パラレル日本国召喚   作:火焔

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【登場人物】
●日本
林田:陸軍伍長

●アルタラス王国
シトミー:奴隷生産工場の収容者の一人

●パーパルディア皇国
ソトノコス:元・奴隷生産工場管理者の一人



22. アルタラスの惨状(奴隷生産工場編02)

 ■■ パ皇国管理者Side――――

 

「最初にも言いましたが、ここには美形の男女が集められます。あれ、言ってませんでしたっけ?」

 

「いえ、確か男女の奴隷で……と。」

 

 どうやら、パーパルディア人がアルタラス人を好き放題しているわけではないらしい。

 恋愛結婚ではなく、家同士の結婚が通常であった古い時代。

 アルタラス人同士あるならば、強引さはあるものの外道というには難しい。

 

「私の様な美形でもない人間が種になっても、いい商品(どれい)は出来ませんしね。ハハハ……。

 大体男性1:女性10くらいの割合で宛がうんです。皇国の長い歴史で、これくらいがベストな配分らしいです。」

 

 数の比がおかしい気がするが、一夫多妻制の国も地球上にはたくさんある。

 所々の異常さがボディーブローの様に効いてくるが、日本人の先入観で考えると痛い目に遭う事が多い異世界。

 

「男女が了承を得て、行為を行っているのですか?」

 

 無理やりでなければ、まかり通ってしまうのだろうか……?

 これだけは聞かなければなら無い。

 

 

「概ねはそうですね。その方が商品(どれい)がデキ易いですし。

 男の方は全国民の0.2%以下の超美形ですし、元々女性の扱いに慣れているのも多いですし、種馬として役に立たなければ労働施設送りですからね。

 女奴隷の気を引くのに全力ですから、農民なんて簡単に堕ちますし、元貴族の子女も家に縛られず自由に恋愛を楽しめるわけですからね。

 先進的でしょう? 非文明国には絶対思いつけないアイデアですよ。」

 

 

(恋愛結婚なんて出来ない時代に、超美形男性アイドルがホストみたいにガチで堕としにかかってくる様のものか……。

 そんなの現代ですら夢みたいじゃないのか?

 少なくとも、俺はすごい美女に迫られたら堕ちる自身はあるな。)

 

 ハニートラップには気をつけないとなと思いつつ逆に疑問に思う。

 

「何故ここまで、環境に気を使うのですか?」

 

 

「当たり前でしょう? このタイプの工場がアルタラスで最も重要な施設だからですよ。

 ここからアルタラス中に、そしてパーパルディア皇国中に、そして世界に輸出されていくのです。

 

 文明国は勿論、列強ですら我らがパーパルディア皇国の奴隷を購入するのです。

 一度は怪我で一線は退いた身、それなのに再び御国の為に働けるなんて、重要な工場に働かせていただけるなんて……感涙の極みです。」

 

 ソトノコスは涙ながらに祖国のために働く事の喜び語った。

 

「あなた方パーパルディアの人たちが女性達で性欲を満たす事はないのですね?」

 

「妊娠していない女達は原則出してませんね。

 美形の遺伝子同士じゃないと商品価値が下がりやすいですからね。

 

 妊娠している女奴隷達は、非業務時間中なら好きにしていい規則なので偶には。

 基本的には自分の奴隷で性欲を充たすので、あまりそういう事はしないですね。」

 

 

 

 ■■ 被害者女性Side――――

 

「は、はい……。その、素敵な男性と……。」

 

 シトミーは顔を真っ赤にして、イケメンのアルタラス男性と行為に励んでいるそうだ。

 ソトノコスは真実を言っている事が確定された。

 

「その、大都市の男性ってあんな感じなのかなって思いましたけど、その中でも特別な方だったんですね。

 私のこと見ててくれて、私の話をたくさん聞いてくれて、覚えててくれて……。」

 

 シトミーさんの雰囲気は完全に恋をしている様子だ。

 これだけを見ると、日本の行動は正しかったのか?と思わされてしまうほどに……。

 

 

「パーパルディア皇国の人に手を出される事とかもあったとか……」

 

 シトミーさんが答えたく無さそうであれば、直ぐに次の話題に転換するつもりであったが

 

