パラレル日本国召喚   作:火焔

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【登場人物】
●日本国
風間:空軍元帥

●パーパルディア皇国
ルディアス:皇帝
アルデ  :皇国軍最高司令
パイ   :北方陸軍要塞通信士
ムーリ  :経済担当局長
スワード :国家戦略局長



30. 最終局面

 ◆◆◆◆ 日本国 横田基地 ◆◆◆◆

 

「カース王国駐屯部隊、第1~10小隊全機無事発進の報告を受信、作戦は最終段階に入りました。」

 

 オペレーション・ピースの最終フェイズに入ったとの空軍元帥の風間は報告を受ける。

 ただ、全てが順調というわけではない。

 

「対パーパルディア皇国の戦況は絵に書いたように順調ですが……」

 

(第3文明圏や周囲の各国の国交は順調とは言えませんね。

 我が日本国海軍の新兵器で属国や第3文明圏の軍船をパーパルディア皇国軍第2陣として薙ぎ払ってしまいましたし、

 日本国に対していい感情を持っていないのはやむを得ないことなのですが……)

 

 実際、パーパルディア皇国軍の第2陣として日本国へ向かってきたのだ。

 日本としては迎撃せざるを得なかった。

 

(それに、戦端が開かれたタイミングも悪い。こちらの初動を狙った訳では無いとは思いますが、各国と接触を持つ直前だったのが尚の事良くなかった)

 

 地球であれば航空機で即座に国交を結びにいけるが、異世界では飛行場を探すのが難しい。

 というか、何処の国が飛行場を保有しているかすら日本は知らない。

 

 そうしている内に海軍同士が衝突し、国境線でも摩擦が起きかけている。

 日本軍がパーパルディア本国の基地群を壊滅させているうちに、外交官の尽力に期待するしかない。

 

「しばらくは、もぐら叩きの時間になりそうですね。」

 

 

 

 

 ◆◆◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆◆◆

 

 ―――― 帝前会議 ――――

 

「工業都市デュロでは日夜フル稼働し軍需物資の増産を進めております。

 各基地には物資が運ばれ、陛下の号令の下いつでも出撃が出来る様、準備が出来ております。」

 

 工場では皇国民や奴隷たちが昼夜問わず働いて、来るべき日本との決戦に備えていた。

 

「同様に工業都市セダム、エケベリア、フォーカリアでも準備は着々と進んでおります」

 

 各工業都市からパーパルディア本国の全要塞へと物資が供給され、200万の皇国陸軍・空軍の需要を満たす。

 各要塞の将兵はルディアスが皇帝に就いてから最も士気が高く、勝利を陛下に捧げると意気込んでいた。

 

「うむ。よくやってくれた、アルデ。」

 

(さて、如何出てくる! 日本!!)

 

 次の一手から必ず日本国の目的を暴く。

 ルディアスは余りにも遅すぎた決意で日本を待ち構える。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆ パーパルディア皇国 北方陸軍要塞 ◆◆◆◆

 

 女性魔信技術士のパイは魔力探知レーダーで周囲を警戒する竜騎士部隊の魔力を受信していた。

 いくつもの反応が規則的に動く。いつもの巡航ルートを進む竜騎士達に異変が起こる。

 

 磁気嵐が発生したかのように一部のレーダーが竜騎士の反応を見失った。

 

「緊急事態発生!!! 東30kmで磁気嵐に酷似した反応を検知!!

 魔力レーダーの反応消失! 他の魔力も感知できません!!

 日本である可能性大!!!」

 

 今までの痕跡から、伝え聞いた日本が現れたときと同じ現象だとパイはそう判断する。

 

「パイ! 竜騎士の反応は数秒で全て消失したのか!?」

 

「はい!本当に磁気嵐に呑まれたときと同じ様にレーダーから次々と消失しました。」

 

「まさか!いきなり本国を狙ってくるとは!!

 パイは本国へ連絡! 各員、スクランブルだ!!

