パラレル日本国召喚 作:火焔
●パーパルディア皇国
ルディアス:皇帝
アルデ :皇国軍最高司令
パーラス :臣民統治機構
カイオス :第3外務局長
ちょっと長いです。
半分にしても良かったかな?
◆◆◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆◆◆
―――― 帝前会議 ――――
カイオスが命を落として早半月。
カイオスは自分が命を落とす事を想定して、地上偵察部隊に自身を監視させていた。
その結果、独断専行を行ったカイオスではあったが、重要な情報を3つパーパルディア皇国に遺してくれた。
●1つ目は、日本は超高高度からパーパルディア皇国へ侵攻してきている事
竜騎士は基本的に同じ高度か眼下の敵に対して攻撃する。
それ故に自分より上を見上げる事は少ない。そのため、飛竜偵察隊は日本の接近に気が付く事ができなかった。
接近といっても、第3世代のサイドワインダーは射程18km。
最新鋭の艦砲射撃ですら2kmの彼らにとって、10km以上離れた距離で接近されたという概念を持てというのには無理があるのだが……。
●2つ目は、不可視の兵器によって竜騎士達は攻撃を受けていた事
調査隊の証言では、日本の竜騎士(?)が一瞬光り、少し経った後、いきなりパーパルディア皇国の竜騎士が爆発したのだという。
●3つ目は、基地を攻撃した日本の放った魔法兵器は基地の少し上空で雲の様に広がった後、基地を飲み込むほどの強大な爆裂魔法に変化した事
一撃の魔法で殲滅されたために、今まで何一つとして情報が入ってこなかったのだと上層部は理解した。
この情報は非常に有用であったが、同時に最も知りたくない情報でもあったとアルデ、パーラスだけでなく上層部の全てが思う。
日本が魔帝の海上兵器だけでなく、航空兵器までも所有しているという事実を……
そして、陛下が否定なさらない事が事実であると証明している。
「この短期間でバカル、ボケシュ、アフォット、ゴクミ、マトヌケラまで落とされるとは……
全て国境線の領地ばかり……
日本は我々を包囲するつもりか?」
海上と国境を封鎖されれば最早国外に出るなど不可能。
だからといって食料地帯は健在でパーパルディア皇国が干上がることも無い。
「皇国全土を制圧するつもりなのか?」
「まさか! ありえない。我らが皇国兵350万を以ってして尚、全土に軍を置くことなのできぬ!島国がそんな事出来ようはずもない!」
海軍含めてなので陸軍はおよそ200万。
パーパルディア皇国だけでも、オーストラリアの1.5倍。第3文明圏全てでオーストラリアの2倍もあるのだ。
日本軍でも国内の防衛に人員を裂いて全土制圧は不可能。
だからこそ、ロデニウス連合三カ国に援軍を依頼したのだ。
「アルデ、なんとか正規軍をこちらに送る事はできないか?
我が臣民統治軍だけでは例の兵器を抑えられぬ。
正規軍ならばよもや……」
「不可視の兵器を避ける事など正規軍ですら不可能だ。
それに、日本の連中は本国から兵を引き離すことが狙いかもしれん。
援軍を送っている最中にこちらを狙われたら陛下をお守りする事が出来ん。」
パーパルディア皇国は広大ゆえに、援軍を送って直ぐに引き返すなど出来ない。
確かにアルデの言い分も最もだと誰もが思う。
何より守らなければならないのは皇帝陛下なのだから。
「だが……!」
「考えても見ろ。あれだけの兵器を持っているならば、本国周辺の属領を制圧し狭い範囲で我等を包囲する事さえ可能なはずだ。」
「挟撃を恐れているのでは?」
「挟撃を恐れるならばむしろ好都合だ。日本が挟撃を恐れるのであれば、そこに勝ち目がある事の証明でもある。
ありえるとすれば――――
航空兵器の存在を、外に漏らさせないためか?」
日本の行動が不可解ゆえに、事実から目的を想定することしか出来ない。
日本が属領を救おうとしていることなど微塵にも考えない。
日本にとって弱者を救済する事は1+1=2である事くらいに当たり前であるのに対し
パーパルディア皇国にとって弱者は搾取することが1+1=2、常識なのだ。
だからこそ、彼らは日本の目的に辿り着く事はない。
日本軍に対し、どう対応すべきか議論が紛糾する中……
(日本の所有する兵器――――
いくつも古代兵器を実戦に投入できる理由が見つからぬ。
もし、実戦に配備するのが容易いのであれば、ミリシアル帝国が実戦に持ち出さない理由が無い。
ということは、扱いが簡単であるわけが無い。
とすると、考えられる可能性は3つ
1つ、魔帝自身の復活。または魔帝は既に滅びており、その後継者。あるいは魔帝の尖兵。
