パラレル日本国召喚 作:火焔
●パーパルディア皇国
カイオス :第3外務局長
ルディアス:皇帝
アルデ :皇国軍最高司令
レミール :皇女
●日本国
笠寺:原子力航空母艦「三笠」の艦長。舞鶴第1艦隊所属。
◆◆◆◆ パーパルディア皇国 アフォット領上空 ◆◆◆◆
カイオスは竜騎士の飛竜に同乗して、カース王国の西にあるアフォット王国にある臣民統治機構軍の拠点へ向かっていた。
ルディアスの命ではなく完全に独断の行為である。
(何故だ? 何故こんなことになった??)
カイオスは初めて日本の船を遠くから見たときに警戒した。
奴らから情報を引き出そうと思っていた。
(しかしレミール皇女殿下がいらして、いきなり喧嘩を吹っかけた。
殿下が周囲のサポートを受けていたことは直ぐにわかった。
つまり、諜報部門か何処かが日本の力を分析した結果、十分に勝利できると判断したのだと、そのときは思ったのだ。
だが蓋を開けてみればパーパルディア皇国軍の惨敗だった。)
もし、パーパルディア皇国の港に停泊していた海王丸を誰かがちゃんと調べていれば結果は違っていただろう。
海王丸が帆船じゃなく動力船だということに。船体が木製ではなく鋼鉄製だということに。
カイオスだけじゃなく、パーパルディア皇国民の誰一人として海王丸の真実には気づいていなかったのだ。
兵の中には気になっていた者もいたが、調査の命令を受けていないのに勝手に行動するわけには行かない。
だから誰も調べなかった。
日本の実力の一端にすら気が付かなかった。
そして上層部は未だ日本を舐めていた。
日本海軍の持つ古代兵器には肝を冷やしたが、地竜を擁する陸軍ならば押し返せると。
アフォット王国の草原地帯を戦場に選び、日本陸軍を押し返した後に停戦する予定だと。
確かに間違っているとは思わない。
だが、カイオスの中には嫌な不安があった。
属領カース、アルタラスが瞬く間に制圧され、その後にクーズが制圧された。
軍を統括するアルデは沿岸からの古代兵器による攻撃だろうと判断し、寧ろ海岸付近に進軍すべきではないと決断したが……
(本当にそうだろうか? そうだとすれば古代兵器は最低2基、もしくは超高速で移動できるということになる 本当に古代兵器なのか?)
日本軍は沿岸から程近い場所に拠点を建造しているとの報告が上がっている。
たしかに、古代兵器の射程範囲内と想定される場所に近づくのは悪手だ。
だが、拠点を作られる前に敵を押し返すのも、また正しい戦い方でもある。
だからこそ、自身の失脚すらかけて踏み切らねばならない。
これがチャンスなのか、敵の準備を待つことが正しいのか。
とてつもなく、大事な事だとカイオスはそう感じだのだ。
カイオスは思考しつつ飛竜に跨ったまま、臣民統治機構軍の拠点へと向かった。
「これはこれは、カイオス様ではいらっしゃいませんか。一体こんな所に何用で?」
アフォット王国臣民統治機構軍の拠点を任されている将軍がカイオスを出迎える。
「指揮系統が正しくない事は承知している。
だが、敢えて言わなければならない。
直ちに軍を整えて日本国が建造中の拠点を破壊に向かう。
全責任は第3外務局の長である私が負う。」
無茶は承知だ。無謀なのは分かっている。
仮に成功しても更迭は免れない。だが構わない、皇国の礎になれるのであれば。
「一体どうされました?
確かに日本は拠点を作成中ですが、まだ基盤を整えている最中ですよ?」
将軍も何もしていないわけではない。
定期的に飛竜偵察部隊を飛ばして状況は確認している。
変な鉄の塊(重機)がある以外、工事はこの半月で余り進んではいない。
「現在の状況ですと基地が作られるまでに1年はかかります。
攻めるにしても、物資がある程度運ばれてからの方が打撃を与えられるのでは?」
将軍は部下に本国で連絡を取るよう目配せをしてカイオスを宥める。
「そうかもしれん。だが、そこを何とか折れて貰えんか?」
漠然とした感覚しかないため、理詰めではカイオスに分は無い。
だからこそ強引に推し進めるしかないのだ。
「カイオス様、パーラス長官から連絡が入っております。」
将軍の指示を受けた部下は直ちに本国へ連絡を取り、臣民統治機構長官のパーラスへを報告を上げたのだ。
「む…………わかった。」
流石に無断で動かそうとしている部署のトップに話があるといわれて断る事は出来ない。
もし断れば、ここの部隊は決して動いてくれないだろうからだ。
観念しつつ魔信の先に居るパーラスと連絡を取った。
「――――カイオスだ。一体何の用だ?」
『それはこっちのセリフだよ、カイオス。一体どうしたんだ?
