(完結)ルート2027(初代デジモンアドベンチャー) 作:アズマケイ
「ゲンナイさん」
「どうしたんじゃ、大輔」
「実は姉ちゃんのパソコンからデジモン黙示録が出てきたんです」
「なんじゃと!?」
大輔はノートパソコンをひらき、ゲンナイさんに見せた。
「これは......なぜジュンが......」
「デジモンミュージアムで復元中の碑文てこれだよな?」
「ああ、そうじゃ」
「ケイトさんとかの名前がわかってたんだ、これ読んだことあるんだよな、ゲンナイさん」
「......そうじゃな」
「なんで遼さんにいわなかったんだよ。初代の選ばれし子供たちの名前の中に5人目の名前に秋山遼ってあるって。デジヴァイスは遼さんからENIACに伝わって、ほかの選ばれし子供たちのために使われたって」
「それは......」
「もしかして、最初から知ってたのかよ、ゲンナイさん。遼さんがなんかあって1946年の冒険に参加することになるからわざと黙ってたのかよ」
「ちがう、それだけはちがう」
「なにがちがうんだよ」
「今のデジタルワールドには2つの歴史が存在しておるんじゃ」
「2つの歴史?」
「ジュンから聞いておらんか?ミレニアモンとの戦いじゃよ」
「うん、聞いてるよ。去年の大晦日だろ?」
「そう。ミレニアモンがアポカリモンの代わりに古代デジタルワールド期に世界を滅ぼそうとした、そして復活したという改変された歴史を修正するための戦いじゃ。今のデジタルワールドは修正されてアポカリモンとの戦いとして記録されておる。じゃが平行世界からの侵略は初めてじゃった。だからホメオスタシス様からの意向でバックアップ空間に改変されたあとの歴史は残っておるのじゃ」
「えっ、じゃあこのデジモン黙示録は改変された歴史の碑文てこと?」
ゲンナイさんはうなずいた。
「なんで姉ちゃんのパソコンにこれが……?」
「わからんのう」
「うーん……」
その時だ。メールを一通受信した。
「あ、ケイトさんからだ」
「む?なぜケイトに?」
「あー、その、実はケイトさんに遼さんは仲間だったのかって聞こうと思って、あはは」
「大輔も先走ったのう、さすがにワシらに聞いてからケイトにメールをして欲しかったぞ」
「ごめんなさい、そこまで頭が回んなくて、あはは」
笑いながら大輔はメールを開いた。
「あははは、は……は?」
英文に目を通していた大輔の目が大きく見開かれる。
「えっ、ちょっと待ってくれよ、嘘だろ!」
「どうしたんじゃ、大輔」
「ゲンナイさん、ゲンナイさん、大変だ!ケイトさんがほんとのことだって!」
「なんじゃと!?」
「最初に聞いてくるのはデジタルワールドのセキュリティシステム側か遼さんだと思っていたのに、まさか俺が最初だとは思わなかった。あの時残した碑文がちゃんと残っていたことが奇跡だわって……」
大輔は拙い翻訳を始める。
ケイトたちが出会った遼は今とだいぶん雰囲気が違っていてなかなか自分のことを話さないやつだったらしい。最終決戦においてようやく未来の日本から来たテイマーであり、選ばれし子供であり、ミレニアモンをパートナーにするために来たのだと告げた。2000年の時点で光が丘の小学校の6年生だと。ケイトたちは1999年を楽しみにしていたのだが、1995年の光が丘テロ事件により遼は田町に引っ越してしまった。この時点で出会うことは致命的に難しくなった。サマーメモリーズの事件の時に知り合えたが、遼はケイトのことを知らなかったから未来の出来事なのだと思ってなにもいえなかった。いつか遼が知る日が来るからそれを楽しみにしていたのだという。
「ミレニアモンをどうやってパートナーにしたのか、聞いてもらうことは可能かのう?」
「あ、そっか!そうだよな、うん、聞いてみる!」
大輔はキーボードをにらめっこしながら1音ずつ入力していく。
「送信っと」
しばらくしてメールが返ってきた。
「えっ……でも、これって……え」
「そんなことが、可能なのか……?」
「と、とにかくこれを遼さんに知らせなきゃ!おれ、行きます!」
「ああ、頼んだぞ、大輔!」
「よーし、いくよ、だいしけ!」
「デジタルゲートオープン!」
その先は大輔にとってグランドラクモンたちを究極体にまで進化させる一助を担ってしまった忌まわしき場所である。
「うっわあ、相変わらず陰気臭いとこだなあ」
