パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
阿野:首相
今田:政務秘書官
土門:陸軍元帥
清水:海軍元帥
風間:空軍元帥
◆◆◆◆ 日本国 首相官邸 ◆◆◆◆
「なるほど、これが救出したアルタラス王国とカース王国の現状ですか。ハァ……」
阿野は癖になってしまった溜息をつく。
救うことにしたことに後悔はないが、まさかこれ程とは。
「ですが首相。地球の植民地時代も命を消耗品として扱った国も多くあります。
パーパルディア皇国がその時代と似た様な技術力を持っているのであれば『ありえない』ということはないのかもしれません。」
秘書官の今田はフォローしているのかしていないのか、判断に困るような助言を阿野に行った。
「命自体は消耗させてないのだから、マシだといいたいのですか?
――――いえ、すみません。少々気が立っているようです。
これはこれで事実として受け止めて、今後どうするかですね。」
(どうするといっても、どうすればいいのやら……)
アルタラス王国とカース王国。
どちらも別々の要因を抱えている。
「アルタラス王国の問題は……」
阿野の言葉を引き継いで今田が会話を繋げる。
「国民の解放という観点では難しくないのかもしれません。
今生きている世代が元の生活を持っていたのですから。
食うに困っていた人々は労働者施設に残り、生産物を売却すれば生きるのに困る事は少なくなるでしょう。
ですが――――」
「問題は王家の失墜ですか……」
「はい。過去の防衛戦争で王家、貴族の一部が逃げ出してしまい。最悪な事に捕えられた挙句、それを国民に敢えて公表された事です。
国民からすれば裏切られたと感じるのは無理もないでしょう。」
「この報告からすれば、当時の国王は父親としては正しい事をした。ですが、王としては正しくなかった。ということでしょうね。」
阿野の言うとおり、当時のアルタラス国王ターラ14世の判断は正しくもあり間違いでもあった。
我々が天皇陛下は我々を置いて国外へなどと微塵にも思わない。むしろ我々が陛下を安全な場所へと送るつもりな位だ。
その様にアルタラス国民も思っていたはずだ。だからこそ何時の間にか避難しようとし、捕えられていたと知ればショックも大きい。
「簡単な解決策は……いえ、あり得ない事を述べても無意味ですね。」
阿野は今田の言いたい事が良くわかる。
一番安易な方法は共和制に移行することだ。だが、そんなこと内政干渉も甚だしい。提案すら許されないモノだ。
「ルミエス王女の民を思う心が……唯一の活路でしょうね。」
自身もおぞましい拷問を受けていながら、救ってほしいと願ったのは……『自分』ではなく『民達』だったからだ。
その心が国民に伝われば、かの国は持ち直せるだろう。
ただ、報告にあった貴族の女性を攫うという風習は断ち切らねばらない。
「次にカース王国の問題は……」
「今の植えつけられてしまった『文化』への対処ですね。不幸と思っていないのであれば、寧ろこのままという選択肢もあります。
もはや失われてしまった文化を取り戻すのは不可能に近いのですから。」
困った事に彼女達は自身を不幸と思っていないことだ。
王城にあるかもしれない文献を探して文化を復活させる事が正しい事なのか?
今ある文化を捨てさせる事は幸せなのか?
「こればっかりは女王陛下と相談して方針を決めてもらうべきでしょうね。」
カース国民に真実を告げることすら気を使わなければならない。
日本国民は彼らがそういう文化の下に生活しているのだと伝えれば、アルタラス王国よりは受け入れやすいだろう。
日本人は島国でありながらも、文化の違いには寛容な気質がある。
そうでなければ神道と仏教の2つの宗教が平和的に共存することは困難だっただろうし、植民地時代に他国の文化を容認する事も難しかったかもしれない。
「そうですね。国を背負う以上、真実を知る責任はあります。
知って尚、現在の道を進むのであれば、日本国はそれに助力をするだけです。」
どちらも決めるべきは彼女らの国だ。
日本国はサポートすれど方針を決めるべきではない。アルタラス王国もカース王国も日本国の属国ではないのだから。
「さて、いい時間ですね。雑談はここまでにして対パーパルディア皇国の作戦会議に出席しましょうか。」
「はい。」
阿野は本革のチェアーから立ち上がり、今田の開けたドアから外に出て執務室を後にした。
◆◆◆◆ 対パーパルディア作戦本部 ◆◆◆◆
「皆様、お集まり頂き有難う御座います。早速ですが、今後の方針について――――」
