パラレル日本国召喚 作:火焔
●日本
田中:外務大臣政務官
佐藤:外務大臣政務官
●クワ・トイネ公国
ハンキ :中央第1騎士団団長(ドワーフ)
ハスド :ハンキの弟。バニル領領主で爵位は侯爵(ドワーフ)
カナタ :クワ・トイネ公国君主(エルフ)
リンスイ:外務卿(人間)
●クイラ王国
テヘンラ:クイラ国王(狼系獣人)
マシュハ:クイラ王国宰相(エルフ)
2019年3月(中央暦1639年3月)
バニル領で行われた日本国の軍事演習は盛況に終わった。
今回は参加人数が多かったので、陸軍兵は一個中隊に参加してもらった。
海軍は大きなスクリーンを用意して、空軍は前回と変わらず5機の編隊飛行だ。
そして簡易的に建設された会議室で田中、ハンキ、ハスドが軍事演習のラップアップミーティング、総括の会議を始める。
「いやぁ、流石は日本国ですな。文明の利器というのを思い知りました。
兄上が見なければ決して理解出来ないという意味が良くわかりましたよ。」
バニル領領主である、ハスド・バニル侯爵は上機嫌で田中に語りかける。
ハスドもハンキと同様にドワーフで2mを越える長身で筋肉質だが、ハンキ程ムキムキではない。
ハンキの様に鎧ではなく豪華なローブの様な衣装を着ているため、そう見えるのかもしれないが。
「この度は公爵閣下の大切な土地を使わせて頂き、真に有難う御座います。」
田中は最後まで軍事演習に対して釈然としなかったが、ここまでクワ・トイネ国やクイラ国の貴族に好評だと、お国柄なのかもしれないと思う。
(ロウリア王国と長いこと国境紛争を続けているからなのかもしれないな……)
ロウリア王国はクワ・トイネ南部の農業地帯に食料奪取のため、度々派兵をしてくるらしい。
兵力はロウリア王国のほうが高く、クワ・トイネ兵は毎回多くの死者を出してしまう。
だが派兵しないと村を襲い、さらに奥まで進軍してくるからやむを得ないとの事だ。
これほどの穀倉地帯をもち、魔法で軽度の病気で命を落とさないのに人口が1800万なのは戦死者が多いからなのだろう……。
「それでなのですがな、田中殿に聞いて欲しい事がありましてな。」
ハンキはハスドに視線を投げ、ハスドはそれには頷く。
田中は今回の軍事演習のように、また何か起きるんじゃないかと内心ハラハラだ。
「我々バニル家は、今回軍事演習を行ったこの場所から、10km四方の土地を日本国に貸し出す所存です。これはカナタ陛下も了承済みです。」
「えぇぇぇええ――――!!??」
ハンキの爆弾発言にハスドは頷き、田中は余りの驚愕に叫び声に近い驚きの声をあげてしまう。
バニル家の目論見である、自分の領に日本人市を作り、日本との窓口にしてバニル領を反映させる算段だ。
もちろん、土地を貸すだけなのでクワ・トイネ王国の領土ではある。
「あれだけ大きな船では、我々の市の港では不便でしょう?
ここは未開の土地で日本国が開発しても誰も困りません。」
「た、確かにタンカーは寄港できませんが……」
「そのタンカーとやらが停泊できる港を作ってくださっても構いません。それに、拠点があった方が線路とらやも引きやすいでしょう?」
田中はハンキ達の目論見に気づく。ここを香港のようにしたいのだと。
「ハンキ閣下、ハスド閣下の想いは理解しました。ですが、私の一存で決められる案件では御座いません。」
「うむ。いい返事を期待していますぞ。」
ハンキは日本で見た光景を思い出す。あの光景が我がバニル領で見られるかもしれないと。
目立たないバニル領の発展にハンキは想いをはせるのだった。
◆◆◆◆◆◆◆
田中はあの爆弾発言の後、同僚で同じ外務大臣政務官の佐藤と共に別の会議室へ向かった。
「何か凄いことばかりですね。」
「そうですね。地球ではあり得ない事ばかりですよ。」
「分かりませんよ? 地球でも100年くらい前は大きく国境が変わってたじゃないですか。」
そう。文明開化以降に日本は大成して準超大国といわれるまでになった。
1800~1900年代は日本史における大きなターニングポイントであったのは間違いない。今年もだが……。
雑談を交わしつつ、クワ・トイネ公国を治めるカナタ公爵とクイラ王国を治めるテヘンラ国王を待った。
「日本国の方々。お待たせしました。」
「申し訳ありませんの。」
「待たせたな!あの武器は凄かった!!うちにも欲しいぞ!」
「陛下……! 申し訳ありません、テヘンラ陛下は丁寧な言葉が不得手でありまして……」
クワ・トイネの公爵カナタ、リンスイに続き、クイラの国王テヘンラ、宰相マシュハが入室する。
今回は、クイラ王国の外交担当となる佐藤との顔合わせ、そしてクイラ王国との交易を依頼する予定だ。
「いえ、私たちも着いたばかりですので。」
田中達はそれぞれ自己紹介をして、本題に入った。