「そうですね。多くても月に1,2度ですし、無理やり襲ってくるわけではないですから。

 村に居たときに襲ってくる盗賊や盗賊騎士、街に出ると裏路地に連れ込まれて……ということもありました。

 私はありませんでしたが、領主に連れて行かれて、お腹を大きくしてボロボロになって帰ってくる娘もいましたし、それに比べれたら優しいほうですよ。」

 

 アルタラス統治時代も大概なのかと思ったが、古い時代では全て普通に起きていた事らしいし、アルタラスが異常というわけではない。

 事実、クワ・トイネでも、クイラでも、ロウリアでも、賊は存在したのだ。

 今では騎士団によって討伐されて、ほぼ根絶されているが。

 

 

「そうですか……その、旦那さんとの間に生まれた子はどうしていらっしゃるのですか?」

 

「だ、旦那だなんて……。えへへ……」

 

 シトミーさんは再び顔を真っ赤にさせる。

 

「え、えっと。私は今まで7人の子を、だ、旦那様との間に授かりました。

 初乳というものをあげたあとは、乳母の元に預けられるんです。その後にあった事はないので、どうなったかは……

 元気にしてるといいですけど……。」

 

 幸か不幸か、心が母親になる前に子と引き離されるから、ずっと恋する少女のままで居られるのか……。

 確かシトミーさんは21歳のはずだ。……ん? 5年で7人も!?

 

 

 

 ■■ パ皇国管理者Side――――

 

「子供というのは授かり物でしょう? そんな、産ませようとして出来るものではないのでは?」

 

「普通はそうですね。ですが、パーパルディア皇国の魔法技術であれば可能なんですよ。

 ご存知か分かりませんが女性には卵巣というものがありまして、そこから赤子の卵が生まれるんですよ。

 不妊治療魔法と呼ばれていますが、排卵を上手く促してあげれば双子以上の受胎も難しくありませんよ。

 

 そう、我らがパーパルディア皇国ならね。」

 

 

(排卵誘発剤の魔法版みたいのものか。パーパルディア本国の女性達も使用するようなものらしいから、眉唾ものの技術って訳じゃ無さそうだ。

 臨床実験はこういうところで十分以上に行っているのだろう。

 一応報告は上げておくか、日本の不妊治療に苦しんでいる女性の方に明るい報告かもしれない。

 公表するか否かは有識者に任せればいい。)

 

 

 パーパルディア皇国は奴隷に対する魔法を含めたシステムは効率を突き詰めたもののようだ。

 運が関わる要素を可能な限り排除する、技術としては高度なものだ。対象が人では無ければ。

 

 

「この現状を受け入れてしまう人々も居るでしょうが、反乱の心配はしてないのですか?

 全員が全員受け入れているという訳でもないのでしょう?」

 

 この施設に居るアルタラス人は女性奴隷500人、男性奴隷50人、彼らのサポートで数人、合計550超の人がいる。

 それに対してパーパルディア人は兵士含めても20人に満たない。

 

 

「魔法を封じられた一般人に、パーパルディア皇国製の強化魔法が使える私が後れを取るわけありません。それに皇国兵士さん達も居ますし。

 試してみますか? 筋力だけでもどれ程の違いがあるのか。握手すれば分かるでしょう?」

 

 林田も軍人だ。一般人、しかもだらしない体つきの男性になど――――。

 そう思い、ソトノコスと握手をすると……。

 

 

(な!? 一瞬でも気を抜けば俺の方が押し込まれる!)

 

 林田とソトノコスの筋力はほぼ互角。若干ソトノコスの方が強いくらいだったのだ。

 

「お分かり頂けましたか? 属領の奴隷なんてワンパンですよ。」

 

 日本でも魔法の研究をしているが、筋力を向上させるだけでこれ程の力は生み出せない。

 魔法技術についてはパーパルディア皇国は日本の遥か先を行っている事が伺える。

 

 

 

「では最後ですが、ここで産まれた子達は何処へ?」

 

商品(こどもたち)を教育する施設へ送られます。

 そこで、善悪の判断、パーパルディア皇国の国語、体育、そして性教育ですね。

 

 パーパルディア人の命令に従う事はとても良いこと、人に優しくするとは良い事、人を傷つける事は悪いこと。

 パーパルディア皇国語の勉強、体育は商品(こどもたち)が労働者施設に行くのも多いですし、今の内に体力をつけておくべきです。

 そして、性教育は男女の違い、身体の構造、性器の名称、子供の出来る方法などですね。コウノトリがキャベツからなんて下らない嘘を教えるなんて意味がありません。

 