急に部隊を動かしてくれといわれて、部下が困惑しているぞ?』
それももっともだ。いきなり他部署のトップとはいえ、動けといわれて、はいそうですか。というわけには行かない。
「無茶を承知なのは分かっている。今を逃してはいけない……そんな気がするのだ。」
『そんな曖昧な……。カイオス、お前が適当な事をする人間ではない事は知っている。
だが、そんな曖昧な理由で部下を貸すわけには行かない事はわかるだろう?』
呆れた様な声が魔信から聞こえる。
カイオスとパーラスは仕事の関係上、付き合いが長い。
パーラスはカイオス馬鹿にしているわけではなく、本当に困惑しているのだ。
「私もおかしな事を言っているのは分かっているのだ。
だが、得も言われぬ焦燥感に駆られてどうしようもないのだ。
頼む、全責任は私が負う。此処の部隊を私に預けて欲しい。」
カイオスは魔信装置に向かって頭を下げる。
もちろんパーラスには見えないから何の意味も無い。
それでも誠意を伝えなければならない。
しばしの説得の後――――
『わかったよ。そこの拠点の部隊はキミに預ける。
事が終わったら、何があったか、何が不安の種だったかしっかり教えてくれよ。』
「ありがとう、パーラス。恩に着る。」
再びカイオスは魔信の先に居るパーラスに頭を下げた。
「カイオス様、一時的に指揮権が委譲なされたことは理解しました。
ですが、こちらも万全の準備を整えたいため、3日……いえ2日の猶予を頂けますか?」
地竜、飛竜の調子を整えるため、マスケットの調整を行うため、部隊編成の準備を行うため、どれだけ早く準備しても2日はかかる。
むしろ2日で出撃できるだけ優秀といえよう。
「あぁ、わかっている。全力を尽くせるよう頼む。」
そんな臣民統治機構軍の拠点の動きを日本が見逃すはずは無かった――――
◆◆◆◆ パーパルディア皇国 アフォット領 高度18,000m ◆◆◆◆
カース王国滑走路からおよそ500kmにある、パーパルディア皇国の軍事施設を日本が監視していないわけが無い。
日本陸軍が上陸する前から、無人航空機「MQ-4C トライトン」がこの施設の監視を続けていたのだ。
◆◆◆◆ カース王国 近海 ◆◆◆◆
「アフォット王国のパーパルディア軍事拠点に動きがありました。
その直前に身なりの良い人物が飛竜に乗って本拠点へ着陸した事も確認が取れています。」
空母「三笠」の無人機哨戒部隊が艦長へ報告をあげる。
艦長である笠寺は確認を取る。
「ふむ……。伝令か、使者か。どちらにせよ、軍に動きがあるのは間違いないのだな?」
「はい。」
(ヘタに刺激して拠点設営の足枷にならないよう放って置いたが、相手方は遂に我慢の限界か。
当たり前だ。こんな近隣に拠点を作ろうとして何もアクションを起こさないわけ無い。)
日本は古代兵器など持っていないのだから、笠寺はパーパルディア皇国が古代兵器という幻想に進軍を躊躇っていたことなど知る筈もない。
敵側は飛竜を飛ばし、この拠点設営がブラフではないか探っていたのだろうと笠寺は判断していた。
そして、ブラフではないと判断したため、今回の戦闘行動を起こしたのだろうと。
「出来れば、国境線制圧作戦(オペレーション・ピース)の開始直前に攻撃し、注意をこちらに引きたかったのだがな……。
そうは上手く行かないか。」
笠寺は予め決まっていた次善の策、艦載機による航空爆撃の指示を各員へと通達した。
アルタラス、カース、クーズの時と同様に対空装備の「F/A-18 ホーネット」による制空権制圧後、対地装備の「F-35B ライトニングII」による拠点爆撃だ。
相手が対策を全く取れていないのだから、次の戦法を出す必要も無い。
「各機、出撃を開始して下さい!」
三笠の滑走路から、パーパルディアにとっての死神たちが飛び立っていった。
◆◆◆◆ パーパルディア皇国 アフォット基地 ◆◆◆◆
「……?? 将軍、偵察隊の竜騎士との連絡が途絶えました。」
「磁気嵐ではないのか? しばらく待った後、もう一度連絡を取ってくれ。」
「わかりました。」
そんな何気ないやり取りをカイオスは聞いてしまった。
磁気嵐で一時的に通信が途絶える事は珍しいものではない。
だが、似たような現象をカイオスは報告で聞いていた。
アルタラス、カース、クーズ、その全の拠点を奪われる直前に、同じ様に偵察隊との通信が途絶えているのだ。
「馬鹿者!敵の襲撃だ!出せる竜騎士部隊は直ぐに飛ばせ!