秘書官今田の進行で作戦会議が幕を開ける。
「各軍を統べる皆様には、アルタラス王国、カース王国の現状報告書が届いているはずですが、その知識を前提に話しても構わないでしょうか?」
「うむ。」
「あぁ、それで構わない。」
海軍元帥の清水と空軍元帥の風間は返事を返してくれたが、陸軍元帥の土門は頷くだけに留まった。
それもそのはずだ。情報提供元が陸軍なのだからトップが知らないはずもない。
「そこで、内閣からの提案なのですが……よろしいですか? 首相。」
「はい。我々内閣はパーパルディア皇国と他国の国境線になっている国々を最初に制圧して欲しく思っています――――」
各軍のトップはさも当然の様に阿野の話しを聞いた。
事前に話は通しておいたので、態々質問するようなこともないのだ。
「念のためですが、今一度理由をお聞きしても?」
風間は文面ではなく言葉として阿野に理由を求める。
本来感情を挟むべきではないと重々承知している。だが――――今回は感情に起因したことであるからだ。
「はい。このままパーパルディア本国に攻め入るは簡単な事です。
アルタラス王国にある飛行場を改修すれば、一月後には敵主力を壊滅させるのに十分な作戦範囲を確保できます。
もちろん、空母からでも十分ですが念を入れておくのに越した事はありません。
ですがその場合、国境線に位置する国が他国に侵略される可能性があります。
パーパルディア皇国の支配は褒められたものではありません。
しかし列強と名乗る通り、各施設の設備、農業、漁業の仕組みはこの世界では十分高いものでした。
他国の侵略を許した場合、支配者がすげ替わるだけです。
いえ、文明水準がパーパルディア皇国より低いため、確実に悪い方向へと変わるでしょう。
それを阻止したいのです。」
「我々は正義のヒーローではない」
今まで黙っていた陸軍元帥の土門が口を開く。
そう言いたくなるのも無理もない。本案が採用された場合、最も負担を強いられるのは陸軍だからだ。
「だが、苦しむ人々を見捨てる様なヒトデナシでもない。」
そういって土門は不敵な笑みを浮かべる。
その言葉を聞き阿野は胸を撫で下ろし、風間と清水はクスリと笑う。
二人は土門の事をそういうメンドクサイ奴だと良く知っているため、どうしても笑ってしまうのだ。
「土門閣下、ありがとうございます。
風間閣下、清水閣下も宜しいでしょうか?」
「まぁ、陸軍が問題ないのなら空軍に断る理由はないよ」
「海軍もじゃ。陸軍にも華を持たせてやらんとな。」
大まかな作戦はこうだ。
1.パーパルディア本国西にあるクーズ王国を解放する
2.アルタラス王国の空港改修と並行して、カース王国、クーズ王国に軍用機の離着陸が出来る滑走路を建設する。
滑走路には戦闘機が日本へ帰還できるくらいの応急処置が出来る施設があれば十分とする
(ここまでで一ヶ月を想定する。)
3.3つの滑走路により、パーパルディア皇国全土(第3文明圏)が空軍の作戦可能範囲に入る
4.パーパルディア皇国の国境の東端にあるバカル王国、西端にあるボケシュ王国のパーパルディア軍事拠点を爆撃。
5.後陸軍が上陸し、小規模な防衛拠点を構築しつつ2国を解放する。
6.空軍の援護を受けつつ、国境線の国々からパーパルディア皇国軍を撃退する
7.パーパルディア本国内にある軍事拠点を全て破壊する
※尚、海軍は海上封鎖と艦上機による陸空のサポートに回る。
「防衛拠点の守備はロデニウス連合の各国に依頼するとの事ですが、アテはあるのですか?」
国境線の国々の面積だけでも、日本列島10個分を超えるくらいの広さだ。
流石の陸軍でもそれだけ戦力を集中させれば、日本の防衛に支障をきたす。
その代案として、クワ・トイネ王国、クイラ王国、ロウリア王国の力を借りるのだが……
「はい。そちらの方は内々で承諾を頂いています。」
「さすがに準備がいいのぉ。彼らの輸送も海軍で引き受けようかの。」
「助かります、閣下。」
作戦会議はつつがなく進んでいき、細かい調整を後日に残して終了した。
パーパルディア皇国は既に王手をかけられている事など知ることもなく時は無常に進んでいく。
○次回予告
「やめて! 日本国空軍の爆撃で、パーパルディア皇国の軍事拠点を焼き払われたら、孤軍奮闘しているカイオスの精神まで燃え尽きちゃう!
お願い、死なないでカイオス!あんたが今ここで倒れたら、第3外務局によるクーデターはどうなっちゃうの? ライフはまだ残ってる。ここを耐えれば、日本に勝てるんだから!
次回、「カイオス死す」。デ○エルスタンバイ!」
ふざけたけど後悔はしていない。