であるならば、古代兵器を2種も所有し実戦配備する理由も納得がいく。
ただし、エモールの予言によると、魔帝復活の兆候はあれど降臨はしていない。
魔帝と判断するのは逃げだ。諦めたときにすべきだろう。
2つ、ミリシアルのように遺産を解析して力を得た。
古代兵器の威力は十分に理解している。ミシリアルが知ればミシリアルはその力を恐れて全力で潰そうとするだろう。
遠い過去にミシリアルを下す算段が付くまで地上から姿を消した。
そして、その日が来たと。
だが、この場合どうやって今まで身を隠し続けてきたかだ。
説明が付かぬ。
3つ、最も考えたくないが、日本の実力であり古代兵器でもなんでもない。
いや、ありえぬな。転移などファンタジーやメルヘンであり現実的ではない。ムーのそれも御伽噺に過ぎぬ。
何より、力を持ちつつあれだけ下手に出る意味が無い。
力とは誇示してこそだ。あのような軟弱な者が持つものではない。
いや、今は日本の力の根源を考えるときではない。現状をどう打破するかだ。)
「パーラス」
ルディアスの言葉が部屋に響き、臣下たちの議論は水を打ったように静まる。
「はっ!!」
「辛い立場を任せる。」
ルディアスはパーラスに対して、例の兵器に対して何でもいい。
何か新たな情報を掴んで来いと勅命を与える。
「はっ!! 御心のままに。
一つ、お願いしたいことが御座います。」
「話せ」
「家族の事をお願いしたく申し上げます。」
パーラスは自身もカイオスの様に命を落とすことを覚悟した。
その場合、気がかりは家族だ。
十分な資産は残しているが、それで安心というわけにはいかない。
「わかった。不自由な暮らしをさせぬことをルディアスの名を持って約束しよう。」
「有り難き幸せ。思い残すことはございません。」
パーラスは決死の覚悟を持って、北部へと発った。
一月後――――
―――― 帝前会議 ――――
パーラスはボロボロになりながらも無事帰還を果たした。
この一月で国境線の属領は全て制圧されてしまった。
日本に完全に包囲されているのは明白。
「パーラス、よく戻った。余は貴様の帰還を心待ちにしていたぞ。」
膝をつくパーラスにルディアスは労いの言葉をかけた。
貴様という言葉は中世~近世にかけては、敬意を表する相手に用いる言葉であり
ルディアスがパーラスに対して帰還を嬉しく思う心が皆に伝わる。
「有難う御座います陛下。早速報告したい事が3つ、1つは朗報、2つは凶報に御座います。」
不可視の攻撃だけでも辟易するのに、更に2つの凶報か……
場の空気が一段と重くなるのをルディアスは感じた。
(この負の連鎖を止めなければ、臣下たちの実力を発揮させられぬな。)
「ふん、暗い話ばかりで気が滅入っていた所だ、朗報から聞こうか」
ルディアスは優秀だが、自分一人がいれば国が回るとは微塵にも思っていない。
それ故に優秀な臣下を集め、発言させることで最適解を導こうとしている。
ただ、当の臣下達はルディアスの所作全てを絶対視しており、そこに小さなすれ違いが存在しているのも事実。
「は。先ず、敵兵器の攻撃は不可視ではございませんでした。」
パーラスの言葉に、「おぉっ!」との声と共に暗かった顔色に生気が戻ってくる。
「それは本当か!? パーラス! 不可視でないならば回避出来るやもしれん!」
最も喜んだのは皇国軍最高司令のアルデだった。
それもそのはず、正規軍を預かる身でありながら歯がゆい思いをしていたのだ。
可視ならば、精強な皇国兵であれば――――
「すまない、アルデ。凶報の1つ目がそれなのだ……
陛下、ご報告を申し上げてもよろしいでしょうか?」
ルディアスは頷いてパーラスにその先を促す。
「可視の兵器ではありますが、絶対必中の兵器にも御座います。」
「な、何故だ!!!?? いっその事、編隊を組まずランダムな機動で回避行動を取れば――――」
うろたえるアルデを横目に見つつ、パーラスは続ける。
「それは試しました。ですが、それを行って尚、必ず当たるのです。
敵の攻撃――――、一瞬の光が見えてからでは遅いのです。
我々の射程の遥か外側から放って尚、直撃していました。
それほどまでに超高速の兵器なのです。」
攻撃は当たらなけば意味を成さない。
そのために技術を磨く、死角を狙う、音を抑えるなど様々なアプローチを模索してきた。
その中の一つに、速度を極限まで追求するのもがある。
マスケット銃はそれを持つ兵器だ。
威力は様々だが、遠距離からでも人に回避できない速度の弾丸で敵を攻撃する。
