パラレル日本国召喚   作:火焔

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登場人物
●日本
田中:外務大臣政務官

●クワ・トイネ公国
マイラ :マイハーク市の筆頭外交官(ウサ耳獣人)



08. クワ・トイネ使節団 ―魔法―

 2019年1月(中央暦1639年1月)

 

◆◆ 東京(マイラ視点) ◆◆

 

「あいたたた……」

 

 視察中、私の前を歩いていた老齢の女性が突然座り込んだ。

 

「如何かなさいましたか?」

 

 田中さんがその女性に駆け寄って身を案じていた。

 

「じ、持病の腰痛が……。す、すみませんが、バックに入っている薬を……」

 

「薬ですね。失礼します、かばん中を見せていただきます。――――これですか?」

 

 田中さんは女性のかばんの中からプラスチックという半透明の箱を取り出し、女性に見せる。

 

「は、はい。それです」

 

 女性が田中さんから受け取った薬の飲むと一息ついた。

 

「ありがとうございます。助かりました。」

 

「いえいえ、大したことはしていません。」

 

 それでも、女性は完治した雰囲気には見えず顔をしかめたままだ。

 

 

「あ、あの……私が見ましょうか?」

 

 私は意を決して名乗り出た。

 

「え?マイラさんは医学知識があるのですか!?」

 

「いえ、軽症であれば私の回復魔法で治療できますので……」

 

「ええ!? そんな事できるんですか!?」

 

 田中さんはものすごい驚いている。そういえば、日本国は魔法技術を使っていないんだっけ?

 

「おぉ……助かります。何でもいいので腰痛が緩和するのでしたら。」

 

「はい。失礼しますね。」

 

 私は老齢女性の腰に手を当てて――――

 

「くぁwせdrftgyふじこlp……」

 

 私は魔法発動用術式を唱えて、腰痛の原因になっている状態異常を回復させた。

 腰の辺りが緑色の光に包まれて、しばらくして光が消える。

 

「おぉ!こ、腰が全く痛くない!!なんということじゃ!!」

 

 急に女性が立ち上がる。

 

「あ、待ってください。腰は治療しましたが、他の箇所は……」

 

「あたた……足がつって……!」

 

 老女は座りこみ右のふくらはぎを押さえる。

 

「もう……、急に動いてはいけませんよ」

 

 そういって、右足に回復魔法をかけた。

 

 

 

 女性は何度もお礼をいい去っていった。お礼にサファイアの指輪を貰ってしまった。

 そんな高価なものは頂けませんといったが、腰痛に悩まされなくなるならこれくらい安いものです、と。結局受け取ってしまった……。

 

「いったい何が起きたんだ?」

 

 ギャラリーだった人たちが騒ぎ出す。

 

「腰痛が治ったの?」

 

「あの老婆滅茶苦茶元気になったよな?」

 

「持病のヘルニアが治るなら、100万……いや、200万は出せるぞ!」

 

「しかもカワイイ……!!」

 

「さっきの撮ればよかった。」

 

「あの光、撮つんのかな?」

 

「わかんね。」

 

「雑ぅ!」

 

 日本人が殺到しそうになるが――――

 

「皆さん!落ち着いてください!!」

 

 田中さん達やSPの人たちが人ごみを押さえているうちに、私たちは場所を後にした。

 

 

 

「すみません。勝手な事をして……」

 

「いえ、こちらこそトラブルを抑えられず……。それに、女性の病気を治して頂きありがとうございました。」

 

 田中さんから話を聞くと魔法は日本には一切なく、代わりに医術と呼ばれる技術が発達しているそうだ。

 

 私たちの国では自分の風邪などの軽い病気は自分で治す。

 子供でも遊んで時に出来た怪我なんかは、自分で治療しているくらいだ。

 体調を整えるためにも毎晩、回復魔法で癒すのは日課ですし、農業でも魔法は使います。

 それくらい私たちにとって魔法は身近なもの。

 

 もしかしたら――――

 

「田中さんも回復魔法、試して見ますか? お疲れのようですし。」

 

「え? えぇと……そうですね、お願いします。」

 

 田中さんは少し悩んでから申し出を受けてくれました。

 他国の申し出を断るわけにはいかないと思ったのだろう。

 田中さんの情に付け入った様で申し訳ないが、クワ・トイネ公国の価値を少しでも高めなければならない。

 日本国ならば、いずれ国土を大きく広げるだろう。そのとき、農業しかない私たちは切り捨てられかねない。

 

「では失礼します。くぁwせdrftgyふじこlp……」

 

 田中さんの肩に手を当てて魔法起動術式を詠唱する。

 田中さんの両肩が緑の光に包まれては消える。

 

「おぉ!これは凄い……!まるでコリなど無かったようです!」

 

 

 

 

 田中は日本が異世界に転移してから碌に休暇も取れていない。

 だから結構疲れが溜まっていた。肩だけだが、老婆もきっとこのような感じだったのだろうと。

 

(これは凄い技術だ!日本では医者が足りておらず、医師の休養がしっかり取れていない状況だ。

 だが、これならば軽微の怪我や病気は魔法で癒せる。癒しきれないものはそれだけ重度な容態だということの証明にもなりそうだ。

 ただ……。もしかしたら医療技術が後退してしまうかもしれないな……。

 いや、逆に研究に注力できて医療の発展になる可能性もある。)

 

 田中だけに限らず、他の日本の人々もそれぞれ回復魔法を経験していた。

 皆が一様に魔法の効果に驚いている。

 

「この力を日本国の皆さんに役立てる事はできませんか?」

 

 マイラを含め、クワ・トイネの使節団は助力を願い出た。

 

「分かりました。皆様のお力を日本に貸して頂けますか?」

 

 様々な手続きや日本国内でどのように活動して貰うか考える事は山積みだが、異世界に来て初めて誼(よしみ)を結んだ方々が力を貸してくれるのだ。頑張らなくては!

 と、田中は思う。

 

 そうして数ヵ月後、クワ・トイネの魔法使い達が国立病院で活動をはじめることとなるのだった。

 




これを皮切りに、日本では魔法が認知されていきます。

●魔法
魔素と呼ばれる「何か」から生み出される力。
陽子、中性子、電子などは検出されない。
種族によって魔法の素養の有無がある。
また、クワ・トイネには魔法を教える学校は存在しない。
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