(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第104話

「大輔、大輔、だいす、あら?大輔、太一くんから電話よ!」

 

母親のあまりの大声に大輔は寝落ちから目を覚ます。大輔の部屋に誰もいないから驚いた母親だったが、玄関に靴がおいたままだったためにジュンの部屋にいるのだと直ぐに気づいたらしい。ドアを全開にして母親が大輔を呼ぶ。コードレスフォンを渡されて寝ぼけまなこを擦りながら、大輔はそれを受け取り耳に押し付けた。

 

「もしもしぃ......大輔です......」

 

「大輔!よかった、大輔はいるみたいだ、ゲンナイさん!」

 

受話器の向こうでなんだか騒がしい声がする。ただならぬ雰囲気に大輔の意識は覚醒した。

 

「大輔、朝っぱらからごめんな!ちょっと緊急事態でさ、みんなに電話して回ってるんだよ!」

 

「へ?な、なにかあったんですか!?」

 

「それがさあ.....俺もなにがなんだかわからないんだ。とにかく!デジタルワールドに来てくれ、今すぐ!」

 

「わ、わかりました!」

 

大輔は大慌てで支度をする。そしてジュンのパソコンをかかえて書斎のパソコンからゲンナイさんの隠れ家にダイブしたのだった。

 

入るやいなや緊迫した空気が流れていた。ワイズモンがゲンナイさんたちと手分けしてなにやらモニターをたくさん出てキーボードを叩いている。太一たちが目をさらにしてなにかをさがしているのだ。

 

「よお、大輔。よく寝れたか?」

 

「あんまり……いつの間にか寝落ちしちゃって」

 

チビモンにまで回復できたパートナーをかかえたまま大輔は欠伸をかみころした。

 

「そっか。ゆっくり休ませてやりたいとこだけど、これみてくれ。お前らがみた最後の光景はどんな感じだった?」

 

太一の指差す先にはミレニアモンの手におちたデジタルワールドイリアスの姿があった。

 

「……あれ?」

 

寝ぼけているのだと大輔は目をこする。何度もこする。そしてそこにある光景が揺るがないことに気づいて戦慄が走るのだ。

 

「ない……」

 

「だよなあ」

 

太一は頭を抱える。

 

「なんでなんにもないんだろう」

 

そこには何も無かった。硫酸の雨に振られて何もかもが失われた崩壊した世界だけがそこにあった。その世界の中心に君臨していなければならないアポカリモン、もしくはミレニアモンの姿がないのだ。

 

「ミレニアモンはどこに!?」

 

「まさかどこかに移動したのか?」

 

太一の声に振り向いたゲンナイさんが首をふる。

 

「ダメじゃ。デジタルワールドイリアス、およびワシらの世界も調べて回っておるがミレニアモンは見つからん。アポカリモンもじゃ」

 

「VR-アポカリはミレニアモンが取り込んでたはずだよ、太一さん」

 

賢の言葉にまじかよと太一はうへえという顔をした。

 

「せっかく大輔たちがムーン=ミレニアモン倒したのにVR-アポカリからデータ取り込んでまたジョグレスして復活かよ、しつこいなあ!」

 

「ミレニアモン倒すだけじゃダメなんだ、ムーン=ミレニアモンを倒さないと何度も復活する」

 

「それだよ、それ。死んでも進化することで復活してアポカリモンと同化するのを回避するとかさあ……」

 

「ほんとに封印されたくないんだな、あいつ」

 

ぽつりと遼はつぶやいた。

 

「今のワシらならばアポカリモンを構成している取り込まれたデジモンたちを解析して分離することができるというのに……ミレニアモンはなぜ拒絶するのかのう……」

 

「ミレニアモンがミレニアモンじゃなくなるから?」

 

「いや、やつの自我はダークマスターズだったムゲンドラモンから来ておるはずじゃ。パートナーデジモンとなった以上、他のデジモンとは明らかに構成データに差異が出る。サルベージは可能じゃよ、チョコモンのようにな」

 

「デジタマが孵化するのはずっと先ですよね」

 

「そうじゃなあ……」

 

大輔はため息をついた。

 

「ミレニアモン、チョコモンみたいに待てないのかもしれない」

 

「チョコモンみたいに?」

 