地竜も兵たちも動けるものは全てだ!!」
「カイオス様、落ち着いてください。磁気嵐など良くある事でしょう。」
将軍は戦線に出ないカイオスが磁気嵐による通信不全がある事を知らないのだと思った。
それゆえに、大したことではないと宥めようとしたが――――
「そんな事知っておる!! 今まで落とされた3つの属領全てで、制圧される直前に通信不全が起きているのだ!!
既に撃墜されたか、日本が通信を妨害する何かを持っている可能性が高い!!」
その様な情報は皇国軍には届くが、地方の征圧部隊(警察)の側面を持つここにはその情報が入っていなかったのだ。
だが、拠点を任せられる器量を持つのか、将軍の行動は早かった。
「出撃中の偵察部隊を通信が途絶した空域に向かわせろ。全騎だ!
竜騎士部隊、飛びたてるものは全騎発進せよ!
偵察部隊のサポート、及び会敵次第速やかにそれを撃墜せよ!
地上部隊、東方面に地竜を並べろ。偵察部隊が発見してないのだ。わざわざ迂回して西から来る可能性は低い。
次に――――」
将軍は迅速に対応し、行動も早かった。だが――――地力が圧倒的に違いすぎた。
「偵察部隊!全騎通信が途絶えました!! あぁ! 竜騎士部隊も――――!!」
誰もが何も報告できぬまま消えていく。
視界外からの音速を超えた攻撃に、竜騎士が反応できるわけが無い。
そんな攻撃『誰も知らない』のだ。
竜騎士部隊は自身が死んだ事を知る事無く、息絶えていった。
「くそぉ!! くそぉぉォォ――――!!! 日本め! 古代兵器の威を借りていい気になりおって!!!!」
カイオスの怒号が基地に響く。
「私は第3外務局 局長のカイオスだぞ!!! 貴様ら狐とは格がちg――――――」
だが、その叫びは強烈な爆発音によって存在ごとかき消された。
◆◆◆◆ アフォット王国 上空 ◆◆◆◆
「任務完了、これより帰投する。」
パーパルディア基地の爆撃任務を終えた飛行小隊は、自分達のホームへと帰っていった。
カイオスは日本国に存在を知られることのないまま、その他の兵たちと同様に、平等に、その命を終えた。
偉い人にとって有象無象と同じ様に死ぬのは、耐えがたい屈辱何じゃないかな?ということでこんな結末にしました。
処刑台の方が良くも悪くも人の心に影響を与えますからね。
何の意味すらなく死ぬ方が相応しいかと思って。
[小ネタ]作戦名の命名者
阿野「作戦名は『オペレーション・ピース』なんて如何でしょうか?」
風間「なるほど、peace(平和)ですか。いいですね。」
阿野「え……? あ、はい。そうです。第3文明圏の平和を願って……」
今田(多分、チョキ、ピースサインという意味だったんだろうな……。『パー』パルディア皇国ですし……)
今田は阿野のオヤジギャグ認識すらされず、間違った方向に解釈されたであろう事は、言わぬが華と口を閉じた。
結果的に良かったのだからいいか。と。
●その他の人の日本に対する反応
皇国軍最高司令アルデ
「海上封鎖は面倒だが、パーパルディア皇国内で生産は完結できる。
我が海軍を撃退できる兵器を運用するコストは馬鹿にならないはずだ。
小さい島国しか持たない日本は、長期戦になればなるほど干上がるだろう。
そのときが我らが皇国軍の勝利のときだ。」
皇帝ルディアス
「海上封鎖をされていては密偵も送り込めんな。
来るべき日のため古代兵器の調査は最重要課題だ、
そのためにも消極的勝利を早めに得るべきかも知れん。
日本は敵にするより懐柔した方がいい結果を生むだろうな。」
皇女レミール
「陛下が勝つに決まっている」