 正規軍の格の違いを日本人に教えてやれ!!!」

 

 だが、スクランブルの指令が発せられてから1分も立たない内に出撃中の飛竜は瞬く間に撃墜され、飛竜滑走路が巨大な爆炎に包まれる。

 滑走路を走っていた飛竜も、飛び立ったばかりの飛竜も爆炎に包まれて焼き鳥となって地上に落ちる。

 飛ぶ機会すら与えられなければ、ワイバーンもワイバーン・ロードもワイバーン・オーバーロードも関係ない。ただ、焼け落ちるだけだ。

 寧ろ、空を駆けるワイバーン・オーバーロードがワイバーンと差異無く、ただ撃墜されるだけという事実を見なくてすんだ事は不幸中の幸いなのかもしれない。

 

 そうしてパーパルディア皇国軍の竜騎士隊は全滅。一分という僅かな時間で制空権を日本国へと明け渡す事になった。

 

 

「何て早さだ!!?? 先ほどまで30km先に居たはずではないのか!?」

 

「本部! 応答願います!! 現在、北方陸軍要塞は日本の攻撃を受けています!!

 敵は一分足らずで30kmの距離を進むと想定されます!!」

 

「こちら本部! それは正しい情報か!?」

 

「確証はありません! ですが、日本軍の予兆を検知してから一分ほどしか経過していません!!」

 

「わかった!! そちらは応戦できそうか!?」

 

「現在、応戦ty―――――」

 

 パイの言葉は本部に最後まで届くことなく。爆炎の中に消えた。

 

 

 「F-15EJ ストライク・イーグル日本仕様」の兵装搭載量は11,000kgを超えるため、爆撃能力はF-35B(6,000kg)の比ではない。

 それ故に臣民統治機構の基地より遥かに大きい北方陸軍要塞でさえ、一個小隊の爆撃にて安易に消滅してしまったのだ。

 

 今回の出撃した小隊はアルタラス、カース、クーズ各基地から10小隊ずつ、つまり30基の要塞を破壊する予定だ。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆ パーパルディア皇国 皇都エストシラント ◆◆◆◆

 

 ―――― 帝前会議 ――――

 

「失礼します! 帝前会議の最中に申し訳ございません!」

 

 真っ青な顔をしたアルデの側近がアルデに耳打ちすると、アルデも真っ青に――――いや、真っ青を通り越して土の様な色へと変わっていく。

 報告を終えた側近は一礼をして足早に部屋を出て行った。

 

「陛下…………申し上げにくい事が…………御座います……」

 

 アルデの震える声を聞き、その場に居た誰もが間違いなく日本に関する嫌な報告だと息を呑む。

 

「うむ、話せ。」

 

 ルディアスもアルデの顔を見て覚悟を決める。

 最悪、工業都市を狙われた。それを想定せざる終えない。

 

「はっ……それでは――――」

 

「失礼します! 帝前会議の最中に申し訳ございません!」

 

 先ほどとは別の側近が再びアルデの元に――――

 

「失礼します! 帝前会議の最中に申し訳ございません!」

 

 次はムーリの側近だった――――

 

 

 

 しばらくした後、ようやく報告の波は去った。

 ルディアスはいっその事この場で報告させても良かったが、余りの報告の多さに一度彼らの頭で整理させた方が正確な情報が得られるだろうと判断し、しばらく会議を中断して波が収まるのを待った。

 

 

 

「さて、まずはアルデの報告が最初か?」

 

「は……」

 

 もはや生気の無いアルデ顔にルディアスは苦虫を潰したような顔になってしまう。

 そこまでの事があったと――――

 

「北方、西方、南方、東方すべての陸軍要塞が日本軍によって壊滅状態との報告がありました。

 いえ、それだけでなく――――」

 

 ルディアスは余りの事態に気を失いそうになるが、皇帝としての自負がそれを塞き止める。

 トップが揺らぐわけにはいかないと――――

 

「構わん、全部話せ。」

 

「はい……。本国にある軍事基地、工業都市、要塞の内1/2が壊滅しました……。

 デュロ、セダム、エケベリア、フォーカリアも既に……」

 