 そして、5才になると将来、生産工場か労働施設か何処で働くか選別するんです。

 

 ここに来た奴隷達には、先ほどの教育の続きと、ここで商品(どれい)を生産することが非常に素晴らしい事、ここに来た奴隷達は選ばれた稀有な存在だという事を教えてあげるんです。

 それだけでもヤル気が違いますしね。その後は、ここの日常を見て育ち、出産可能年齢に達したら生産(こづくり)を始める様になります。」

 

 

 ここの施設だけでも年間600人ほど新たな命が生まれて、それが5年で3,000人。こんな施設が500箇所あるため、

 この5年で150万人の子供達が、パーパルディアの都合で産まれているのだ。

 

 

「今日は色々お話を聞かせて頂きありがとうございます。」

 

「いえいえ、いつでもお話しますよ。今は仕事も出来なくて暇なので。

 日本の方々とも取引できる様になると、生産者としてはうれしいですね。」

 

「我々は貴国に奴隷化を宣言されたのですよ?」

 

「今は状況が違うと思いますよ。聡明な陛下の事ですから、パンドーラ大魔法公国の様に

 共に戦う国家として属国(ゆうこうこく)として迎えるのではないでしょうか?」

 

「そうだと、まだマシなんですがね……。」

 

「きっとそうですよ。ですから、またお会いできるといいですね。

 考え方の違う方とお話できるのはいい刺激にもなりますし。」

 

「そうですね。それでは。」

 

 

 ソトノコスさんは手を振って俺を見送ってくれた。

 パーパルディア皇国が勝つことを一切疑っておらず、彼の言うように停戦できればいいが

 この状況を放って置くわけにも行かない。

 

 

 

◆◆ アルタラス王国 日本国仮設駐屯地 ◆◆

 

「林田伍長、ご苦労であった。

 今回もまた、壮絶だな…………。強烈な飴と鞭か……。

 

 現代に置き換えると、高級ホテルの食事、住まいを与えられて、国内高級ブランドの衣服、家具で暮らし、

 テレビで活躍するイケメン俳優と睦事をして生きる。

 ただし、産まれた子は政府によって強制的に連行されるか……

 女としては最高かもしれんが、母親としては最低だな。」

 

 小隊長は溜息をつく。

 

「収容者が収容される事を苦痛と思わせないようにするのが恐ろしいところだ。

 最悪こちらが悪にされかねん。」

 

「小隊長殿の仰るとおりです。ですが、ここを維持するためにどれだけの歪みがあるのかと思うと……」

 

 そう、この施設だけでは彼女達は生きることが出来ない。

 労働者施設で作物生産して運んでくる。多分、そこに大きな歪みがあるのだと思う。

 

 

「あぁ、悪いが、次は労働者施設に行ってくれるか?」

 

「はい。ここで終わるなんて後味が悪すぎます。是非行かせて下さい。」

 

 

 

「恐ろしい事が、もう1つあるんだな。」

 

 それは林田が纏めた資料。

 賊に命を奪われたりする事もあると聞いて、アルタラスでの年間の死者数を調べたのだ。

 すると恐ろしい事がわかる。

 

「子供の生存率、飢餓が原因であろう死者、賊に襲われての失った命、事故死

 どれをとっても、アルタラス王国統治時代のほうが圧倒的に悪い。

 パーパルディアに占領されている時代のほうが、死者が圧倒的に少ないのだな……」

 

 正確な数字ではないが、それでも死者は数分の一にまで減少しているのだ。

 治癒魔法によって、病気や産褥の死亡率が減る一方

 パーパルディアの品種改良した野菜をプランテーション農業で育てるため、作物の生産量が増加。

 賊はパーパルディアを恐れて海外へ逃亡または討伐される。

 領主による人攫いも無くなった

 

 

 これが何のために行われているかさえ知らなければ、非常に良い統治なのだろうな……。

 

 

「それと、収容者の男性と、コックについても少し話が出来ましたので報告を申し上げます。」

 

 

 

 ■■ とある男性収容者Side――――

 

「確かに自由はないですけど、男としては最高の場所ですよね。

 彼女達の些細な事に気をつけたり、間違えちゃいけないんですけど、それってここじゃなくてもそうですし。」

 

 ここで暮らす、超イケメンの獣人はそう語った。

 

「兵士さんとしては如何です?この環境。イヤですか?