「――――というわけでして、クイラ王国との外交担当は私と同じ地位の佐藤をお願いできませんか?」
「非才ではありますが、何卒よろしくお願いします。」
田中の紹介で佐藤は深く頭を下げる。
「いいぞ!それと、もっと砕けた話し方をしてくれ!よくわからんぞ!」
「陛下……! 田中様、佐藤様、申し訳ございません……。」
マシュハは冷や汗をかいて田中達に頭を下げる。
それをみて、田中達は苦労してるんだろうなと同情感が沸く。
佐藤はテヘンラ国王のいう通りにすべきなのか、視線をカナタへ送ると――――
「構いませんよ、佐藤さん。私もテヘンラ陛下と話すときはその様にしていますし。ですよね、テヘンラ?」
「あぁ!そうだぞ!俺達は仲間なのだ!遠慮しあってはイカン!」
カナタがテヘンラを呼び捨てにした事に佐藤、田中は驚き顔を見合わせる。
そして、佐藤は思い切る。
「はい、わかりま――――いえ、わかった。よろしく、テヘンラ……陛下。」
「ハハハッ!ホントは陛下も要らんがな! それは追々という事にしよう! よろしくなサトウ!!」
佐藤とテヘンラは握手を交わす。
こうして佐藤とクイラ王国の顔合わせは成功裏に終わる。
そして交易の話は順調に進み、ある程度の品目まで話し合う事となる。
日本が輸入するのは、主に鉱物資源と石油。
そして日本が輸出するのは、主に交通インフラ、それとレトルト食品や缶詰などの保存食、さらにクワ・トイネに輸出する武具もだった。
プラスチック製品や文房具など、輸出するものは多岐に渡るが概ね上記の3種がメインになるだろう。
「ふーむ。あの燃える水が本当に欲しいとはな……。最初は冗談だと思ったぞ?」
テヘンラはマシュハが書き記す燃える水――――石油を目にして首を傾げる。
「はい。燃料や様々な製品、このネクタイも石油から作って――――いるんだ。」
佐藤は他国の首脳にこのような口調を……と内心苦心するが、相手の要望であるため戻す事もできないでいる。
「ほぅ!あんなものがな……。それにこの赤石、ボーキサイトだったか?これも金になるとはな。」
テンヘラは思う。今までクワ・トイネや各国には全く売れなかったもの、むしろ邪魔物が日本では売れる。
しかもそれが1~2年以上腐らない食べ物と取引できるとはな。と。
1年など眉唾だとは思うが、あれほどに強い文明国を疑っても利益などない。
一応、2年前の缶詰を目の前で食べてはくれたがな……。
それに石油はかれる気配もないし、鉱山も掘りつくした後に坑道を埋めておけば数年で復活する。
石ころが金になるのならなんでもいいが。と
金があればクワ・トイネから飯が買える。このときのテヘンラは日本をあまり信用してはいなかった。
「これで大枠は決まり――――決まったな。テヘンラ陛下」
「あぁ!これからよろしく頼むぞ!」
佐藤とテヘンラ、マシュハは硬い握手を交わす。
「カナタ陛下。この度はクイラ王国との国交開設に力を貸してくださり、真に有難う御座いました。」
「構いません。私たちは共に歩める。そう思ったまでです。」
田中とカナタ、リンセイも握手を交わす。
こうして後日、日本、クワ・トイネ、クイラの三カ国による通商協定は結ばれた。
これは後世、三国協商と呼ばれる事になる。
予断であるが、半年後、半年たったレトルトカレーを食べてマシュハとテンヘラは、食べられる事とその美味しさに驚愕し、クイラの食糧事情が劇的に改善すると分かることになる。
また、バニル領東の特定区画はクワ・トイネ国日本行政特区として、日本の法に則って集められる税金のいくらかをクワ・トイネ国へ納める形で締結された。
こうして三カ国は国交を結び、半年の時が流れる――――
これで、1章は閑話を残して終わりです。
この後は、対ロウリアになります。
●クイラ王国
元々はクワ・トイネはクイラの一部だった。
昔のクワ・トイネ公爵が大きな功績を挙げて、クワ・トイネ公国として樹立した過去を持つ。
鉱物資源が豊富で国の基幹産業。化石燃料も大量に埋蔵されている。
国土は荒野ばかりで作物が殆ど育たず、出稼ぎにクワ・トイネ公国へ行く若者が多い。
ロウリアの所為で、クワ・トイネで命を落とす若者は多い。
鉱物資源も化石燃料も復活するという謎の力が働いている。
●人物詳細
テヘンラ
種族:狼系獣人
年齢:38歳
身長:186cm
顔 :青い瞳に鋭い切れ長の目。歳のわりに若く見える。東洋顔
髪 :ショートの銀髪
体格:細マッチョ。ものすごく足が速い。
マシュハ
種族:エルフ
年齢:37歳
身長:179cm
顔 :西洋顔の白い肌。たれ目で眉毛がハの字になっている。
髪 :ロングの銀髪。前髪は左右に分けていておでこが見える。
体格:細身。魔導師なので貧弱。テンヘラの無茶にいつも冷や汗をかいている