で、日が昇ったら起きて、日が沈んだら寝る。普通ですよね。
日が落ちてから行為に励んでる奴隷達もいますけど、明日に響かなければ問題ないです。
何がすごいかといいますとね、パーパルディア皇国産のベッドで寝る事ができる事です。
まぁ、貴族から押収したベッドに寝たいって人もいますが、知らない事は悲しい事ですね。
パーパルディア皇国産の高品質なベッドに寝る気持ち良さを知らないのですから。
高品質な木材やマットレスの綿、掛け布団の羽毛。これも農務局の方がのですね――――!」
また始まったと思ったが、パーパルディアではインナースプリングマットレスはまだ発明されていないようだ。
パーパルディア皇国の生活様式が思いがけないところで手に入るとは……
「――――といった感じで、最高の睡眠を提供するわけなんですよ」
■■ 被害者女性Side――――
「最初は恐かったんですけど、ここに居ればいるほど、何て贅沢なんだろうって思うんです。
寝る時間はいっぱいくれますし、貴族様が使うものと同じベッドで寝れますし。
でも近くで行為している声が聞こえるのはちょっと恥ずかしいですけどね。」
シトミーさんは恥ずかしそうに笑う。
笑う事ができるだなんて……と林田は思う。
(シトミーさんにとっては産む機械にされてしまうのを許容できてしまう程の事なんだろうか……?
俺達日本人には到底理解できない話だが、彼女にとってはそうではないという事なのだろうか……?)
1,000年ほど前の文明の人たちがどれ程の苦労をしているか、現代人に理解など到底出来ない。
(もしかしたら彼女は不幸ではないのか……?)
林田は間違っている状況なのに、彼女を見ると間違っていないのかと勘違いしそうになる。
だが、貴方はここにこのまま居たいかなんて聞けるはずも無い。
■■ パ皇国管理者Side――――
「最後に性欲ですね。これは、この施設の工場の存在理由に深く関わっているので大事ですよね。
この工場の生産システムも含めて説明しましょう。」
この非人道的施設の内容が明らかになっていく――――
思った以上に長くなってしまったので、01,02に分割いたします。
まだ、次もあるのに……