 美人ばかりで飯も美味い。働かなくてもいいし、施設内を動き回るのも自由。運動場で軽い運動も出来ますし。」

 

「嫌かと言われると……。いい環境だと思いますが、間違えない自信はないですね。」

 

 確かに男視点では、美女に囲まれたいい生活なんだろう。

 

「そこは経験ですよ。兵士さんも戦う技術を磨くために訓練を詰んでいるんでしょう?

 俺達男性陣も結構中イイですからね。情報のやりとりもして、日々精進てヤツですよ。」

 

 

「ですが、労働者施設に送られる人もいるのでしょう?」

 

 彼はアハハと爽やかな笑顔で笑う。

 

「一人だけいましたね。女性を道具と勘違いしたバカ野郎くらいですよ。

 女性に優しく、楽しく、気持ちよくなってもらえれば、俺の子孫を残せるいい環境です。

 バカな事しなければ、そうそう墓場送りなんてないですよ。

 個人的にはずっとここに居たいくらいです。」

 

「労働者施設で同胞が苦しんでいても?」

 

 意地悪な質問だとは思うが、聞かずに入られなかった。

 

「それは……良くないってわかるんですけど……元の生活には戻りたくないんですよ……」

 

 彼はアルタラス統治時代は商人で、賊に襲われて命からがら逃げた事は何度もあるらしい。

 再び命を危険に晒せとは言う事は出来なかった。

 

 

 

 ■■ とある料理人収容者Side――――

 

「私は宮廷料理人でした。ここに連れて来られた時は、どんな目に遭うか不安でしたけど、

 私のやる事は今までと変わりませんでした。相手が王族、貴族から、一般人に変わっただけです。」

 

「変わったことに対して不満はありませんでしたか?」

 

「最初は。でも、ここが国内で優秀な料理人のみ集められる場所だと判ったら、不満はなくなりました。

 それに食べてくれる人たちも喜んでくれてますし。

 

 パーパルディアの食材はアルタラスより種類が豊富なんですよ。なので新しい料理を生み出すのが楽しいと感じるくらいです。

 ハーブの栽培も自由にさせてくれますし、料理人としては非常にいい環境ですね。」

 

 コックの男性は自分の腕が自由に振るえて満足しているようだ。

 

「料理人としてではなく、貴方個人としてはこの環境は如何でしょう?」

 

「住居も悪くないですね。

 王宮で暮らしてた頃とそこまで差はありませんし。

 それに、美人で私を支えてくれる妻にも出会えましたし。

 料理人は絶対に必要な技術職だから、生まれてくる子供にはしっかり技術を受け継がせてくれと。」

 

 彼は自分が子供を抱いて妻と共に映る魔写を俺に見せてくれた。

 普通の家庭にしか見えないくらいに幸せそうだ。

 実際、彼は普通の生活をしているといっても過言ではないのだろう。

 

 どうやらソトノコスが彼に妻を宛がったらしい。

 人が増えれば彼のような料理人は必要になる。だから、普通に生きることが許されているらしい。

 

 

「私たちは一体どうなるのでしょう……?」

 

 

 そう言った彼の言葉を俺は忘れることができなかった。

 

 

 




中世時代は、閉じた小さい世界だったため国民性というものは余り無かったのかもしれませんね。
アルタラスは常備軍っぽいのが居たので、パーパルディアという脅威が居るため、絶対王政に変わりかけていたのかもしれませんが。

○奴隷生産工場
 属領の施設で最も優遇され、最も家畜扱いされる施設。
 衣食住、三大欲求を満たし、パーパルディアによって飼われている
 飼われる事を受け入れてしまうほど(彼女達基準で)贅沢な暮らしをしている。

○不妊治療魔法
 卵子の育成や排卵を魔法的に補助する魔法。
 パーパルディアによる500年の研鑽で副作用はほぼ無い。
 個人差はあるようで、双子、三つ子を毎回宿すような人もいれば、
 一人だけ宿すような人もいる。
 (実は、不妊に悩んでいる人の方が少ない傾向にある)

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