パーパルディア皇国陸軍は堅牢な装甲を持つ地竜と、敵の射程距離外から回避出来ないマスケット銃をもって勝利を続けてきた。
その力の1つが遂に自分達に向けられた。
だからこそ、その強力さは此処にいる誰もが理解している。
「そ、そんな…………」
アルデは顔を青白くし、その場にへたり込む。
攻撃の手を奪われた。幾ら守り通せても、攻撃の手立てが無ければ反撃が出来ない……。
「そうか。それで最後の1つは?」
ルディアスは正直聞きたくは無かったが、自らの耳を塞ぐ事は皇帝としてる許されることではない。
皇帝は常に堂々としていなくてはならない。
トップが揺らげば臣下はそれ以上に揺らいでしまうからだ。
「はっ、最後の1つ、それは対地上魔法の爆裂魔法は、複数同時に行使できます。」
パーラスの言葉に周囲がざわつく。そんな馬鹿な……。ありえない……。
そんな言葉が何処からと無く聞こえるのをルディアスは耳にする。
「うろたえるでない。パーラス続きを話せ。」
「はい、陛下。まず、基地に所属する部隊を東西南北、基地から離れたところに配備しました。
基地を失おうと、皇国の臣民が無事であれば再起は可能。そう判断しました。
4つに分ければ、例え1つが狙われようと75%は生存できると。
ですが――――敵は四方の臣民、そして基地の全てに対して同時に魔法を発動したのです。」
実際にはタイムラグがあるが、そんな細かい事は大したことではない。
一度のエンカウントで全滅してしまう。その事実が重要だった。
「そうか、報告ご苦労。」
アルデ達は完全に意気消沈してしまうが、ルディアスが何時もと変わらぬ堂々とした姿を見て、心が折れそうなのを持ち直す。
自分達は陛下の勅命に対して全身全霊を持って当たる事。
陛下はそれを求めているし、陛下の期待に応えることが誇りでもある。
陛下が諦めない以上、臣下である我々が折れるなどあってはならないと。
「で、あるのであれば、やはり国境線から攻める事が不可解だな。そうは思わんか? アルデ」
「はっ! その通りに御座います陛下。
一発必中の兵器であるならば、速度に秀でたワイバーン・オーバーロードを以ってしても回避は困難かと。」
つまり、敵の実力からすると挟撃されても撃退は可能と判断せざるを得ない。
ならば何故そうしない?
「日本には国境を抑える必要がある『何か』があるということだ。
パーラス、いや誰でも構わん。あの辺りの土地の資源、用途の分からん資源も含めてだ、または不思議な現象を知る物は居るか?」
真っ先に思いつくのは資源。
古代兵器といえど使えば消耗する。
その補充が出来る何かがあるとすれば納得がいく。
「確かバカル領には燃える黒い水(石油)があったはず……」
「アフォット領に鉄とは異なる不思議な赤褐色の鉱物(ボーキサイト)が……」
「マトヌケラには空気が燃える(天然ガス)地帯があったかと……」
(確かにその様な不可解な物質や現象を聞いた事はある。
だが、それは沿岸領でも聞いた事が……
食料地帯でもないため、補給を兼ねてというわけでも無さそうだが)
パーパルディア皇国領内の資源も凡そ把握しているルディアスだ。
それにしては今ひとつ弱く感じる。
「陛下! アルタラス程ではないが、ボケシュにもバカルにも中規模な魔石鉱山が!!」
ルディアスはしまったと思う。
魔帝の古代兵器なのだ、魔石を大量に使用しないわけ無い。
(何たる事だ。これは余の失態だ。)
本当はそうではないのでだが、人というものは納得の良く理由があればそれを信じてしまいがちだ。
状況が悪ければ悪いほどに……。
「なるほどな。地図を此処に用意せよ。」
侍女はパーラスたちの情報を元に、類似する資源がある箇所、魔石鉱山など、資源のある領に印を付けていく。
魔石の可能性は高いが、アルタラスで足りないのであれば、いったい今まで何処で調達していたのかという疑問も残るため、念に念を入れておく。
「次に日本が如何出るか、どの資源を狙うか、それで進軍理由がつかめるだろう。
各自、戦争の準備に念を入れよ。特に兵站を分断されるなよ。」
(日本の狙いがわからなければ、落とし所を模索することも出来ん。)
ルディアスは行動目的の読めない日本に僅かながらの苛立ちを募らせ、
決して読むことの出来ない日本の目的を考えるのであった。
ルディアスには孤高の帝王的な役割を与えてみました。
大臣なら超絶天才であるなら、王佐の才を持つのでしょうね。
であれば孤高であるからこそ、才が役にたってないという感じでしょうか。
なまら優秀であるが故に、臣下達はルディアスの言葉は絶対正しいと盲信しそうですし。