 想定を遥かに超える規模の被害に、ルディアスは頭が真っ白になる。

 パーパルディア皇国の歴史がガラガラと音を立てて崩れていくような。そんな気さえしてしまう……。

 

 

 

 

「ふぅ…………。そうか……。」

 

 

 

 

 ムーリは次は自分の報告の番だと思いガクガクと恐怖に震える。

 アルデの情報と自分の情報を繋げると地獄だと……。

 

「ムーリ、貴様に上がった報告を話せ。」

 

 ルディアスは冷静を装うので精一杯だった。

 臣下がいなければ取り乱していただろう、叫んでいただろう。だが、皇帝が無様を晒すのは許されない。

 その矜持だけで感情を押え付けていた。

 

「は、はいっ…………」

 

 ムーリの声は上擦って視線が定まっていない。

 気を失ってしまいそうになるが、陛下に御報告せずに、役目を果たさずに意識を逃避させるわけには行かない。その一心だけだった。

 

「皇都エストシラントをっ、中心とした! 架橋、主要街道っ、日本の攻撃によりぃっ! 通行不可能との事!!」

 

 ムーリは報告を上げた後、気を失って倒れた。

 

 

 アルデの報告により、軍は壊滅状態。

 ムーリの報告により、皇都エストシラントは陸の孤島となった。

 

 

 

「――――皆の者、本日の会議はこれにて終了とする。」

 

 ルディアスが発した言葉はそれだけだった。

 彼自身もそれを言うのが精一杯だった。

 

 

 

 

 

 臣下が去り、人払いをさせ、この部屋にはルディアス以外誰もいない。

 

 

「一体、何故…………何を、何処で間違えた……??」

 

 

 虚ろな瞳で虚空を見つめ、誰でもない誰かに声を投げかける。

 当然、返答など無い。

 

 

 ここまで落ちぶれて初めて気が付く、日本について情報が少なすぎることに。

 

(いや、余の目が曇っておったのだ……。我がパーパルディア皇国に匹敵する国など第3文明圏周囲に居らぬと。

 

 いや……勝る国か……。)

 

 

 それを受け入れた瞬間、多くのことを理解する。

 

 

(ロデニウス大陸を制覇し、やたらと力をつけ始めたロウリア王国。

 制覇したにもかかわらず、エルフ・ドワーフ・獣人の商船が交易に来ていたと、どこかで聞いた覚えがあるな。

 恐らくだが、ロウリア王国はロデニウス大陸を制覇してはいない。真に制覇していたのは日本で、裏から操っていたのだろう。

 

 国家戦略局でロウリア王国担当の――――ヴァルハル、だったか。

 局長のスワードは国賊の戯言故に、俺の耳に入れるほどではないと言っていたが話を聞く必要があるな。

 

 だが、あの力を持ちながら何故あそこまで弱気な態度なのだ?

 そこだけが理解できぬ。我々を誘い込むための罠か?

 いや、そうは思えぬ。

 あの気弱さが真実であるからこそ、国境の属領を制圧し保護でもしようとしたのだろう。

 今日の報告からして、初手で本国に攻め入る事も可能だったはずだ。

 だがその場合、他国がハイエナの如く我が属領に攻め入る事を懸念しての行動だったと考えれば辻褄が合う。)

 

 

「ふ……日本にとって我が国など、初めから敵ではなかったということか……」

 

 

 思考を一旦止めてルディアスは天を仰ぎ見る。

 

 

 

 

「強いなら……初めから……そう……振舞ってくれよ…………」

 

 

 

 ルディアスの頬から一筋の涙が流れ落ちる。

 彼が初めて流す涙。

 

 それは何を思っての涙だろうか?

 祖国を自分の代で終わらす自身の不甲斐なさかなのか、それとも――――

 

 

 

 

 結局、日本国の攻撃は一日中続き、パーパルディア本国内にある100以上の軍事拠点全てが破壊された。

 各街を繋ぐ橋も全て、属領とも繋ぐ街道も全て……

 

 

 

 

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