(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー)   作:アズマケイ

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第105話

選ばれし子供たちのパーソナルデータが盗まれているという話をなぜかこのタイミングで思い出した治はそういうことかと舌打ちをした。

 

「どうした、一乗寺治」

 

「どうもしない。僕としたことが思い出すのが遅すぎたんだ」

 

「どういうことだ」

 

「あのパラレルモンといいVRデジモンといいデジモン図鑑で検索できる時点で怪しむべきだったんだ。新種のデジモンすらデータが解析できる時点でなにかがおかしいんだと」

 

「なんだと」

 

「誘導されてるんだ、僕たちは。パラレルモンの技の詳細が全く出ない。どう考えてもおかしい」

 

注意してくれ、とモニターごしに治はいうしかない。

 

「......もしかしたら僕の考えている以上にデジタルワールドの深くにまでアポカリモンの本体の侵食は進んでいるのか?」

 

「実体を失い、精神だけになれば救われるとかいう、タチの悪い新手の宗教がか?」

 

「ああ。今まで僕たちは何度もホメオスタシス以上の上位存在から妨害を受けてきている。アポカリモンの本体をひきずりだしたことでようやく進化を否定する概念の本性が現れたんだ。あいつのいってたことを調べてみる価値はある。どうせ僕はここから出られないからな、少しでも遼たちの役に立てるようなサポートをしないと」

 

治はインターネットで情報収集をはじめた。

 

「……パラレルモンはテイマーのデータを取り込むらしい。お前も危ないのではないか?」

 

「心配してくれるのか?」

 

「いや……なんとなくそう思っただけだ」

 

治は笑った。

 

「まだなんのデジモンも育てたことないんだが」

 

「そうなのか」

 

「デジタルワールドはそこまで人間と関わる気はまだないらしい」

 

「……」

 

コクワモンはしばし沈黙した。

 

「これか」

 

「見つけたのか?」

 

「あいつがいってたことを噛み砕いたらこれが一番近い気がする」

 

治が見つけ出したのは宗教に関する思想について解説したブログだった。あるゲームに熱心なファンが裏設定についてひたすら語っているページを最初に見つけたのだがそこにリンクが貼ってあったのだ。引用されていたわけである。

 

それは新プラトン主義という思想だった。古代のグノーシス主義思想に影響を与え、中世のキリスト教神学にも影響を与えたとされる、万物は完全なる善、あるいは完璧な一者から段階を経て世界が流出して生み出されたとする思想だった。

 

高次元で純粋な世界から低次元で物質的な混濁に満ちた世界へと万物は流出し、最終的にこの世界が形成されたとある。魂と物質に世界をわけて成り立ち方を考えているわけだ。この流出過程を逆に辿ることができれば、純粋で精神的な高次元世界へと帰還できると考える流出説というのが特徴のようだ。

 

そして、この考え方に影響を受けたグノーシス主義は、ある神が罪をおかして追放されたときに高次元から低次元に落下したことで世界は誕生したと考えている。罪を犯した神から物質世界を作った偽の神が生まれた。しかも偽の神は記憶を失い、自分以外に神はいないと思い込んでいる。だからこの世界の秩序はそもそも間違っている、という思想である。

 

この世界は悪の宇宙、あるいは狂った世界ではあるが、本当の神はまた別にいる。そして神が落下してバラバラになったときにまともなパーツが物質に閉じ込められ、それが魂であるというわけだ。善と悪、真の神と偽の神、また魂と肉体、イデアーと物質、という「二元論」が、グノーシス主義の基本的な世界観であるらしい。

 

「びっくりするくらい同じだな……グノーシス主義のデータがデジモンになったんじゃないかってレベルだ」

 

そのまま受け取るならこの世界観がこの世界の真理ということになるがデジタルワールド自体がデータが実体化する世界である。グノーシス主義の概念とそれ以外の概念が争っただけにもみえる。

 

「アポカリモンの本体は自分は偽の神の中にあるまともなパーツだと言ってたな。じゃあ、魂をあたえた神のつもりなのか?」

 

「物質は悪だから精神や魂は善、その善は自分が与えたものだと?バカバカしい」

 

「名前はないな、神の通称はあるけど。永遠・永劫を象徴する神ともされた。 通常、時間の神として知られると書いてあるな……クロノスと同一視……時間……」

 

「一応いっておくが私はデジタルワールドの時間の概念が自我を持ったデジモンだ。神ではない」

 

「わかってるさ。そうじゃなけりゃ2体に割かれたりしない。コクワモン、デジタルワールドに時間を神格化したようなデジモンはいるのか?時間の神クロノスの概念がデジモンになったようなやつがいれば一番わかりやすいんだが」

 

「クロノスか……」

 

「心当たりがありそうだな」

 

「私をかばって死んだクラヴィスエンジェモンの死に場所にして職場にそのデジモンのところに向かうゲートがある」

 

「そうなのか」

 

「見た目はただの時計だが、私は生まれた時から時間を司る役目の引き継ぎデータから知っている。だがどうやってゲートを開くのかわからないのだ。なにせ私はホメオスタシス以降に時間を管理している。古代デジタルワールド期に管理していたデジモンは、当時のサーバが機能を停止して以降はデジタルワールドと奥深くに眠りについている。今のサーバに至るまで何個ものサーバを転々としてきたらしいからな。今となっては四聖獣様に聞かなければわからない」

 

「なんだって?」

 

「うん?いきなりどうした」

 

「今、なんて言った?デジタルワールドはサーバを何回も変えてて、その度に前のサーバは深部に眠りにつくっていわなかったか?」

 

「ああ、言ったが……?」

 

「今のデジタルワールドの異変の正体はこれか!すべてのサーバが起動しているんだ!それぞれのサーバが目覚めてまた時間が流れ始めているんだ。だから時間と空間が膨張して上にある僕たちの世界に亀裂が走る!」

 

治の言葉にコクワモンは凍りついた。

 

「しょ、正気か?正気で言っているのか、一乗寺治」

 

「そうとしか考えられない!このままだとまずいぞ、コクワモン!君は今のデジタルワールドの時間そのものだ。もしそれぞれの世界の時間がミレニアモンによって圧縮された挙句にアポカリモンにとりこまれたらどうなる?」

 

「すべての時間が統合されてしまう!」

 

「時間どころじゃない、世界もだ!どんどん過去のデジタルワールドが今のデジタルワールドを突き破って出てきているんだ!このままじゃまずい!!」

 

「まさか、ミレニアモンが時間を跳躍する能力に目覚めたのは……」

 

「クロノスって神を調べた方が早そうだな」

 

 

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