大輔はうなずいた。

 

「姉ちゃんがいってました。人間は子供から大人になって老人になって死んじゃう。生まれる前にパートナーが死んでたらどうしようってチョコモンは怖がってたって。だからその気持ちを利用されたんじゃないかって」

 

選ばれし子供たちの中に重苦しい沈黙がおりた。

 

「みんな」

 

モニターが表示される。

 

「治くん!」

 

「治!」

 

「兄さん、大丈夫なの?」

 

「大丈夫じゃない。大丈夫じゃないがミレニアモンのことで今すぐしらせなきゃいけないことができたんだ」

 

「えっ」

 

「今すぐ闇貴族の館地下から行ける光が丘のゲートポイントを封鎖してくれ!やつは今未来に飛ぼうとしている!」

 

その言葉に青ざめたのは太一とヤマトだった。

 

「大変だ!あそこってほら、ヴァンデモンが逃げようとしたゲートだよな!」

 

「ああ、ガーゴモンがこの時代にくるために使った時間転移アイテムで開いたゲートがあったはずだ!」

 

「あの、金色の、えーっとなんだっけその、そうだマグナモンだ!あっちの世界のマグナモンが止めてくれたからセーフだったやつ!」

 

「ミレニアモンのやつ、まさかこの時代のデジタルワールドだけじゃ飽き足らず未来のデジタルワールドまで滅ぼす気なのか!」

 

「ちがう、もっとタチが悪い」

 

治が太一とヤマトの言葉を遮った。みんなの視線がそちらにむく。

 

「未来では今よりもはるかに選ばれし子供とパートナーデジモンが多い。ものすごく多い。毎年二進法で増えていくんだからあたりまえだが……。アポカリモンの本体はミレニアモンの力を使ってデジタルワールドイリアスのようなことをしようとしているんだ」

 

「えっ、ちょっと待ってくれよ、治くん!ミレニアモンがVR-アポカリを取り込んだんじゃなかったのか!?」

 

「そうだったかもしれない。でも今は違う。ミレニアモンも、ミレニアモンの中にいるムーン=ミレニアモンも、アポカリモンの本体に完全に意識を乗っ取られているんだ。ベンジャミンさんのように」

 

「まさかベンジャミンがゲートを開けようとしておるのか!」

 

「どうやら大輔たちのデジヴァイスはミレニアモンが戦ってきた選ばれし子供のデジヴァイスのデータを復元してできたらしいぞ、ゲンナイ爺」

 

「まずい、デジタルゲートを開ける機能はすべてのゲートポイントに適応されておるはずじゃ!」

 

「つまり、開けられる!」

 

「未来側にもセキュリティシステムはおるはずじゃ。同じコードキーをずっと使っているとは思えんが、開くことができるデータをヴァンデモンが使った以上不正アクセスはできるに違いない。急ぐんじゃ、選ばれし子供たちよ。取り返しがつかなくなるぞ!」

 

ゲンナイさんの言葉に待ってましたとばかりに太一とヤマトがパートナーと共に前に出る。

 

「行けるよな、ストライクドラモン」

 

「おう!まかしとけよな。ミレニアモンがパートナーだってんなら、話ができるのは遼だけだろうし」

 

遼はデジヴァイスを手にする。

 

「ゲンナイさん、光が丘のゲートポイントにデジモンが!」

 

そのとき、京が声をはりあげた。

 

「あーもうなんだよ、次から次と!」

 

「これです、これ!」

 

京が指差す先には今まで見たことのない造形をした白いデジモンが立ち塞がるように静止しているのがわかる。手足には巨大な鉤爪があり、覆うように鎧と一体化した体の各パーツ。ひょろひょろのコードを束にしたようなやけに細いものがそれぞれをつないでいる。不気味な1つ目のデジモンだ。

 

「デジコアが外に出てる」

 

「なんか怖い」

 

「なにものでしょう、こいつ」

 

光子郎がデジモン図鑑を起動してみる。そこにはこう書かれていた。

 

パラレルモン。突然変異型のウィルス種、究極体。時空をさまよいテイマーを狩る冷徹なハンター。パラレルワールドを回ってテイマーのデータを食べる突然変異型デジモン。必殺技は『アブソーベントバン』

 

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