かつてのようにデジタルワールドと現実世界の境界線が限りなくあいまいになり、異空間とかしていたころとは大分雰囲気が違う。だが他のゲートポイントやデジタルゲートのようにミラーボールの内側みたいに目の裏側に残像が残るほどまばゆい光を放つ空間というわけでもない。どこか薄暗く、バイプだらけの空間なのは旧式のデジタルゲートやゲートポイントを無理やり使っているからに違いない。
「この先にパラレルモンがいるぞ、気をつけるんじゃ」
一番近くのモニターからゲンナイさんが顔を出す。素直にその忠告を受け取った大輔はうなずいたのである。
「よし、行こう大輔」
ここに転送される最中にマグナモンにアーマー進化した相方は元気よく先を促した。
「あれ?どうしたんだろう」
「あんなとこに立ち止まって」
先に行っていたはずの太一たちが立ち往生しており、ちょっとした人だかりができているのがわかる。
「どうしたんだよ、みんな」
一番後ろで様子をうかがっていた京が教えてくれた。
「この先に旧式ゲートに繋がる地下施設があるらしいんだけど、入れないらしいの」
「えっ、じゃあミレニアモンはまさかもう未来に?」
「それが、遼さんが一番最初に入ったんだけど、内側から鍵を掛けちゃったみたいで」
「えええええっ!?」
大輔はあわててマグナモンから降りると走り出した。1番先頭にはドアをバンバン叩きながら開けろと叫ぶ太一、早まるなと説得するヤマト、今にも泣きそうな顔をしている賢がいた。みんな困惑している。オロオロしながら遠巻きに見ている。なんて声をかけていいかわからないようだ。
「遼さん!なんで鍵かけちゃうんだよ、遼さん!みんなでミレニアモンを助けようって決めたのに!」
「そうだぜ、遼!考え直せってば!」
「今までのことは仕方ないだろ、誰も知らなかったんだから!一人で行くなってば、無茶だ!」
「ドア開けてよ、遼さん!母さんはああいってたけど遼さんのこと、ミレニアモンのこと、いろんなこと話したら後悔してたんだ!昔から母さん思い込んだら周りが見えなくなっちゃう時があるの、遼さんもよく知ってるでしょ!」
その言葉に治が重症を負ったことでなにかあったのだと大輔は悟る。あわててパソコンを取り出し、ゲンナイさんの隠れ家に今のやり取りをみせる。するとゲンナイさんが治のモニターを中継してくれた。
「なに考えてるんだ、遼!しなくていい心配して思い詰めるなんてバカバカしい!そんな無駄なことしてる暇があったら、ミレニアモンになんて声かけるかで悩んだらどうだ!」
治の叱責がやけに大きく響いた。
「忘れたのか!今のミレニアモンもムーン=ミレニアモンも、アポカリモンの本体に操られてるんだ!お前がそんな調子でどうする!ミレニアモンを元のパートナーデジモンにできるとでも思っているのか!」
「秋山遼、そう思い詰めなくてもいい。塞翁が馬という言葉を知っているか?今私はそう感じている。だから今までのことは巡り合わせだ。ごちゃごちゃ考えても無駄だ。デジタルワールドにおいて必然はあっても偶然などなにひとつないのだから」
治は驚いたような顔をしてコクワモンをみた。
「お前は望もうと望まざると因果律の中心にいる。ミレニアモンは戦う度に強くなり死ぬ度に復活してお前に会いに来るだろう。どうする気だ?もはやミレニアモンは一人でどうこうできるレベルを超えているぞ?」
「助けたいというあの時の叫びが本心ならそれを届けるためになにがなんでもあがくのが僕の知ってる秋山遼だ!違うか!君は誰だ!」
治の声が響いたとき、ようやくゲートがあいた。
「………………ごめん」
パラレルモンの先に遼がいた。なだれ込む選ばれし子供たちを前にパラレルモンがたちふさがる。
「あの馬鹿!また勝手に!」
遼の姿が遠くなっていく。
「時間を稼いで一人でミレニアモンと会う気だ!」
治の叫びに反応したのはマグナモンだった。
「オメガモン!ミレニアモンに一番対応できるのは君たちだ!ここは俺たちが足止めするからはやく!」
我に返ったように次々と究極体たちがパラレルモンに立ち塞がり、オメガモンの進行を妨害しようとするパラレルモンを牽制する。
「遼もミレニアモンもひとりじゃないってわからせてやろうぜ、オメガモン!」
「急ごう、時間が無い!」
太一とヤマトの問いかけにオメガモンは威勢よくうなずいたのだった。